転生赤毛バは凱旋門の夢を見る   作:てんぞー

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6話 バイバイゴルシ

 ツインターボフェスを10秒だけ開催して解散してから今度はスピカの部室へと向かう。

 

「大正義リギルと正面からやり合えるチームがあるとすれば間違いなくスピカだろうな」

 

「スピカ」

 

 スピカの部室へと向かう足でチワワに説明する。今日もチワワは無知無知の無知っ! である。世間に対する興味や情報収集という概念が欠如している。恐らくは家で大事にされてきたのだろうというのが良く解る。いや、大事にされ過ぎた結果なのかもしれない。

 

「リギルは最強のチームだ、クラシック三冠解る? アレを獲得している名バが数名所属してる。解るか? 数名もいるんだ。三冠の取得ってのは狂ってやがる。コースの状態、状況、距離、適性、その全てを捻じ伏せて勝利するだけの力がある連中が揃ってるんだ」

 

 だからリギルは何時も掲示板で叩かれてる。

 

 はいはいリギル。またリギルですかぁ?? もうリギルだけでいいんじゃねーの。掲示板でいつも言われてる事だ。東条トレーナーはAAにさえなっている。正直可哀そうだと思ってる。でも、まあ、リギルが強いのは事実なんだよなぁ……。

 

「シンボリルドルフだろ、マルゼンスキーだろ、ナリタブライアン……エアグルーヴもいるからマイル戦線でも強いし。正直全距離で隙が無いんだよな。どの距離でも強い層を揃えてるの厨パか? Wiki見て最強のレートパでもレンタルしてきた? って感じの揃いっぷりなんだよな」

 

「そう、なんだ」

 

「あんまり興味ない?」

 

「う、うん。走れれば、良いから」

 

 どうやらチワワは悲しきランニングモンスターだった。チワワに知名度の概念は通じない。知名度が高くても走れるかどうかには関わらないからだ。俺は再び泣いた。思っていたよりもチワワの闇が深かったからだ。俺はこの悲しきウマ型神話生物を必ずやいっぱしの社会人にしなくてはならない……それが俺のママとしての使命なのだろう!

 

 まあ、それはさておき、リギルが最強チームなのは疑いようがない。

 

 これに対抗出来ているのが現状、

 

「す、スピカというチームなんですよね、い、今行く」

 

「そうそう、チーム・スピカ。自由すぎるやべー奴らのチーム」

 

「やべーやつら」

 

 この世界はアニメもアプリもスピンオフも原案要素もある不思議な世界だ。だからだろうか、カノープスにもスピカにも本来は存在しなかったウマ娘が所属していたりする。今回訪問するスピカには、個人的にリスペクトするウマ娘が所属していたりする。

 

 それはさておき、

 

 トレセン学園には数多くのチームが存在し、大きなチーム程良い場所を貰っている。近年目覚ましい成果を上げているとはいえチーム・スピカは学園の一角に存在するプレハブ小屋がその部室となっている。

 

 つまり校舎を出て学園の敷地内を歩かないと辿り着かないという事になる。

 

 既にアポは入れてあるため、余計な心配をする必要もない。スピカの説明をしながら部室へと向かっていた所―――ソイツは現れた。

 

 圧倒的恵体。恵まれた肉体に長い芦毛のウマ娘。腕を組み立つ姿はまさしく宝塚120億事件を思い出させるストロングスタイル。その姿を見て間違える事等ありえない。ゴールドシップ、その人がいた。

 

「くっくっく……」

 

 腕を組んで立つゴールドシップの笑い声にチワワが怯えて一瞬で俺の背後に隠れる。それに対抗するように俺もゴールドシップの前に腕を組んで立つ。完全に何かをやる気満々のゴールドシップを前に俺は困った。こいつを放置すると何をするか解ったもんじゃない。

 

 故に必要なのは先制攻撃……!

 

「俺は―――」

 

 一瞬だけ迷い、言葉を続ける。

 

「ポケモンSV、バイオレットを予約したぜ……!」

 

「ッ!」

 

 俺の言葉にゴールドシップが息を呑んだ。どうしてだろうか、ゴールドシップは小さく笑みを零して、

 

「アタシはスカーレットを予約したぜ……!」

 

 その言葉に俺達はぐっと手を握り友情を確かめ合った。バージョン違いを身近な人物と確保しておくのはポケモンを遊ぶ上で非常に重要な事なのだ。俺達は既に脳内でバージョン限定のポケモンを交換する事を考えていた。

 

「え? え? え?」

 

 困惑するチワワを他所に、俺達はダッシュでスピカの部室まで向かい、扉を勢い良く開け放つ。その向こう側で待っていたのは2人のヒトと、1人のウマ娘の姿だ。どちらのヒトも見覚えがある。スピカの沖野トレーナーと、その補佐をするサブトレーナーの西村トレーナーだ。

 

 そして部室の奥、壁に背を預けるように座っているウマ娘は、白い帽子をかぶったウマ娘だった。

 

 ミスターシービー、クラシック三冠という偉業を達成したウマ娘だった。

 

「トレーナー! 赤毛の姉御はバイオレットを予約したらしいぜ!」

 

「なんだと、そいつは本当かゴルシ!」

 

「バイオレットは人気だし誰か予約するだろ……で何故か全員スカーレット予約してしまったからな……」

 

 ゴールドシップに続いて俺は部室の中に入り込む。

 

「スカーレットは正直乗り物がダサい。あのコライドンのバイク状態が想像を超えてダサい。俺は単純にずっと見るならミライドンの方がスタイリッシュで良いと思うからバイオレットを選んだ。バージョン違いは交換すれば解決するしな……」

 

「それはそうだけど……やっぱり厳選するなら自分で確保できる環境が欲しくないか? 剣盾の時みたいに連戦でVが上昇して行くみたいなシステムあるだろ。なんだかんだでポケモンはシリーズ毎にここら辺の厳選環境を遊びやすくしてくれてるだろ」

 

 どうだろう、とミスターシービーが呟く。

 

「そもそも対戦環境は大きなお友達向けなんだ、厳選を楽にしてしまうとライト層が流入してしまうんじゃないかな?」

 

「僕はそれはそれで良いと思う。対戦沼にハマるユーザーは是非とも増えるべきだ。ポケモンのメインコンテンツは対戦なんだから、厳選を楽にして対戦をしやすくするべきだと思う」

 

 ミスターシービーの言葉に西村トレーナーが否定を入れる。だが沖野トレーナーが腕を組んで唸る。唸りながら入部届を取り出し、テーブルの上に置く。

 

「だけど、レートに潜ってポケモンを止めるってユーザーは結構多いぞ? ぶっちゃけた話、ライト層が求めているのは爽快感であって沼じゃないんだよ。対戦に潜るのは確かにポケモンのメインコンテンツかもしれない……だけど必ずしも勝てる訳じゃない。そこにストレスを感じる奴は多いだろうよ」

 

 ううむ、と部室内にいる人全員で唸る。チワワは会話に混ざれず宇宙猫状態になっている。

 

 俺は入部届を受け取りながらドン、と部室内のテーブルを叩く。

 

「確かに対戦は沼だし、ユーザー離れの多いコンテンツだ。だけど今作の楽しみはそれだけじゃないだろう!? 明らかに増えた着替えやキャラパーツ、ピクニックに自撮り……今回のSVは新しくモダナイズドされた要素が剣盾以上に多い!」

 

「ああ! 剣盾の時はキバナがSNS中毒になってたけど、バーチャル配信者なんてもんをまさか公式で出してくるなんてな……」

 

「なんだかんだでポケモンは今も昔も最新のトレンドを取り込んで展開してきたんだ。一時期はキャラデザインに不安の声もあったけど、そういう所への修正は動きは素早く流石ゲーフリって感じだったね」

 

「何にせよ、ポケモンSVは既に傑作の予感がしている。配信日はじっくりと遊びこみたいもんだぜ……」

 

 沖野トレーナーの言葉に満足して頷いた俺はじゃ、と片手を上げて別れの挨拶をする。ポケモンを満足するまで語り終えたスピカのメンツも手を振って別れを告げる。充実した時間を過ごす事に成功した俺達は部室を出て行き、次の目的地へと向かって去って行く。

 

「えっ」

 

 チワワが足を止めて振り返る。

 

「えっ?」

 

 チワワがこっちを見て追いついてくる。だけど途中でもう一度足を止め、振り返ってスピカの部室を見る。

 

「え?」

 

「いやあ、充実した時間だったわ……」

 

 呟きながらスマホを取り出して確認する。今のリギルは練習中らしいからターフの方へと向かえば会えるだろう。全力で困惑しているディープインパクトを引き連れながら心の底から思う。

 

 スピカやべぇ……自由にもほどがあるだろ……。




クリムゾンフィアー
 正直スピカ滅茶苦茶良いなって思った。

沖野T
 お前の自由さを受け入れる事が出来るのはスピカだけだぞ、と言うのを一切言語にすることなく表現しきった男。

西村サブT
 偶に「これはトレーニングに活かせるかもしれない!」と叫ぶ癖を持つ狂人。

ミスターCB
 スピカ以外に所属出来るイメージがない。

ゴルシ
 この後タイトルのオチを付ける為にボックスからバタフリーを逃がした。
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