ソードアート・フロンティア~クソゲーマー、神クソゲーに挑まんとす~   作:melk

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さすがに忙しかった・・・
日が空いたけど、久々の投稿。


第二十層 待ち人遅れてくる、頼み持ち寄りて

 

今俺は20層にいる。ちなみに、最前線は28層だ。じゃあ、なぜ最前線よりかなり離れたこの層にいるかと言えば、攻略組といつからか呼ばれるようになった最前線でボスを攻略している奴らに追いつけなくなったから・・・ではない。

27層のボス攻略もきっちり参加していた。LAはディアベルに取られた。取った後のドヤ顔は過去最高の物だった。許すまじ、ディアベル。

そして、25層は・・・あれは最悪だった。それまでのボス戦の難易度から考えると、あの層だけ異常に強かった。SAO始まって以降、最大の死者数を出したボス戦だった。終了後、さすがにメンタルをやられた人も多く、26層の攻略はしばらく行われなかったほどだ。

やっぱり他のゲームとは違うということを俺も身に染みて感じさせられた。

 

さて、今俺が20層の草原にいる理由についてだが、一つ目は端的に言うと武器の練習のためだ。今のところ、俺の武器熟練度は片手剣が400、それ以外が大体100以下くらいだ。攻略組でもメインの武器種の熟練度は似たり寄ったりだろうが、ちらほらと基本の武器種から派生したエクストラスキルを出現させてる奴も出てきてる。クラインなんかは最近曲刀から派生した刀スキルをメインにしてるみたいだ。まあ、野武士面だし似合ってはいる、ただし武将というよりは落ち武者だけどな。

ってなわけで、俺も片手剣だけじゃなくてどうせなら色々な武器種を試してみたくなったって訳だ。エクストラスキルの情報とかも、インターネットが見れない今、自分たちで調べるしかない。

 

「お前の針と俺の剣(針)どっちが強いか勝負しようぜ?《リニアー》」

 

何とも気色の悪い緑の蜂の針と俺の細剣が、先端の細い一点で激突する。が、わずかに角度がズレていたのか俺の《リニアー》は蜂の体からするりと滑って空を切る。反対に針は俺の顔面目掛けて勢いを増す。スキル後の硬直は空振りした場合、さらに時間が長くなるため、手足をほぼ動かせない。ギリギリ動く首を全力で傾け、何とかかわすことができた。

 

「っ危ねぇ!」

 

躱せなければ、ダメージ+毒の状態異常までもらっていただろう。

解毒結晶とか高いからあんまり使いたくないんだよなぁ。

 

「そこまでの精密動作はちと厳しいな・・・」

 

細剣で正確無比な突きといえば、思い浮かぶのはただ一人。あいつ、一回ボスの剣の刃に突きの先端を合わせて弾いてたことあるしな。あんなの全米一(シルヴィア)にだって無理だろ。でもレイドボスさんならやりかねない気がするのはなぜだろう・・・。

使ってみて、ちょっと細剣は俺の戦闘スタイルと合わない気もしてる。そこまで精密な動作がパリィするにも必須になるってのは正直きつい。使うなら盾とセットにするしかないけど、そうなると咄嗟に体術が使えないのがバットポイントだ。そもそも盾持ったところで敵の攻撃を何発も受けきれるほどの耐久はないしな。

つまり、この武器は俺の戦闘スタイルにとってあまりメリットがない。

 

「よし、次!」

 

細剣をストレージに入れ、代わりに大剣を取り出す。二層の時みたいないいやつじゃなく、適当なドロップ品だ。練習用だからな、使えそうだったら鍛冶屋にでも頼めばいい。二層で使った以来だが、期待してるぜ!

 

 

日は落ち始め、辺りは暗くなってきている。森に囲まれた20層の町にあるNPCレストラン「斜陽亭」で料理を頼むことなくすでに2時間居座り続けている。店内の明るい雰囲気とは裏腹に、氷のような視線が突き刺さる。

待ち合わせ時刻からすでに1時間半が経過していた。

 

「お、いたいた!よお、サンラク!」

「おおキリト!元気か?早速で悪いが表に出ようか。HPが真っ赤になるまでお話ししようぜ?」

「悪かったって。ちょっと用事があったんだよ」

「用事なく遅れてたら今すぐ決闘(デュエル)申し込んでたけどな」

決闘(デュエル)なんていつものことだろ?まあ、それはいいとして。ちょっと頼みがあって来てもらったんだ」

 

俺が20層にいる理由の二つ目は、キリト(遅刻バカ)に呼ばれたからだ。むしろ武器の練習は時間つぶしのためだったとも言える。

そう、意外とキリトは人を振り回すタイプの人間だということに最近ようやく気付いた。まあ、確かに見た目からして中学生くらいだろうし仕様がないんだろうが、最初に会った時はもう少し陰のある感じで、もう少ししっかりしたタイプに見えたんだけどなぁ。今ではやんちゃな少年というイメージがピッタリ当てはまる。まあ、俺は大人だから寛容に受け止めてやろう。あとでコイツの水にはタバスコらしきもの(27層のNPCレストランで買える調味料、見た目は黒いが水に混ぜたら透明になる)を入れておこう。

若干のイラつきを隠さず顎の動きで話を促す。

 

「実は俺、月夜の黒猫団っていうギルドに入ったんだ。まだまだレベルは低いけど、攻略組に入ることを目指してるギルドでな」

 

キリトもとうとうギルドに入ったか。まあ、最前線でソロをやるってのも中々危険度が高いからな・・・と思ったが、攻略組にも入ってないギルドか。聞いたこともないあたり、本当に前線には来ていないらしい。

SAOでギルドに入る理由の一番大きい理由が、共同体の中にいることで安心していたいってことらしいから、キリトもそんな感じか。

というか、ここまでの話から俺への頼みって奴が見えてこない。

 

「そこで頼み何だが、ギルドメンバーに指導してやってくれないか?」

「何で俺に頼むんだ?」

「理由は三つ。一つは俺一人じゃ手が足りないから、って言えば何となく状況は理解してもらえると思う」

「そんなに酷いのか・・・」

「連携っていうのもあるけど、一人一人の力がまだ、な。その点、俺やサンラクみたいなソロでやってた奴は何でも自分でやる意識がある分、この力を伸ばすのにはピッタリだ」

「二つ目は?」

「サンラクは結構ボス戦でもヘイト稼いで避けまくってたりするだろ?ギルドメンバーの中でも特にタンクの子がちょっと難しくてな。攻撃を受けるのが怖いらしい。そういう意味でも、攻略組屈指の紙耐久でタンクやってるの指導が有効だと思ったからだ」

「オーケー、喧嘩なら買うぜ?」

「まあまあ。そして最後に、俺の知ってる中でもプレイヤースキルではサンラクがずば抜けて高いからだ。最近、ちょっとみんな『早く攻略組に!』って感じで焦り気味なんだ。だからこそ、一度実力差を知って落ち着いて成長していってほしい。浮ついてる時の危険さはよくわかるだろ?」

「そりゃ、な」

 

いつからか攻略組と呼ばれ出した、今の最前線にいるメンバーは一層ボスから挑んでいたメンバーばかりじゃない。後発から追い付いて攻略組入りした個人やギルドも多い。しかし、その反面、焦って追いつこうとするあまり、階層数+10レベルという安全マージンを取らずにレベル上げを行った結果、死んでしまった人も同じくらいにはいる。

キリトの目は真剣そのものだ。本気でなんちゃら団のメンバーの心配をしているのだろう。

さて、どうするか・・・。ただのゲームであれば攻略中にやられるパーティを見ても「ご愁傷様です」としか思わないが、現実の死が関わってくるのであれば、見殺しにするのは寝覚めが悪い。

だが、キリトの話を聞いた後でもぶっちゃけて言えば「キリトがやればよくね?」っていうのが一番の感想だ。なにせ俺にメリットがなさ過ぎる。・・・いや、そうか。メリットさえあれば、俺もモヤモヤしなくていいし、あっちにとってもプラスになる、まさにWIN-WINってことになるな。

 

「話はわかった。だが、タダ働きって訳じゃねえよな?」

「ああ、一日3千コル、この層のモンスター相手に安全に戦えるようになるまででどうだ?」

「おいおい、安すぎるぜ?そんなんじゃ一食分にもなりゃしねえ。1万コルだ」

「高すぎるだろ!?どんな高級レストランだ!5千コル!」

「27層、最高級レストランsalmon-philosophy、8千コルから。ってことで最低8千コル」

「そんなとこあるのかよ、てか鮭の哲学って謎すぎるだろ・・・。わかった、7千コルで、20層のフィールドボス、ザ・レッドアイズ・ビートルを俺を除いた月夜の黒猫団のメンバー全員で倒せたら、成功報酬で+5千コル。これでどうだ!」

「いいだろう」

「ふう・・・。1万はさすがにビビった」

「ま、食事代ってのは冗談にしても、これから装備にも金かかってきそうだからな」

「ほう、何か新しい装備を?」

「教えるかよ。いつからやるんだ?」

「明日からで頼む」

 

突然の交渉に緊張したのか、キリトが脱力してだらんと椅子に腰かける。俺だからここまで譲歩したが、相手がペンシルゴンだったらもっと恐ろしいことになってたな。お金の面で相手に有利を取らせていると見せかけて、気づいたらもっと大事なものが奴の手に渡っている。

オレハナンテヤサシインダー。

 

明日の約束だけして俺たちは解散した。結局あのレストランで料理頼んでなかったな。今度は絶対頼むから許して・・・。

 




・人を振り回す
・やんちゃな少年
なぜだろう?こんな人に非常に心当たりがある・・・。

キリト「サンラクだけには言われたくない」
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