メジロ・アイズ・ヴァレンシュタイン   作:れいが

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メジロ・アイズ・ヴァレンシュタイン

 「ほぁああああああああっ!?!?」

 

 背後から迫りくる巨大な影。

 軽はずみな思いで5階層へ降りるんじゃなかった。そう後悔しても、

 殺意の籠もったミノタウロスの怒号と足音は刻一刻と近付いてくる。

 やがて、ベルのすぐ背後でミノタウロスは足踏みをし、ドゴォッと

 大きな音を立てながら地面を粉砕し、ベルを転ばさせた。

 

 「でぇっ!?」

 

 ベルは何とか受け身を取り、怪我はしなかったものの、その場で

 尻餅をついたまま動けなくなる。

 ミノタウロスは口から息を吹き出し、恐怖のあまり目に涙を浮かべて

 震え上がるベルを睨んだ。

 

 「うわわわわわわわ...!?」

 

 カチカチとシバリングにより歯を鳴らして、ベルは思った。

 あぁ、ここで死ぬんだ...と。

 死を目の当たりにした人間はそう簡単に思うものであると言われる。

 ベルは頭を擡げ、角による刺突をしようとしてくるミノタウロスを

 見続けていた。

 これが僕の最期なんだ、と悟ったその時、ふと甘く、温かい香りが

 鼻孔を擽ったのに気付く。

 迷宮では似つかわしくないのは当然であり、ミノタウロスもその香りに

 気付いて鼻を動かしていた。

 

 「参ります...お覚悟!」

 

 気品が溢れつつも、凛々しい声がベルの耳に入って来た時には目の前が

 真っ赤になった。

 何が起きたのかわからない。

 ただ、はっきり目の前が見え始めた頃には、バラバラになった

 ミノタウロスが灰となって消えていっているとわかった。

 呆然とするベルだが、今度は金色の髪を靡かせる影が目に映る。

 

 「大丈夫ですか?ご自分で立てまして?」

 

 そう問いかけてくる少女はベルの手を取りながら安否を気遣う。

 髪の毛と同じ金色の瞳で見つめられ、ベルは眼前に居る美少女の

 呼び掛けに答えられず硬直してしまっていた。

 白を基調としてスカートや手袋などは浅葱色をした服装に、

 頭頂部には2つのウマの様な耳が付いている。

 少女は反応がないベルに不安が募り頭頂部の耳をペタリと倒すと、

 どうすればいいのか考え、顔から上半身が血塗れになっているので

 一先ずは顔だけでも綺麗にしてあげる事にした。

 手は取ったまま、もう片方の手で痛みを与えないよう気を付けながら

 血を拭う。

 浅葱色の手袋が赤黒く染まっていくが気にせず拭い続けていると、

 漸くベルがハッと我に返り少女が顔を拭いてくれている事に気付いて

 恥ずかしさのあまり、顔を赤くしながら慌て始める。

 

 「ああ、あぁあ、あ、あ、あ、あの、あ、あのあの、あの...!?」

 「あっ、よかったですわ。てっきり気絶してしまったのではと思っておりましたので...

 もうすぐ綺麗になりますから、そのままに」

 「は、はひゃ、は、しゃい...」

 

 ベルは言われた通り、先程と同様に動かなくなる。

 大方、顔の血を拭き取れた所で少女は手を離し、ベルに微笑みかけて

 再度安否を気遣う。

 

 「改めてお聞きしますが、お怪我はありませんか?」

 「は、はぃ。だ、だだ、大丈夫です...」

 「では、立つ事は?」

 

 その問いかけに、ベルは立ち上がろうと足腰に力を入れるも立ち上がれ

 ない。

 腰が抜けてしまったのかと、焦るベルは相手に迷惑はかけまいと

 急いで立ち上がろうとする。

 しかし、いくら力を込めても無理だと自分の不甲斐なさに思わずベルは

 泣きそうになった。

 すると、少女が一度ベルの手を離して両方の手袋を外してから、ベルの

 肩に手を添えてもう一度手を取ってきた。

 

 「落ち着いて、ゆっくり深呼吸をなさってください。

  怖かったのでしょうから恥じる事ではありませんわ。

  さぁ、息を吸って...」

 

 ベルは大きく息を吸い、ゆっくりと吐く。

 少女がタイミングを合わせているので、暫くして体の震えが止まり

 足が動けるように感じた。

 

 「では、支えて差し上げますので、立ち上がってください」

 「は、はいっ」

 

 そうしてベルは足腰に力を込め、少女に支えられながら立ち上がれた。 

 それに安堵していると、少女の手を握っている事に気付き、また顔を

 赤くして慌てふためく。

 手を振り解こうにも、そんな事しては失礼だとわかっているので

 手汗を掻かない内にお礼を言おうとする。

 

 「え、えと、あ、あの、その、あぅ、あぅあぅあぅあぅ」

 「...ふふっ。落ち着いて、ゆっくりお伝え下さいませ」

 「ぁぐ...は、はい...あの、た、助けていただいて、あ、ありがとうございましたぁ!」

 

 ベルは深々と頭を下げ、お礼を述べるが少女は首を振って何かを

 否定した。

 

 「お礼を仰言る事ではありませんわ。

 あのミノタウロスを逃したのは私達の不手際。ですから、私達が謝罪しなければなりません。

 本当に申し訳ございませんでした」

 「いっ!?いえいえいえいえいえ!?そんな、謝る事なんて...!?」

 

 ずっと慌てふためいている姿に少女は顔を上げると、少し可笑しそうに

 微笑みを浮かべた。

 その優しく温もりに満ちた微笑みに、ベルは心を奪われる。

 というのも、ひと目見た時点で奪われていたのだろうが。

 少女は手を離さず、ベルに名前を聞いてきた

 

 「べ、ベル・クラネルです!ぼ、冒険者になったばかりで...」

 「やはりそうでしたか。失礼ながら装備が簡素過ぎると見受けましたので...」

  

 少女の観察眼にベルは驚いた。ひと目見ただけで気付いたのだから。

 そして、今度は少女が名乗った。

 

 「私はメジロ・アイズ・ヴァレンシュタインと申します。

  我が生家、メジロ家をご存知なければ是非ともお話をお聞かせしたく思う次第ですわ」

 「は、はぁ...お、お願い、します」

 「よろしいのですか!?では、地上へご一緒に戻りながらお話を...」

 「おい、アイズ!何やってんだ!?」

 

 背後から聞こえてきた叫び声にベルはビクッと体を震わせた。

 あっ、とアイズは何かを思い出してベルの手を引きながら、叫び声が

 聞こえて来た方へ向かおうとする。 

 

 「えっ?あ、あの?」

 「実は遠征の帰り道だったのをお忘れしていましたの。

  貴方を危険な目に合わせてしまった非がこちらにはありますので、無事に貴方を地上まで送り届けて差し上げますわね」

 「そ、そんな!?そこまで迷惑をかける訳には」

 「いいえ。メジロ家のウマ娘として、ロキ・ファミリアの団員として貴方へお詫びをさせてくださいな」

 

 そう言われては断れないベルは大人しく頷くしかなかった。

 その後、ベートに問い詰められるもアイズが庇ってくれたおかけで

 必要以上に怯える事なくリヴェリア達と合流したのだった。

 尚、打ち上げに招待された際には...

 

 

 

 「アイズはどう思うよ?震え上がるだけの情けねえそいつの事をよ」

 

 「そのご質問にはお答えしかねます。

  私達ロキ・ファミリアの失態によって、彼が危険な目に遭ったのは事実の事。

  誰しも最初は恐怖し、勇敢に立ち向かう事など出来ませんわ。

  ですから、彼を誹謗し嘲笑うのであれば...言語道断でしてよ」

 「アイズ、さん...」

 

 「けっ...じゃあ何か?お前はそのガキに好きだの抜かされたら受け入れるってのか!?」

 「んぐふぅっ!?」

 「...」

 

 「...ベート?君、何言ってるかわかってる?」 

 「うるせえ!気持ちだけが空回りしてる軟弱野郎にアイツの隣に立つ資格なんてありはしねぇ。

 他ならないお前がそれを認めねぇ。

 雑魚じゃあメジロ・アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねぇ!」

 

 「...何故、ベートさんが認めないと決めつけるのですか?」

 「あぁ?」

 「...ベルさん」

 「へ?は、はぃ、んむぅ...っ!?」

 

 「「「「「「「「「「「「「「「...!?!?」」」」」」」」」」」」」」」

 

 「っはぁ...私にそんな事を決めつけるベートさんとだけは、御免蒙りますわ。

  選ぶのであれば...いいえ、私が選ぶのはベル・クラネルさんですので、勝手なご想像はお止めくださいね」

 

 「...っ!」

 「おい、ベート!待たないか!」

 「うわぁぁぁぁああああああん!」

 「え!?ちょ、レフィーヤ!?」

 「...何でやぁぁぁぁああああああ!」

 「ロキ!...は、いいか。放っといても戻ってくるじゃろうて」

 「うん」

 「ちょ待って!?ウチだけ止めんのは酷ない!?」

 

 「...ベルさん」

 「ふぁあぁ...?あ、あいず、ひゃん...?」

 「突然のご無礼、申し訳ございません...口付けは、初めてでしたか?」

 「ひゃ、ひゃぃ...」

 「では、責任を取らなければなりませんね。

  ベルさん。...貴方の伴侶になりましょう」

 「...はう...」

 「あ...ふふっ。初心な人です事。

  けれど、そこが愛らしいですわね」




メジロ家で育ったのでモンスターに対してそこまでの厭悪はないアイズお嬢様でした。
アマゾネスよろしく馬人(エクウス)が女性しか居ない存在なので、ウマ娘と区分されてる設定です。
当然ながらレースしてウイニングライブします。
ちなみにメジロアイズのステイタスは

LV 5
基本アビリティ
力:A 549 
耐久:D540 
器用:A 823 
敏速:SSSSSSSSSSS 1000 
魔力:A 899
《発展アビリティ》
狩人:G 耐異常:G 剣士:I 精癒:I
《魔法》
【エレガンス・ライン】
・詠唱式【勝利こそ我が定め。盾の栄誉へ向けて、いざ】
【エンド・オブ・スカイ】
・詠唱式【昇ってみせます!遙か、果てなき未来へ!】
《スキル》
【貴顕の使命を果たすべく】
【スタミナキープ】
【長距離コーナー○】
【栄養補給】
【直線回復◎】
【余裕綽々】
【臨機応変】
【危機回避】
【直線巧者】
【弧線のプロフェッサー】
【スタミナイーター】

続きません。
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