ミネルバ・マクゴナガルにまつわるすべて   作:ぱーりらぱーりら

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1949年 ミネルバと時間

 

 

ミネルバという名前は、イギリスの保守的な田舎に住む牧師の娘にしては風変わりで、この名付けにこだわった母が、周囲から()()()()冷ややかな眼差しを向けられる程度に受け入れがたい名前だった。

 

いつだったか、ミネルバは自分の名付けについて父に尋ねたことがあった。

すると父は苦笑して答えた。

 

 

「イゾベルは滅多にわがままを言わない。でも、お前の名付けのときばかりは絶対に譲らなかったんだよ」

 

 

母は寛容で執着心がないが、ときどき、なんだかよく分からないものに強いこだわりを見せることがある。

父はミネルバの名付けもその類だと思ったようだが、ミネルバは違うと分かっていた。

 

 

ミネルバの名前は祖母のそれから譲り受けたものだった。

 

ミネルバ・ロス。

それがミネルバの祖母の名前だ。

 

母は魔法を捨て、杖を捨て、家を捨てながらも、なんとなく、ぼんやりとでも()()()()とのつながりを保っていたかったのだろう。

 

 

──魔法に執着があるのなら手放さなければよかったのに。馬鹿な人だわ。

 

 

ミネルバは母親に冷ややかな()()を下した。

 

 

──どんなことがあっても、私なら絶対に杖を捨てない。

 

 

十三歳になったミネルバは、母親の弱さに共感できるほど大人になりきれてはいなかった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

『ミネルバ。晩餐会が終わったら教職員室で待っていてくれ』

 

 

組分けの儀式の直前、ダンブルドアからのメッセージが()()()きた。

 

手紙は鳥の形で飛んできて、ミネルバの手の中に入った途端、一枚の薄っぺらな羊皮紙に戻る。見事な変身術だ。

 

ふくろうに持たせるほど大仰な用事でないとき、ダンブルドアはよくこの手を使う。

この手紙の問題は誰かに捕まえられる可能性があることだが──今のところ一度もないけれど──見られて困る内容でもない。

 

オリヴィアが手紙を覗き見て言った。

 

「またダンブルドア? 好きね、ミネルバ……」

「悪い?」

 

ミネルバは普通に返事をしたつもりだったが、刺々しく聞こえたようだった。

オリヴィアは明らかに気を悪くした様子で言った。

 

「悪くないけど、去年の終わりからちょっと入れ込みすぎじゃない? 私たち、最後にゆっくり二人で過ごしたのいつかしら」

「お二人とも、静かに。組分けの儀式が始まるよ」

 

監督生にそう言われ、二人は黙りこくった。

 

いつものように隣の席に座っていたのに──晩餐会の間、オリヴィアとミネルバは一言も言葉を交わさなかった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「ダンブルドア先生──あっ」

 

ミネルバは、いつものようにダンブルドアの教室を訪れた。

中にはすでに客人がいて、ダンブルドアと何かを話しこんでいるようだった。

 

客人はシルバーの光沢のあるローブの魔法使いで、山高帽を被っていた。背はすらりと高く、姿勢が良くて、貴族のような高貴さをたたえた魔法使いだった。

 

彼らはミネルバに気づくと話を中断し、彼女を迎えた。

ダンブルドアが言った。

 

「ミネルバ、ミスター・ロジエールとの話が終わるまで、少し待っていてくれるかの」

「ミネルバ?」

 

ロジエールと呼ばれた魔法使いが言った。

 

「ダンブルドア、もしかして彼女がミネルバ・ロスのお孫さんですか? あなたが個人的に変身術を教えているという?」

「そうじゃ」

 

ダンブルドアは、そう答えるのに一瞬、躊躇したように見えた。

 

「少し彼女とお話をさせていただいても?」

「ミネルバ。君さえ良ければ」

 

ここでNO(いいえ)と言える人間がいるだろうか?

ミネルバは小さく頷いて、ロジエールと対峙した。若いようにも、老いているようにも見える。どうも特徴のない平坦な外見で、蝋でできた精巧な人形といわれても驚きはするが疑いはしないだろう。

 

「私はイーサン・ロジエールです。『神秘部』の無言者をしております」

 

ロジエールは石のような表情を崩さず言った。

 

「『神秘部』!」

「ええ。ご存知ですか?」

 

レイブンクローの優秀な学生は、ほとんどが魔法省の役人を目指している。特に人気なのが魔法法執行部だ。

彼らに感化されたミネルバは、自分の進路の候補の一つに魔法省を加えていた。

 

以前図書館で借りた『魔法省の歴史』という本には、魔法省の歴史とともに、現在の部署のや組織図も詳細に記載されていた。

ミネルバの記憶が正しければ、組織図の端っこには小さな文字で『神秘部(the Department of Mysteries)』とあった。『神秘部』の情報はそれだけで、ミネルバにはとってまさしく(Mysteries)の部署だった。

 

「ええ。名前だけなら聞いたことがあります。私はミネルバ・マクゴナガルです」

 

ミネルバは『神秘部』のことを聞きたくてうずうずしたが、それより先に聞かなければならないことがあった。

 

「私の祖母をご存知なのですか?」

「ええ。ミネルバ・ロスは私の前任者でした。素晴らしい無言者でしたよ。もちろん君も知っているでしょうが」

「いいえ。初めて聞きました」

「いいえ? なぜ?」

 

ロジエールが初めて表情を変えた。

 

ミネルバは少し迷って、母と祖母が縁を切っていることだけを伝えた。ロジエールは納得がいっていないようだった。

 

 

「あれほど偉大な魔女を祖母に持ちながら、彼女を知らないだなんて」

 

 

──この人は、私よりずっと祖母のことを知っているんだ。

 

それは奇妙な感覚だった。

自分と名前が同じ魔女(ひと)。母が意識してやまない女性(ひと)

 

自分と濃く深いつながりがあるはずなのに、ミネルバは彼女のことを何一つとして知らない。

でも目の前の男は、ミネルバの知らない祖母(ひと)のことをよく知っている。

同じ名前だからだろうか。まるで自分ではない自分が、どこか違う場所に存在しているような気分だった。

 

「祖母の何が偉大だったのですか?」

 

ロジエールはすぐには答えなかった。

 

「我々がなぜ無言者(Unspeakable)と呼ばれているか知っていますか?」

 

ミネルバは首を横にふった。

 

話せない(Unspeakable)からです。

『神秘部』にいる我々は、魔法と宇宙の深淵を垣間見る研究をしています。なんだかロマンチックでしょう? でも知識を得るだけでも危険なのです。だから、外の人間に君の祖母の偉大さを知らしめるのはとても難しい。

ただ、これだけは伝えても良いでしょう。彼女は『神秘部』における()()()()でした」

 

 

時。

 

 

『神秘部』には愛や時間を研究する部署があると聞いたことがある。ミネルバは眉唾だと思っていたが、どうやら本当にあるらしい。

 

ロジエールは言葉を続けた。

 

「ミネルバは私の指導者で、()()()()の前任者であり、『神秘部』の時の研究に多大なる成果を残しました。50年後には……多少、外でも、活用されることがあるかもしれませんね。

あなたがミネルバから何も聞かされていないなら、私がお話できるのはここまでです」

 

ロジエールは無言者の割に饒舌だ、とミネルバは思った。

 

「本当に、ミネルバとは一切の関わりがないのですよね?」

「はい」

「残念だ。彼女は数年前に退職したきり、誰とも連絡をとっていないのです。てっきり孫の君なら居場所を知っていると思ったのですが……」

 

ミネルバどころか、母親に聞いても分からないだろう。

 

 

 

ロジエールはホグワーツでの用事を済ませたようで、もう帰るようだった。

 

教職員室の暖炉の前で煙突飛行粉(フルーパウダー)をつかむと、ロジエールは去り際に、ミネルバにだけ聞こえるようにこう囁いた。

 

「もしミネルバに会う機会があったら伝えてください。『()()()()()()()』って」

 

ミネルバが聞き返す間もなく、ロジエールは「魔法省!」と叫び、行ってしまった。

 

「今、彼は何と言ったのかね?」

 

ダンブルドアが尋ねた。

 

「『一つ、返してくれ』って。何のことでしょう?」

 

ミネルバは答えを求めるようにダンブルドアを見たが、彼はこちらを見ていなかった。

 

 

ミネルバの中に疑問がむくむくと湧き上がる。

──無言者が、ダンブルドアと何の話をしていたのだろう?

 

まさか自分に会いに来たわけではあるまい。きっとダンブルドアに用事があって、ついでにミネルバに声をかけたのだ。

ダンブルドアのことだ、まさか『神秘部』に勧誘されていたとか?

 

 

ダンブルドアがぎらぎらしたローブに身を包んでいるところを想像して、ミネルバは一人で笑みをこぼした。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

その年、ミネルバは一人で過ごすことが多かった。

 

オリヴィアとはなんとなく気まずくなって、互いが互いを意識的に避けていた。

 

ミネルバとオリヴィアの大きな違いは、ともに過ごす友人が別にいるかどうかである。

オリヴィアは同寮のエリザベス・マルキンと元々話す仲だったから、()()()()()のに時間は要さなかった。

だが、ミネルバはオリヴィアを除いて、親しい友人と呼べる人は他に誰もいなかった。

 

 

 

時々、授業中に視線を感じることがある。

 

ミネルバがその視線を辿ると、そこにはいつもオリヴィアがいた。

だがミネルバがオリヴィアを見るとき、オリヴィアは決まってミネルバを見ないのだ。

 

 

「『ガンプの元素変容の法則』が唱えられる以前、魔法の基本法則を説明するには『エディソン理論』が主に用いられていた。ガンプは1679年に『エディソン理論』の致命的な反例を指摘し──」

 

 

ダンブルドアの声が耳の中に響く。

 

──オリヴィアは私のことをどう思っているのだろう?

嫌いになったんだろうか?

でも嫌いなら、私のことを見る?

 

 

「『元素変容の法則』には五つの例外がある。無から食べ物を作り出すこと、生命を作り出すこと──」

 

 

オリヴィアが今仲良くしている子──エリザベス・マルキンはいい子だ。嫌いじゃない。

 

でもちょっと独りよがりで、口を開けばなんでもないことばかり。

オリヴィアだって、エリザベスのことを少しうざったいと言っていたのに。私より彼女の方がいいのだろうか。

 

 

「──ルバ」

 

 

エリザベスって、本とか読むのかな?

オリヴィアとは話が合わないような気がするけれど。何か共通の話題でもあったのだろうか。

 

 

「──ネルバ」

 

 

私とオリヴィアに共通の何かがあったわけじゃないけれど……。

そう、共通の何かがあったわけじゃない。

ただコンパートメントが一緒だっただけ。

 

でも、彼女以上に気が合う人がいるとは思えない。オリヴィアにとって私は、そうじゃなかったのかな……。

 

 

 

「ミネルバ。ガンプが指摘した『エディソン理論』の反例は何か?」

 

 

 

ダンブルドアの目がこちらに向いている。

 

 

「あ──」

「ガンプが指摘した『エディソン理論』の反例は?」

 

ダンブルドアの声が、教室に冷たく響いたように感じた。

 

「魔法で水を作り出せることです」

「その通り。多くの魔法使いは、あまりに当たり前であったがためにそれを見落としていたのじゃ」

 

ミネルバはどっと冷や汗をかいた。

うまく答えられて良かった。話を聞いていないことがばれただろうか。

 

そんなミネルバを見て、ダンブルドアは微笑んだ。

 

「茶でも淹れようかの」

 

 

魔法のポットがとくとくと紅茶を注ぎ始めると、教室に甘い香りが充満する。

 

占い学の授業では、紅茶の葉占いというものをするらしい。オリヴィアとエリザベスが話しているのが聞こえた。

グリフィンドールのほとんどの女子が──年頃の女の子にはありがちな興味だ──占い学を履修したが、ミネルバは同時刻の古代ルーン文字学を選択した。

おかげで相部屋の子たちの話についていけない。

 

でも、占い学にどれほどの正当性がある?

 

他の魔法技術と違い、明確な論理や仕組みを説明できるわけでも、万人に等しく扱える技術でもない。

ダンブルドアも同じ理由で占いには懐疑的だと言っていた。ミネルバは尊敬する師と見解が一致したことが嬉しかった。

 

だが、ミネルバは占い学を知らないから、頭ごなしに否定することもできなかった。

オリヴィアと話せれば、占い学がどんなものか教えてもらえるのに。知った上での批判ならば、ダンブルドアとの議論も弾むだろう。

 

 

オリヴィアに教えてもらえたなら──

 

 

 

「ミス・プルウェットと仲が良かったと思うが、最近は一緒にいるところをあまり見かけんのう」

 

ダンブルドアにそう言われ、どきりとした。

この人はそんなところまで見ているのか。

 

「彼女とは時間が合わないんです。ご存知でしょうが、クィディッチの決勝戦のための練習があって、選択科目も違って……」

 

ミネルバの言葉をダンブルドアが制した。

 

「わしの課題と授業が、君とミス・プルウェットの時間を奪っているならば大変遺憾に思う」

「そんなことはありませんわ」

 

ミネルバは間髪入れず答えたが、ダンブルドアは首を横にふった。

 

「ミネルバ、生きている限り我々は、いついかなるときでも学ぶことができる。しかし学生でいられる時間は有限じゃ。友人とホグワーツで過ごす時間は、特に」

「先生はさぞ、たくさんのご友人に囲まれていたのでしょうね」

 

つい口から出た言葉を、ミネルバはすぐ後悔した。

しかしダンブルドアは気を悪くするどころか、面白がっているようだった。ひげを触り、悪戯っぽい笑みを浮かべて、

 

「わしのホグワーツ時代の友人は数少ない。

友人はエルファイアス・ドージという男くらいで──彼とは今でも連絡を取り合っているが──学術的な模索のために互いの頭を()()()仲間はおったが、友人とは言い難かった。今の方がずっと、素晴らしい友人に恵まれておる」

 

ダンブルドアはウインクした。

──もしかして、私のことも良き友人だと思ってくださっているのだろうか。

 

 

「だからこそ、あの時代に戻れたらと考える夜もある。わしが等身大の学生だった頃、もっと周囲と交流し、友人たちと過ごす時間を作っていれば──あるいは、違う未来もあったのではないかとな」

「先生ほどの方も、後悔なさるのですね」

「ミネルバ、人生は後悔の方が多い。だからこそ我々は過去から学び、それを未来ある若者に託す。奇しくも教師とはそのような職業でな。わしにぴったりじゃ」

 

 

紅茶を飲み終わった頃、ダンブルドアが言った。

 

「ミネルバ。今日は何月何日だったかな?」

「4月13日です」

「よろしい。そろそろ期末試験の準備もしなければならない時期じゃ。今年度の個人授業は次回で最後にしよう」

 

ミネルバは授業の延長を懇願もせず、ただ黙って頷いた。

自分のやるべきことを、彼女ははっきりと理解していたからである。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

暖炉の近くのソファには、ミネルバが苦手とする、明るくて遠慮がない性格の寮生たちが固まって座っている。エリザベス・マルキンもその中にいて、彼女たちのちょっとだけ迷惑な高い声が談話室に響いていた。

 

ミネルバは、オリヴィアが暖炉の近くにいなかったことを安堵し、談話室を見渡して、彼女を見つけた。

オリヴィア・プルウェットは、談話室の喧騒から離れた場所に一人で座り、本を読んでいた。

 

 

「オリヴィア。ちょっといいかしら」

 

ミネルバが話しかけると、オリヴィアはすぐに顔を上げた。

でも目は合わせてくれなくて、彼女の視線はミネルバの胸元あたりを見ていた。

 

「良かったら一緒に散歩しない?」

 

ミネルバは断られるかと思ったが、彼女は間髪入れず答えた。

 

「喜んで!」

 

 

二人は並んで校内を歩いたが、どちらも何も喋らなかった。むしろ喋らない方が、互いにとって楽だった。

 

ミネルバはオリヴィアを連れて高架橋を抜け、やがて黒い湖についた。

春の穏やかな風がオリヴィアの豊かな赤毛を揺らしたので、かすかに石鹸と花の香りがした。この香りを嗅ぐのは久しぶりだった。

 

「あそこに座りましょう」

 

ホグワーツの誰も来ないような、黒い湖と森の間にある木々の隙間に小さなベンチがあった。

そこには立派なアカシアの木があり、黄色い綿毛のような小さな花をたくさん咲かせている。

 

「ミモザだわ。綺麗」

 

オリヴィアが囁くように言った。

4月も半ば。花はすでに半分ほど散って、地面に黄色い絨毯がしかれているようだった。それでもアカシアは枝に豊かに花を咲かせている。

 

「こんな場所があったのね」

「いいでしょ。ホグワーツと湖が一番よく見える場所なの」

 

二人はベンチに座って、しばらく花の香りと風の心地よさに身を委ねた。

アカシアに隠れて、二人の姿は外から見えない。ミネルバはここで誰にも邪魔をされたことがなかった。

 

「どうして私を誘ってくれたの?」

 

オリヴィアが言った。

 

「3年生になって、あまり話せていなかったから」

「そうね。私もそう思ってた」

 

湖から大きな水飛沫が上がった。

大イカがひなたぼっこをするために足を持ち上げているのだが、何本もある足を入れ替えるたびに凄まじい音を立てるのだ。

 

「それに、今日はとてもいい天気だし」

「大イカも外に出たがるくらいだしね。あれ、見える?」

「見えるわよ」

 

あのイカは、いったいどれくらいのサイズなんだろう。

自分の動物もどき(アニメーガス)がイカだったらどうしよう。ちょっと嫌だけど、それもそれで面白いかも。

 

 

「エリザベスのことはいいの?」

 

ミネルバは気になっていたことを尋ねた。するとオリヴィアは顔を暗くする。

 

「最近、距離を置いているの。彼女と合わなくてね。私はこういう静かな場所で本を読んで、ゆったり魔法の話をするのが好き。でもベスはボーイフレンドやゴシップの話がしたいみたい。あの子、図書館でも口を閉じられないのよ」

 

ミネルバはオリヴィアの言い方がおかしくて、ちょっとだけ笑った。

 

「それは──ちょっと合わないかも。彼女、悪い子じゃないんだけどね」

「そう! 悪い子じゃないのよ」

 

ミネルバの目から見たエリザベスは、快活で綺麗な女の子だった。

いつもグリフィンドールの談話室で輪の中心にいる彼女を見て、羨ましさを覚えたことがないといえば嘘になる。

だからオリヴィアが自分より彼女と一緒にいたがるのは自然なことだと思っていた。

 

「でもね、友達って相性だと思うの」

 

オリヴィアが言う。

 

「会話のリズムとか、好みとか、誰と一緒にいる自分が好きかとか。ベスと一緒にいて、ミネルバと過ごす時間がどれほど居心地が良かったのかに気づいたの」

 

オリヴィアはまっすぐミネルバの目を見た。今度こそ互いにそらさなかった。

 

「ミネルバ、今まで嫌な態度をとってごめんなさい。あなたの一番がダンブルドアになってしまったような気がして、寂しかったの」

「私の一番はいつだってあなたよ、オリヴィア!」

 

ミネルバはオリヴィアが膝に乗せていた手に、自分の手を重ねた。

 

「私こそ、あなたの気持ちに気づけなくてごめんなさい。ダンブルドアよりもクィディッチよりも、オリヴィアの方が大切だわ。それだけは知っていてほしい」

「ありがとう」

 

オリヴィアは今にも泣きそうな声で言った。

 

「もしミネルバがいいなら、また一緒に過ごしてもいい? 隣で授業を受けたり、勉強をしたり、こうやって湖の近くで過ごしたり……」

「もちろん! 私、ずっとそうしたかった! やだ、なんで泣くの。仲直りしたじゃない」

 

オリヴィアは頬に流れる涙をローブの袖でぬぐった。

つられてミネルバも泣いた。人前で泣くのは初めてだった。

 

 

「ここが木陰で良かったわ」

 

二人とも泣き止んでしばらくして、すっきりした顔でオリヴィアが言った。

 

「もっと早く、二人で話していれば良かったわ! 9月まで時間を巻き戻す魔法とか知らない?」

「そんな都合のいい魔法、あったら困るわ」

 

きっとそんな魔法があっても、納得がいくまでやり直して、やり直して、それでも納得がいかないのだろう。

 

「ダンブルドアが言ってた。人生は後悔の方が多いんだって。だからきっと、ベストな選択はあっても、後悔のない選択なんてものはないんだわ」

 

オリヴィアが言った。

 

()()()()はベストだと思う?」

「きっとね」

 

 

 

 

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