ソードアート・フロンティア~クソゲーマー、神クソゲーに挑まんとす~ 作:melk
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「牛のお化けってことはフィールドボス的な奴か?」
「だろうね。ボス部屋が見つかってないことも関係あるのかもしれない」
「βテストではどうだったんだ?」
「こんなクエストは見つかってなかったと思うな。迷宮内に普通にボス部屋の扉もあったはず」
迷宮区の中はあまり外の明るさに影響を受けないが、申し訳程度に廊下のろうそくに火が付き始めた辺り、完全に夜になったのだろう。こういう探索系クエストでは索敵スキル等があれば便利だったが、今はまだそこに回せるだけのスキルポイントの余裕がなく、取得していない。それはサンラクも同じだろう。
今ここにはサンラクと俺しかいない。どうせ女の子の父親の手がかりを探してる間暇なんだ、モヤモヤしてることはすっきりさせた方がいい。
「なあ、何でこの間のボス戦の時、俺のことを助けたんだ?」
「あ?キリトに頼まれて情報を伝えに行ったら危なそうだったからな」
「そっちじゃなくて、その後みんなを説得する時だよ」
「単純にこれからの攻略に影響が出るからってだけだ。しかも、βテスター云々って話は攻略会議で決着ついてたしな」
「だけど・・・君は俺が立場を利用してLAボーナスを狙いに行ったことに不信感を持ってもおかしくなかったはずだ。なのにどうして・・・」
「お前が何に罪悪感抱いてるか知らないがな、強い装備が手に入るってんならそりゃ取りに行くだろ。やり方がセコイとは思ったけどな!」
全然気にしてないように明るく言って・・・!そこまで気を使ってくれてるのか!
サンラクが、時々この“コート・オブ・ミッドナイト”に強い念の籠った視線を向けているのを知っているんだぞッ!見たところ、まだ高校生くらいの少年に気を使わせてしまっては、教職を目指す大学生としてみっともないにも程がある!
「ありがとう、すまない」
「何が?」
「いや、気にするな。ちょっと待ってくれ。この靴・・・」
「装備だったら、耐久値が減ってポリゴンに変わってるくらいにはボロボロだがそうはなってない。とすれば、クエストアイテムだな」
石畳みの床に落ちている靴を拾ってアイテムウィンドウを確認してみる。 “汚れた靴”か。予想通りクエストアイテムだ。
なるほど、落とし物を拾っていけば父親のところ、上手くいけばボスの居場所まで行けるという感じのクエストか。
「他のアイテムを探していこう。多分それで進行するタイプのクエストだ」
「じゃ、手分けして探すか。俺こっち見てくるわー」
「異議あり。それでもしそのままフィールドボスと戦闘になったらどうする気だい?」
何だろう、この感じ。サンラクに対するイメージが少し崩れるような・・・。
いや、彼はあれほどの判断力、プレイヤースキル、周囲の状況を把握する力がありながらも人を気遣える並外れた人物なはずだ。
確かに突飛な行動は目立つが、きっと場を和ませようとした結果だろう、うん。
「そういえばこの迷宮区の構造、特に3階の造りおかしくないか?何というか、1、2階と比べて左側のスペースが狭い気がしてたんだよ」
「ちょっとマップ見せてもらえるかい?・・・なるほど、確かに。よし、じゃあ左側から探してみようか」
やっぱり彼はすごい。βテストの時と違ってボスの部屋がないという事実だけに囚われていた俺には気づくこともできなかった。
「あったぞ“ボロボロの靴”だって」
「ああ、そしてわずかだが迷宮の廊下に明かりが灯ったことで光の加減が変わってようやくわかった。一本道だと思ってたけど、だまし絵の要領で壁の方に道が隠されてたとはね」
長い一本道、しかもその壁が何の変化もない石造りの壁でずっと続いていたらまず気づかないように、巧妙に別れ道が隠されていた。灯りで分かれているところの先がわずかに照らされていはいるが、このクエストを受けたことにより、落ちている靴が目印となっていなければ見つけられたかは大分怪しい。もしかしたらこのクエストがなければ見つからないようにそもそも道が閉ざされていた可能性すらある。
しばらく歩くと、やはりというべきかそこにはボスの部屋の扉があった。
「フィールドボスかと思ったらフロアボスまで直行かよ・・・。どうする?」
「もちろん、一旦戻って明日にでも攻略会議を開く。が、ボスの姿だけでも確認しておいた方が作戦は立てやすそうだな。ここまでβとは違ったなら、ボスも大幅に違う可能性がある」
「了解、じゃあいつでも逃げれるように扉は開けたまま観察するか」
俺が左、サンラク君が右の扉を開け、扉を押さえたまま、中の様子を窺う。
ボス部屋恒例の仕様として、扉が開くと部屋のろうそくに一斉に火が付き明るくなる。ボスの名前は“ザ・トーラス・オブ・アステリオス”。下半身はガタイの良い人間だが、上半身と頭は牛、俗に言うミノタウロスという生き物だろう。特徴的なのは一層の“イルファング・ザ・コボルドロード”に引けを取らない巨躯と立派な角、体の大きさに負けない重そうな両刃斧。あの斧は盾持ちでもどれだけ防げるか・・・盾持ち軽戦士という俺ではまともに受けきれるのは回復を挟まなければ一回が限度だろう。VITの高いタンク役を交代しながらダメージディーラーが削っていくのがセオリーだろう。
ぱっと見ではβからの変更はなさそうだが、油断はしない。一層の出来事があるから戦ってみないとわからない。
今わかる情報としては十分だろう。早速ウルバスの町に帰って、情報屋を通して攻略会議に参加する人を募ろう。
サンラクは、どうしたんだ?何か考え込んでる様子だ。
「なあ、何か違和感がないか?このクエストの内容と俺たちの状況」
「何が・・・」
違和感についての話に意識が向き、わずかに扉が閉まる瞬間、俺たちの通ってきた通路側からものすごい突風が吹いた。俺たちをボス部屋へと押し込むほどに。
「そういうことかよッ!?」
無情にも扉は閉められた。
ディアベルは一層の時の罪悪感とサンラクに思いもよらぬ形で救われたことと、サンラクのプレイスキルを見たことによる劣等感から、サンラクを過剰にすごい人物というフィルターをかけて見てます。そのメッキ、耐久値大丈夫?
ディアベルは、βの時にはサンラクのようなステータスを目指してましたが、デスゲームだとわかってから、ビビって諸々を削りVITにも上げています。しかし上げすぎると他のところが下がって元のスタイルと変わってやっていけるか不安になり、結局全部同じくらいな感じのステータスに現在はなっています。
中途半端はよくないけど、実際にSAOにいたら自分も多分同じことしてる。尖ったステータスって怖いし!