ソードアート・フロンティア~クソゲーマー、神クソゲーに挑まんとす~ 作:melk
サチのキャラが変な方向に行ってる?この作品じゃいつものことでしょ?
◇
「サチ、変わるか?」
「まだ大丈夫、HPは減ってない!」
「でもしばらくヘイト持ってるけど・・・」
「でもHPは減ってないよ?じゃあ何も問題ないよね?」
20層、森の奥にいるフィールドボス“ザ・レッドアイズ・ビートル”。頑丈な体と、高い攻撃力を持ち、攻撃に移る瞬間に背中の羽が開き、その間だけ攻撃できる部位以外はダメージの通りが悪い。つまり、タンクが攻撃をちゃんと引き付け、周りの味方がその後ろに隠れるだけではなく敵の背後に回り込む必要があるという、まさにパーティ連携の練習のためにいるようなボスだ。
そして今、キリトを除いた月夜の黒猫団のメンバーはそいつといい勝負ができている。俺とキリトはその少し後ろで見守っている。
「いい連携だ。これならやれそうだな」
「いざとなれば助けにも入れるけど、安心して良さそうだな」
「ああ、特にサチの動きは見違えた。・・・というか変わりすぎじゃね?あの夜何話したんだよ?」
「大したことは言ってねーよ。ただレベル制MMOの真理を教えただけさ」
「確かに『レベルは正義』『ステータスは強さ』だけど、あそこまでになるとかお前詐欺師か?」
うーん、確かにちょっと俺も引いてる。
サチは敵の強さ、状況を「自分のHPが減っているかどうか」で判断するようになった。そしてレベル上げに積極的になった。訓練の最後の方は俺が終わりにすると言っても「まだHP減ってないよ?」と言って続けさせられることが毎度のことになっていた。
そう、現実でも話には聞く筋トレマニアみたいになっていた。ヤバい人は生活を筋肉を基準に考えるらしいからね。サチもそのうち自分のHPと会話しだすかもしれない。
ナニガキミヲソコマデカエタノ?オレ?オレノセイ?
「そのうちギルドメンバーにもVIT極振りを強要してくるかもな・・・。キリト、頑張れよ!」
「お前も責任とれよ!・・・まあいいや。とにかくサンラクのお陰で月夜の黒猫団が強くなった。まだ“ザ・レッドアイズ・ビートル”を倒せてないけど、行けそうだから先に謝礼払っとくわ」
キリトがメニューを操作し、俺のところに通知が届く。キリトからの贈り物を〇ボタンを押して開く。
一日7000コル×10日間+成功報酬5000コルで75000コル・・・送られて来るはずが、表示されているのは65000コル。計算間違い、契約の踏み倒し・・・いや、このキリトのニヤケ面は何かあるな。
「さて、1万コル分何を聞かせてくれるのかね?」
「この森の奥にある開かずの宝箱は知ってるよな?」
「あれだろ?鍵も開錠条件も不明だがNPCからめちゃくちゃいい装備が入ってるっていう情報だけあるって奴」
「その開錠条件が見つかった。しかもアルゴに追加料金を払って口止めもしてもらってる。俺たち二人でいけば条件は楽勝で満たせる。どうだ?」
ああ、そういうことね?
コイツ、ちゃっかり自分も利益がある方向で条件を出してきやがった。確かにその装備によっては1万以上の価値はある。その開錠条件とやらがわからんが、手放すには惜しい話だ。
いつの間にかこんな小賢しい交渉を覚えやがって!
「アイテムの取り分は?」
「道中のお金とアイテムは拾った人の物。宝箱の中身の装備は、サンラクが取っていい。もし複数手に入れば、最初の一つはサンラクが選んで取って、残りは山分けでどうだ?」
「メインのアイテムは取っていいと・・・。いいぜ、がぜんやる気が湧いてきた」
「よし、じゃあ交渉成立だ。今日はサンラクお別れのパーティをするらしいから、明日の朝10時、森の入り口集合で。それと―」
「それと?」
「ガチ戦闘の準備はしておいてくれ。あてにしてるぜ“クレイジーマスク”」
「それやめろ。何でキリトは“黒の剣士”で俺は“クレイジーマスク”なんだよ。もうちょいカッコいいあだ名あるだろ・・・」
自己イメージはバーサーカー的な感じだったのに、傍から見れば狂人ってのは知りたくなかった。
そして、開錠条件とやらにも見当がついてきた。今になって判明したのはプレイヤーの鑑定スキルと開錠スキルの熟練度が上がったから、俺とキリトなら余裕っていうのは最低でも28層攻略組程度のレベルは要求されるから、ガチ戦闘の用意ってことはボスに類する何かと戦うのが条件だからってとこか。
思わぬ報酬に俺のテンションも上がってきた。
サチの願いが「死にたくない、早く現実に帰りたい」から「もっとできる、もっと私のHPは輝ける、もっとレベル上げたい」にアップデートされました。そうだね、プロテインだね!
次回投稿日未定