底抜けに明るい自由人 作:ハジケリスト
「…………え?」
俺の言葉に困惑してる様子のワトソン。
そんな彼女に俺は人差し指を立て、チッチッチッと指を振った。
「勘違いはしなさんな。別段、誰かを幸せにしたいという気持ちを否定してるわけじゃない。むしろ俺はそういうのは好きよ。ただ、俺はお前さんの自分のことよりまず他人という自己犠牲精神が好きになれないだけさ」
「……っ」
「いいかい?他人を幸せに。そう言うのは簡単さ。ただ実現するとなるとこれまた難しい。それには覚悟が必要だ。じゃあその覚悟とは?それは"自分も幸せで居続ける"覚悟だ。分かるかね?他人を幸せにしたいならまず自分が幸せでなくちゃいけない。それが前提条件。………自分の幸せすら掴めないくせに他人を幸せにする?はっきり言ってふざけてんのかてめぇ、ってことよ」
「……でも私は、お父さんを追い詰めて──」
ふむ、なるほどなるほど。
他人を不幸にしてしまった自分に幸せになる資格がないと。
そう思ってるかは別としてそれに似たような思いを持ってるわけだ。
なるほどなるほど。
「お前さんとお前さんのトーチャンとの間の関係性は知らないさ。特段知る気もないしね。ただ、トーチャンへの贖罪。トーチャンとの約束。そういうのはあるだろうさ。でも……果たしてそういう"責任感"から生まれる曲にどれほどの価値がある?」
「……」
「曲は音楽。音楽とは読んで字のごとく"音を楽しむ"ものだ。楽しむという本質以上に優先させる責任を原動力とした作品にどれほどの人を魅了できるだろうか?……お前さん自身が心の底から楽しめなくなってるもので他人を幸せになんて、片腹
「……それは」
声が震えてる。
少々キツい言い方だっただろうか。でも気づかせてやらねばいけない。"人生の先輩"として。未来ある若者にはもう少し笑顔でいてもらわねば。
そのためならしっかりと今は"大人として"嫌われ役でもやってやりますよ。
「そんな風にこれからずっと活動続けてみろ。そしたらいずれ限界が来る。自分の好きだったもので自分を苦しめることになる。潰れ、後悔して、そして一寸先は闇へと変わる。その時お前さんは何思うだろうな?」
「……」
「お前さんはそうなった時、ほぼ確実にトーチャンのことを恨むよ」
「……っ!」
「なんでこんな目に。なんでこんなに苦しまなきゃ、どうしてなんで?そうだ父さんがあんなことにならなければ。そういう思考にいずれ至ることになるだろうよ。人は苦しんだとき誰かに責任を転嫁してしまう生き物だからな」
「……そんな!……こと、には……」
「……ならないとは断言できないよね?それは自分で今理解したと思う。お前さんは好きな音楽と、花瓶の花をこまめに取り替えるほど見舞いに来る大好きなトーチャン、両方恨むことになっちまう。そうなったらもうみんなを幸せにするどころの話じゃない。それに今のお前さんを見たトーチャンは恐らくお前さんと同じ気持ちになっちまうだろうさ。自分の残したもので自分の娘が傷ついてる。…ってな感じで」
「……」
呆然としたような表情。
気づいてくれたようで何よりだ。
「……でも、じゃあ、私はどうすれば…!」
「ま、そのままでいんでね?」
「…え?」
「理解してないっぽかったから理解させただけだしね。さっき言ったように誰かを幸せにしたいって気持ちは褒められて然るべき夢だよ。ただ、それがトーチャンのことをきっかけにした責任感からのものか、はたまた自分の意思でやってやると決めたものなのかで変わってくるってこと。やるならやるでまずは自分を大事にしなさい。誰かを幸せにしていいのは自分が幸せになる覚悟のあるやつだけだ。ってね?」
「……っ」
「トーチャンが目が覚めた時に笑ってトーチャンのために作った曲でも聞かせてやんな。それから腹割って話す。家族と言えど言葉を交わさずとも通じ合えるなんてのは迷信だ。ちゃんと自分の気持ち。そして、トーチャンの気持ち。それをちゃんと理解し合う。言葉を交わすのは人間には大切な事さ」
「……うん」
うんうん、多少憑き物が落ちたかな。
柄にもなく真面目に語っちまったぜこんちくしょう。
「まずは胸張って笑えるようにしよう。そういう生き方になれたらもう最強よ」
「でも、私にはそういう生き方が分からないから…」
「おいおい、料理の時に言ったろ?ハナから完璧は求めちゃいないって。少しずつ覚えていけばいい。幸いにもここに誰よりも自由に生きる男がいるわけだ。俺を見習え!」
「……そっ、か……、うん、そうだね」
「人生なんて適当が1番さ。適当にやった方が結果を残せることの方が多い。肩の力抜いてこ」
「うん……ありがとう」
んー、いい笑顔。良かばい、良かばい。
「さて、俺はそろそろお医者さんに足の様子を見せにドロップキックをカマしにいかなきゃいけないからここいらでお暇しますかね」
「うん」
「またね、ワトソンくん」
そう言いながら手を振り病院内へと戻ろうと──
「奏」
「ん?」
「私の名前。
「……」
フッ、いい顔しやがる。
若いねぇ。
「佐藤太楼だ。いつでも来なさいな。そんときは良きも悪きも、辛いも楽しいも色々教えたるよ」
「……うん」
そんな会話を最後に俺はワトソンくん、奏と別れた。
「佐藤さん!またあなたは食堂なんて開いて…!」
さて、食後の運動を頑張らねばな。
さて、入院生活1ヶ月間。
俺は無事に退院した。
その間に我が宿敵
なんなら連絡先も交換した。
深夜にスタ爆することにハマってます。
お医者さん方も俺が退院するということでみんな泣いてた。
やれ、やっと地獄から解放だの。人生で1番疲れただの。なんか色々言ってた。
俺も別れは寂しいから頭が痛いなー入院だなこりゃーとか言ったら殺すぞって言われた。あれ?お医者?
まあ、何はともあれ退院は退院。
さて、この後やることも決まってるわけでそれのための準備をしなきゃ行けないわけだけどただ1つ。気がかりというかなんというか。
まふゆの事だ。
「あいつ何してっかなー」
最期にみたのは3週間ほど前。
まふゆはピタリと俺の前に姿を見せなくなっていた。
次回からまたハジケにハジケさせたい。
……ただ、幼なじみのことでまた近いうちに真面目ハジケリストが見れるかもしれない。
ちなみに奏さん。太楼くんに付き合わされた次の日は筋肉痛で1日動けなかったとか、動けたとか。