VS Instrumentality of Mankind   作:WarBoss

3 / 3
栗鼠と鼬鼠


Truth is stranger than fiction

 とある電子空間にて、周りの煌びやかで賑やかなネオンに彩られた電子掲示板やホログラム広告が映し出される光源の中で二体の奇妙な生き物(?)がお互い向かい合って何かを話していた。

 

「オマエから呼び出しがかかるとは珍しいこともあるもんだウォールナット、そういえばロボ太の奴はパクられたんだってな!」

 

「ああ、ボクが通報してやったからな」

 

「うはは、やるねぇ! 根は悪い奴じゃないんだが、ちとオマエに対抗心を燃やし過ぎていたからな

 ……で? 天下のウォールナット様が態々三下風情のマイナープログラマーに何の用だ?」

 

「謙遜するなスリム・シェイプ、キミは侵入ということに関してはロボ太どころかボク以上だと思っている」

 

 二体の生き物の片方は不格好なリスの着ぐるみで、もう片方は全身を包帯でまかれたイタチという風貌である。

 その不格好なリス──ウォールナットであるクルミは、一方の包帯だらけのイタチ──スリム・シェイプに語る。

 

「キミの実力は本物だ。 それはボクが保証する……だけど時たまキミは陰謀論に踊らされている所がある

 ──そう思っていた」

 

「ほう?」

 

 スリム・シェイプは面白い話になりそうだとニタニタと笑う。

 彼はクルミやロボ太とまた違った古いタイプのハッカーであり自身もハッカーではなく単なるプログラマーだと自称している。

 だがその古臭いやり方ゆえにツールやAIに頼りすぎている現代では突破が困難である部分を見透かすことがき、その実力ならばクルミやロボ太のようにあらゆる物事の裏を知ることが出来ただろう。

 それは無知でいることに我慢がならないクルミからすれば内心羨ましくもあったが、彼は噂話や都市伝説のようなものに探りを入れるばかりで他には興味がある様子がない。

 そういった部分にクルミはスリム・シェイプのことを残念な奴だと思っていた。

 ミカからの言葉を聞くまでは……

 

「スリム・シェイプ、キミがよく探っていた陰謀論の中に『統和機構』という組織の話があったな?」

 

「へぇ、ウォールナットがついにそれに触れるのかい! そいつはまた面白いことになりそうだ!」

 

「茶化さないでくれ、ボクも知人からその言葉を聞くまでは信じる気になれなかっただけだ」

 

「関わる連中ですらシステムだとかいって名前を伏せるんだ……その名を耳に入れることになってるってことはその知人が面倒な状況になってるってことか」

 

「そこまでマズイと思うか?」

 

「その名前を口にすること自体が連中には禁句(タブー)みたいなもんなんだよ。

 それを平然と名乗る奴は虎の威を駆ろうとしてる馬鹿なキツネか、虎よりヤベェ奴か何かだ。

 オマエが陰謀論と馬鹿にするのは何も間違っちゃいない、なにせそれらしい陰謀論の裏にはあのシステムが関わってることは珍しくない」

 

 急に口が廻り出すスリム・シェイプはイタチ特有のしなやかな動きで身体を躍らせ、頬に手を当てながら顔を近づけまるで内緒話だと言わんばかりのジェスチャーをしながら話し続ける。

 

「ついでに言っといてやるとだな、オマエがお粗末な展開にしてDAの露見やらを誤魔化した武器取引事件な……あれも恐らく統和機構が何か絡んでる」

 

「なんだと?」

 

「テロリスト云々はまだわからんが、少なくとも騒ぎを何かに利用しようとしてたのはたしかだ。

 冷静に考えてみろ、いくらなんでもいきなり銃を手にした素人が女子高生姿の相手に躊躇なく発砲して、しかもあのリコリスにドンピシャで命中させれると思うか?」

 

 あの時、武器取引事件の首謀者である真島がばら撒いた千挺の銃の一つを偶然手にした男がリコリスに発砲し相撃ちで死亡したという。

 だがたしかにおかしいことにクルミも気が付く。

 今までぬるま湯に浸かり平和を享受していた素人が女子高生相手に銃を向け、発砲して命中させたのだ。

 しかも少なくとも実戦訓練されたリコリスに……偶然にしては出来過ぎている。

 

「たしかに……DAは死んだ奴の身元を調べなかったのか」

 

「遺体は警察が管轄で引き取ってる」

 

「……つまり警察にも手が回ってると」

 

「そうさ、連中は警察だけでなく官僚や政治家どころかいたるところにいて、それだけでなく世界中に根を張ってるのさ……どうだい陰謀論っぽくなってきただろ?」

 

 ウヒヒと笑いながら揶揄うスリム・シェイプに若干の苛立ちを募らせつつもクルミは本当に問いたかったことを口にする。

 今になってクルミがこの簀巻きイタチに連絡を取ったのはこのためだからだ。

 

「あのアラン機関にも?」

 

「なるほどなるほど、たしかアラン機関について探ろうとご熱心にしてたなオマエさん

 その質問の答えはYESだぜ」

 

 ニヤリとした笑みを浮かべて答えるスリム・シェイプの言葉を聞きクルミは内心どこまでが本当なのか測りかねていた。

 そんな彼女を横目に見つつスリム・シェイプはさらに続ける。

 

「なにもかもがあのシステムのせいにするのは疑わしいって分かるが、まぁ聞け

 そもそも今のアラン機関自体がどういった連中なのかまでは正直オレもわからん」

 

 だが、とスリム・シェイプは話を続けた。

 

「アラン機関の歴史は古いが、元々は純粋に優れた人間を支援するだけのものだったんだろうさ、だが今は神から賜った才能とやらを半ば狂信的に支援している。

 これはオレ様の予測でしかないが恐らくそこを利用されて下部組織として組み込まれてるのかもしれねぇ」

 

「利用か……そのシステムとやらはアランチルドレンを集めてどうするつもりだ?」

 

 例えば『殺しの才能』を持つとされた人物を先兵としたりとか──

 結局は吉松の思惑通りにはならなかったが、もし千束が本来のリコリスのように殺すことに躊躇しない人物でそれをいいように利用されていたらと、クルミはあの千束の能力のデタラメっぷりを思い出す。

 

 だがスリム・シェイプはその想像を鼻で笑う。

 

「ふざけたことにアランチルドレン程度では態々奴らの構成員にする必要はないだろうな

 連中にとってのアランチルドレンってのはだな、単純にわかりやすくマーキングした監視対象でしかないんだぜ」

 

「なんだそれは……」

 

「連中は探してんだよ……神からの贈り物(ギフト)に満足せずに、その才能を『突破』させてしまう奴をさ」

 

 

 

 

 

 

『返されてしまったよ、私はもういらないみたいだ』

 

 ミカは吉松シンジとの二人が最後に交わしたはずの会話思い出す。

 その言葉の続きの意味を、今なら理解できる気がするのだ。

 

『千束の才能は神から贈られたものだ。 いずれその枠を超えたとしても誰であれ人の手で奪っていいものじゃない

 ……だからこれからも連中から守ってやってくれないか』

 

 その時、連中とやらが何者なのかを聞いてしまった。

 裏の世界でも顔が広いはずのミカでも知りえなかった組織の名を

 そしてそれを吉松シンジは知っていた。

 

 




放置されてた執筆途中だったのを今更投稿ってマジ?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。