いばらひめ様の仰せのままに   作:†デストロイヤー井上†

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いばらの少女と女の子と友人

 

「……ねえ、曜花」

 

「どうしたのアヤメ?」

 

「これはどういうことなの?」

 

 怒っている、というよりは困惑した表情をしてアヤメが、耳元に近づいて小さな声で聞いてきた。

 

『今日の放課後にどっか行こう』と声をかけたのが今日のお昼休み。その日の少し時間の経った放課後の裏門、人の出入りが少ない場所に私とアヤメ。

 

「……」

 

 それと私たち以外にもう一人。裏門には彼女がいる。

 

「この前、茶原さんと約束したんだよね。アヤメのことを紹介するって」

 

「あのさ。それ、私に許可とったかしら?」

 

「……どう、だったっけ?」

 

 きゅっと強く握られたアヤメの拳に、殴られる!? と、思った私は助けを求めるために第三者のいる方向に振り向いるけど、彼女はこちらを観察するだけで動きも表情も何もする様子はない。

 

「ほらほら、私のことはいいから。自己紹介してよ二人とも」

 

 どうせなら二人には仲良くしなってほしい、無表情な彼女の方に、私は移動して逃げ出さないように後ろに立って少しだけ押した。

 

 押した私がびっくりするぐらいに病人のように弱々しく前に進む彼女と、ピリッと少しだけ傷む手。

 

「……私は西川。よろしく……えっと……」

 

「茶原」

 

「そう」

 

 ぎこちない、二人の会話を聞いていたら、反対側にいるアヤメが私のことをにらみつけていた。顔を触ると口角が上がっている。

 

「……うんうん、それじゃあ、行こっか」

 

「それで? 今日はどこに行くの?」

 

「着いてからのお楽しみー」

 

――

 

 石のタイルで詰められた太陽に照らされた道。今日は涼しい日だからあまり暑くはないから涼しい道。アヤメ私彼女の三人で並んで歩きながら見るのは広さも暑さもここは充分だった。

 

「この花はコスモスって名前がついているけど、コスモスの名前じゃないの」

 

「そうなんだ! 茶原さん物知りだね」

 

「……昔、よく来たから」

 

「あっ、えっと」

 

 しんみりとした彼女の顔を見ると、どうしても声が出なくなる。

 

「ふーん、じゃあ向かいの花は何?」

 

 心の中でアヤメに感謝していると、軽くアヤメに足をつつかれる。それに軽く私もつっつく。

 

「菊の一種……だと思う。日本のじゃなくて海外の」

 

 さっきの暗い表情と違って楽しそうに話す彼女は年頃の人のようにキラキラと輝いている。

内心、よかったと思っていた。当たり前だけど彼女にも趣味があるみたいだから。

 

「茶原さん。じゃあ、あっちの花って?」

 

「……」

 

「……?」

 

 私が指を指したのは白い花。よく見るとバラだった。

 

「これ棘がないんだ」

 

 立てられた看板に解説がある。真っ白の花の塊。それを支えるツルが地面から空にめがけて伸びて、そのツルには普通のバラにはある棘が見当たらない。

 

「一応、棘のないバラはあるみたいよ。元々棘は外敵とかのストレスから守るためにできたらしいし」

 

「そうなんだ」

 

 答えてくれたのはアヤメだ。隣に居る彼女は深刻そうな顔つきでその花を見ている。心なしか本当に病人のように思えてきた。

 

 そういえば今日は涼しいとはいえ、今は夏だししっかり水分補給はしないと。

 

「私、ちょっと飲み物買いに行ってくるね」

 

「はぁ? 曜花?」

 

――

 

「ちょっと、曜花待ちなさいって」

 

 私の声が曜花に届いたかどうかは分からない。姿が完全に見えなくなって、私はため息を我慢することができなかった。

 

 非常に気まずい。横を見ると今日、出会ったばかりの彼女がいる。確かに同じ学校だ。完全な赤の他人よりかはまだいい。

 だけど、今まで話したことはないし、多分花が趣味だ、ということは分かる。けど、私は別に花に興味がないからそのことも話せるわけではないし。

 

 私も買い物に行こうかなと、ふと思った。そうすればお互いに楽なんじゃないかって。

 

「……」

 

 けど私は動けないでいた。曜花について行けば、となりいる彼女のことを否定することになるから。

 

「えっと茶原……さん?」

 

「……なにか?」

 

 それに、私には彼女に一つ確かめたいことがある。

 

「曜……あの子のことどう思ってるの?」

 

 友人は目の前の人のことを詳しく教えてくれない。会話していてもどこかではぐらかされてしまう。学校の噂には信憑性がない。だから、余計にどんな人間なのかを私は知らないでいた。

 

 もし、もしもだ。曜花が騙されていたら? そんな想像をするとぎゅっと無意識に強く握った手の平には、爪が食い込んでいる。

 

 バラを見てからぼやけていた彼女の顔は、質問をすると次第に輪郭を取り戻すみたいに、はっきりと表情を浮かべ始める。

 

「……わからない」

 

 ちょっと沈黙の後に彼女は弱ったように声だけが聞こえる。

 

「じゃあ、私と一緒だ」

 

「……?」

 

「こらからもあの子のことをよろしくしてもらってもいい? ……あの子はけっこう危ない所があるから」

 

「……知ってる」

 

 私は多分、笑った顔をしたと思う。もしかしたら、できていないかもしれないけど。

 

「それにしても曜花、遅いわね茶原さん」

 

「そうだね……西川さん」

 

 気づいたときには握られて爪が食い込んだ手の平は力が抜けていた。それと一緒に、強ばっていた気持も少しだけほどけた気がする。

 

 

 

 

 

「おーい、飲み物買ってきたよ……あれ、結構いい感じ?」

 

「あんたのせいよ」

 

「なんでっ?」

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