転生赤毛バは凱旋門の夢を見る   作:てんぞー

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51話 炎上チャンスだ! 燃えろッ!!

「んっん―――! ドバイだぁ―――!」

 

 飛行機のタラップを降りて大きく背筋を伸ばしながらわっほいとジャンプをする。スマホの機内モードを切ればFGOの自動更新が始まる―――そう! メリークリスマス! 黄金樹海の開始である! アプデを楽しみにスマホをポケットに戻して空港まで運んでくれるバスを待つ。

 

 その間に他のメンツも降りて来る。

 

「ガモスのs100はやっぱ犯罪だよ。サザンで上が取れねぇ……」

 

「サザンで上を取ろうとしてもワンパン難しいよね」

 

「塩もラッシャも滅ぶべき」

 

「いや、それは対策取れてないのが悪い」

 

 飛行機内でのポケモン大会は大いに盛り上がった。日本からドバイまでのフライトはそれなりに長いものだったし、乗り換える必要もあったがそれでも飽きることなくここまでやってくるのに到着した。

 

 しかし、考えてみるとこの距離を馬を運んでゆくのが彼方での事だ、この長旅を良くもまあ、馬たちは越えて走れるもんだ。俺たちウマ娘は普通に人間と同じ空間で過ごせるしなんならファーストクラスで飛んできたから楽だったが。この長旅の後で走れるのはやっぱ凄いわ。

 

「んー、少し暑さを感じるけど結構過ごしやすいな」

 

「よっと……ドバイは3月までは観光シーズンとして過ごしやすい気候らしいからね。4月からは段々と気温も上がってきて辛くなってくるみたいだけど」

 

「へぇ、レースが終わったらさっさと日本に帰るか」

 

 飛行機から降りてきた西村に返答しつつ、やって来たバスに乗って空港へ。海外遠征に恐らく一番慣れているであろう俺が率先して動けば他の連中も一緒に来る。ドバイの日本とはまた違う空気の味を舌に感じつつも、空港に入る。

 

 何時も通りの入国検査、手荷物の回収、そこから空港のロビーへと向かおうとすれば―――やっぱり、大量の報道陣が待ち構えている。一斉に向けられるカメラとマイク、フラッシュを焚かないのはマナーを弁えた報道陣のみがここに来るのを許されているからだろう。

 

『Crimsonさん! 是非答えてください!』

 

『調子はどうでしょうか!? 幻のダート三冠バと呼ばれた貴女は今、最も注目されている選手の1人です!』

 

『ダンジョンスクワッド面白いですよ! 買い切りソシャゲだから楽しく遊べますよ!!』

 

 1人だけ趣旨違う奴交ざってない? まあ、何時もの事か。そう思いながらホテルへと向かう為の道を塞ぐ連中をどかす為にもスマホを取り出し、FGOを起動する。

 

「オラ! 全国放送でFGO2部7章のネタバレを放送したくないやつは下がれ下がれ! 炎上するぞ!! ネタバレは炎上だぞ!!」

 

『う、うわぁ!』

 

 悲鳴を上げながら報道陣が下がって行く。此方へとカメラを向ける奴にスマホの画面を突きつけると転げ落ちながら下がって行く。威嚇するようにスマホを突きつけながら空港を出ると、ホテルへと向かう為のリムジンが止まっている。

 

 その景色の全てを見て、ハーツクライが呟く。

 

「海外だからちょっと不安だったけど、何時ものノリが通じるなら大丈夫か」

 

 真理に到達したようだな、ハーツよ……。

 

 

 

 

「うわあ……すっごっ」

 

「流石ドバイ、選手用に用意したホテルもやべえな」

 

 今回の遠征費用、出せる所は自分で出す予定だったが、先方―――ゴドルフィンに招待を受けると返答した所、日本チーム纏めての遠征費用をぽんと出してくれたのだ。いやあ、マジで驚いたし金回りがやべえとビビった。ホテルも練習できる場所も全部ゴドルフィン側で提供し、他に何かあるなら何時でも伝えて欲しいとの事だった。

 

 ゴドルフィンは是非とも、米ダ三冠バには出せる全力を以てレースに挑んで欲しいとの事だ。それが今年のレースを、ひいてはこのドバイという地そのものを活性化させるから。恐らく連中には既に投資分の金額を回収する目算が立っているのだろう。

 

 ホテルの前には銃を握ったウマ娘の警備員がにこりと俺達を歓迎する。見上げれば綺麗で新しいホテルの姿が見え、正面にはアホみたいに広いロビーが見える。流石に俺もここまで高そうなホテルには来た事がねえや、とちょっと緊張していると見覚えのある姿がロビーにいるのが見えた。

 

 思わず駆け足になりつつロビーの中に入れば、軽く手を振って近寄ってくる。

 

「Crimson」

 

「ティズナウ! はは! 久しぶり!」

 

「馬鹿が、さっさとアメリカに顔出しに来いよ」

 

「悪い悪い、ずっとリハビリで忙しかったんだよ」

 

 ロビーの中でティズナウと抱き合い、背中を叩いて再会を歓迎する。まさかドバイの地でアメリカ組屈指の苦労人と会えるとは思えなかっただけに、かなり嬉しさがある。あの後アメリカ勢と連絡は取り合っていたが、それでもこうやって会えるのが一番だ。

 

 抱擁を解いて下がると、ティズナウの横にアラブ風のウマ娘がいるのが見えた。俺の視線に気づいたティズナウがあぁ、と声を零す。

 

「紹介するよ、友人のSakheeだ」

 

「初めまして、Crimsonさん。貴女の事はTizから聞いてます。こうやって貴女に会えた事に感謝を」

 

「Sakhee……サキー!? いや、あえて光栄っすわ」

 

 両手でサキーと握手する。サキーは凱旋門勝利バだ、アラブの方に縁のあるウマ娘で―――えーと、細かいパーソナルは忘れた。だがティズナウとはBCクラシックで競い合ったライバルだったという話は聞いている。うわ、仲が良いんだなこの2人。

 

「まさかドバイで会えるなんて思いもしなかったよ」

 

 俺の言葉にティズナウがにやり、と笑みを浮かべる。

 

「実はAlexの帯同と教導でこっちに来てるんだよ。アイツはやる気だぜ。お前とBCで競えなかった分、こっちで決着付けるつもりだ。サキーと一緒に仕込んでる最中だからな―――日和った走りをすれば負けるぞ」

 

 ティズナウの言葉にサキーが頷いた。

 

「ドバイWC、三冠の名に恥じぬ走りを期待しています」

 

 ぽんぽん、と肩を叩いたティズナウが去って行く。サキーもぺこりと一礼し去って行く。手を広げて肩を竦めながら去って行く二人の背中を眺め、溜息を吐く。追いついてきた日本組が首をかしげている。

 

「……なんて言ってたんだ?」

 

「“刺客を用意したから全力で抗ってね♡”だってよ」

 

 たぶんBCを走らなかった事、走れなかった事を根に持ってるのか……或いは単純に根性を確かめに来たのか、それとも……という所か。どちらにせよティズナウとサキーに鍛えられた……或いは因子継承したAfleet Alexがここ、ドバイに来ているという事か。

 

 良く気配を探ってみれば割とヤバめの気配をホテル内部にも感じるし……今年のドバイ、実は割と魔境になっているのではないだろうか?

 

「ま、相手が何であろうと全力で走るだけか」

 

 ぱん、と背中を叩いてチェックインの為にカウンターへと向かうチームメイトに心強さを感じる。しかし凱旋門賞バとBC2連覇バの薫陶を受けたウマ娘ってちょっと豪華すぎやしませんかねぇ……?

 

「人の事を言えた義理は君にはないと思うよ」

 

「そりゃそうだ」

 

 やってきた西村の言葉に頷いて笑う。落ち着いた雰囲気のロビーに、報道陣の姿はなく、見えるのはウマ娘やそれに類する関係者のみ……相当の金をかけてここら辺の準備をしているらしい、金のある事で実に羨ましい話だ。

 

「復帰戦のライバルはAlexが最有力か」

 

 もはやこうなっては史実なんてガイドライン程度にもなりゃあしないだろう。切り札を切るか、残すか……或いは切らざるを得ないか。勝ちを狙うか、復帰する事だけを考えるか。

 

 このドバイの地で今後の俺の進退が決まる様な気がする。

 

 そんな予感を胸に―――スマホを取り出してFGOを遊ぶ。

 

 何よりもまずは、ウマッターを見れるようになるために2部7章をクリアしなくては……!




クリムゾンフィアー
 負けるつもりで走るつもりはない

ティズナウ
 無事な姿を見れて一安心

サキー
 ティズナウとはプライベートな友人

アフリートアレックス
 BCで出来なかった事をやろうぜ
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