ソードアート・フロンティア~クソゲーマー、神クソゲーに挑まんとす~ 作:melk
詫び投稿です。
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「敵から離れず攻撃していけ!」
「ああ!」
両手剣が壊れて空いた手でウィンドウを操作し、右手に“アニールブレード+6”を出現させる。ミノタウロスもどきの左足に《スラント》でダメージを・・・あんまり入ってなさそうだな。やっぱり足は固いか。スキル後のわずかな硬直から脱し、踏みつけをいなして姿勢をよろめかせた敵の左膝にディアベルの《スラント》が入る。二人とも初級スキルということもあって、ダメージはあまりないが、転倒させることには成功した。
さっきの突進を受けて俺たちが選んだのは超接近戦。もう一回突進来たらまず間違いなく受けきれず二人ともゲームオーバーだ。結構溜めがあるからこの距離ならモーションに入った瞬間、後ろに回れる。
「オラオラ、もっと強いソードスキル出せる場面だったろ?ビビんな!」
「君も同じスキルだろ!おとなしく、避けタンクやってた方がいいんじゃないか?」
「うるせー、へなちょこ盾使い!今度のLAボーナスは俺がもらうからヘイト稼いどけ!」
よく考えたら、一層ではキリトとLAボーナスの取り合い(ディアベルに取られた)、二層ではディアベルと取り合いって人が変わっても構図が同じじゃねえか!
だが、俺は学ぶ男。前回のようなミスはしない。ちゃんと秘策もある。
体術スキルを習得したことで、変わったことがある。それは、ソードスキルを発動するには少ない隙にも攻撃をねじ込めるようになったことと、スキルを習得してから、スキルを発動していなくても素手による打撃にわずかだがダメージが発生するようになったことだ。
それまでは、素手による攻撃では、蹴りで相手との距離を取ったり、咄嗟にモンスターの腕を掴んで攻撃を止めたりということができたが、ダメージ自体は全くなかったため、あくまで武器で戦えというそういう世界なんだと思っていた。
しかし、それが体術によって変わるのなら、素手も武器になるということだ。つまり、俺の手数はそれまでの2倍、実質二刀流ってな!
「残念、ターゲットは君みたいだな!」
ダメージ量的に俺にヘイトが向きやすいのはわかってる。奴の手や足はともかく、斧での攻撃にはこっちもクリティカルを出さないとパリィはできない。シャンフロでのクリティカルは正しい場所に正しい角度で当てることによって出すことができ、LUCが高いほど判定が緩くなるという仕様だった。
ではSAOはどうか?クリティカルはプレイヤースキルに依存しているが、DEXが基準値以下だと発生率が著しく下がるという仕様らしい。階層を上がるごとに要求値が上がっていくらしいが、その具体的な数値はその都度調整していくしかないらしい。らしいとばっかり言っているが、アルゴからそう聞いただけで、βですら最高の八層まで行った人はごくわずかしかいないため、まだデータ不足だという。その辺りは今後攻略していくうえで法則性も見つかっていくだろう。
重要なのは、二層において俺は最低限のDEXを満たしているのは実証済みで、ミスらなければ必ずクリティカルを出せるということだ。
ミノタウロスの両手斧による《ワールウィンド》に対して、縦切りの《バーチカル》をちょうど垂直に合わせる。俺も仰け反ったが、相手もよろけたならアドバンテージだ。こっちは二人だからな。協力しないと思ったか?馬鹿め、大前提は勝つことなんだよ!
ディアベルの《ホリゾンタル》を足に受けてもひるまないどころか、未だにヘイトも俺に向かってる。だが、一瞬あっちに気を取られたな?その隙に俺は剣と拳で二発は叩き込めるぞ!
隙の少ない《スラント》からの《閃打》、もう一発行けるかと思ったところで、ミノタウロスもどきは大きく後ろに跳んだ。さっきの突進は確かに俺たちを追い詰めたから、それに縋りたくなる気持ちはわかる。だけどな、さっきの不意打ちと違って、一度見たモーションだ。おいそれとやらせるわけないだろ?
「悪いな、動きがトロ過ぎてもう追い付いちまった。ってことで、再開を祝して《バーチカル》!」
バックステップで着地して、体勢を低くして構える頃には余裕で追いつける。しかも、体勢が低いということは、いつもは高くて狙えない頭が狙えるということだ。角の一本くらいは寄越せや!
「どこ見てんだ!?」
角はまだ折れていないが、そこで異変に気付く。さっきまでヘイトは俺に向かっていたはずで、ディアベルはまだ追い付いていないから、ヘイトが変更する余地はなかったはず。なのに、こいつは俺には絶対当たらない方向への突進の構えのまま、力を溜めている。当たらないとわかっていてもやる気か?
そういえば、一層の“イルファング・ザ・コボルドロード”は体力が少なくなると武器を変更していた。
こいつのHPは最後の一段になったが、変わった攻撃パターンや見た目の変化もない。強いて言うならこの突進攻撃に入ろうとしているくらいだが、最初に一回見せた攻撃をまたやることが追い詰められた時の行動か?それだとあまりにも“プレイヤーにとって驚きがない”。モンスターやNPCのAIがこれほど発達しているゲームで、そしてこれほど
そうか!最初と同じというこの状況こそがギミックか!
「ディアベル!ヘイト無視だ!そっち行くぞ!」
「な・・・!?くそ、回復してる場合じゃなかったか!」
回復していて、動き出しが少し遅れたディアベルにヘイトが向いているのは間違いない。次は受けきれない。止めるしかないが・・・部位破壊にかけるしかねえ!
「《バーチカ》・・・うお!」
間に合わなかった!?感触的にあと一撃っぽかったのに!振り落とされた俺は、叫ぶ以外にできることがない。
「右角壊せ!」
ディアベルが剣を当てる前に突進が決まる。・・・そう思っていた時、青い彗星の如きライトエフェクトが通ったかと思えば、次の瞬間には角が破壊されていた。
「いつまでもそんなのにビビる俺だと思うなよ?」
「Brooooo!!」
ミノタウロスもどきは雄たけびと共に、ただ悶えるしかない。睨みつける先には、短剣よりも一回り小さいダガーを構えたディアベルがいた。
“ザ・トーラス・オブ・アステリオス”
上半身は牛、下半身は人という神話にも出てくる生物。二層に出てくる牛型モンスターたちの親玉とかでは別にないが、多くの同胞たちを食べる人間たちに憎悪した一頭の牛が、逆に大勢の人間を襲って食べたことにより人間の力を得たという伝説が周辺の町にはある。時々起こる神隠しや行方不明は、こいつが夜中人を攫って巣に持ち帰って食べているからという噂もあり、暗くなったら町から出てはいけないという子供への教育にも使われている。
武器は両手斧で、水平方向への回転切りである《ワールウィンド》などのソードスキルも当然使ってくる。
開幕時には、固定モーションとして、ホーミング性能と威力の非常に高い突進を使う。レベルの高いタンクか、2~3人以上のソードスキルで受け止めることは可能。
HPが最後の一段になると、開幕時と同じ突進を行う。威力とホーミング性能がさらに増している上に、ヘイトを無視して一番遠い相手を狙うという性質が付与される。溜めモーション中と突進中は部位破壊でキャンセルすることができ、ヒットする瞬間に左右どちらかの角を破壊することができれば、威力が半減する。