転生赤毛バは凱旋門の夢を見る   作:てんぞー

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67話 正直現地妻の1人や2人は作っても顔の良さで許されるんじゃないかと思ってる

 日本で宝塚記念が終わればもう夏の7月になる。

 

 世界における最大の娯楽はそう、URA開催のトゥインクルとドリームシリーズだ。公認のブックメーカーは存在しないものの、グッズ関連の売り上げで世界1位に輝いているのだから、この世界におけるウマ娘とそのレースの価値が見えてくる。

 

 故に、イギリスで開催される世界でも有数のグランプリには大きな注目と期待が集まる。最強の戦いを始める為の第一歩、最初のレース。世代最強のウマ娘を決める為の戦いのスタート地点。ここで負けるようであれば未来なんてものは存在しない。

 

 誰もが、全てのレースファンが、クリムゾンフィアーというウマ娘に注目していた。

 

 だから、7月に入ってKGⅥ&QEステークス用の記者会見を開くのは必然だった。

 

 目の前には大量の報道陣、イギリスの中でも最も格式のあるレースだと言われるだけあってドバイの時を超える報道陣が記者会見には集まっている。そしてそれに見合うだけの参加者がここには揃っている。

 

 話題の中心であり世界の中心でもある俺、クリムゾンフィアーに日本からやって来たロブロイとハーツ、ドバイぶりとなるエレクトロキューショニスト、ドリームから限定的な復帰が許可されたダラカニ、前年度凱旋門バのハリケーンラン、そのほかにもイギリスの強豪ウマ娘がその場には揃っていた。

 

 私服姿で、報道陣の前で大胆不敵に、或いは行儀良く言葉もなく座っている。それをフラッシュを焚く事もなく静かに、マナーを守って記者会見の開始を待っている。彼、或いは彼女達は誰もかれもが厳しいチェックを通り抜けてここに参加する事を許されたメディアの人間だ。

 

 KGⅥ&QEステークス、その重みは史実世界よりも遥かに意味がある。その為、メディアの選別には政府からのチェックすら入る程厳しい。だから誰も粗相を起こさないように必死になって行儀良く会見の開始を待っている。

 

 そんな空気の中で、

 

「やあ、ハニー! ドバイぶりだねぇ! 君の事を想わない日なんて1日たりともなかったよ」

 

 ハートマークを飛ばしまくってくるナンパウマ娘が直ぐ横に居た。というか居る。今も椅子を直ぐ横まで引っ張り肩を寄せて腰に手を回してきて密着してくる。そのまま耳をこっちに向けて倒して物凄い密着してくる。一部の記者が凄い笑顔で映像を取ってる。アイツ、鼻血流してない? 百合好き? 良い趣味してるね君。

 

 まあ、俺も感性的にはバイに近いので美女に迫られている図は決して嫌いではないのでエレちゃんにこうやって迫られて嬉しい事は否定しない。ただエレちゃんの目のガチっぷりは偶に見てて怖い。だから君とはライン交換しなかったんだよ。

 

 これは転生者だから断言したい事だ。

 

 イケメンもイケメスも美女も美少女も慣れればイケる。どっちもイケる。どっちも楽しめる方が人生豊かになる。以上、一生共感されない内心。

 

「相変わらず人気ですね、フィアーさん……」

 

「まあ、世界の愛するぐっどるっきんほーすだしね? この顔の良さとプロポーションの良さで落ちない奴は中々いない」

 

「自覚しているのが性質悪いですよね」

 

「ロブロイちゃん辛辣だなぁ」

 

 ロブロイとは最初の出会いが出会いだからか、割と言動に容赦がない。割とというかかなり容赦がない。流石だぜロブロイホームズ、炎上界のナポレオンと呼ばれたこの俺に対してそんな態度に出られる奴は中々いないぞ。

 

 記者たちにはひそひそ程度にしか聞こえない声で喋っていると、URAのスタッフがマイクを手に取って軽く咳ばらいをする―――どうやら記者会見が本格的に始まるらしい。ひそひそ話を止めて、少しだけ真面目にやろうかなあ……とか思ったが、エレちゃんが離れない。マジかこいつ?

 

「記者会見が始まるけど」

 

「それより君といる時間の方が大切さ」

 

 マジかこいつ? 無敵か? 仕方がないので放置する事にした。URAの人が滅茶苦茶渋い顔をしてるが、注意する程の事でもないので顔が渋いままMCを開始する。正気か? 少しは注意する素振りだけでもしろよ。

 

「大丈夫か、お前……?」

 

 見かねたハリケーンランが俺に小さく声を送ってくるので、俺は静かに頷いて言葉を返した。

 

「密着してるけど絶妙にいやらしいラインを踏まないんだよこいつ、凄い手慣れてる」

 

「今はもう、君にだけだよ、ハニー」

 

「そっかぁ」

 

 そっかぁ。俺もハリケーンランも考える事を止めた。お前ほどのウマ娘がそう言うなら……まあ……それで良いんじゃないか?

 

 

 

 

「桐生院トレーナー、またですー」

 

「はいはい、またディープインパクトさんですね? 鎮圧しますね」

 

「よろしくおねがいしまーす」

 

 

 

 

 誰もが密着エレちゃんの事を無視して伝統と格式あるKGⅥ&QEステークスの記者会見が始まる。お茶の間の皆様もまさかこのレースの記者会見で開幕チャラウマ娘によるナンパを目撃する事になるなんて思いもしなかっただろう。一部は既に開始前から察してた。

 

「それではこれよりKGⅥ&QEステークスのコース説明、及び参加ウマ娘の紹介を行います」

 

 出身、勝ち鞍、所属、1人1人それが紹介されて行き、ここに集ったウマ娘達の格が露になる。その中でも輝くのが凱旋門という現在最も評価されているG1で勝利した二人のウマ娘、ハリケーンランとダラカニだ。

 

 特にダラカニに関してはその戦績が異次元クラスで強い。凱旋門に勝利し、そしてそれ以外での勝利も強い。この中で最も格が高いウマ娘は間違いなくドリームに居た筈の彼女だ。だが彼女は現実としてトゥインクルに帰って来た。

 

 MCによる基本的な説明が終わり、質問タイムに入る。そして質問の矛先は当然のようにダラカニへと向けられた。

 

「ダラカニさん、質問宜しいでしょうか?」

 

 記者の言葉に、ダラカニはURAの職員からマイクを受け取り、声を放つ。

 

「質問しなくても良い。どうせ、なぜトゥインクルに戻ってくるような恥知らずを行ったかを聞きたいのだろう?」

 

「え、あ……その、はい」

 

 ダラカニの言葉にやや威圧されるように記者が頷くと、ダラカニは数秒目を瞑るように黙り込み、視線が自分に集中するのを待った。それからゆっくりと目を開き、

 

「無論、一度ドリームに行った癖にどの面をしてトゥインクルへと来たと言いたいのは解る。だが、同時に疑問を覚える」

 

 言葉を区切り、ダラカニが質問する。

 

「何故、応えない? 当然の話だ。私達はアスリートだ。走る為に生まれてきた。走る為に生きている。一生の不名誉? 恥? くだらない、ただただ最強を目指して走って来た現役時代? 落ち着いたドリーム時代? 糞みたいな評価は止めてくれ」

 

 威圧するような声で、言葉が続く。

 

「トゥインクルだとか、ドリームとか関係ない―――最強という言葉は、その線引きを超越した重みがある。あぁ、そうだろう。このレースが終わったら二度とドリームで走らせてくれないかもしれない。だが……」

 

 ダラカニは俺に視線を向ける。

 

「ビッグ・レッドの再来にはそれだけの価値がある。二度とURAに走らせて貰えなくなろうとも、走るだけの意味がある。そう思っただけだ」

 

 そこまで言い切るとマイクを置いた。ダラカニが既にこの後完全に引退するだけの決意を抱いている事態に、ただただ呆然とする記者と興奮する記者の姿で報道陣は割れていた。だがその中から1人、質問の為に手を上げる者がいた。

 

「失礼! クリムゾンフィアーさん、此方月刊イングリッシュホースです。話題の中心人物であるクリムゾンフィアーさんに質問を宜しいでしょうか!」

 

 マイクを受け取り、どうぞ、と応える。

 

「ぶっちゃけエレクトロキューショニストとディープインパクト、どちらが本命なのでしょうか!? あ、こら、待って! まだ私の質問は終わっていないぞ!! 最近目撃される白と黒のウマ娘は何者ですか! クリムゾンフィアーさん! 本命は! 本命は誰ですかぁ―――!! 現地妻ですか!? 現地妻ですかぁ―――!!」

 

 この空気で主題と全く関係のない話に走り始めた記者が警備のウマ娘に両サイドを押さえられ引きずられていった。そんなこんなで流れる妙な空気の中で。

 

「勿論、私だよねハニー」

 

「ノーコメントで」

 

やっぱり、フィアーさん絶対に刺されると思います……

 

「ロブロイちゃん、聞こえてる聞こえてる」

 

 7月、激闘を予感させる珍妙な記者会見が開かれた。

 

 3大グランプリ、その最初となるレースがいよいよ……始まる。




クリムゾンフィアー
 精神的に無敵になってしまったのでそろそろ浮気の三つや四つしてみるか~とか口にして西村に怒られた

ゼンノロブロイ
 名探偵なので絶対に上手く行かないと名推理を披露した

ダラカニ
 再び走る代償は以降URA主催のレースで走れない事


 一応、今月~来月初め辺りの完結を目指してます。残りももう20話ぐらいですかね。それとUA100万を超えました、皆さんのおかげです。ありがとうございます。
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