時折変な夢を見る。
自分はどこかの研究所で研究員として所属していて何か難しい研究を行っている。休憩時間に同僚と思われる人達と他愛もない話をして、廊下を歩くのだ。そんな時に毎度目に入る青年がいる。夢の中の自分と同学年くらいの白衣を羽織った青年だ。休憩時間だというのに狂ったようにパソコンを凝視している。
そんな彼に声をかけようとしたところで毎度目が覚める。今日もその夢を見た。時刻は6時30分。もうそろそろ起きる予定だった時間だ。
「永遠、入るぞ」
ノックと同時に自分の部屋の扉が開かれる。入ってきたのはこの家の主人である爺ちゃんだった。
「起きてたか。朝ご飯出来てるぞ。着替えてから降りてきなさい」
爺ちゃんはそれを伝えると部屋から出ていった。
ベッドから降りてパジャマから着替える。ワイシャツと学生服に身を包み、リビングへと向かう。
リビングには既に俺の分の朝飯が用意されていた。今日は鮭の塩焼きに小さめのサラダ、それに豆腐とネギの味噌汁のようだ。
「降りてきたか。じゃあ食べようか」
俺が降りてくるまで爺ちゃんは朝飯を食べずに待っていたようだ。
「「いただきます」」
この家には俺と爺ちゃんの2人で暮らしている。俺の両親は俺が赤ん坊の頃に事故で亡くなった。車に乗っていたら信号無視の車と衝突し即死だったらしい。俺も車に乗っていたが、奇跡的に怪我もせずに助かったとの事だ。それから父方の祖父母に引き取られて生活している。婆ちゃんは一昨年亡くなった。それからは爺ちゃんと2人きりだ。
「新しいクラスはどうだ?もう友達は出来たか?」
季節は春。昨日始業式があり、俺は中2になった。クラス替えがあり、まだメンバーの名前と顔が一致しない。前のクラスで仲が良かった奴らはみんなバラバラになってしまったし、同じクラスだった奴も話したことはまるでない。
「ぼちぼち作る。クラスは…まあ普通ってとこ」
「そうか…ならよかった。馴染めそうにないって言われたらどうしようかと思ってたからな」
「心配しすぎだって…ごちそうさま。じゃあ行ってくる」
食べ終えた食器を片付け、降りる時に持ってきていた通学カバンを手に取り家を出た。
ここから学校までは自転車で向かっている。約10分ほど漕げば着くので案外楽だ。
たしか今日は数学、英語、地理、国語、美術、理科だったか…学期始めにしては中々にハードな時間割じゃないか?特に国語。筆者の考えなんて分かるかってんだ。なんでそいつの考えを他人が作品呼んだだけで分かんだよ。エスパーかよ。それともサイコメトリーか?どっちでもいいけどさ。
なんて下らないことを考えてるといつの間にか学校に着いていた。うちの学校は公立にしてはまあまあ出来のいい生徒が集まる学校で、年に何人か県内有数の進学校へ排出することで知られている。
鍵をかけ、下駄箱からシューズを取り出して教室へ向かう。既に半分くらいが登校しており、それぞれの友達グループで話をしたり、本を読んでいたりした。
俺は窓側の自分の席に座り窓から外を眺める。外では朝練を終えた野球部がグラウンドの整備をしていた。
ボーッと外を眺めていると後ろから気配を感じた。後ろを振り向くと1人の男子生徒が立っていた。
「えっと…そこ僕の席なんだけど…」
男子生徒の言葉に疑問を持ちつつ改めて考えると、たしかに一つ席がズレている。
「悪い!俺もう1つ後ろだった!」
昨日腰を下ろしたというのにボーッとしていたからか間違えてしまったようだ…俺はすぐさま立ち上がり後ろの席へ移動する。
「ああ…全然大丈夫だよ」
男子生徒はそう言って席に着いた。たしかこいつの名前は…
「えっと…高崎だったよな?」
「え?ああ…うん。高崎暦。君は…」
「田辺永遠。前は2組だった」
「田辺永遠くん…」
「おう。周りからは永遠って呼ばれてる」
「じゃあ、永遠くん」
「高崎はなんて呼ばれてんの?」
「…友達いなくて…その…」
俺はその言葉を聞いた瞬間、とんでもない地雷を踏み抜いたのだと理解した。
「悪い…デリカシーなかった」
「いや、大丈夫…」
なんかすげー変な空気になってしまった。こんな雰囲気を作り出した自分の責任なのだが…しかし、友達がいないというのは寂しいものだろう。1人が好きという人間もいるにはいるが、高崎はどうもそんな感じには見えない。
「なあ…お前が嫌じゃなければでいいんだけどさ」
ならば、俺から歩み寄るべきだろう。
「俺と友達にならねえ?」
この出会いが俺と並行世界というSFチックな分野を結び付ける始まりだとは今の俺には知る由もない。
君愛→僕愛の順で見ました。
自分は和音派ですけど、栞もすげーよかったと思います。
60年以上同じ場所で1人でいるのは、たとえ好きな人と話が出来ても辛すぎる。
なのに、栞はそれを耐えれていた。なんと強い少女なのかと感じましたね。