転生赤毛バは凱旋門の夢を見る   作:てんぞー

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62話 発案者は赤毛、乗ったのはCB、実行者は全員

「ホラーハウスゥ―――!! 超絶地獄最悪のホラーハウスやってるよぉ―――!!」

 

 結局、領域の悪用は危険すぎるという理由でレジェンドレース開催は阻止させて貰った。ドリーム組が滅茶苦茶寂しそうな表情していたが、当然の事だ。そんな訳で俺達スピカの聖蹄祭は後数人助っ人に呼んでホラーハウスを開催する事にした。

 

 折角だしバニースーツで接客しようとしたら怒られたので普通に制服で接客だが、今日という日を無事に迎えられた事を割と真面目に神に感謝している。今日までのレジェンド組の攻勢はそりゃあもう文字では語り切れない程のプレッシャーばかりだった。まあ、その攻勢も一旦終わりだ。

 

 春の聖蹄祭が終われば桜花賞に皐月賞、それからダービーにオークスから夏の前に宝塚記念がある。春の天皇賞にはディーが出るし、イベント目白押しでとてもだが暴れまわるだけの余裕はない。宝塚が終わればもう7月だ、俺もKGⅥ&QEステークスが待っている。

 

 一連のレースの流れを考えると、俺が遊んでふざけていられるのもここら辺が最後だろう。

 

 7月、KGⅥ&QEステークス。

 

 10月、凱旋門賞。

 

 11月、BCクラシック。

 

 7月までに渡欧の準備を整えて洋芝に慣れ、凱旋門が終わったらアメリカに渡って土に適応したらそのまま最後のグランドスラムを完了させるという地獄のハードスケジュールだ。特に10月から11月に余裕はなく、全てを無敗で終えたら12月でラストランの有マ記念だ。

 

「―――ま、湿っぽい事を考える事は止めにしようか」

 

 肩に担いだ看板を横に突き刺すように立てる。ばばん、と口で音を出しながら客を呼び込む。聖蹄祭、近年の事情を顧みて時間別に入場制限がかかっているとはいえ、やはり入場客は多い。周囲を見渡せば腐るほど人が存在している。

 

 それでもここ、スピカの部室前まで人が中々集まらないのは単純にスピカの部室そのものが割と端の方にあるからだろう。実績がやばくなってきたから新しい所を貰えば良いのになー。

 

「お、く、クリムゾンフィアーさんだ!」

 

「あ! ファンです! 何時も走りを応援してます!」

 

「おーおー、応援ありがとよ。どう? 一周回って行かない? 今のシフトなら俺以外の皆が入ってるぜ」

 

 寄って来た幸運なファンに看板とスピカの部室を指差せば、ファンが顔を見合わせて部室を見る。無論、そう大きなプレハブ小屋ではない。ホラーハウスと言われてもそうしっくりくるものではないだろう。

 

「なあに、この日の為にこの世の地獄の様なホラーハウスを用意した。何なら俺がガイドとして案内してもいいぐらいだ。どうだ、1周楽しんで行かないか?」

 

 眼鏡とぽっちゃりの2人組は視線を合わせると頷いた。

 

「そ、それじゃあ……お願いします」

 

「お二人さんご案内ー!」

 

 コールにプレハブ小屋が少し揺れた。どうやら中の連中も調子が良いらしい。看板を地面に突き刺したら扉を開ける。中からぶわ……と冷気が外へと溢れだし、眼鏡が寒気に自分の体を軽く抱いた。

 

「お、おぉ……なんか、涼しいですね」

 

「意外と……本格的?」

 

 俺は2人の言葉にサムズアップを向けて、中に入る事を促す。俺の姿を見て視線を合わせた二人は覚悟を決めると頷き、プレハブ小屋の中へと入り込む。

 

 そこに広がっているのは闇だ。辺り一面の闇―――そして広い空間だ。まるで無限に広がるようにさえ見える闇の中、直ぐ横の台からランタンを手に取り、それに光を付けて掲げる。

 

「あ、なるべく俺から離れないでね。離れすぎて迷ったら戻って来れないかもしれないから」

 

「ははは、そういう設定なんですね」

 

「……」

 

「え、何ですかその沈黙」

 

 ランタンをゆらゆらと揺らしながら闇の中へと進む姿を2人が追いかけて来る。それを意識してゆっくりと歩きながら、物語を語るように声色を整える。

 

「さてさて、ウマ娘は神々に見守られた幸せな種って話を知っているかいお二人さん? 我々ウマ娘は三女神とガイドライン神によって見守られているおかげで多くの被害や悲劇が起きなくなっている……知ってるか? 俺達ウマ娘は異世界の馬って呼ばれる生き物の魂を継いでいる、って話を……」

 

「……ごくり」

 

 息を呑む前にゆらゆらとランタンを掲げて正面を照らす。闇の中に人の姿が見えてくる。その先には燃える建造物が。その前に縮こまるようにうずくまる姿はスペシャルウィークの姿だ。絶望した表情で両手を床に付け、

 

「そ、そんな……おかあちゃんの牧場が……厩舎が……」

 

「ほ、ホラーハウス……!」

 

「こう来たかぁ」

 

 絶望に崩れるスぺの姿に2人が戦慄している。うん、下手なホラーよりもホラーしてるでしょ?

 

 ランタンを揺らすと横の方からゴルシが走ってくる。そして崩れ落ちているスぺの姿を見て、拳を握って唸る。

 

「く、糞……またこの運命を変えられなかったッ! 今度こそ、今度こそゴルシ様が未来を変えてみせるからな! ばっきゃろー!!」

 

「おや、ゴルシちゃんがどうやら再び時を遡って絶望の未来を変えようとしているみたいだね? 俺達もゴルシの後を辿って彼女の軌跡を追いかけよう……女神の居ない世界がどんな世界なのか、俺達の目で確かめようじゃないか……」

 

 走り去って闇に消えて行くゴルシの方に光が生まれ、空間に新たな道が生まれる。ランタンを掲げて此方だと2人に示そうとすると、もう既に顔が青くなり始めている様子で質問してくる。

 

「あの……明らかに奥行きが外観と一致しないんですけど……」

 

「あぁ、うん。ちょっとトレセン学園で暇してた怨霊捕まえてほら、呪いに来るとき無限回廊とかやるじゃん? 成仏したくなかったらやれって命令してるから」

 

なるほど(思考放棄)

 

 思考放棄してついてくる2人を誘導するように光へと向かって進む―――ここはスピカ全員で悪ふざけ100%で挑んだ地獄のホラーハウスだ。メインコンセプトは女神の救いがない世界。つまり幸せ補正とでも言うべきものが一切存在しない世界だ。

 

 この世は三女神の加護によって最低限、悲劇で終わらない事がある程度約束されている。骨折しても死なないとか、病気にかかっても死なないとか、史実における悲劇が完全な形では再現されないようになっている。そうじゃなきゃライスシャワー既に死んでいるし。

 

 だから逆に考えよう! こういうバッドエンドIFってすっげぇ怖くない? 下手な肝試しよりも肝が冷えない? じゃあやるかぁ! のノリで俺達スピカはこの世の地獄を作ることに決定した。ファン感謝祭で絶対やる事じゃないんだよな、これ。

 

 という訳で哀れなヒューマン2人、地獄巡りにご案内。

 

 スペシャルウィーク故郷炎上から始まるこのホラーハウス、続く先も地獄で次に待っているのはシービーだ。ここでは三冠を取れず負けてしまい、走る事に楽しさを覚えなくなったシービーが虚無顔で突っ立っているのが見れる。

 

 その次はテイオー。奇跡の復活を成し遂げる筈だったが……上手く行くこともなく、マックイーンとの約束を果たす事無く負けてそのまま引退してしまうテイオーが。そしてそれに合わせて調子を崩し、屈腱炎を発症し引退に追い込まれるマックイーン、

 

 ライバルに出会う事がなかったウオダス。

 

 そして何度巡っても結末を変えられないゴルシ。段々とゴルシが調子を落として行き、最後には足を止めてしまう……そんなホラーハウス。

 

 全てを巡り終わった所で憤死しそうな表情の2人組がプレハブ小屋を後にし、その背中姿に手を振っていると横からたづなさんがやって来た。

 

「営業停止です。ただちに別の催しに変えてくださいね?」

 

「やっぱりかあ」

 

 この後死ぬほど怒られたので普通にポケモン大会開催した。

 

 去年同様、死ぬほどぐだぐだした聖蹄祭だった。




クリムゾンフィアー
 朝のシフトの時はベッドで寝たまま目覚めないIFを披露してた

ディープインパクト
 朝一に来て号泣して帰った

アメリカ人のおっさん
 朝一に来て心臓発作を起こして帰国搬送された

秋川やよい
 説教した

スピカ
 秋はどうやらかすかを相談中
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