「ピスピスー! パカチューブの時間だぜ野郎どもォ!! トゥインクルにもドリームシリーズにも興味津々な全人類元気にやってるかぁ! ゴルシ様だぞ」
「よお、ヒトカスウマカス共。クリムゾンフィアー様だぞ」
ゴルシが撮影用の大型カメラを肩に担いでる。本当であればもっと小さなカメラでも全然問題ないのだが、単純にゴルシの趣味としてこのテレビ局で使う様な大型カメラが使用されている。ゴルシの趣味ならしゃーない。それはともあれ、俺はまず台本通りに話を進める。
「おい、ゴルシよ。お前は今までトレセン学園の自称広報担当としてトレセン学園のアピールをたくさんしてきたじゃねぇかよ」
「おう、アタシとしては割と真面目にアピールしてきたつもりだぜ。勿論、これでもまだ母校への愛を示しきれてるとは言えねぇがよ!」
「お前のその愛校精神がどこから来るかはともかくさ……なーんか忘れてねぇか?」
既にカメラの端、ギリギリの範囲ではアストンマーチャンがマーちゃん人形を手にゆらゆらと見切れてる。パカチューブの撮影を校内でし始める度に出現するんだけど、あの子実はティンダロスだったりしない? 種族違う? そう……。
「おいおいおい、このアタシ様が何を忘れてるって言ってるんだ?」
くっくっく、と笑いながらアロマスティックを口に咥える。
「ゴルシよぉ、確かにお前はトレセン学園のアピールをたくさんしてきた。だけど俺は他にも魅力があると思う。一つの側面じゃなく、人にはもう一つの側面がある。その側面には間違いなく伝えきれねぇ魅力がある筈なんだよ」
「ほう、言うじゃねぇか……」
ゴルシとちらりと本日のゲストへと視線を向ける。ゲストたちはにこりとした。俺達は合わせてさっと視線を外した。マジでやるのこれ? ゴルシ大丈夫? ゴルシも不安? 俺も不安だから一緒だね。うふふふ……いや、マジでやるのかこれ。もう始まっちゃったし無理? そっかぁ。
「ゴルシよぉ……俺はさあ、学園には普段はとっつき辛くでも本当はもっと面白い奴がいると思うんだよ。そういう人達の素顔を見せてこそのパカチューブなんじゃねぇかなぁ……」
「言うじゃねぇかよ……それじゃあ今日のゲストを紹介すっぞお前らぁ!」
ででん、とSEが鳴ってカメラがぐわんとゲストへと向けられる。そこには俺達の見慣れた生徒会長の姿がある。ただし、その顔は8Bitサングラスを装着する事で隠されている。
「ゲストその1ぃ!」
「やあ、皆。私はシンボリルドルフとは全く関係のない―――そう、謎のカイチョーだ。今の私はそれ以上でもそれ以下でもない」
「あ、はい」
俺達にはそうとしか言えなかった。パカチューブでの企画登場に我らがルドルフ会長は滅茶苦茶乗り気だった。私物に8Bitサングラスを用意するぐらいにはノリノリだった。この会長、実は割と面白い人物なのではって思えるレベルで既に絵が面白い。
が、面白いだけだったら俺もゴルシもここまで苦しんでない。
「ゲストその2ぃ!」
「やあ、通りすがりのCBだよ。ミスターシービーじゃないよ。ただのCBだ。そこら辺宜しくね」
そう言っているのは我らがスピカの大先輩、ミスターシービー。ルドルフと同じように8Bitサングラスを装着しているシービーは当然と言わんばかりにパカチューブに出現している。貴女の事今回誘ってませんよね?
そしてカメラの端では8Bitサングラスを装着したアストンマーチャンが見切れてる。
そう、この時点でだいぶやべぇなって気がしてる。ルドルフもシービーもだいぶ楽しそうな表情でカメラの前に立っている。
「いや、ほらね? 普通に出演すると本家が何かと煩くてね」
「ウケる」
「こ、コメントし辛ぇ……!」
ふふふ、と笑うルドルフを前に俺とゴルシはこの企画、本当にこのまま通して良いのか? そう思って助けを求めて視線を巡らせる。だが視線の先では“許可!”の扇子を広げた理事長しかいない。アイツ何時もウマ娘肯定してるな。
「そんじゃあゲストが揃った所で今日の企画を説明するぜ!」
「今日の企画は―――」
「あぁ、ちょっと待ってくれないかな。実はこの手の番組にサプライズは必須だとシリウスに言われてね。私の方でちょっとした人をゲストに呼んでみたんだ」
「その話アタシ聞いてないんだけど」
俺も当然聞いていない。だというのにルドルフという名から解放された謎のサングラスウマ娘、カイチョーは良い空気を吸った勢いで俺達の知らない第3のゲストを手招きする。校舎の陰に隠れていたスーツ姿のウマ娘がカメラの前に立ってくる。
ルドルフと同じ8Bitサングラスをかけた、鹿毛のウマ娘。
「シンザ―――こほん、謎の元カイチョーだ」
「おい、ちょっとカメラ止めろ」
理事長が“困惑ッ!”とか掲げてるじゃん。おかしいでしょ。既にドリーム卒業してる人じゃん。レジェンドの中のレジェンドじゃん。元カイチョーとか言っている場合じゃないだろこれ。なのにレジェンド3人衆は楽しそうにお揃いのサングラスをかけて並んでいる。
その姿を見て俺とゴルシは視線を合わせて頷いた。
じゃあ、はい、皆でタイミングを合わせて―――……。
「カイチョーチャレンジっ!」
ぴょんっ。
そして俺達は考える事を止めた。
「カイチョぉぉ~チャレンジっ! 俺達はもっとカイチョーの魅力を引き出せるはず……その理念を元に作られたコーナー。そう、この人はシンボリルドルフとは全く関係ないけど。うん、本家の方々が煩そうなので謎のカイチョー名義でお願いします」
「天下布武……あらゆる難題を踏破し私があらゆる分野における頂点である事を証明しよう」
「急に頭の悪い事言いだしたなこの人。所でCBパイセンは?」
「シービーなら先ほど蝶々を見つけて散歩に出かけて行ったぞ」
「あ、そうですか? ありがとうございますシン……元カイチョー」
「気にするな……OGとして生徒達の動向を把握するのは当然の事だ」
「すげえ……アタシでも突っ込み切れねぇ……!」
もうこれ放送事故しか起こしてないぞぉ。このまま企画を押し通しちゃうのぉ? 通しちゃうかぁ……。
「カイチョーチャレンジっ」
俺達は謎の企画ものっぽく全員でぴょんっと跳ねた。
場所はトレセン学園から変わり府中にあるゲームセンターへと移っている。ゲームセンターの前に何時の間にか合流した撮影クルーであるスペシャルウィークがゴルシの代わりにカメラを担いでサムズアップを向けている。真面目な子だけどこういう所を見ると純度100%のスピカなんだなあ、って思う。
「まあ、まだ第1回だからね。まずはカイチョー達が若者の娯楽についてこられるかどうかを見てみたくはないかな?」
「お、それじゃあ最初のカイチョーチャレンジはもう決まったようなもんじゃねぇか」
せーのっ、ででん。
俺達は同時にクレーンゲームを示した。そう、記念すべき第1回カイチョーチャレンジはクレーンゲームへの挑戦である。ゲームセンターにはあまりというかほぼ来ないカイチョー達からすればそれなりに珍しい光景だろう、先ほどから色んなゲーム筐体を眺めている。
「まあ、俺達ウマ娘と言やぁ、クレーンゲームだよな。一般発売されてねぇぱかプチだってURAと提携してるゲームセンターに置いてあるぜ」
「ゴルシよ、俺気になったんだけどなんで普通にグッズストアでぱかプチを販売してないんだ?」
「いや、販売しているとも。ただし限定やレアなバリエーションが景品という形になっている」
「転売対策だな。URAストアに置いている形だと転売屋があの手この手で購入しようとするからな。逆に景品オンリーにすると一気に転売数が減るんだ」
「関係者からの貴重な話が聞けちまったな……」
得意げに8Bitサングラスを輝かせながらカイチョーと元カイチョーが事情を語る。テレビのワイドショーでも見る事の出来ない光景をこのクッソくだらないチャンネルが独占しているのは罪に当たらないだろうか? まあ、カイチョー達が楽しそうなのでいっかぁ。
「URAは自分のぱかプチは作った時に送ってくれるんだが、他の娘のは送ってくれないからな……」
「確か今年度のぱかプチ第一候補はクリムゾンフィアー君だったね? G1を制覇すれば間違いなく生産されるようになるから」
「うっす」
うっす。やっぱりゲスト間違えてない? スぺはサムズアップでしか答えてくれない。
いい加減企画へと軌道を戻す為にもクレーンゲームの筐体に近づき、その中身を確認する。見慣れたぱかプチが積み重なっている中に、第二勝負服に身を包んだテイオーのぱかプチが埋もれている。目敏くそれを発見したカイチョーがほう、と呟く。
「私の前に出てくるかテイオー」
「やるのかカイチョー」
「無論だとも元カイチョー」
「これだけで面白くなるからずるいよなあ」
ゴルシの言葉に頷く。とりあえず撮影用に用意した予算としての100円コインを投入口の横に重ねておく。丁寧に感謝を告げられてからカイチョーがコインを投入、クレーンゲームを稼働させる。それを俺達が後ろから眺める。
「一意専心……集中すれば何事も成し遂げられるという事を証明しよう」
「ふ、私の後を継いだその実力を見せて貰おうカイチョー」
カイチョーの操作するクレーンはそのままテイオーのぱかプチへと向かいぱかプチの山の中へとツッコミ、見事に何も引っかけることなく浮かび上がる。その姿を見て数秒、カイチョーは腕を組みながら首を傾げる。
「おかしいな……」
「ふ、この程度かカイチョー……私が真の実力というものをみせよう」
カイチョーと代わり、今度は元カイチョーが筐体の前に立つ。コインを投入し、クレーンが動き出す―――しかしテイオーのぱかプチを持ち上げる事無く、山の中で転がすだけで終わった。
その結果を見届けた元カイチョーがカイチョーの横に並んで腕を組み、首を傾げている。
「おかしいな……」
かこん、直ぐ隣の筐体からクレーンの動き出す音がする。其方へと視線を向ければアストンマーチャンがコインを投入し、クレーンを動かしている所だった。そのまま無言でぱかプチの山からシービーのぱかプチを掘り出すと、一発でそれをゲットする。
「マーちゃんでした」
シービー人形を俺に預けると、マーちゃん人形をカメラに映してマーチャンは去って行った。
俺は静かにシービーぱかプチの顔に“お散歩中”の札を張った。
かこん、ばたん、がこん、ごとん、ごろごろ……一瞬で用意した10連コインの消費が終わり、カイチョーと元カイチョーが筐体の前で凍り付く。それを俺達スピカは無言で眺めていると、静かにカイチョーがポケットからカードを取り出した。
「すまないがちょっと下ろしてきてくれないか?」
「はい! 終わり! 今回のカイチョーチャレンジはここまで!!」
「これ以上はURAに怒られそうだからアタシたちはとんずらするぜ! また次回もパカチューブを宜しくな!」
コーナーを締めるように俺とゴルシはぴょんっと跳ねた。
「カイチョーチャレンジっ!」
もう二度とやるかこんなん。
クリムゾンフィアー
定期的にパカチューブに準レギュラーとして顔を出してる。
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謎のカイチョー
次回の企画を楽しみにしてる
謎の元カイチョー
レギュラーの座を狙ってる
謎のCB
その頃CBは築地で海鮮丼を食べていた