転生赤毛バは凱旋門の夢を見る   作:てんぞー

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20話 新年あけましておめでとうございます(煽り

 もっちゃもちゃ。

 

「あ゛ー……落ち着く……」

 

「もう、そんなにものぐさしてると太るわよー」

 

「トレーナーからカロリー計算のあれこれ貰ってるからへーきへーき」

 

 炬燵に半身を突っ込んでみかんを剥いて食べる。新年、というか冬はこれに限る。流石に栗東寮に炬燵を持ち込むわけにもいかないし、この良さを味わえるのは実家にいる間だけだろう。緑茶にみかんを並べて、テレビはお正月特番をかける。

 

 新年1月1日、正月の朝とはこうあるべきなのだ。

 

 URA忘年会で見事に公開処刑を受けてから実家に帰りゆっくりとした時間を過ごさせて貰っている。流石に学生身分なので3年間1度も家に帰らないというのは色々と問題があるし、俺自身割とマミーの存在が恋しい。

 

 そういう訳で新年早々、俺は堕落という概念を極めていた。

 

 寮生活では掃除も洗濯も自分でやらなきゃいけない部分が大きいけど、実家にいれば料理も洗濯も掃除も全部親がやってくれる……当たり前の様でそうじゃないのだ。このありがたみを実家に帰ってくると感じる。

 

「あー、実家サイコー」

 

「全くこの子ったら」

 

 そう言いながら声がどことなく弾んでいる我がマミー。やっぱ俺がいる事が嬉しいんだなぁ。まあ、なんだかんだで実家が一番落ち着くのは事実だ。俺もこれを機に、長期の休みはちょくちょく実家に顔を出すべきなのかもしれない。

 

 でも夏とか合宿で海に行くからなあ。実家に帰れるタイミングって短期の休みか年末年始ぐらいなんだよな。

 

「くーちゃん。折角だし初詣にでも行って来たら?」

 

「うーん」

 

 そういや新年の初詣イベント、体力を回復するかステータス上げるかで割とお得なイベントだったな……。アレ、明らかに三女神のご加護か何かが働いてるし、初詣行くのは割とありかもしれない。バステもなぜか神社で解除できるし。しゃーない、行くかぁ。

 

「そうだ、ついでにお友達でも誘ったら?」

 

「うーん……ディーの奴予定あいてるかなあ」

 

 ちょっくら連絡を入れてみるか……と、スマホで電話をかけてみるが反応はなし。ディスコに連絡を入れても反応はない。普段なら直ぐに反応するんだが……タイミングが悪かったんだろうか?

 

 

クリムゾンフィアー @crimson_fear・今

 

うちのチワワがメッセ無視して既読すら付かんのだが?

 

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 ウマッターにぽちぽちと入力していると、

 

 

秋川やよい @Northern_Taste・今

 

@crimson_fear

ディープインパクトであれば恐らく本家の方に拘束されている

悪い意味ではなく

単純に自由が少なく、トレーニング漬けの可能性が高いッ!

 

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 なんか理事長からリプが来たけどそっか、理事長はそこら辺の事情が解るか。

 

 

クリムゾンフィアー @crimson_fear・今

 

@northern_taste

うちの子と初詣したいんですけど……

 

459件のリツイート653件のいいね

 

 

秋川やよい @Northern_Taste・今

 

@crimson_fear

本家の者達は凝り固まった価値観を持つ

立場上あまり悪い事は云いたくはないが

青春やそういう類に対するいい印象を持たない

 

1114件のリツイート1273件のいいね

 

 

クリムゾンフィアー @crimson_fear・今

 

@northern_taste

襲撃、いっすか

 

1812件のリツイート2047件のいいね

 

 

 DMでノーザン本家の地図が送られてきた。これ、理事長からゴーサインが出てるって事なんだよね? そうだよね? 良いって事だよな……?

 

「マミー、新学期まで友達をウチで囲いたいんだけど」

 

「ちゃんと面倒見るのよー? 途中で飽きたとかは駄目よ?」

 

「最後まで面倒見るから大丈夫大丈夫」

 

 

 

 

「いえーい、ピスピス! URA会長孫殺害事件から久しぶりー! 俺だよ、俺俺、俺! 新年から動画1発目はゴルシじゃねぇ! この俺だ! クリムゾンフィアーだ、今日はちょっとうちのディープインパクトが実家に拘束されてるらしいから拉致しに行くぞ」

 

 ウマッターのライブ機能を使って配信を開始すると早速大量の視聴者が流れ込んでくる。服の胸ポケットにスマホを捻じ込んでディープインパクトの実家、ノーザン本家の門前に立つ。当然ノーアポ、門が開く訳はない。ベルを押した所で門前払い。

 

「しゃーねぇ、潜入するかぁ」

 

それでいいのかぁ? いっかぁ

当然のように潜入行動に入るウマ娘

これがジュニア代表バの姿か?

ああー! お前お前お前お前! アタシのチャンネルを乗っ取ってやがる……!

 

 胸ポケットに入れたスマホをちらりと確認すると、ウマッターに俺に対する大量のコメントが流れ出す。こういうのを眺めてるだけでも割と楽しいんだが、今はそういう時ではない。知り合いにバイクでここまで運んでもらったとはいえ、それなりに時間はかかっている。さっさと侵入して終わらせてしまおう。

 

 ウマ娘の身体能力を以ってすれば塀を越える事なんて難しくもない。軽く壁を蹴るように脚を引っかけて上に飛び、塀の上に着地したらそのまま敷地内に不法侵入する。よっと、と軽く声を零しながら乗り込めばウマッターのライブが良い感じに燃えだす。

 

「やっちまったなぁ!」

 

 げらげら笑いながら軽くディープインパクトの気配を探る……ふむふむ、それなりに多くウマ娘の気配を感じられる。だが普段から一緒のチワワの気配は良く解っている。3階ぐらいから彼女の気配がする。敷地の庭から回り込んだ方が見つからずに行けるかもしれない。

 

 そう判断して向かおうとした所、

 

「ぐるるるるぅ……」

 

「おやおやおやおやおや」

 

 敷地内に放たれた番犬が俺のフローラルな匂いを感知してか、一瞬で走り寄ってくる。吠えようとする姿を視界にとらえ、割かし本気で睨んだ瞬間。

 

「くぅん……くぅんくぅーん……」

 

「良し良し、誰が上なのか良く解ってるな?」

 

 途端に地面に転がって腹を見せる犬たちが完全に服従の姿勢に入る。これで庭を隠れ進む俺を邪魔する生き物はもういない。新たに増えた子分を放置して茂みの中に身を隠しつつ庭を進み……ディープインパクトの居る部屋、その窓の下までやってくる。

 

「部屋の中に気配は1人……ディーだけだ。なら問題はないか」

 

 よっこいしょ、と壁に脚を掛けて一気に壁を蹴って上に向かう。窓の縁を掴んでするすると登りながら3階まで上がれば我らがチワワのいる部屋の中が見れる。窓からぶら下がるように頭をちょこん、と出して中を窺えばチワワが私服姿でベッドの縁に座り俯いて虚無ってる姿が見えた。

 

「これが花の女学生の姿か……? うわあ……部屋の中もやばっ」

 

 装飾品と呼べるようなものは少ない、殺風景な部屋だった。レースに関する本、トレーニング器具、机、勉強道具……娯楽と呼べるようなグッズが一切置かれていない部屋だった。目立つものは大きなベッド一つで、それ以外は部屋らしい特徴の薄い部屋だった。

 

「こんな所にいたらそりゃコミュ障にも育つわ。よっこらせ」

 

 べき、と音を立てて窓を無理矢理開けた。

 

「べき? え? えっ? えっ?? ふ、フィアさん……?」

 

 窓をぶっ壊してしまったが、まあ俺は可愛いので許されるだろう。窓枠に座りながら挨拶をする様に気軽に手を上げる。

 

「俺はラフメイカー! お前に笑顔を届けに来たぜディー」

 

「ら、ラフメイカー……? え、いや、フィアさんじゃ……」

 

「……もしかしてネタが通じない? バンプ知らない? マジで? ジェネレーションギャップを感じるわ」

 

 スマホで自撮りをする。感動的なディー拉致シーンだ。ウマッターの皆は泣きながらこのシーンを鑑賞すべきだ。

 

「まあいいや。ディー、こっちこっち」

 

「え、いや、あの、な、何をしてるんですか?」

 

「ほら、あんまり時間はないからこっちこっち」

 

「あ、はい」

 

 手招きするとディーがこっちにやってくる。こういう疑いもせずに近寄ってくる辺り、やっぱり世間知らずだよなあ、と思いつつディーを抱える。

 

「え?」

 

「じゃ、行くぞ」

 

 窓からディーを抱えたまま飛び降りる。そのままダッシュで庭を横切り、くぅんと鳴いている犬の頭を撫でて塀を飛び越えて脱走する。途端、屋敷の方が騒がしくなってくる。気づかれたらしい。まあ、ウマッターで配信しながら拉致してるから当然か。

 

「ふ、フィアさん、お母さまに、お、怒られちゃう」

 

「いいじゃん怒られるくらい別に。俺だって毎日1回は生徒会に怒られてるぞ」

 

 ウマッター見てなくても解るぞぉ。怒られるなって言ってるだろ?

 

「え、いや、で、でも」

 

「おーし、来たなウマカス共。早く乗れ乗れ」

 

 きぃ、とブレーキの音を鳴らしながら泊まるのは一台のバイクだ。それに乗っているのは知っている顔―――バンダナだ。

 

「おら、詰めろ詰めろ。美少女2人乗せるんだから」

 

「自分で言うかこのウマカス」

 

「え、いや、あの」

 

 バンダナとディーを挟み込むようにバイクに3ケツする。バイクのリアを軽く両手で掴んで体を支えつつ、ノーヘル3ケツでバイクが走り出す。後ろから大声で叫んでくる姿が一瞬だけ目に入る。だがそれすらも置き去りにしてバイクが走る。

 

「はっはっはっは! 見ろよあの間抜け顔!」

 

「くくくく、久しぶりに連絡入れたと思ったらこれだからなお前! ほんと飽きないわ!」

 

「ええええぇぇぇ―――」

 

 ディーの悲鳴をBGMにバイクが走る。やってる事の馬鹿さ加減にバンダナと共に笑っていると、やがてディーも堪えきれないとばかりに笑いだす。

 

「もう、本当にフィアさんったら……ふふ」

 

「ははは、あんな狭苦しい所にいてもいい事なんぞ何もねぇさ! ほら、初詣行こうぜ初詣! ヒトカス、いっちょ神社まで頼むわ!」

 

「任せろ、法定速度ぶっちぎりで飛ばしてやるからよ!」

 

「ふふふふ、ははははは……本当に、もうっ」

 

 笑い声を響かせながら俺達の新年が幕を開ける。

 

「新年あけましておめでとうカス共!!」

 

「おめでとー!」

 

 周りの迷惑なんて考えずに叫びながら爆走する、俺達の青春。

 

 ―――クラシック、激動の1年が……トゥインクルシリーズの本番が、いよいよ始まる。




クリムゾンフィアー
 スピードが20上がった。パワーが20上がった。賢さが20上がった。
 アンストッパブルのヒントを獲得した!

ディープインパクト
 やる気が上がった。パワーが20上がった。賢さが20上がった。
 強攻策のヒントを獲得した!

バンダナ
 免許をはく奪された。
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