皇国最後の反攻:novelized   作:[このユーザーは存在しません]

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第二十三話:前夜

 霊夢参謀総長の演説が国民の心を揺さぶり、彼らの心に確かなる決意を齎してから数ヶ月が経ったある夜のこと。総合参謀本部の会議室は緊張感に包まれていた。室内にいる全員が大東亜戦争を終結させるため一丸となって作戦を考え、実行し、成功を収めるよう必死に働いてきた。この会議はそれの最終確認なのだ。霊夢は重苦しく口を開く。

 

「それでは山下将軍、アメリカ本土上陸作戦の解説を頼む。」

 

「了解いたしました。現在、我々は太平洋における圧倒的優勢を確保しており、ハワイからアメリカ本土への爆撃も敢行しております。しかし依然としてアメリカの世論を動かすには力不足であり、講和へ持ち込むには敵本土を叩く必要があるでしょう。この上陸作戦における最大の障壁はアメリカ太平洋艦隊の存在です。」

 

「彼らはハワイでの決戦を避けたからな。主力艦、駆逐艦、艦載機の全てにおいてかなりの数を保有しているだろう。」

 

 魔理沙陸軍大臣の分析に山下が付け加える。

 

「諜報部の情報によると空母9隻、戦艦10隻、巡洋艦24隻、駆逐艦50隻を内包する大艦隊がアメリカの西海岸を防衛しているとのことです。」

 

「聯合艦隊の正規空母は2ヶ月前に完成した新型である大鳳型の「富士」と「鳳凰」を合わせて6隻、戦艦も6隻しかないことを考えると戦力差は1.5倍か……この差はどうするんだ?」

 

 霊夢の質問に山本が「それについては私がお答えします。」と話を引き継ぐ。

 

「まず米国の太平洋艦隊と決戦をする訳ですが、彼らは本土の沿岸を巡行しており軍港の位置関係では我々に対して非常に分が悪いです。近場に大規模な港が必要となるでしょう。」

 

 それを聞いた霊夢が「……アラスカか。」と呟く。

 

「はい。先月に行われた陸戦隊によるアラスカ上陸は成功しアンカレッジの軍事施設を確保しました。」

 

 魔理沙が「そこからカナダへの攻撃はどうなっている?」と質問を飛ばし、山本は落ち着いてそれにも答える。

 

「既に国境部には米軍が展開し防衛線を構築しており、幾度か攻撃を行ったものの戦果は芳しくありません。しかし一方で、アラスカの全地域の制圧には成功しました。」

 

「それは素晴らしい戦果だ、これでアメリカの目と鼻の先に我が軍の基地が完成したことになる。」

 

「このアンカレッジ港を拠点とし、北太平洋に進出してきた敵艦隊に決戦を挑みます。」

 

「勝率は?」と聞いた霊夢に少し曇った顔で山本が返す。

 

「率直に申し上げますと5割といったところです。海軍戦力では劣りますが「大和」も修理を終え「武蔵」と共に完璧な状態で戦闘に入れますしアラスカからの航空戦力も得られます。そして何よりも練度の差が戦いを有利に持ち込むでしょう。」

 

「攻撃には敵の3倍の戦力を用意しろと言う。かなりの工業力を海軍に注いできたがそれでも最後まで数で劣ってしまった。日本海軍の君たちには申し訳が立たないな……。」

 

 霊夢は悲し気な表情でいい、山本は「いえ、」とそれを否定して言葉を返す。

 

「かの国は1年で500万台も自動車を生産するような国ですから、数の差は当たり前であり文句を言うべきではありません。その差を工夫と質で乗り越えてきたのが我が海軍ですから、今度の海戦も必ず勝利を掴み取って見せます。」

 

「頼もしい限りだ。信じているぞ。」

 

 そこまで来たところで山下が話を引き継ぐ。

 

「制海権確保後の作戦についてですが、既に本土以外の防衛兵力は現地部隊が補っており、米国本土上陸作戦のために120万の兵力が準備できました。彼らはアラスカ、ミッドウェー、ハワイから同時に出港し、ロサンゼルスからシアトルにかけてのアメリカ沿岸部一帯に上陸します。スパイの情報によると米軍の総師団、およそ315個師団のうち7割以上がヨーロッパ戦線に出払っており、残った約96個師団もアラスカ防衛線を中心に北アメリカ大陸のほぼ全土に散らばっておりますから敵はこの飽和攻撃になす術もなく沿岸部を明け渡すでしょう。その後は各部隊が互いに合流を目指しつつ前進します。ここで最大の障壁になるのはロッキー山脈の存在ですが、そこで利用するのが我が大日本帝国陸軍がドイツのE-50を元に開発した六式中戦車です。パーシングにも正面から対峙できるこの戦車を3000両準備することに成功し、これを元に12師団の戦車部隊を編成しました。沿岸部を制圧した後、ロサンゼルスにこの部隊を輸送し山岳の低地やインフラが整備された地域を利用して猛進することで南西部の山岳地帯を包囲します。これによって敵の防衛線は崩壊するでしょう。」

 

「その混乱に乗じて講和条件を米国に叩きつける……理想的な作戦計画だな。」

 

 魔理沙の呟きを全員が聞くと、霊夢が作戦の根幹を確認し始める。

 

「この作戦で最も重要なのはどれほど米国に衝撃を与えるかだ。敵の進軍は抑えられずこのままだと国家が滅ぶ、と米国民に信じ込ませ畏怖させる必要がある。帝国軍は振り返らず進撃し続けよ。その先には新しい日本が待っているのだ。」

 

「あ号作戦を実行せよ。諸君の健闘を祈る。」

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