皇国最後の反攻:novelized   作:[このユーザーは存在しません]

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第二十話:転機

「1946年3月26日、米国が作成した新型爆弾がドイツ第二の都市ハンブルクに投下され爆発、同都市は完全に破壊されました。人口100万人以上のうち少なくとも30万人以上が死亡、行方不明者も15万人に及んでいます。また、任務の為ハンブルクに配置されていた親衛隊全国指導者であるヒムラーの死亡が確認されました。ドイツ政府はこの攻撃に対し強い怒りを露わにしており、ヒトラー総統は「アメリカは必ずこの攻撃に対する報復を被ることになる」と宣言しました。」

 

 そう書かれた報告書を読み終わった魔理沙は嘆息する。

 

「一発で都市を完全に破壊する、か……。真偽と被害状況の確認に4ヶ月もかかるわけだ。こんな物を量産されたらこの戦争には絶対に勝てなくなるな。」

 

 それを聞いた霊夢が答える。

 

「量産されたら、ね……その前に連合国の息の根を止める。上陸準備の状況は?」

 

「シンガポール隊も既に準備完了している。」

 

「分かった。アメリカ海軍が消え去った今、反撃を行うのは我々だ。」

 

 すっと息を吸い込んで、霊夢は宣言する。

 

「三号作戦を開始せよ!オーストラリアとニュージーランドを制圧するのだ!」

 

 

 

 1946年7月30日、南太平洋に存在した最後の連合国であるオーストラリアとニュージーランドを打倒するため、シンガポール、ジャワ島、ニューギニアから総勢50万人の部隊が出港した。

 連合国は上陸部隊の捕捉に成功するも1945年のインド洋沖海戦でオーストラリア海軍は壊滅しており、また3月の2度にわたるマラッカ沖海戦で大損害を受けた米海軍は大日本帝国の精鋭空母艦隊が護衛する輸送艦を攻撃できる能力は持っていなかった。

 

 最初にシンガポール隊が西部オーストラリアの重要都市バースに上陸を開始した。都市部では上陸に苦戦していたものの、一度も本格的な陸戦をしたことがない彼らと10年近くずっと戦争を続けている日本軍では能力が桁違いであり、都市周辺が陥落するとオーストラリア軍は都市を放棄して撤退した。

 次にニュージーランドでも上陸が開始され、自国軍の総量の2倍近くの軍隊による奇襲を受けたニュージーランド軍は指揮系統に混乱をきたし、数時間で日本軍は上陸に成功、オークランドを制圧して南下を開始した。

 さらにオーストラリア南東部の最重要都市シドニーに山下将軍率いる最後の部隊、総勢20万人が上陸し帝国陸軍の強さを見せつけながら水際防御以外を何も想定していなかったであろう両国の正規軍を蹂躙し進撃していった。

 上陸後数日でキャンベラが陥落し、部隊は強制的な徴兵で体裁だけ整えられた新兵部隊をいとも容易く撃破しながら内陸部に進入、接敵もほとんどなくなり無人の荒野を帝国陸軍が行進する日々が続く。

 

 

 

 そんな行進の中で1人の兵卒が独り言をつぶやいた。

 

「なぜ米兵が一人もいないんだ?いくら何だってここまで南太平洋をがら空きにする理由なんかないはずだが……。」

 

 近くにいた男が答える。

 

「春先にインドネシアへ米軍が上陸した時があっただろう?俺の勝手な予想だが、あれはスエズ運河の侵攻を担っている部隊を少しでもこっちに引き寄せるための緊急作戦だったんじゃないかと思うんだ。でもそんな急にアメリカの本土で部隊を養成してどっかの港を経由して強襲上陸……なんて悠長なことできないだろ?だから仕方なくここにいた部隊を引き抜いてボルネオ島やらジャワ島やらに送ったんだろうよ。で、その時に殲滅された部隊の代わりになる新兵たちの訓練が終わらないうちに俺らがここに来たって訳だ。」

 

「それでか。にしても人がいない荒野を歩くだけってのは代わり映えがなくてつまらないな。」

 

「別にいいだろう?敵を殲滅して敵と味方の血を踏みながら死体の中を歩くはマシだ。」

 

 

 

 そんな会話がオーストラリアのどこかで行われている間にニュージーランドでは敵主力部隊の包囲に成功し、3万人が殲滅されると共にニュージーランド軍の防衛線が崩壊、数日後にはウェリントンへの突撃が開始され、9月の初めに同都市が占領され同時にニュージーランド政府は無条件降伏した。

 オーストラリア軍は日本軍でも経験が少ない北部の砂漠地帯を生かし防衛線を構築し始めていたが、主要工業地域は全て奪われておりオーストラリアに交戦を継続する能力は残っておらず同年10月10日に降伏。これによって太平洋からインド洋にかけて存在していた連合国の主要国と準主要国はほとんどが制圧され、残る環太平洋地域の敵主要国はアメリカだけとなった。

 

 

 

「これでようやくアメリカ攻略に集中できるな。」

 

 オーストラリア政府が無条件降伏したという知らせを受けた霊夢に魔理沙は言う。

 

「ああ、今度こそあの国を撃破し、この地獄の戦争を終わらせて——」

 

 その時だった。ジリリリリと電話のベルが鳴る。「私が出よう。」と断った魔理沙が応対するが、その顔色はどんどん悪くなっていく。受話器が置かれると同時に霊夢が口を開いた。

 

「どうした?」

 

「非常に悪い知らせが入った。どうやら連合国による北フランス上陸作戦が成功したらしい。」

 

「機甲部隊はどうしたんだ!?」

 

「ルアーンで使用された原子爆弾により壊滅したとのことだ。ドイツ軍は敗走を続け、今なお連合国の攻勢は止まっていないと報告が入っている。更にルーマニアで発生した政変によって東部の防衛線も破られたそうだ。」

 

「そうか……ドイツはもう終わるのか。」

 

「ライン川とフランス南部の防衛には成功しているようだが、数百万の敵軍に挟み撃ちにされている以上耐えきれないのは明らかだな。」

 

「原子爆弾に地獄の陸上戦……ドイツには貧乏くじを引かせてしまった。彼らの為にも我々は止まってはならない。止まってはならないのだ。」

 

 そう呟いた霊夢は魔理沙に向け、総合参謀本部の参謀総長として命令する。

 

「あ号作戦の準備を開始せよ。次の攻撃目標はアメリカ本土だ!」

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