転生赤毛バは凱旋門の夢を見る   作:てんぞー

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64話 微妙にエネルギッシュで対応に困る時がある

クリムゾンフィアー @crimson_fear・さっき

 

おしろしゅみってしゅごいのおおおお

pic.twitter.com/maid&castle

 

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 思わずこんなものをウマッターに投げてしまうレベルでちょっと驚いてる。いやあ、ウィンザー城って広いですね……広いだけじゃなくて当然のようにメイドとかいるからびっくりしちゃった。お城で住んでるおばあちゃんって凄い。

 

 まあ、セキュリティに関しては英国最強だし、マスコミの手がかからないようにしてあげる、なんて言われるとそれに甘えるしかない。最初は胃を痛めるような表情をしていた西村も、でもお前ゴドルフィンの殿下とも友達になれてたよな? って指摘すると復活した。

 

 競馬―――いや、競バだけども、ウマ娘のチームオーナーで王族だったりするのは外国ではそう珍しい話じゃない。そもそも馬の所有って貴族のステータスだったし。その関係性はこの世界ではちょっとだけ違うが、ウマ娘のチームを保有する事が古からの貴族のステータスである事に違いはない。

 

 そんな訳でメイドさんに世話をされながらイギリス遠征生活が始まる。

 

 

 

 

「おぉ……これが洋芝か」

 

 流石競バ大国イギリスのとても偉いおばあちゃんが住んでいるお城の庭、ウマ娘用のコースが置いてあるのは凄いとしか言いようがない。おばあちゃん自身とてもウマ娘が好きで、気に入った娘はお茶会に誘ったりしているらしい。そんな事実はさておき。

 

 俺は今、人生で初めて洋芝と呼ばれるもんを体験している。

 

 足を上げて、落とす。軽い運動込みで膝を大きく上げて足を降ろして芝を踏む感触を蹄鉄の裏で感じる。トレーニングする時はやっぱり、蹄鉄を付けた前提でやるのが一番感覚に馴染みやすい。なるべくトレーニングする時は本番と同じ環境でやるのが理想だ。

 

 そういう意味では洋芝、それも競バ場と同じ環境で走れるこの庭は願ってもない環境だ。ニーアップで軽く体を温めたらジョギング程度のペースで庭を往復し始める―――いや、庭と呼ぶにはやっぱちょっと広すぎないここ?

 

「フィアー、洋芝の調子はどうだい?」

 

「日本の芝よりもクッション性が高いってのは聞いてたけど、確かにこりゃあ日本と比べたら重いわな」

 

 クッション性が高く、力を良く吸収するのが洋芝……欧州を主に使用されている芝生の種類だ。日本だけ独自環境で使用している芝が違う為、日本のウマ娘が海外に挑戦して初めてぶち当たる壁がこの芝生の違いだ。

 

「んー」

 

 洋芝は一般的に日本で使われている野芝よりもパワーが必要とされている。その理由は明確で、洋芝と野芝では根の太さやクッション性の違いから来ている。洋芝はその性質から速度を出しづらく、日本で走る時よりも力を必要とする。

 

 日本の芝が高速環境だと言われる理由だ……と思う。そこら辺の細かい蘊蓄は西村の担当であって俺の役割ではないから細かい話は忘れた。俺にとって重要なのは、日本で走る芝よりもパワーを必要とするという事だろう。

 

 つまりこれまで以上に脚に力を込めて走らないと速度が出ないという点だ。日本のウマ娘が過去に渡欧してレースに挑んだ時、この芝生の違いから来る適性の違いに苦しめられたそうだ。とはいえ、ふむと声を零して足を止める。

 

「砂程面倒じゃねーわな」

 

「君はなぜか今ではダートのが主流になってしまってるからね。アメリカのダートは土をベースとした高速環境だったけど、ここしばらく慣らしていたドバイは砂によらせた環境だったしね」

 

「日本の砂も走ってみたけど、あっちのがめんどくさく感じたな。こっちは良い感じに走れそう」

 

「君は元々パワーとずば抜けたスタミナで走るウマ娘だからね。洋芝への適応はそんなに苦労しないとは思う。KGⅥ&QEステークス、凱旋門を見越して芝生に慣らすまで時間かけて1か月、そこから更に1か月かけて細かい所を調整しつつ……って感じになるからな」

 

「プランは任せた。そこら辺で西村を疑った事はないしな」

 

 背筋を伸ばして空へと向かって腕を伸ばす。これまでずっと、俺のわがままに付き合ってくれたトレーナーだ、今更その能力を疑う事なんてするものか。お前が作ったプランを信じて走る、それが俺が証明できる最大の信頼だ。

 

「んで、KGⅥ&QEステークス、どんな感じになると思う?」

 

 腕を組んで西村を見ると、西村はそうだね、と声を零した。

 

「ハリケーンラン」

 

「去年の凱旋門賞ウマ娘か」

 

 俺の言葉に頷いた。

 

「既に彼女が出場するって宣言してる。知っている中ではエレクトロキューショニスト、後ハーツクライも出るって既に宣言してるね」

 

「ははーん、ドバイ組が参戦してくるか。そりゃあ何とも楽しみになって来たな」

 

 エレちゃんもハーツも、どっちも強いウマ娘だ。あのドバイからの4か月間でどれだけ成長したのかを確かめる良い機会でもある。なにも変化がないのであれば、そのまま俺がぶっちぎって蹂躙するだけの話だ。悪い笑みを浮かべていると西村がだけど、と声を置く。

 

「警戒すべき相手は他にもいる」

 

「と、言うと?」

 

 西村がタブレットPCを持ち上げ、その中に表示されているニュースを見せてくる。駆け寄ってニュースの中身を確認してみれば、そこには一人のウマ娘が再び復帰してトゥインクルで最後のレースに挑む事が書かれていた。

 

「―――ダラカニ? 数年前の凱旋門優勝バだよな? ドリームに行ったんじゃないのか?」

 

「まだ本格化が終わってなくてトゥインクルでも通用する能力を残したままだから、ドリームからトゥインクルで特例に持ち込んできたみたいだよ。URAとどういう取引をしてきたのかは知らないけどね」

 

「ははは、マジで無茶通すじゃん。まともな手を使ったとは思えないなこれ」

 

 溜息を吐きながらタブレットを戻す。

 

「恐らくダラカニが最後の出走者じゃないよ。僕の予想が正しければ後2人か3人、怪物クラスのウマ娘が参戦してくる筈だ」

 

「イイね、イイね」

 

 ぱん、と音を立てて拳を掌に叩きつける。参戦してくる連中がどいつもこいつも化け物みたいな経歴を持った現代のレジェンドだ。引退していない、まだターフで伝説を残そうとする連中。今、俺はそう言う連中を相手の王者の祭典(チャンピオンズミーティング)を開こうとしている。

 

 限界まで詰め込まれた能力。通さねばならない勝利へのプラン。ただただ勝利へと向かって食らいつく精神性―――誰もが相手を殺す気で、そして自分の未来を壊すつもりで出走する最強最悪のレースだ。

 

 それでも最強という称号がそこにあるから、ウマ娘としては挑まなくてはならない。

 

 本来であれば10人にも出走者が届かないであろうレースは、その枠を更に増やして参戦者を受け入れていた。

 

 ただ、最強の名を手にする為に。

 

 と、そこで西村に渡していた俺のスマホが揺れる。

 

「お、メッセージだよフィアー」

 

「うい、サンキュ」

 

 西村からスマホを受け取り、メッセージを確認する。トレセン学園内で使っている交流用のアプリからのメッセージで、知り合いからKGⅥ&QEステークスに出走するという意思を伝えるものだった。それを受けて俺は笑みを零す。

 

「ロブロイ、出走するってよ」

 

「あの時ドリームにまだ移籍しないって選択したからなあ、あの子は……」

 

 あり得る話ではあった。インターナショナルステークスで勝利しているから海外の芝生にも対応できるという事は証明されている。レースの経験だけを考えれば、あっちの方が俺よりも上だろう。だけどそれに関しては他のウマ娘も同様に言える。

 

 強敵がまた1人、増えた。

 

 その事にただただ喜びを感じ、息を零す。まだ強さの最果てには出会えていない。だが、今年中に出会えそうな予感はしている。ぐっと力を込めて拳を握る。断然次走が楽しみになってくる。強敵に次ぐ強敵、その全てを薙ぎ倒した果てに―――俺だけのエンディングが待っている筈だ。

 

「後で陛下にお茶会に誘われてるんだから、あまりハードなトレーニングは今日は無しだよ」

 

「えぇ、折角精神的にノってるのにぃ」

 

「そう言う時ほど君は良くやらかすからね。流石に学習したよ」

 

「良く解ってらっしゃる」

 

 まあ、そう言われちゃあしょうがない。おばあちゃんとのお茶会はなんだかんだで楽しいし。あのおばあちゃん、競バの知識豊富でお話ししているだけで時間が過ぎ去って行くのだ。過去のレースの話とか、前ここに泊まっていたゲストの話とか。それだけでもだいぶ楽しい。

 

 相変わらず俺のウマッターは炎上してるが、それ以外は平和な良い場所だ。

 

 何時になったら鎮火するんだ? 俺のウマッター。




クリムゾンフィアー
 流石に自重してるけどウマッターは燃え続ける

西村トレーナー
 あれ……お出かけできる……?

可愛らしいおばあちゃん
 たぶん同姓同名でお城に住んでるだけ

良くいる黒服さん
 MI6から来てるらしい
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