ソードアート・フロンティア~クソゲーマー、神クソゲーに挑まんとす~ 作:melk
想像もしていなかったので驚きました。読んでくださった方ありがとうございます!
特に感想や評価も多くいただけていることがとても嬉しいです!
最新話まで読んでくださっている方には今更かもしれませんが、この作品は独自の解釈、オリジナルな展開や勝手なキャラ付けがたくさんたくさん含まれます。
苦手な方、キャラ愛が強く、原作と違う印象に不快感を持たれる方はそっとブラウザバックされた方がいいかもしれません。
それでもいいという方は楽しんでいただけると嬉しいです!
◇
「だから、犠牲者を出さずにボスを倒すにはこれしか方法はないの!何でわからないの?」
「NPCだって、ゲームの中で生きてるんだ!俺たちの中にも顔見知りがいる奴もいるだろう?端からNPCの犠牲ありきじゃなくてもう少し他の方法も考えたっていいだろ!」
休憩をはさんでも、相変わらずのヒートアップ具合。何とかすると決めたはいいものの、今のところ完全ノープランだ。ただ、この場で気になることが一つ。
「なあ、ヒースクリフ、アンタはずっと黙ってるが、何か意見ねーのか?」
「今回のことはアスナ君に一任している。方針が出たらそれに従うとも」
「随分主体性がないんだな」
「それだけ彼女の能力を信頼しているのだよ」
「信頼と全責任を押し付けるのは違うだろ」
「ふむ、そういうつもりはなかったが。しかし、彼女はトッププレイヤーの一人だ、そして血盟騎士団副団長という立場もある。任せられるだけの能力も資格も十分にあるのではないかね?」
「つっても、見た限りまだ子供だろ?全部任せっきりにするのはどうなんだ?」
「なるほど、しかし、君もまた子供だと思うのだが?」
「俺は別に責任負ってねえからいいんだよ」
どうにも気に食わねえ。肝心なところではぐらかし、決して自らが中心になって物事を進めようとはしない態度。
適材適所ってものがある。だから向いてないから他の人に頼むって考えならまだわかる。だが、仮にも大手ギルドのトップっていうなら全くできないってことはないはずだ。しかし、ヒースクリフは会議の行く末を見守ることが使命であると固く信じるかのように一切口を出さない。その姿勢にどこか怪しさを感じる。
「子ども扱いしないで!私は血盟騎士団の副団長、これくらいできなきゃいけないの!」
ちっ、アスナもムキになってきやがった。
だが、見た感じ、アスナはキリトと大差ないくらいの年齢、恐らく中学生くらいか?
よし、方針は決まった。指揮官の真似事をしているガキを委員長に戻してやらねえとなぁ!
「あー、じゃあ俺からも意見いいか?」
「・・・きちんとボス攻略に関係のある話なんでしょうね?」
「その作戦についてだよ。さて、まず俺の立場を明確にしておく必要がある。俺は
俺の発言に何人かの視線が鋭くなる。アスナは俺のお墨付きが出たと思ってやたらドヤ顔してるが、別にまだ味方だと言ったわけではないのでご愁傷様としか言いようがない。
実際、このゲームのNPCはどういう原理かシャンフロ並みのリアルに人を相手しているように感じさせるほど高性能なAIをしている。聞いた話によれば、NPCと仲良くなってよく晩飯を食べさせてもらっている奴もいるとか。NPCは一度死んでもまた復活するが、記憶や人格の変化などはリセットされる。知っている人からすればそのキャラクターの死とどれほど違いがあるだろうか。ゆえに、それを嫌う人たちが多いのも理解はできる。
「だからこそ、NPCを犠牲にして攻略しようぜって話には反対だ」
「え!?」
ここにいるプレイヤーの顔が驚きに染まった。あのドヤ顔していたアスナですらも間抜けな顔になっているのに、ヒースクリフだけは無表情、しかし瞳の奥には興味の色を滲ませているようだった。何というか、シャンフロのキョージュのような「早く話せ」という圧を感じる。そこも含めて気に入らんが、ええい、このまま黙ってても進まん!
「ボスに襲わせるっていうパ二の村だが、ここのNPCから受けられる重要クエストは知ってるな?」
「武器熟練度の限界突破よね?でも、それと今回の作戦とどんな関係が?」
「NPCが死んで記憶がリセットされた場合、クエストフラグが新たに立たなくなる可能性がある」
「!?」
「これはある情報屋から聞いたんだが、クエストフラグ持ちのNPCが誤ってモンスターと出会い、死んでしまった。もちろんそのNPCは何事もなかったかのように自宅で
「・・・あのー、その話は本当なんですか?」
血盟騎士団の・・・「The Button」、そう座布団くんが訝しむ様子で疑問を投げかけた。何というか、このゲームのプレイヤー、こういうふざけた名前の奴少ないんだよなぁ。そういう意味ではいいね、君の名前!お陰で君の名前は覚えやすくて助かる。さっきまで忘れかけてた?うるせー、名前なんて何でもいいんだよ!
「証拠ならそうだな・・・座布団くん、一層にいた牧場NPCのクエスト、あれを受注したままにしていないかね?」
「座布団じゃなくてThe Buttonです。せめてボタンにしてください。あのボアの肉をベーコンに加工してくれるやつですか?そういえば受けたまましばらく行ってなかったですね」
「さっきの話の死んでしまったNPCってのはそいつのことらしい」
「!?本当だ、受注リストにない!」
「そういうことだ」
座布団くんが自ら証明してくれた。これでクエストNPCが死ぬのは攻略をする上でデメリットになるという
ネタばらしをしよう。この話、実は今のところ誰も確認できていない。つまり嘘でもないが、限りなく嘘に近い話だ。
NPCが死んだらクエストを受けられなくなる。これは恐らくありえない。そんなことしたら攻略する上で必要な情報やアイテムが手に入らなくなって詰む可能性がある。まあ中には一つ間違えると序盤で進行不可になるバグを抱えたクソゲーもあるが、このゲーム、少なくとも作りこみで言えば神ゲーの部類になるからまずないだろう。ログアウトできないデスゲームとか最悪クラスのクソゲーだがな!
しかし、NPCが死んだらクエストがリストから消去されるこれは本当だ。これはよく考えたらそうだろう。NPCは記憶が消えてるんだ。プレイヤーに依頼したこと自体忘れてるため、もう一度受け直すことはできる。
つまり、今回の話の元はこうだ。ある情報屋(アルゴ)が数か月振りに牧場NPCに肉を加工してもらいに行った。しかし、「初対面の相手にいきなり頼みごとをするとは無礼な!」と怒られた。
調べてみるとだいぶ前にモンスターにやられており、記憶がなくなっていて、よく見てみるとクエスト受注リストからも消えていた。
きちんと菓子折りを持っていって謝り、肉加工の前提となるクエスト「牧場主の頼み」をクリアすると肉の加工を受け付けてくれるようになった、ということだ。
なので、さっきの話を正確に言うと、NPCが死んだら受注していたクエストはリストから消えるが、再び条件を満たせば受注可能になる。ただし、全てのクエストNPCにそれが適用されるかはわからないといったところだ。
「さて、そういうことで、これからの攻略のことを考えると村を襲わせるって話はナシだ。ということで代案だが、村じゃなくてモンスターの巣を襲わせる。『誰彼構わず殺戮を繰り広げる』ってボスらしいから行けるだろ。できなきゃ一旦逃げる方向で」
「・・・モンスターにこちらが狙われる可能性もあるため、危険はありますが、真正面から戦うよりは。ではその案で―」
「待った」
目の前にいるアスナにストップをかける。この場でまだ責任を果たさなきゃいけない奴がいるよな?
「ヒースクリフ、お前が決めろ」
「あとアスナ君が一声出すだけだった所でわざわざ私に決めさせる必要があるのかね?」
「大いにあるね。この作戦は、ロールプレイ派と効率派の両方の中間を取ったものだが、アスナの提案していた作戦よりも危険度は少し上がった。なのにアスナが最終決定するのも違うだろ。両者どっちの意見でもなかったお前が決定を下すのが一番公平になる」
「しかし、今回の会議の進行はアスナ君だ。それを私が横取りしてはアスナ君の立場がなくなるだろう。彼女は両方の意見を十分に吟味した上で判断を下そうとしている。そこに私の入る余地などない。現にこの会議のメンバーも納得した様子だ。アスナ君はまだ幼いかもしれないが、十分に人を率いていく素質はある。それを伸ばすのが大人の役割であって、成長の機会を奪うのはもはや罪と言っても過言ではないだろう。大人である以上私は見守らなければならない。それに、アスナ君ではダメだと言うなら、発案者である君が決定を下せば―」
「
「・・・」
ヒースクリフが顎に手を当てて黙り込む。この作戦の有用性・・・を考えている訳ではないだろう。時間にして十秒ほどしてからヒースクリフが立ち上がる。さっきまでの見苦しい言い訳がなければ堂々とした存在感で圧倒したであろう所作でマントを翻し告げる。
「今回のボスはモンスターの巣に誘い込んで討伐する。後日モンスターがボスのターゲットになり得るかを検証し、部隊を編成する。検証は聖龍連合に依頼する。スピードと連携が得意なギルドが最も安全に行える確率が高い。その代わり離脱用の転移結晶の費用は血盟騎士団が半分請け負おう。そちらはそれでいいかね?」
「あ、ああ」
「よろしい。では後日検証結果が出てからもう一度会議を開く。今日はこれで解散だ」
ヒースクリフはそう言って、真っ先にその場を後にした。去り際に一瞬俺の方を見てニヤリとしてから。
あの野郎、やっぱりできるのに黙ってやがったか。いざ進めてみれば一瞬で段取りを決めやがった。能力隠しは物語じゃ定番だが、こういう場面でやると嫌われるっての。一言嫌味を言ってやる気分も削がれたし俺も帰って寝るか・・・。
◆
「サンラク君!」
「何だ?文句なら今度に―」
「違うの!意見に関しては私の視野が狭かったなってちょっと反省してる。それよりも何であそこまで団長に決めさせることにこだわったの?私じゃやっぱり未熟だから・・・?」
サンラク君に見限られたのではないかと少し不安になる。しかし、帰ってきた答えは予想よりもずっと優しく聞こえる声で。
「お前、明らかに抱え込み過ぎてたじゃねえか、周りも見えてないくらいに。少なくともガキがガキの内に背負えるもんなんて自分一人のことで精一杯だろ。楽しくなくなったらゲームは終わりだぜ?」
「ガキって言わないでよ!サンラク君だって多分子供じゃない!でも、モチベーション・・・か。そんなの忘れてたかも」
近頃余裕がなかったのは自覚してる。何でもかんでも背負って、できなかったらどうしようって、ゲームの中でも失望されたらどうしようって、だから全部できなきゃって。
リアルに帰りたいからじゃなくて一刻も早くリアルに帰らなくちゃいけないからプレイしてた。ある意味そこには私の感情はどこにもない。
「ゲームをクリアするのに必要なのは、効率の良いやり方でも最強の装備でもない。モチベーションさえあれば、時間がかかったっていつかはクリアできる」
「サンラク君は何をモチベーションにここまで頑張ってるの・・・?」
「未来の自分に追いつくため。今できることは昔の俺ができなかったことだ。だったら、今できないことだって、ずっとできないとは限らないだろ?このゲームにログインしたことをなかったことにはできないが、せめてログインしたばかりの俺に誇れる今の自分ではありたいね」
何となくサンラク君の強さがわかった気がする。ずっと戦い続けてるんだ、過去の、今の自分と。それを笑ってやりのけるんだもん、そりゃ強いよね。
「昔の自分に誇れる今・・・そんなこと考えもしなかったかも」
「モチベーションてのは人それぞれだ。それこそモチベーションを持ってゲームにどっぷり浸かる奴もいれば、俺の妹みたいに流行のファッションを追うためにひたすらバイトに励む奴もいる」
なるほど、何となく年下の扱いに慣れてると思ったらそういうことなんだ。
ちょっとイタズラ心が湧いてきた。
「サンラク君、妹がいるの?」
「うん?まあな。あ、リアルのことしゃべっちまった」
「ふーん・・・私もお兄ちゃんのこと思い出しちゃった。これからはお兄ちゃんって呼んでもいい?」
「やめろ、色々面倒になる!」
「いいじゃない、サンラクお兄ちゃん♪」
不思議と今日の会議の後はいつもの重圧がない。こんなに笑えたのはいつぶりだろう?
一日も早くこのゲームをクリアして現実に帰りたい。その思いは変わらないけど、今はこの世界で生きているみんなと一緒に帰りたい。そう思うようになった。
だからもう少し周りに目を向けてみよう。きっと
ちょっとした目標もできた。いつかはサンラク君の素顔を見せてもらって、その時に改めてお兄ちゃんって呼んで恥ずかしがる姿を見てやるんだ!
次第に「どうやって目の前の牛頭男の被り物を脱がせられるか」を本気で考えるようになっていった。
ちなみに、サンラクの嘘は56層ボスクリア後に噂として流れ、検証したところ嘘だとバレました。
狭いSAOの中では逃げることも敵わず、攻略組全員参加でパーティー(全てサンラクの自費)を開き、さらにレアクエストの情報を吐かされ、さらにさらにアスナからの二時間に及ぶ説教により許されました。
「サンラク君、あなたいつもそうやってそれっぽいこと言って!いつも私が騙されると思ったら大間違いよ!攻略組のためを思ってやったことだとしても嘘はダメよ!嘘つきは泥棒の始まりよ!え、泥棒はしてない?で、でもいつかするようになっちゃうかもしれないじゃない!だからダメ!それで、その情報の出どころは?オリジナルじゃなくて、どうせサンラク君のことだから誰かから聞いた話を大げさに話したんでしょ?情報屋のアルゴ?ああ、あの髭ペイントの。そこで女の子が出てくるか、意外と交友関係広いんだよなぁ・・・。とにかく、どうしてもって時は私には最初に言って!一番騙し甲斐があるとか言わない!あなたって人は・・・」
次回の投稿は
1/28(日)17:30 予定