転生赤毛バは凱旋門の夢を見る   作:てんぞー

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65話 ばーかばーか! 滅べ妖精国!!

 イギリスの水が合わなかったのかちょっと頭痛を覚えて調子が落ちた。つまりはコンディション調整の時間である。だから西村はおばあちゃんとお出かけする事になった。

 

 今なんて???

 

 まあ、前々から良く見られてた現象なので今更と言えば今更な話でもある。あの男ちょいちょい誰かと出かけては俺に暇をくれてたし。その間に観光やら遊びに出かけて俺が調子を戻すというのはよくある事である。俺がガチ恋系ウマ娘じゃなくて良かったな。

 

 普通に考えたらガチ恋勢のウマ娘の前でこれからデートしてくるから発言って殺意にも等しいと思う。

 

 そんな訳で、良い機会なので観光する事にした。

 

 ドライバー及び護衛は英国から派遣されたMI6のお兄さん、非常に顔の良いイケメンさんで仕事もトップに出来るエリートさんらしい。出掛けるにあたって俺も少しだけ変装をする為に猫耳タイプの帽子でウマ耳を隠し、たづなさん直伝尻尾隠し術でズボンの中に尻尾を巻きつけるように隠す。

 

 赤毛も普段よりはちょっとアップ目に纏める事で印象をずらせば……ハイ、顔の良い赤毛。ついでにサングラでもかけて顔面積を減らしておけば気づかれづらいだろう。まあ、気づく奴は気づくかもしれないが対マスコミ用必殺凍結アタックを解禁すれば良いだけの話だ。

 

 折角海外に来たのに観光もなしとは流石にごめん被る。

 

 そういう訳でロストベルト6章で聖地化? されたかもしれないティンタジェルへと来ていた。コーンウォール州にあるティンタジェルは一部古い街並みを残している観光地だ。MI6のイケメンに車からリードされるように降ろされて目の前に広がるのは石造りのヴィレッジ、つまりは村落の姿だ。

 

「おぉ……昔っぽい風景だ」

 

 スマホを取り出して、ティンタジェルの事を検索しながら街並み……と呼ぶには少々古めかしいつくりの村を歩く。古くからアーサー王伝説の聖地として有名なティンタジェルはイギリスでも人気の観光地の一つとして栄えている。

 

 これはFateシリーズでアーサー王が女体化して型月のドル箱が日本に降臨する前からの話でもある。いや、何やら日本人観光客は増えているらしいが。俺と同じような思考をしている人は他にもいるという事だ。

 

 ただ俺はそこら辺のオタクとは違って情緒が凄い……こう……凄い……凄い!! タイプなので、普通にこの古めかしい村の様子を眺めているだけでも割と楽しい。季節は春から夏に移り変わろうとする短い季節。

 

 花は咲き誇り、葉は青々とした色を見せて育っている。

 

「ティンタジェルの全てがこういう光景じゃない……んだよな?」

 

「えぇ、そうですともミス」

 

 英国紳士風に装うMI6の兄さんに話しかければ、当然のように答えてくれる。

 

「ティンタジェル全体がこういう景色ではなく、観光向けのエリアが主に昔の街並みを継承している感じになりますよ。景観の維持はまあ、それなりに大変ですので」

 

「生活とか不便そうだよなぁ」

 

 けらけらと笑ってスマホでちょい撮影。オールド・ポストオフィスとかの基本的な観光名所を押さえる。Fateスキーとしてはやはり、青王の起源となる場所は一度来ておくべきだと思うし。いや、今なら寧ろキャストリアの聖地だろうか? しかしほんとロクでもなかったな、妖精国。

 

 流石観光地だけあって人の姿はそこそこある。生活している人だけじゃなくて観光に来ている人、そしてその観光客を相手に商売している人でそこそこ賑わっている。とはいえ、密集している感じでも本当に人気という訳でもないレベルだ。

 

 普通の観光地と言える程度の賑わいだ。

 

 まあ、歴史を感じて景色を楽しむというのは情緒と教養を求められる行為だ。俺自身、騒がしい人混みをそこまで好んでいる訳でもないのでこういう静かな場所は割と好みだったりする。ただ生活は不便だろうなあ……と思う所はある。

 

 しばらく村を歩き回って写真を撮り満足したら、ティンタジェル最大の名所へと向かう為に再び車に乗って移動する。撮った写真をウマッターに投げるとマスコミに居場所をかぎつけられるから流石に身内に送るだけで満足しておく。

 

 ……マミーからサムズアップのスタンプが返って来た。やったぜ。

 

 それから車は海に面した道路をしばらく走って次の目的地へと向かう。窓を開ければ気持ちの良い風が入ってくる。閉め切った空間があまり好きじゃないからどうしても車の窓は開けたくなってしまう……警備上、余り開けて欲しくないとは良く言われるのだが。

 

 そうやってやってくる場所は海に面した岩肌が剥き出しのティンタジェル最大の観光名所。

 

「ここがティンタジェル城跡かぁ」

 

「アーサー王生誕の地とも言われているマニアの聖地ですよ」

 

「アレがみたいんだよな、アーサー王の銅像。イイよね、あの銅像。作った人はセンスがあると思う」

 

 ぼろぼろの石造りの道。直ぐ横は海。僅かに残された城壁。観光名所として知られるティンタジェル城跡は既に何百もの観光客を受け入れてきた古い場所だ。果たして、本当にアーサー王が存在したかどうかは定かではないが……今もなお、多くの人々に愛されている事実だけは確かだろう。

 

 ブーツの裏から感じる石造りの道には何度も何度も通って来た人々の想いと感動が刻み込まれている。その感情を味わう様にこの古い城壁を歩いて堪能する。

 

 ここに来る前に買っておいたおやつ用のフィッシュ&チップスをぱくり―――イギリス料理はクソまずいとの話だったが、それは店選びが悪いからだろう。普通に美味い所に行けば美味いというのが俺の感想だった。

 

 ただ油をずっと替えない店があるとか、伝統と称してまずい飯を作る所はあるらしい。

 

 商売する気あるんか?

 

「はー、楽しい」

 

 異国情緒に触れるというか、純粋な観光目的でゆっくりとするという日は良く考えるとこれまであんまりしてこなかった事だ。アメリカにいる間の息抜きはマジで体を休める為だし、ドバイでは休む暇なんてなかった。

 

 普通に観光しているのは今回が初めてなんじゃないか? そう考えると俺も、今までの人生割と余裕なく生きてきたのかもしれないと思える。漸く心に余裕が見えてくるのがシニアが半分が終わる頃とかウケる。

 

「ま、引退したら時間なんて腐る程できるか」

 

 俺に勝てるとすればディーぐらいだろうが、当然ながら負けるつもりもなかった。走りで俺を殺せるのはきっと、アイツだけだ。

 

「―――どうでしょうか、我が主の生誕の地は」

 

「感想求」

 

 聞き覚えのない声に振り返ってみれば、白いドレス姿の白毛のウマ娘と、黒いドレスの黒毛のウマ娘が身を寄せ合っていた。彼女達から感じられる美しさと気配はこの世のものとは思えない。寧ろ……因子呂布さんとかと同じ域にあるものを感じ、正体を即座に看破する。

 

「因子継承は受けないぞ」

 

「三女神の方も既に諦めております、それが貴女の幸福であるならそうせよ、との事です」

 

「心配不要」

 

 丁寧に話しかける白毛に対して黒毛はちょっとだけドヤ顔で省略した言葉を使ってくる。中々面白いコンビだが、場所が場所だ……いったいどのウマ娘なのかはちょっとだけ察せられる。とはいえ、その名前を軽々しく口にするわけでもない。

 

 睨むように組んでいた腕を解いて、はあ、と溜息を吐く。

 

「それじゃあ何の用だよ」

 

「いえ、純粋にご挨拶を」

 

「待たされた。放置された」

 

 黒毛の言葉に片手で頭を抱えた。

 

「なるべく因子とか受け取りたくなかったんだよ」

 

「それは……ズルいから、という判断だからでしょうか?」

 

 白毛の言葉に頷く。

 

「本気で走る以上は自分の力で走りたかった。自分の力でどこまで熱を燃やせるのかを見たかった。俺という存在が一体どこまで走れるのかを知りたかった。そして同じように、全てを燃やして走る様なライバルと対等でありたかった」

 

 だから三女神からの施しは不要。俺は俺だけで十分すぎる程強いし、

 

「施される程哀れじゃない。俺が勝った時に、女神の力を受けていたらそりゃあ女神のおかげってなっちまう。俺はそれが嫌なんだよ」

 

 俺のレースは、純粋に俺自身の力であって欲しいんだ。そうしなければ俺が走った意味がない。三女神の力で距離や適性、能力を改造できるなら……なんか、もう、誰が走っても一緒じゃないか、それ? 俺が走る意味あるのそれ?

 

 まあ、そんな理由がある。それだけの話だ。

 

「成程、強者の言葉ですね」

 

「傲慢。驕り。勝てる者の主張」

 

「俺、才能あるんで」

 

 残念だけど走る才能だけは兼ね備えている赤毛だから、特に継承無しでも困らない。

 

「まあ……一度は受け取っちゃったんだけどね」

 

 不覚だ、と言わんばかりに片手で頭を抱えるが、それは心配に及びませんと言葉が返される。

 

「貴女に根付いた筈の因子は既に燃え尽きています」

 

「……え?」

 

「貴女が最初に与えられた因子、貴女があまりにも酷使するように走り、拒否するのでとっくの昔に燃え尽きています。ケンタッキー以降、貴女はずっと己の才能と力の暴力のみで走ってきましたよ。そして貴女が女神に力を求めない限りは継ぐ事もないでしょう」

 

「女神、推しは静かに見守れる」

 

 そっかぁ、デジたんみたいなスタンスも取れるんだなあの善意の塊の女神。まあ、こうやって直接女神の使者とでも呼べるウマ娘から話を聞けたのは良かった。もう三女神邪神説を唱え続けなくても済む。

 

「―――それで、本題に入りましょうか」

 

「傾聴」

 

 雰囲気を変える白毛のウマ娘を前に、姿勢を少しだけ正して視線を向ける。俺の視線を受け、集中する為の数秒間を作ってからゆっくりと続きの言葉が出てきた。

 

「クリムゾンフィアーさん―――貴女が何故この世界に生まれて来たのかを、知りたくはありませんか?」




クリムゾンフィアー
 執念だけで継承因子焼ききった女

三女神
 でもそういう所が可愛いと思ってる

白毛&黒毛
 Fateで知名度がちょっと上がってほっこりしてる

MI6のお兄さん
 英国を何度か救ってる
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