ソードアート・フロンティア~クソゲーマー、神クソゲーに挑まんとす~ 作:melk
◆
「いつまでもそんなのにビビる俺だと思うなよ?」
俺は弱い。ステータス的にも、プレイヤースキル的にもメンタル的にもサンラク君やキリト君などと比べればずっと弱い。土壇場での起死回生の一手なんて持ち合わせてはいない平凡な人間だ。それがコンプレックスで、そんな自分でも何かの中心になりたくて、攻略会議を主催して指揮する側に回り、セコイ真似をしてでもLAボーナスを狙いに行った。
だが、さっき一度死にかけて思った。頼れるリーダーの仮面を被るのも、上のプレイヤーに置いて行かれないように必死になるのも疲れたと。
「そんなところでボケっとしてたら、俺がまたLA取るぞ?」
サンラク君は手の届かないすごいプレイヤーだと思っていた。確かにあの両手斧に対して、AGI寄りのステータスの片手剣でクリティカルを一度もミスらずに出し続け、パリィしているのは控えめに言って頭がおかしい。
だが、その戦いぶりを見ていて気付いた。「コイツ、テンションだけで動いてやがる」と。
だって、そうだろ!?俺も賛同したとはいえ、どこの世界に命かかってる状態でそんな綱渡りの戦いをあえて仕掛けに行くやつがいる!?賢い奴なら絶対にしない!
だから、サンラク君、いやサンラクを見上げるのはやめた。“強さ”で競うのもやめた。君とは結果だけでしか競ってやらない!
「もう一発《シングルシュート》!」
投擲用の短剣をストレージから呼び出し、悶える“ザ・トーラス・オブ・アステリオス”の目に向かって打ち込む。小ひるみから大ダウンに変わった。
俺のAGIじゃサンラク君には追い付けない。だったら敵からこっちに来てもらえばいい。今なら俺の方が近い。
単発突進技《レイジスパイク》の切っ先が敵の顔にわずかに届き、続けて《ホリゾンタル》で短剣の刺さった右目から左目まで一文字に切り裂く。これだけ傷が入ってる弱い部位なら簡単にクリティカルが出る。
硬直が解けた頃には敵も起き上がるだろう。そしたら追撃を・・・!
「させるか!」
サンラクはもう来たか!だが、もう一発クリティカルを出せればそれでHPを0まで持っていけるはず!
「こっち向けやデカブツッ!!!!」
「な・・・ズラされた!?」
起き上がり途中の目にもう一発当てればクリティカルだったのに、敵はくるりと向きを変え、頭がサンラクの方に向いてしまった。俺の剣は背中に切れ込みをいれるだけに終わった。やられた、《バトルシャウト》だ。
盾も持ってない紙装甲なのに、何でヘイト稼ぐスキル持ってるんだよ!?
最後は、サンラクの《レイジスパイク》が敵の腹を突き刺し、ポリゴンとなって砕け散った。
部屋には虚しくも「Congratulation!」の文字が浮かび上がってしまった。
「これが俺の秘策、名付けて『こっちに向かって来てくれれば最後の一発当てれるじゃん作戦』だ!」
「作戦名、今考えただろ?」
「考えてすらない。反射的に出た言葉だ」
「なお悪いな」
考えてたことは同じか・・・。だからこそ、最後に結果を出せなかったのが悔やしい。俺は、サンラクに勝てないのか?
「さて、LAボーナスは・・・どうだ?」
「ぶふッ!!?」
「笑うほどか?・・・これかよ」
「イヤー、クヤシイナー。オレモソレガホシカッタノニナー」
ああ、LAじゃなくて良かったと初めて思えた。まさか茶色い牛頭の被り物とは・・・。しかも、何というか・・・言葉に表しがたいが、目力がすごい。
あれは、俺には似合わない。サンラクにはピッタリだ!牛より馬ならなお良かったな!
「くっ、VIT補正が高い・・・。性能的には強いし、顔を隠せるものが欲しかったけど、これはさすがの俺でも躊躇うな・・・」
「も、もう一回被ってみればいいんじゃないか?」
「よいしょ!そして隠し機能をくらえ!」
「ぶふッ!?」
「いつか、これでみんなの暗闇を照らすんだ!」
「やめろ、笑い死ぬ人が出る!」
目が光るとは何て無駄な機能をLA報酬につけるんだ・・・。しかも、徐々に色が変わる虹色って、どういうセンスだ。そして、躊躇うと言ってたのに、躊躇わず被ってるじゃないか!
だが、サンラクという人間についてよくわかった。テンションで動いていて、大体の問題を明快に解決していくが、そのテンションゆえに無茶無謀もするし、恐らくイレギュラーや問題というものが勝手によってくるような奴なのだ。
今回は負けたが、チャンスはこれからもある。このSAOという、失敗は死につながるゲームでの本当の負けは死ぬことだ。そう考えると、基本的に慎重派の俺の方が、このトラブルメーカーよりも、
俺は、俺が生き残れる環境を作ろう。それもできれば最前線の方で活躍しながら、生き残れるような努力をしよう。諦めずに生き残ること、それが俺の強さだ!
「三層では俺が勝つからな?また大人数の攻略になったら、とりあえずサンラクにはボスから一番遠いところを担当してもらおうか」
「はっ!火力もなく、タンクもできないバランスプレイヤー様が何か言ってるぞ?どうせまた俺が走って助けに行くことになるんだから、近くに置いとけばいいのにな?」
そしてこの日、たった二人でボス攻略を成し遂げたとして、サンラクとディアベルの名がSAO唯一の新聞に載った。そして、その影響もあってか、戦うことに、生きて帰れることに希望を持ち、剣を手に取る人も増えたという。
「サンラク・・・まさかこっちに・・・?」
ディアベルは謎の自信を手に入れた!
何もSAOで求められるのは極まった個人の強さだけではありません。強さに上限はなくても、終わりだけは皆平等に喉元に突き付けられているのですから・・・。
キリトはサンラクを追い抜く強さを求め、ディアベルはより現実的な負けないことを求める。サンラクは好き勝手する。方向性は違っても、同じゲームである以上やることは大差ない。
そして、最後のセリフはいったい誰の物か・・・?
決まっているけど、もう少し先の登場になると思います。