底抜けに明るい自由人 作:ハジケリスト
「はいはい、順番に並んでねー。あ、こっちいっぱいだからワトソンくんくんの方に並んでー」
「え、えーと……ご、ごはんとお味噌汁。それからえーと…」
ただいまお昼時。
俺はワトソンくんとタロさん食堂を開いていた。
目の前には行列が。だいぶ繁盛しててホクホクですわ。
……あ、金は取ってないからそこはご安心を。
「あ、はい、こちらです…」
隣で俺のお手伝いしてくれるワトソンくん。
あたふたしつつも頑張ってる姿は応援したくなるね。頑張れワトソンくん。
「それでは今からお昼を作ります」
「……は、はぁ」
病院の庭へと出てきた俺たち。
周りにはテーブルが並べられ、その上にはガスコンロや包丁、食材やらその他もろもろが置かれている。
「え、えーと、これって全部…」
「実・費ッ!!!」
「……すぅー」
これでも我が懐は温かいのだよ。何故かって?いつか教えてやるさ。
さて、それじゃ作っていこうか。
「俺はおかずとお味噌汁を作ろう。ワトソンくんは米を炊いてくれ」
「……え?」
「んじゃ、よろしく!終わったら声をかけるよーに!」
今日の献立は何にしようか。
……ハンバーグ食いてぇからハンバーグにしよー。
これっくらいの、ひき肉を、ぶっ潰してぶっ潰してよく捏ねて……ってな具合に捏ねていく。
大体食べに来る人達は3桁いかないにしてもかなりの人数。
フッ、腕がなるぜ。
と、そんなことを思いつつワトソンくんの方を向くと炊飯機と米袋を交互に色んな角度から見ていた。
なるほど、確かにあらゆる視点からの観察は大変よろしいことである。さすがワトソンくん。これには脱帽である。
「……あ」
お、こっちに気がついた。
「あー……の、……ご飯てどうやって炊くの?」
「……炊き方をご存じでない?」
「う……はい…」
……なるほどな。それはそれは、
「ごめん「伸びしろですねェ!」……え?」
「オーケー、オーケー。それならそうと言ってくれればいいのに。では只今よりお米炊き講座を始めていく。はいみんなー席ついてー」
「う、うぇ?」
「いつお米炊くの?……今でしょ!」
「あ……はい」
ソレからみっちりとワトソンくんにお米の炊き方を教えた。
なんなら炊きごみご飯やその他もろもろの炊飯器のみで作れる料理もいくつか教えた。
そこから四苦八苦。俺は横でアドバイスしつつワトソンくんの料理を見ていく。そして、
「……あとは、ボタン」
そうして炊飯のボタンを押したワトソンくん。
「フッ、一皮むけたな」
「っ!これで…!」
「あぁこれで待っていればふっくらご飯の出来上がりさ。よくやった。Congratulation…ダッ!!!」
「……っ、うん…!」
うむうむ、いい顔してる。良きかな良きかな。
さて、では俺も作業に取り掛かろう。
……いや、待てよ?ここはワトソンくんに教えながら作った方が良いのでは?そうだよ(便乗)
「では続いてハンバーグを作っていく!準備をしろォ!!!」
「は、はい。……で、でも焦がすかも」
「何を言ってる。それでいい。何事も初めては失敗さ。それを経て人は成功に近づく。ハナから完璧は求めちゃいないさ。悩むよりトライ!前に進んでいこう!なにより……俺が着いてる…!」
「う、うん…!」
気合いの入った目。素晴らしい。これが青春か。
ミンチ肉を前にし腕まくりをするワトソンくん。
そして俺たちの長い戦いは始まった。
「よし!ペチペチだ!ペチペチしろ!」
「……!」
「ひっくり返せ!そこだ!柔道のように軽やかに返すんだ!」
「……!」
「あ、お味噌汁美味い〜」
「……これを私が作ったの…?」
そんなこんなで出来上がった料理の数々。それはそれは長い戦いだった。
さすがに量も多いから途中途中俺も作っていたがそれでもいつもの倍はかかってしまった。
だがまあいつもの倍楽しかったから良しとしよう。
「さ、もうみんな来る頃だ。お盆とお皿と箸の用意を!」
「わ、わかった…!」
そうして、準備すること数分後。
いつものようにタロさん食堂は始まったのである。
「つ、疲れた…」
「よく頑張ったな!差し入れだ!」
「ありが……おしるこ」
「おう!しかもアツアツだ!」
「アツアツなんだ……、熱っ…!」
患者さんたちから美味しかったの声を貰い、みんなが戻って行ったのを確認した俺たちは椅子に座り休んでいた。
残ったハンバーグ定食を口にしながらおしるこを飲む。
んー、熱いな。抹茶ソーダにすればよかったかもしれない。
「……ホームズ?でいいんだっけ?」
目を食べる俺に小さな声でそう聞いてきたワトソンくん。
「おん、どした?」
「なんで、私を誘ったの?」
「……」
なんで?なんでってそりゃ。
「笑ってなかったから?」
「……そっか」
「んー?楽しくなかった?」
「……ううん、楽しかったよ。初めてのこといっぱい出来たし、たくさんの笑顔見れたし……」
そこまで言って彼女は口を止めた。
そこから生まれた静寂。風が吹く音だけが耳に入ってきた。
「……私はね、誰かを幸せにするための曲を作り続けなきゃいけないの」
「……ほう」
なんか語り出した。
まあ聞くだけ聞いてやりますか。
「お父さんは私のせいでああなったの。私の曲がお父さんを追い詰めた。私の曲は誰かを幸せに出来ない物だったせいでお父さんは倒れたの…!だから…!」
「"誰かを"幸せにするための曲を作り"続ける"……ってコト…?!」
「……うん」
なーるほど?
「ふーん、かっこよ。誰かを幸せにする……、いいねぇ。素晴らしい考え方。けど、ごめんね?
俺その考え方好きになれねーや」
主人公、ただのハジケリストだと思った?
こんなんでも前世合わせて精神年齢30は超えてる大人です。
いままで病院で過ごしてきた反動で2度目の生でハジケてるだけでこの人は大人です。……たぶん。