ソードアート・フロンティア~クソゲーマー、神クソゲーに挑まんとす~ 作:melk
今話に関して、原作とは違う部分があるので、それでもいいよという方、今更何言ってんだコイツという方はお進みください。
◇
「オラオラ!数が足んないぞコボルド共!」
「私やることないんだけど」
安心しろ、もうすぐ出番はあるさ、きっと。
ついに始まったボス攻略・・・なはずだが、俺たちは依然として小さいコボルドの相手しかしていない。そういう役回りだから仕方ない、のだが俺のモチベーションを返せ。
「どうだ?今のところ」
「若干動きが変わってるけど、そこまで大きな違いはないな」
「逆に言えば若干違うんだな?」
「ほらアレ、足踏みしてるだろ?βテストの時は二回踏んだら咆えるっていうパターンが多かったけど、今は咆えてから三回踏んでる」
「ゲームのモーションとしての変化ってより、個体としての習性の変化って感じだな。あ、スイッチ」
「いきなり言わないでよ!」
アスナの叫びも聞かず、パリィして交代する。
キリトはβテスターだと判明したため、ボスの様子の観察に回している。というのも、俺がクエストを受けていた時に、NPCから「コボルドの王が最近代替わりしたらしい」って話を聞いたからだ。もしかしたら、これがβテストのときから変化しているということを示唆するヒントなのではという話になったため、あえてキリトには空きを持たせている。
βテストの時と仕様が違う、ボスが違うなんて話はいくらでもある。
「コボルド追加、6体!」
「スイッチ!」
「了解!」
アスナが後退して回復する間、俺がコボルドを引き付ける。6体に囲まれようが、今更被弾なんかするかよ。
6体目のメイスをかがんで避け、蹴りで距離を離し、AGIにもの言わせたダッシュで勢いをSTRに上乗せした交差斬りでポリゴンにする。
俺たちを別動隊とするなら、このエリアのボス《イルファング・ザ・コボルドロード》と戦っているのが本隊だ。
そして、本隊の方を向くと、安定した立ち回りで親玉コボルドの五段あったHPの最後の一段まで差し掛かっていた。
「サンラク、やっぱりあの武器は曲刀じゃない。ノダチ、つまり刀だ」
「やっぱりβとは違ったみたいだな」
「ああ、今やっと確信が持てた。サンラクの方がAGI高かったよな?本隊が気づいてない可能性があるから伝えてきてくれ」
「オッケー、その間こっち頼む」
未だこの階層のボス《イルファング・ザ・コボルドロード》と戦っている途中の本隊に向かって走っていく。今の俺のレベルは17、このメンツの中でもレベルはかなり高い方だ。さらにVITもかなり削ってAGIとSTRメインに振っているため、トップクラスで速いはず。はは、俺より速いやついたら出て来いよ!俺より脆いやつもいないだろうけどな!
しかし、キリトが確信を持つのが遅れたのか、他のメンバーが頑張りすぎたのか、ボスのHPは5段あったうちの最後の1段に差し掛かろうとしていた。
「ディアベル!アイツの武器が」
「GYAOOOO!!!」
「みんな下がれ!」
最後の1段のHPもほとんど削れ、バーの色が赤く染まる。ということは武器の交換が行われる。斧と盾を投げ捨て、手に持つのはやはり反りの少ない刀!
ディアベルは唯一下がらなかった俺の方を見て、小さな声で「後は頼んだ」とだけ言うと単身ボスに突っ込んだ。クソ、そういうことかよ!
一人ラストアタックを狙いに行ったディアベルの姿を見て、俺の心にも火が付いた。いいぜ、その蛮勇、嫌いじゃない。そうだよな、ただ勝つんじゃない、楽しんで勝たないとな!
「俺も混ぜろー!!!」
「え!?」
自慢のAGIでディアベルをも追い越し、俺が先頭になる。そりゃ、一番速いやつが突っ込んで来たら、こっちを警戒するよな!
完全にヘイトはこっちに向いた。さて、俺は刀のソードスキルを知らない。だから次の攻撃がどこから来るかも知らない。
面倒なことに激しく動いて攪乱してくる。恐らく、上からの切り下しか横薙ぎだろう。上か、横か?どっちだっていい。
「見てから回避余裕なんだよ!」
「嘘だろ!?」
ウェザエモンの攻撃と違って動きも見える、太刀筋も見える。そんなの俺には遅すぎる!横に跳び退き、俺の体など一撃で真っ二つにできるであろう切り下しを避ける。そして、一度離れたことで、助走のスペースができた。もう一回、ダッシュして慣性を乗せれば、俺のSTRでもアイツの刀に対抗できるはず。ダッシュ+ “ホリゾンタル”で刀を弾き飛ばすとまではいかずとも体勢は崩せた。さあ、こっから―
「あなたにばっかりいい恰好なんてさせない」
「そういうことだ。
チッ、二人とも追い付いて来てたか。最後の一撃だけは譲れない!まだ残りの体力的にあとソードスキルなら4~5発はいるはず。アスナ、キリトの後で俺が決める!
「 “リニアー”!」
「 “バーチカル”!!」
アスナの“リニアー”がクリティカルを出す。コイツは地味にほぼクリティカルしか出さないんだよな。細剣だからというのもあるが、あれは本人のプレイヤースキルだろう。リアルでもフェンシングとかやってたのか?
そして、キリトの“バーチカル”って、オイなんだその削れ方!やばい、次の一撃で決まる!再び“ホリゾンタル”を起動しながら走り出そうとしたとき、後ろから誰かに追い越された。
「もらったあああ!」
片手剣の初期ソードスキルの中で唯一の突進技“レイジスパイク”を決めたのは、あのディアベルだった。無情にもボスの数ドットしか残っていなかったコボルドボスのHPが完全に尽き、砕け散ると同時に「Congratulation!」の文字が大きく表示された。ラストアタックはディアベルだった。
「クソー、ラストアタックボーナス取れなかった!」
「ラ、ラストアタックボーナスってなんやそれ?」
「ボスに最後の一撃を与えた奴は良い武器とか防具が手に入るんだよ。こういうゲームならよくあるだろ?」
「お前ら、みんなそれ狙いだったんか?」
「「そうだな」」
「私は違うわよ」
「まさか、ディアベルはんもなんか?」
キバオウは信じたくないといった顔でディアベルを見つめる。普通に考えれば、別にそれで誰かを危険にさらしたわけでもないから、ちょっとせこい奴で終わりそうなところだが、どうもそれじゃ終わらないっぽい。
「まさか、ディアベルはん、アンタもβテスターなんか?だからワイらを利用してそのラストアタックボーナスとやらを取りに行こうとしたんか?」
ディアベルは答えづらそうにしている。それどころか、キリトを含めたβテスターと思しき人たちまでうつ向いている。
「だから、βテスターは嫌いなんや!いっつも自分たちのことばっかりでワイら初心者を食い物にするんや!」
その話は攻略会議で決着がついたはずなのに。しつこい奴だ。
このままじゃ今後の攻略にも影響が出そうだから仕方ない。ここは俺が何とかするしかないか。
「お前、本当にディアベルの意図に気づかなかったのか?」
「何?」
さあ、ここからがショータイムだ。嘘とでっち上げで作られた、涙なしには聞けない英雄譚をお見舞いしてやろう。
ステータス傾向
サンラク→AGI‐STR、次いでDEX。シャンフロの時よりはVITにも振ってる。ティッシュ
と厚紙くらいの差。
キリト →STR‐AGI。次いでVIT。火力厨。できることならSTR以外振りたくない。DEX
なんてなくなれと思いながらステータスを振る。
アスナ →初心者ならではの均等振り。どれが必要かわからないからどれも捨てられな
い。そのことでサンラクたちからいじられるまであと2日。
サンラクの強みの一つは、別ゲーの経験を活かせること。それは戦闘技術に限らない。