ソードアート・フロンティア~クソゲーマー、神クソゲーに挑まんとす~ 作:melk
みなさんいかがお過ごしでしょうか?
私は忙しい中書いた今話のデータが今朝消えていて雪かきの合間に書き直すというハッピーな年末を過ごしています。
◇
「さて、第2ラウンドと行こうか!」
赤熱した剣をキリトに投げ渡し、青く澄み渡るような冷たさを湛えた剣を受け取る。初めて握る剣なのにぴったりと手になじむような感覚すら覚える辺り、このゲーム、プレイヤーの戦闘スタイルから、適した武器を作り出してる疑惑がある。
AIがプレイヤーの情報を読み取って世界に反映してるんだろう。そういうところ、意外とライブ感でできていたシャンフロそっくりだ。
あー、何気にSAOに囚われてからもう半年以上経ったのか。現実へ帰りたいという欲求以上にクソゲー欲がたまって来てる。
今年の幕末はどんなクリスマスだっただろうか?いや、多分最後にはレイドボスさんにみんな仲良くぶった切られてるだろうな。
ネフホロ2はそろそろ発売か?ルストのはじけっぷりが目に浮かぶ。あいつネフホロの宣伝になった時の迫力はリュカオーン以上だからな。
ああ、めずらしくセンチメンタルになりそうになった。
「サンラク、ボケっとすんな!」
「うるせー!この程度避けるなんて余裕なんだよ!」
しなりをかけて上から叩きつけられる木の根をクリティカルなタイミングでパリィし、目前に迫る枝の刺突を余裕を持って躱す。
そうだ、全部この神クソゲーが悪い。どんだけ美味い料理も半年以上それだけ食べてたら飽きるに決まってんだろ!神ゲーだろうが、それしかできない時点で最大級のクソゲー確定だろ!無性に腹立ってきた。
やり場のない怒り?目の前にちょうどいいサンドバックがあるじゃねえか。怒りはモチベーションに、モチベーションは最大のパフォーマンスを発揮する力に変える。とりあえず覚悟しとけよ?八つ当たりだろうが、お前を全力でボコすと今決めた。
「とりあえず死ねや!!」
「いきなりキレた!?やっぱり情緒不安定なのか?」
「やっぱりってなんだよ。俺はいつも今を全力で生きて、八つ当たりで敵をボコそうとしてるだけだぜ?」
「まあいいや。狂人なのはいつものことだし。火力さえ出してくれれば文句はねーよ」
木の成長という概念を完全に逸脱し、無数に伸びた枝の中で、一番勢いがあり、AIにそういう感情があるなら、俺を殺すに足る自信の乗った一本を避けるのではなくあえて左手で掴んだ。綱引きをするつもりはねえ。枝を自身の元に戻す力をフル活用し、俺の最高を越えた速さを加える。一瞬でも早く、敵の認識よりも速くを突き詰めた結果、剣による青色とスキルによる金色とが混ざり合った唯一無二の色を放つ流星となった。
現段階の体術スキル最高火力を誇る単発両足蹴りスキル。その名こそまさに―
「貫け、《コメット》ォォオ!」
ついでに最加速バージョンだぜい!
根枝による防御が間に合うはずもなく、ツリーインべダー本体への初ヒットで2m以上の巨体を貫くとまではいかずとも、大きく後ろに蹴り飛ばすことには成功した。
よろめく巨体に肉薄し、サマーソルトと言って差し支えない《燈天》による蹴り上げからの左ストレート《閃打》。
「グギギ・・・」
「渾身の技が利用されて悔しいか?もっと悔しがっていいぞ?」
逃げようとする隙も見逃さず、ツリーインベイダーに肉迫し、四連撃の《バーチカルスクエア》で追撃する。
さて、このまま削り切れるか・・・っと、敵がうずくまるような姿勢に変わる。悔しくて動けないって訳ではないだろう。次の動きに警戒して半歩下がった。その瞬間に敵は勢いよく両手を広げ、胸を突き出す。それと同時にこれまでよりもはるかに密度が増した木の枝が腹から一気に解放された。
「ハリネズミかよ!もっと可愛くなって出直してこい!」
ドーム状に突き出す枝の針を片っ端から斬り落とす。剣速がどんどん早くなってる・・・?何かわからんが絶好調ってことだ!
「うぉおおおお!!」
速い!多い!固い!ソードスキルを使う暇もなく剣速のみで食らいつく。右ィ!左ィ!右ィ!上ェ!足元ォ!全然減らねぇ!ってか切った側から再生してやがる!
クエスト発生条件が片手剣か曲刀のみってそういうことかよ!両手武器や片手棍では攻撃速度的に捌ききれず、短剣では通常攻撃一発で枝を斬れない。両者のバランス的に片手剣か曲刀しかないってことか。無茶な前提の敵作りやがって・・・。
「どうしたどうしたぁ!徐々に物量が落ちて来てんぞ!」
徐々に上がる剣速、反対に勢いが落ちてくる枝剣山。一歩踏み込む余裕ができた。もう一歩踏み込めればこっちの剣の間合い・・・!
そこで二つ異変に気付いた。目の前の敵から出続ける枝への対処は問題なくなってきている。そことは違う場所で異変をキャッチした。
一つ目は俺の辺りだけ妙に暗いこと。“
マズイ、さすがに上まで対処してる余裕はねえ。さらに言えば、ここで逃げて距離を取ればまた遠距離攻撃の嵐が来る。もう一度同じ方法で距離を詰めてダメージを与えられるかはわからない。
だが、後ろから感じる二つ目の異変、その正体に気づいたと同時に、俺はサイドステップで敵とアイツとの直線上から離れる。存在感消してると思ったら、チャンスを窺ってやがったか。
「ぶち抜け!《ヴォーパルストライク》!!」
俺の頭上の陰の正体は人間大の巨大な種だった。俺がいなくなったことにも気づかず、振り下ろされた種はちょうどキリトの前に盾のように立ちはだかる。だが、キリトは種ごとツリーインベイダーの体を貫いた。
うなだれるように倒れながら、敵はポリゴンとなり砕け散った。
「終わった・・・のか?」
「この亀どうなんの?」
ツリーインベイダーに寄生され操られていたようだが、この亀は消えずに居続けている。まさか今度はこいつと戦う羽目に・・・。
「オオオオオオ」
「うお、地震!?」
キリトの声の通り、地面が揺れ出した。巨大亀が動き出そうとしてるみたいだ。
すぐさま俺たちは甲羅の淵へと駆け出す。
「次コイツと戦えとか勘弁しろよ!?」
前足を滑り降りると、亀と目が合った気がした。体をフルフルと震わせると亀はどこかへのしのしと歩いて去っていく。いなくなった後から二輪の花がふわふわと俺たちの手の中にゆっくり飛んできた。
それを受け取ったと同時に《Congratulations》の文字が浮かび上がった。
「あれは俺たちじゃないと死んでたな」
内容や報酬的に今後につながる重要なクエストだった疑惑が出てきたな。マジでクリアできてよかった。
一度誤爆投稿してすみません。
これにて20層終わりです。久しく野郎二人しか書いてない気がする・・・。
次回投稿は1月7日 17:30 予定です。
来年も本作をよろしくお願いします。(続けられるかは不明。モチベ次第)
それではみなさんよいお年を!