一旦スピカとリギルで分かれたりもするが、トレセン学園から中山競バ場へと向かうのは一緒に向かう。というのも警備上の理由で、同じ場所から目的地に向かうなら一緒に移動して貰った方が大変警護しやすいのである。
特にクリムゾンフィアーとか言うウマ娘はテロ一敗しているので警察の方々も、特殊部隊の方々も割とピリピリしている部分がある。その結果アメリカでは移動する時は交通規制まで敷いていたのだが、流石に日本ではそこまで無法な事はしない。
というか大統領がオーバーアクションなのだ。赤毛に脳を焼かれ過ぎた男、そろそろ国民から怒られない? 国民も大体そんな感じ? そっかぁ。アメリカやべぇな。
まあ、日本の治安は他国と比べると滅法宜しい上に今はリアルゴッドが降臨しているので事故率驚異の0%タイム突入中、ご都合主義フィーバーが発生しているので警察たちも安心して俺達が乗ることになるバスを警護する事が出来る。
それとはまた別にURAの職員はリアルゴッド降臨タイムで常に胃を痛めてるが。先日ゴルシがぱかライブで女神とコラボしてたのでそろそろ全世界的にゴッドリアリティショックが発生しているだろう。いい加減に帰ってくれ。
そんな訳でスピカに寄ってさっさと西村と合流したら正門前で待機している大型バスへと向かい、乗り込む。日本でのレースは大体これか、それとも自分で車で向かうか―――最近はどっちかというとテロ警戒などでバスに乗るのが増えてるらしい。しょうがないね。
「はい、窓際ー! 窓開けるー! 風入れるー! アロマスティック咥えるー!」
「車内禁止だよー」
「箱に戻すー!」
口に咥えたアロマスティックをケースに戻してふかふかの椅子に座り込む。車とかバスは正直あんまり匂いというか空気が好きじゃない。だから乗る時は毎度窓を開けて乗っている。さっさと到着してくれねぇかなあ、なんて事を考えながら椅子に座り込んでいると、通路側から手を上げながらルドルフがやって来た。
「や、おはようフィアー」
「おー、カイチョー。今日はよろよろ」
「あの時悪戯して私から逃げ出す君が今となっては……だね。今日は存分に相手をさせて貰おう」
最後に一瞬だけシングレ顔を見せてルドルフが奥の方の席に向かって行き、駆け足で乗車したディーが隣の席に座ってくる。今日有マを走る他のウマ娘達も続々とバスに乗り込み、前の方ではトレーナー達が集まって座っている。あっちはあっちで割と和やかというか楽しそうだ。トレーナー達ってアレで結構仲が良いんだよなぁ。
「お、ハーツパイセン」
「よ、後輩。今日は楽しく走ろうな」
「おっすおっす」
もう誰が何を走るのかという史実の知識は当てにならないなぁ、というのをハーツクライがバスに乗っているのを見て思う。元々競バ知識なんて曖昧だから大して役に立った事はないが。それでも、まあ、出たいレースに自由に出て好きに走れる人生ってのは、悪くないもんだ。
「くーちゃん……なんか真面目な事を考えてる?」
「DLsiteで次に購入するR18同人ゲーの事考えてた」
「フィアー? 聞こえてるぞ」
「ういーっす」
後ろからカイチョーの警告が飛んでくる。そう言えばまだ未成年でしたね、俺。
いよいよ中山競バ場に到着。バスから降りると待ち構えていた報道陣がカメラやマイクを向けてくる。それでもフラッシュを焚かないのは流石にやったら永久追放されると理解しているからだろう。
「フィアーさん! コメントをお願いします! 今日のレースはどうお思いでしょうか!?」
「フィアーさん! ブルアカ最終章の感想をお願いします!」
「フィアーさん! ディープさんとはぶっちゃけデキてるんですか!?」
「連れて行け」
手を振ると数人の警備員によって最後の記者だけが闇へと連れて行かれる。闇に葬られた記者の事を一瞬も気に掛ける事もなく、報道陣は必死に少しでもコメントを貰おうと呼びかけてくるが、それを無視してさっさと競バ場内へと入る。
何時も通りスタッフ通路から控室の方へと向かい、西村と共に控室の中へ。勝負服が到着しているのを確認し、控室の椅子に座ると膝の上にディーが座ってくる。そこにすかさずルドルフがやってきてディーを片手で掴んで持ち上げる。
「邪魔したね」
「お達者でー」
「ヴぁー」
片手で持ち上げられるディーが手足をぶらんぶらんと振って抵抗をアピールするも、それを無視してルドルフがリギル用の控室へと連れ去って行く。別にそこまで気にしないんだけどなぁ、とルドルフの生真面目な性根に苦笑を零してから視線を西村へと向ける。
「俺が今日勝ったら、どうする?」
「再びスピカのサブトレーナーとして働くだけだよ―――フィアー、君が僕に対して心配する必要な事は一切ない。安心して思うままに走ってくれ」
「西村の貞操の心配もしなくて良い?」
「……」
俺の発言に西村が腕を組んでしばらく俯き、それから天井を見上げる。十数秒、無言に口を閉ざしてから視線を俺へと戻す。
「最近、割と自分が人気があるのかもしれないと思えてきた」
「クソボケか?」
「待ってほしい! 普通自分が複数の女性から言い寄られているとは思わないと思うんだ! 複数の女性から好意を向けられて維持できるのなんてハーレム系アニメか漫画でしか見た事がない状況だよ? 自分が欠片も当てはまるとは思えないじゃないか」
「それはそう」
パドックまでの時間、大いにある。作戦会議? 数日前から終わっている。準備? 今する必要はない。となるとこの時間はだいぶ暇になる。出来る事と言えばソシャゲか雑談ぐらい。こうやって切り出した話題に即座に乗ってくれる辺り、西村は付き合いが良い。
まあ、モテる理由が解るよね。
「で、本命は? やっぱダーレー? それともゴドルフィン?」
「そこでどうして女神の名前が出てくるの……?」
そのうち温泉に行くんでしょ、俺知ってるよ。一緒に温泉に行ってないのもう理事長ぐらいでしょ。
「逆に聞くけどさ。西村って誰が本命な訳? やっぱ同期のストロング葵?」
「ウマ娘よりもストロングな方はちょっと……」
「お前、襲われても俺は庇わないからな」
ストロング葵に賭けるのは止めておこう、と心の中で静かに呟いておく。だがストロング葵がダメとなるとやはり、相手は限られてくる。
「ハロー?」
「彼女は同僚……」
「りこりん?」
「頼りになる同期だよ」
「ダーレー」
「だからそこで神を選択肢に出さないでよ。というかダーレーアラビアン、フィアー的には射程範囲内なの?」
「どこからどう見ても射程範囲内だろ、アレ」
「えぇ……」
赤毛褐色! 王道的な組み合わせだろ、どう見ても。スタイル良し、顔良し、性格も良し! 非の打ち所のないウマ娘じゃん。まあ、女神という時点でマイナス100ウマポインツッ! って感じなので絶対にナンパしないのだが。
いや、少し待て。腕を組んで首を傾げる。
「考えてみると女神落としてみるのも割と面白いかもしれない」
「雑誌、腹に仕込んでおく奴用意してあるけど使う?」
どうしてそれを持ち歩いてるの、とか使ってるの、とか言いたい言葉は色々とあった。だが結論から言えば隣の部屋からガンガン壁を叩く音がしてきたからとりあえず勝負服に着替えるまでは腹の所にこの雑誌仕込んでおくか、と決めた。多分俺の腹筋の方が硬い。
「ちなみにフィアー的にバイアリータークは」
「なし」
「あ、可愛い系とか綺麗系が好きなんだ」
「カッコいい系は俺で間に合ってるし」
それはそれとして西村の本命は気になる。案外サンデーの姉御辺りだったりして。
そんなレースとは全く関係のない話をしながら、パドックが始まるまで適当に時間を潰した。
クリムゾンフィアー
西村からそのナンパテクを習いたい
西村
そんな事してないと被告は主張しており
ディープインパクト
迫真の壁ドン