ソードアート・フロンティア~クソゲーマー、神クソゲーに挑まんとす~ 作:melk
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◇→サンラク視点
◆→他プレイヤー視点
表記なし→神視点、通称地の文
間違えてても雰囲気で楽しんで!
<第一層迷宮区>
「武器の耐久値も減ってきたし、そろそろ帰るか」
SAOサービス初日のあの事件から半月、あれほどゲームクリアしてやると意気込んだはいいものの、未だに第一層は突破されていない。それどころか、ボスの部屋に繋がる迷宮区の探索すらあまり進んでいない理由は、これがただのゲームではなく、HP0=死につながるゲームだからである。要するに大半のプレイヤーは町の外に出てこない上に、フィールドに出ても少しHPが減っただけで宿に戻ってしまうため、最前線で探索しているのは極々わずかなプレイヤーだけなのだ。当然探索は進まない。
目が輝いていた背の高い少年は、今や現実と同じクラスで3番目くらいに持てる普通の高校生の姿に戻っている。しかし、外付けの輝きこそ失ったものの、神ゲーと言ってもいいほどのクオリティーと現実の死が絡むという最大級の理不尽を内包した神クソゲーに、瞳の奥は輝いていた。
◇
今日何度目かのコボルドとのエンカウント、最早驚きもクソもない。
遅すぎる振り下ろしを避けて、うなじのクリティカルを狙って・・・
「死ねぇえ!!」
一撃でポリゴンに変わる。何を隠そう、今の俺はイライラしている。一層最強の片手剣アニールブレード、それを作成するのに必要な素材を持つ敵が丸二日現れず、さらにはやっと完成したと思ったら、たった2度目の強化で武器が破壊され、もう一回武器を作り直す羽目になったのだ。
乱数はクソ、はっきりわかんだね。
作り直してから一晩経つも、未だにイライラが収まらない。そんな時にちょうどいいサンドバックがいるじゃないか。ストレスも発散できてレベルも上がって迷宮の攻略にもなる一石三鳥、というわけで俺のサンドバックになってくれ!
「あ、曲がる道間違えた。ってこれ、もしかしてボス部屋・・・じゃね?」
大きな石造りの門。さすがに一人でボスに挑むほど命知らずではないが、ちょっと中を覗いてみたい気もする。危ないか?いや、門を開けたまま遠目から見るだけならいけるか?知的好奇心に負け、門に手をかける。見えるのは6体くらいのコボルドとその中心にいるのはプレイヤーよりはるかに大きいコボルドの親玉みたいな奴。右手には斧、左手には盾を持ってる。腰に何かつけてるな、大きいがアイツにとってなら片手剣とか刀とかそんなとこか。あまり反りのない武器を持っているように見える。飾りじゃないとすれば途中で武器や攻撃パターンの変化はありそうだ。HPが減ったら攻撃パターンが変わるなんてゲームじゃありふれた話だ。
「盾持ちだし正面で引き付けて後ろから頭、足を狙うのが攻略法か?斧での横薙ぎ、振り下ろし、シールドバッシュ、もしかしたらブレスなんかもあるか?ぱっと見でわかるのはこんなもんか」
そう言えば、シャンフロでは世界観からの考察が攻略のカギになることが多かったが、SAOだとどうなんだろうな?
何となく似てるところが多いゲームだけど、NPCとかのAIはシャンフロに軍配が上がる。というかアレがおかしい、冗談を言ったり、罵り合いになったり、最早ゲーム内にしかいないということ以外ほぼ人と変わらない。だが、戦闘面で言えば割といい勝負してると思う。リアルな物理演算も再現しつつゲームならではの動きもいい感じで出来る。茅場昌彦とか言ったか、アイツもかなり凄い人なんだなと感心する。それはそれとして会ったら殴るけど。
「ま、考察とかは人に任せるとして、情報の流しどころは、アイツを呼び出すか」
周囲の安全を確認してから、キーボードを表示させてメッセージを入力する。あー、いちいち手動で入力するの面倒だな。このくらいのことなら思考入力でパパっと送りたい。フルダイブマシーンを使ってSNSとか掲示板とかの時には思考入力できるのに、未だにゲーム内のチャットとかだとキーボード入力しかできないのが多いの何とかしてほしいよな。
とりあえず送れたし、町に戻るか。素材でアイテム欄がいっぱいになってきた。
―
「合言葉は?」
「そんなの決めてねーだロ。本格的に頭おかしくなったのカ?」
「そういう雰囲気だろ。察せ。あとその言い方だと元々頭おかしいみたいじゃねえか」
「何も間違ってないだロ。初対面でいきなり滅茶滅茶美味しそうな肉を見せつけた挙句、全部一人で食べたこと忘れないからナ?」
「あれは最高に美味かった。自慢しながら食べる快感に目覚めそうになった」
「外道だナ・・・。ちゃんと入手法教えてくれたからいいけどナ。それで、情報提供っていうのハ?」
「ボス部屋を見つけた。それに遠くからだけど姿も見た」
「もう見つけたのカ!?三千、いやボスの情報の有用性によっては五千コルでどうダ?」
「いや、金はいい。代わりに二つ頼みがある」
「無茶なことはできないからナ?一人でボスに挑めとカ・・・」
「ほう、俺のことをそんな風に見てたのか。いっちょ行っとくか?」
「悪かっタ!冗談ダ!まずはその頼みを聞かせてくレ」
小柄な情報屋の女、アルゴとはそれなりに付き合いがある。「どこでそんな情報仕入れてんの?」っていうことも多いが、それ以上に「何でそんなに金持ってんの?」っていうところにビビる。いつ情報を売りに行っても、情報に見合った額をポンと出してくる。一層での金策なんてたかが知れてるはずなのに、今回も五千コルとかを簡単に提示してくる。前にそれを聞いたら、「大人のオネーサンには秘密が付きまとうものサ」といってはぐらかされた。仕返しに頬っぺたを、痛みは感じるが警告の出ないギリギリの強さで引っ張ってやった。
何というか、どことなく似てるんだよな。雰囲気が、あの兎に。
「一つ目は、情報と見解を教えてほしい。今のプレイヤーで高レベル層、11レベル以上がどれくらいいるか、その戦力でボスに挑んで勝算があるか。二つ目は、ボス部屋が見つかったっていう情報を他のプレイヤーに流してほしいっていう依頼だ」
「まあそのくらいなら」
「マップデータは送った。ボスの外見についてだが―」
「βテストでは―」
「装備が―」
「プレイヤーは―」
「なるほどナ。じゃあそれはオレっちから流しておク。肝心の最前線メンバーのレベルだガ、知ってる限りじゃ11レベル以上の奴はサンラクを含めて10人ってとこダ。さすがにデスゲームになっちまったから、レベルの上がり方は遅イ。今のままじゃ勝つのは厳しいだろうナ」
≪悲報≫サンラク、キャラメイクにかけた30分が完全に無駄になる。
サンラク「どうせなら現実より身長高くしてイケメンにしたろ」
茅場「ありのままでいろ」
というわけで、最初のSAOプレイヤーはアルゴでした!
そして一層のボス部屋発見者がサンラクに。(ゲームに関してなら)雑草メンタルなサンラクはソロでガンガン攻略してるのもあり、原作よりも早く見つけてます。でも残念ながら他の人はそうもいかないのです・・・。