ソードアート・フロンティア~クソゲーマー、神クソゲーに挑まんとす~   作:melk

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一層で匂わせて以来全く触れていなかった謎の人物も登場します。
わ、忘れてた訳じゃないよ?


第五十七層 出会い

◆Side ???

 死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない!

 

「あ、ああ・・・」

 

 砕け散った武器は空に消えていった。大切な友達も欠片を残して消えていった。あと数秒後には自分も同じ運命を辿る。その場から離れようとする意思すらどこかで落っことしたようで、仮想の体に動けという命令が伝わらない。

 こんなことになるなら、パーティーを抜けるんじゃなかった。あんなこと命に比べれば大した問題じゃなかった。自分一人が我慢すれば少なくとも生きてはいられたはずなのに、馬鹿な事したなぁ。

 

「ごめんね」

 

 大切な友達の形見を握りしめ。せめて恐怖からだけでも逃げるように目を閉じる。

 しかし、武器の振り下ろされる音は、何か、例えば剣とぶつかったような音でかき消された。

 

 

 

「もう大丈夫」

 

 

 

 

 57層開通から数日後、なぜか財布がスッカラカンになってしまったため、今日も今日とて鬼の形相で狩り続ける。SAOにはなぜ蠍がいない!俺の親友たちなら喜んでレア素材を貢いでくれたに違いない・・・!いや、確実に死ぬからダメだな。コミュニケーションは殺意だけだからな。

 最近のSAO内での情勢として、攻略組が50層を突破したあたりから低層でも攻略組を目指してレベル上げに取り組み始める人が増えてきたらしい。さすがにすぐに追いつける程度の差ではないが、案外踏み慣らされた道は歩きやすいらしく、レベルが上がるペースは当初の俺たちよりも速い。美味い狩場とかその時点でのおすすめ装備も情報屋を通して下層に流してあるしな。これは俺たち攻略組にとっても喜ばしいことだ。攻略に参加する人が増えれば増えるほど、一層当たりにかかる時間は短くなる。

 いいニュースがあれば悪いニュースもある。それはPKerの増加と高レベル化だ。これだけ人がいれば、犯罪に手を染める輩も多少はいる。SAOに囚われてから1年以上が経過した今、被害報告が増えてきている。しかも40層台後半でも被害が出てるらしい。つまり、攻略組との差がなくなって来てるってことだ。一応俺も気を付けておかないとな。

 

「グリフォンはどこだ・・・。ハネ ムシル、オレ モウカル」

 

 まだ足りない。今日はあと100体は狩るつもりだ。わずかに残った希望が宿代と食費で消えかねない。ふらふらと彷徨う姿はまるでゾンビのよう・・・。ああ、こういう時こそエナドリがほしい。ガッツリキマらなくてもいい、優しくエンジンを温め続けるようなそんなエネルギーがほしい。せめて味だけでも誰か再現してくれ・・・!

 うっすらと朱に染まってきた夕日の中、次なる獲物()を待っていた時、何かが駆け寄ってくるわずかな足音を感じた。高レベルの隠蔽スキル・・・!?PKerか!?視界の端で捉えたひらひらとした黒い影。速い、が、俺ほどじゃない!

 青いエフェクトを纏った刀を避けながら放った投擲スキルは防がれるも、距離を離すことには成功した。さて、噂のPKerとやらは・・・和装に刀、まるで辻斬・狂想曲(カプリッチオ):オンライン、通称“幕末”みたいな装いに、ショートカットの切れ長の眼差し、まるで貴公子といった面持ちの・・・。うん?

 

「Kyo ultimate・・・。京ティメット?」

「京(アルティメット)。今自分で呼んでたよね?」

「はいはい。で、京ティメット、ついにこのゲームでもPKしだしたか?」

「失礼な。さすがの僕でもこのデスゲームでPKなんてしないよ。君ならきっと避けるだろうと確信してたからやったのさ」

「避けなかったら?」

「しばらく麻痺するだけだよ?モンスターたちの目の前で」

 

 京(アルティメット)。シャンフロの元阿修羅会のPKer。なんやかんやあってうちのギルド旅狼に入ったはいいものの、幕末に順調に汚染されつつある極度の対人戦好きだ。

 まさかこいつもSAOにいたとは・・・。だが、さっきの感じからしてステータスは結構高そうだけど、その割には前線で見たことがない。それに・・・。

 

「PKはしないって割にカーソルオレンジじゃねえか。こんなゲームでも殺さない程度に相手いたぶってるとか、マジもんのバトルジャンキーかよ」

「そっちの趣味はないかなぁ。時々依頼を受けて、犯罪者共を黒鉄宮送りにするんだけど、たまにカモを連れてくる係のグリーンカーソルも捕まえなくちゃいけないからどうしてもオレンジになっちゃうんだ。ああ、でも、捕まえた瞬間の『絶対いつか復讐してやる』って顔を見るとやってて良かったって思うよ」

「言ってることの外道度合いは大差ないな」

 

 ああ、久々に外道の空気感。なぜだろう、全然ホッとしない。だが、SAO内に他ゲーの見知った顔がいるのは何とも不思議な感じだ。

 

「それで?PKKしてるお前がわざわざ最前線まで来たのは、顔見に来たってだけじゃないんだろ?」

「割とそうだったんだけど・・・。まあいいか、どうせなら一つ頼みがある」

「とりあえず聞くだけな」

「元々一人でやろうと思ってたから無理ならいいよ。とあるオレンジプレイヤーの集団を捕まえたい。47層で目撃情報があった。そいつら、あの“笑う棺桶(ラフィン・コフィン)”とつながりがある可能性がある」

 

 あー、最近悪い意味で話題のPK集団か・・・。SAO史上最大規模のPK集団らしい。

 

「上手くいけば一網打尽ってわけだ」

「たくさんPKerを狩れるとか考えただけでゾクゾクするね」

「おいおい、“幕末”で未だにログイン天誅されてる奴がぁ?一人でぇ?何するってぇ?」

「恐ろしく自然に煽って来るね・・・。あれは、前のログインから少し時間が空いて油断しただけだから!で、やるの?やらないの?」

「PKは放っておく訳にもいかねーし、いいぜ」

「じゃあ、明日の10時に47層の転移門前集合で。それと、明日は目立たない恰好で来るように。尾行する時に牛の被り物とか一発で君だってバレるから」

「おいおい、俺がその程度の身バレ対策してないと思ってるのか?」

「絶対ろくでもないだろうけど正直少し気になる」

 

 システムウィンドウから装備をいじる。不本意ながらSAOに来てから目立つことが多い。いつも同じ頭装備だと初めて会う奴からも声をかけられたりと結構面倒だったりする。だが、俺はその対策を手に入れた。見せてやろう。サンラク隠密モードを・・・!

 

「これが俺のウルフ・マン・ヘルム(白)」

「ぶふっ!名前からの予想裏切ってくるのやめて?ただの狼柄の覆面じゃん!」

「ふふ、驚くのはまだ早い。コイツにはまだ隠された機能がある。コイツは隠蔽スキルを持ってる。つまり俺自身のスキルと重ね掛けすれば索敵スキルにはまず引っかからない!」

「無駄に高性能・・・。でも目視されたらバレるよね?いや、盲点だったみたいな顔しないでよ。変態と一緒にいると思われるの嫌だし、何より変態すぎて目立つから却下。おとなしく覆面取りなよ」

「ぐぬぬ」

 

 顔を晒したくないっていう当初の目的以上に、ただの意地がそれを許さない。ええい、仕方ない!せめてもの抵抗にインテリジェンス・フェイスカバー(普通のメガネ)をかけ、ツバのついた黒いキャップ・・・キャスケットとか言うんだっけ?それを深く被る。

 

「ふ、ふーん。いいんじゃない?リアルどころかシャンフロですら顔見たことないけど、そんな顔なんだね」

「こんなところで外す羽目になるとは・・・」

「と、とりあえず明日はそれで来なよ」

 

 微妙ににやついてやがるコイツ・・・。

若干イラっと来ながらも、諦めるしかなかったのが悔しい。

 




はい、割と気づいていた方もいましたが、一層で出たサンラクを知ってる風だった人は京ティメットでした!

アニメ、漫画勢の方は申し訳ない。シャンフロwikiとかで情報&イメージ画があるからその辺を見るとわかりやすいと思います!



次回 2/4(日) 17時30分 投稿予定
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