その女〝動物好き〟 - the another order - 作:浅学寺のえる
時は
エイダ・フォーライトという女
妖術使いと一戦交え、見事 子供を救い出す
だがしかし!
哀れエイダは濡れ衣着され
追われに追われて空の上
村への滞在
余った旅程は なんと十日
これで帰れば 笑い者 どうにか時間を潰せぬものか?
さて、エイダという女 ここで己を省みる
守りの手段は数あれど 戦う手立ては余りに少ない
されど修行は大嫌い 安易な力は大歓迎 しからば自ずと出てくる答え
一つの妙案携えて 目指す所は〝シモツキ村〟
〝名工〟霜月コウ三郎の 住まう村でございます───
ー シモツキ村・崖の上 ー
「と、言う訳でアタシに刀を下さい! コウ三郎さん!」
「……修行しろ。あんな小せェガキだって修行してんだぞ」
「たぁ! やぁ!」
おお! 崖下でゾロっぽい男の子が修行してる。巻きわら相手に、竹刀を使って二刀流。
まだ、真剣を貰う前みたい。
衰えたなんて言っても〝名工〟霜月コウ三郎の打った刀だし、やっぱり凄い刀なんじゃないの?
きっと格好いい名前もあるんだろうなぁ。
「あの、その腰に差してる刀って……」
「あ? こいつらはナマクラだが、お前にはやらん!」
「それを頂くなんてトンデモない! ただ、名前を知りたくて」
「んなモンねェよ」
「ええー!? 勿体無い! 絶対名前付けた方がいいですよ!」
「なんなんだ一体!?……あー、こっちが〝ナマ〟でこっちが〝クラ〟だ」
「却・下!!」
適当に付けないでよ!?
そんな名前だと、ミホーク戦の前に砕け散っちゃいそうだよ?
確かにアニメオリジナルだと、過去編で折れちゃってるってシーンがあったけどさぁ。
「いいから帰れ、お前さん」
「あーっ、待って! せめて触らせて! 折れちゃう前に!」
「そう簡単に折れるか!?」
「おおー! 良くわかんないけど、凄そう」
「勝手に触んじゃねェ! 刀の良し悪しも分からねェ小娘が……」
「うーん、なんて言うか〝執念〟って言うのかな? まだまだやれるぞって感じが伝わってくる!」
「執念だと……?」
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急にコウ三郎さんから、刀を振ってみろって指示されて
仮称〝ナマ〟を思いっきり振ってみたら……「素手で闘った方が強いだろ」って言われたの。
でもアタシだって物作り職人の端くれだから、戦闘で手を痛めたくないって気持ちを伝えたんだ。
「へっ、要するにお前さんは闘いに向いてねェんだよ」
「でも……闘わなくちゃ、大事な人達を護れないから……」
「〝
「え?」
「おれが前に打った刀だ。アレなら、お前さんの性に合ってるだろ」
「くれるの!?」
「ここにはねェ。どれ、一筆書いてやる。それ持って、あそこの長ェ山に行ってみろ」
ー
コウ三郎さんによると、ここに鍛冶修行中の弟子……を自称する男の人がいるみたい。
その人に貸してあげてる〝長十郎〟って刀を、アタシが貰えるみたいだけど───
アタシの存在に気付かず、ずっと刀を打ち続けてるこの人。
多少若いけど、ローグタウンの武器屋さん〝いっぽんマツ〟だよね?
特徴的なあの髪型は〝汗バンダナ〟で隠れてるけどね。
「すみませーん! 長十郎くださーい」
「ひっ!? 借金取りか!?」
「はい?」
いっぽんマツ という男
実家は武器屋 なんと創業200年
そんな老舗を受け継ぐために つらい修行の旅に出る
鍛冶の修行を続ける
頼み込むこと三日三晩 晴れて弟子と認められ
長十郎なる刀を預かり 山に篭って修行三昧
されど娯楽が恋しくて 山を降りては博打三昧
負けに負けたり いっぽんマツ
哀れ 長十郎なる刀 借金の
べべんっ!!
「いや、〝べべんっ〟とか言ってる場合じゃないでしょ!」
「あ? すまねェ。だからよ、ここに長十郎はねェんだ」
コウ三郎さんからの手紙を渡したら、勝手に始まった謎の語り。
預かり物を借金のカタに取られるって、ヒドイ。
今は長十郎を取り戻す為に、売り物用の刀を一心不乱に打ってたみたい。
アタシの事情を知って、一本やると言ってくれたけど……
やっぱり〝長十郎〟が気になるからね!
「アタシ、借金取りに事情を話してみる。その人は何処に?」
「それが最近めっきり見かけねェんだ。風の噂じゃ〝キューカ島〟っつう所にいるみてェなんだが」
キューカ島って、原作で Mr.3ペア が休暇を過ごしてたリゾート地だよね?
なんかイヤな予感がする。
「あの、まさかとは思うけど……借金取りの髪型って3?」
「おう! 知ってたのか嬢ちゃん。名前はギャルディーノ。巷じゃ〝闇金〟って通り名だ」
「闇金って分かってて借りちゃダメっ!!」
ー キューカ島 ー
「な、なぜ私が〝闇金〟ギャルディーノだと分かったのだガネ!?」
「髪型」
ピンキーに乗ってキューカ島に来てみたんだけど、その髪型のおかげで着陸前に発見できたよ。
でもこの人、なんかソワソワしてるんだよね?
まるで誰かから逃げてるような雰囲気。
「それでね?〝長十郎〟って刀を返して貰いたいんだけど」
「売ったガネ?」
「……なぜ?」
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ギャルディーノの語りが始まっちゃったけど、簡単にまとめるとこう。
1.海軍の目が厳しくて〝闇金〟稼業ができなくなっちゃった。
2.さらに能力者だとバレてしまったので、教会の影響力が低いキューカ島へ来た。
3.長期の滞在費に困って、高値で買い取ってくれそうな借金のカタは全部手放した。
4.長十郎を買い取ってくれたのは〝道化〟のブギー。
はぁ〜、次はブギー?
なんだか、このままタライ回しにされそうな予感……。
「まったく、こっちの身にもなって欲しいんだガネ! 手配書が出回ったせいで、落ち着いて紅茶も飲めんガネ」
まだ海軍への悪口を言ってる。一応アタシも元・海軍なんだけど。
これは……千載一遇のチャンスかもね!
「よく聞くガネ! 私のモットーは……」
「〝姑息な大犯罪〟でしょ?」
「ど、同志ィ!?」
「違います……けど、紹介したい職場があるの。一緒に来て♪」
ピンキーにギャルディーノを咥えてもらって、目指すはブギーの拠点!!
ー オレンジの町 ー
「ぜェ、ぜェ、なぜ私を鳥の背中に乗せなかったのだガネ!?」
「ごめんね。ピンキー、男の人は乗せない主義なの」
《けっ、ロウソク人間なんて咥えちまったからベタベタするぜ》
ここがブギーの拠点。原作でも登場した〝オレンジの町〟
原作と違う所は、ブギーの一味が住民に大歓迎されてる事と……
町の中心にある巨大サーカステントのおかげで、観光客が大勢いるってことだね。
丁度サーカスが始まる時間だったから、ギャルディーノを連れて只今 見物中♪
「凄い! みんな芸が派手になってるー!」
「こんなモノを見せて、どうする気ガネ?」
「……貴方、人を騙すのが趣味でしょ?」
「やはり同志カネ!?」
「はぁ〜、周りの観客を見て?」
「ガネ?」
観客はみんな喜んでいる。子供はもちろん、大人まで童心に帰ってサーカスを楽しんでいる。
ブギー達の芸は〝タネ〟がバレバレな芸も多いけれど、誰もが純粋に楽しんでいるんだ。
これがエンターテイメント。
それこそ、子供騙しのような芸でも演じる能力が高ければ、たちまち一級の娯楽に昇華する。
──人をどうせ騙すのなら、楽しませた上で向こうから進んでお金を払う形が最高じゃない?
「ふん、綺麗事を……そんな理想は、現実には存在しないガネ」
「ここに存在してるでしょ?」
「このサーカス、見物料が たったの3,000ベリー。採算が取れずに、すぐ破綻するガネ」
「ふむふむ。貴方は、お金に詳しくて。ブギー達は、お金の事に疎い」
「海賊なんてそんな連中ばかりだガネ?」
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「ぎゃははは。助かったぜ、エイダ。金勘定できる人間は大歓迎だ!」
「……何故か騙されてる気がするガネ」
「どうして? みんな得して、誰もが幸せでしょ?」
ギャルディーノは指名手配されてるけれど、七掠撰の庇護下にいる内は海軍も動けない。
ブギーの所に居れば、教会の〝能力者狩り〟だって問題なく跳ね除けられるしね。
もちろん、アタシも嬉し……あ! 念の為確認しとかないとね。
「ねぇ、誰かの苦悶に満ちた表情や、絶望に打ち
「そこまで外道じゃないガネ!? その考えに思い至る君の方がよっぽど──!」
よかった。まだ若い頃のギャルディーノだから〝美術〟の価値観が違うみたい。
これで将来、ナミが ろう人形にされかけるフラグが折れたね♪
ついでに〝ケスチア〟フラグまで折れてたら最高!
《相棒よぉ、サギ師をペテンにかけてエラく上機嫌だなオイ》
う……口八丁でギャルディーノを騙したみいで心苦しいけど、妹の安全第一!!
「んで? おめェの用事は〝長十郎〟って刀だったな……」
「あ、買い取った額に色を付けるよ? アタシ、こう見えて結構稼いでるの!」
「……ここには無ェ」
「あはは。やっぱりね!!」
ー アマゾン・リリー 九蛇城 ー
まさか、ブギーから〝長十郎〟を奪った相手がハンコックだったなんてね。
数日前に、上目遣いで頼まれたからノリであげちゃったらしいの。
ブギーはその時の事を思い出しただけで、デレデレした顔になってた。
アタシの事は全くそういう目で見てこないクセにっ……なんか悔しい!
さてと。ブギーが書いてくれた紹介状のおかげで、お城には通してもらえたけれど。
ここからどう交渉しよう……取り合えず、石化だけは絶対避けないとね。
「誰じゃ? わらわの通り道に子猫を置いたのは?」
「っ! 鉄塊!!」
「……そなた、何をしておる?」
やっちゃった。
子猫が蹴りとばされると思って、体が勝手に動いちゃったよ……。
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「ふふふっ♪ 何と便利な能力。サロメまで懐いてしまうとは驚きじゃ」
アタシの方が驚いたよ。
この世界のハンコックが〝動物好き〟だったなんてね。
急に子猫を抱き寄せたアタシにシンパシーを感じてくれたみたいで、一気に打ち解けちゃった。
アタシも口が軽くなって、ついつい〝ヒソヒソ〟の能力をバラしちゃった……まさかアタシ、魅了されてる!?
気を引き締めないと!
もう丸一日滞在してて、食事はもちろん、一緒に湯浴みしたりと至れり尽せりなんだ。
可愛い動物も沢山いるし……このままじゃアタシ、ここに永住しちゃう!
幸い〝ソロモン〟の能力に関しては秘密にできてるんだし、早く用を済ましてお暇しなきゃ。
《蛇姫様は、ご機嫌です。交渉するなら今ですよ?》
《ありがとうサロメ》
「ねぇハンコック。ブギーが持ってた〝長十郎〟って刀の事なんだけど……」
「ん? ああ、例の刀……あれは猫が持ち去ったのじゃ」
「猫?」
「数日前、猫の様な男を捕らえたのでな──」
ふむふむ。
その男の人に首輪を付けて飼おうとしたと。でもここは男子禁制。
手始めに、例の刀を使って去勢しようとしたら……隙を突かれて、刀ごと逃げられたと。
どうしよう!? さっきまでは、シンパシー感じちゃったけど、今はドン引き。
〝長十郎〟を持ち去ったのは、ミンク族か
ここに来て手掛かりが無くなっちゃったね。
「そんな事より、わらわと動物を愛でに行かぬか?」
「行く〜♪……あ、違うの! 今のは口が勝手に!」
サンダーソニア と マリーゴールドの妹2人が遠征中だからか、やけにアタシと一緒にいたがるなぁ。
妹が居なくて寂しいのは凄く共感できるんだけど……アタシは妹じゃないよ?
確かにこの世界のハンコックは、今の段階でもう25歳だから年上ではあるの。
意外と優しい所もあるし、顔にある蛇のタトゥーもカッコいいし──もう少しだけ滞在しようかな?
ー シモツキ村・崖の上 ー
あれから少しだけ滞在して、思わぬところで手掛かりを掴んだんだ。
情報をくれたのは九蛇の黒豹〝バキュラ〟……原作だとルフィにワンパンで倒されちゃった子。
そのバキュラが『シモツキ村に用事ができた』っていう猫の人の独り言を聞いてたの。
ここにきて原点回帰!
得られた物も多いから、無駄な回り道でも無いんだけど……どっと疲れがでちゃった。
「ペッ。なんだ、ゆガラ もう刀は打たないのか」
「ああ、テメェの持ってる剣で満足しておけ。そいつも中々の上物だぜ?」
さっそく発見。コウ三郎さんに用があったみたい。
でもツバ吐いたりして、なんかガラ悪いなぁ……それにあの模様。猫っていうかジャガー?
まさか、ペドロ?
うん、多分合ってる。イイ声だし。
「おお、ようやく帰ってきたか嬢ちゃん。あん? 長十郎はどうした?」
「えっと、そこの人が盗んでると思うんだけど……」
《なんだコイツ? 急に来て、盗人扱いとは失礼な女だ》
《!? あ〜、そっか。そう言えばミンク族も能力の範囲内だっけ》
《コイツ、直接 脳内に!?》
やばっ。テレパシー漏れだ。
最近、ピンキーとのテレパシーが増えたせいで油断してた《他人のせいにするな相棒》ごめん。
もう! わざわざキューカ島からツッコミ入れなくてもいいのに。
ギャルディーノに会って以降ピンキーはキューカ島を拠点にしてるの。
移動の時だけ召喚するって形。
《ハッハー、安心しろ相棒。バカンスを楽しんだら、ちゃんとココヤシへ帰るぜ?》
バカンスって言っても、大きな木の上で日光浴してるだけでしょ。
「おい、黙っちまったがテメェら知り合いなのか?」
「ゆガラ……いや、貴女はミンクの伝承にある〝王〟かもしれんっ!」
「待って待って! アタシ、エイダ。貴方はペドロで合ってる?」
「やはり! 全てお見通しとは恐れ入った」
ああ、まただ。
アタシ、疲れてるのかな? さっきからミスってばかり……
《疲れるのも当然だぜ相棒? 蛇姫と遊びすぎて、ここ3日間まともに寝てないからな》
ウソ!? 昔から熱中すると時間を忘れちゃうクセは合ったけど、まさか3日も!?
前はそんなに寝てなかったらフラフラだったのに。
海軍の訓練で感覚が狂っちゃってるなぁ。
「王! 是非、モコモを治めて頂きたい!!」
「え、モコモ?……う、我慢我慢! アタシは王じゃないの!」
魅惑の楽園モコモに一度でも訪れちゃったら、きっと出られなくなっちゃうからね。
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ペドロはアタシと同い年。
モコモを飛び出して、今は一人旅の最中。
王が不在のモコモに新たな王を据えるべく、伝承にある〝動物を統べる王〟って存在を捜す旅みたい。
アタシの事を、王に仕立てあげようとしてくるペドロ。
確かに伝承の内容を聞くと〝ソロモン〟の特徴と一致しちゃうんだけど……
アタシの能力は、テレパシーが少し使えるだけってカンジに誤魔化しておいた。
「だがな、姫。おれはアマゾン・リリーになど寄ってないぞ?」
「あのね。姫でもないんだけど」
「その力を伸ばせば、いずれ王へと覚醒するだろう。無礼な呼び方はできん」
さっきまでツバ吐いたりして態度悪かったクセに……
でも、ハンコックから長十郎を盗んだ犯人はペドロじゃ無かったのかぁ。
ここで完全にお手上げかも。
なんだかペドロが着いてきちゃいそうだし、もうピンキーを喚んで帰っちゃおうかな。
「姫、コウ三郎のジーサンが誰かに絡まれているようだ」
「え? 誰だろう。腰に刀を差してる?」
あの刀の鞘──ピンク色で、桜の模様が付いたデザイン。
原作に登場してた筈……でも、誰が使ってたのか思い出せないなぁ。
顔を見ても全然記憶に引っかからないし勘違いかもしれないね。
「ハハハ、隠してもムダだぜジーサン? あんたヒノモトから流れてきた侍なんだろ?」
「さてな」
「この刀を見てみろ! シモツキ村に住む、伝説の刀工が打ったって逸品だぜ?」
「……いっぽんマツめ。余計な事、吹聴しやがって」
「侍は見つけ次第、教会が
なんかピンチっぽい!? しかも、教会関係者?
コウ三郎さんは自分で戦おうとしてる……実際、剣豪としても強いんだろうけど
あの人原作と同じ流れだったら、あと2〜3年以内で死んじゃうんだよね?
死因は不明だけど、無理させられないよ!
「待ちなさい!」
「よせ姫! その男、相当の手練れだぞ!?」
《例のミンク族の男と……姫だと? なんだこの女。ミンク族には見えねェが?》
《!? またテレパ「おっと、危ない危ない」
この人……今は人型だけど、多分
テレパシーが漏れないように気を張らなきゃ。
《おいおい。侍なんて目じゃない、大手柄を見つけちまったぜ! コイツの能力はおそらく、ヒソヒソの実……雑魚能力のクセに上層部が何故か警戒してる例の案件だ。捕まえりゃ、おれは一気に昇進出来るぜ。そうすりゃルッチの野郎なんて、遥か格下になる。上に立つのは、この〝バイガオ〟様だ!》
もう手遅れだった。
しかも、めっちゃテレパシー送って来てるし……。
おかげで正体が分かったよ。バイガオって名前は、元CP9〝フーズ・フー〟の初期設定名。
顔を見ても分からない訳だよね。
ピンキーを喚べば、この場だけは離脱できるかもしれないけど……アタシの情報を持ち帰られたらアウトなんだ。
さて、教会の暗部は〝六式使い〟って話だし……鉄塊だけでどう戦おっか?
「姫、下がっていろ。ようやく分かった……ここが、おれの
「早まらないで!? 貴方の出番はずっと先! 出来れば、その時も死なないで欲しいけどね!」
「仲間割れか? 安心しろ、殺しゃしねェよ……ちと試し切りはするがなっ!」
「気を付けろ嬢ちゃん! そいつの持ってる刀が〝長十郎〟だ!!」
「え?」
フーズ・フー もとい バイガオが鞘から抜いた刀身は、見事な輝きを放つ──素人目でも逸品と分かる代物だった。
そして、素人目でも〝ナイフ〟と断定できる程に、刀身が短かった。
「鞘のサイズと合ってないじゃん!?」
「わかってねェな、そこが〝
「癪だがソイツの言う通りだ。短刀だが銘は長十郎。ひねくれ者にゃ、ピッタリな一品よぉ!」
コウ三郎さん……この前、アタシにピッタリな刀って言ってたよね?
なんか助ける気が失せちゃった。
ま、結局アタシ自身が狙われてるから、戦うんだけどねっ!!
「やる気か女!〝
「姫!」
《大丈夫。ペドロは見てて?》
これは、急所に当てる気のない脅しの斬撃。
さっきからテレパシーで、アタシを侮ってるのが丸分かりだからね。
アタシの能力、戦闘じゃ役に立たないって思ってたけど……
相手が能力の範囲内だったら〝見聞色〟を通り越して〝エネルの
おかげでバイガオの強さも、嫌ってほど分かっちゃった。
下手に鉄塊を使ったら、警戒されちゃうし。このまま油断しててもらおう。
「ハハハ! どうした!? 怖くて動けねェか?」
「うぅ……いや!? 来ないでっ!」
「ヘッヘッへ、最初の勢いはどうした?」
「ぁ……っ……」
「あン? 何言ってやがる?」
「〝
「な……ん、だ?」ドクンッ!!
今のアタシじゃ、どうやっても勝てないんだから──仕方ないよね。
これからよろしく、バイガオ。
あとさっき、ドクンって音がコッチにまで聞こえて来たけど。心臓大丈夫!?
ー シモツキ村・海岸 ー
「その男、本当にもう敵意は無いのか?」
「バイガオ、気分はどう?」
「問題ねェぜ、ご主人サマ」
「……えーと、今までと物事の考え方が変わったりしてない?」
「そうでもねェさ。仕える
喋り方とか性格は変わってないのかな?
出来れば洗脳みたいな事はしたくなかったんだけど……
アタシに対して、忠誠心みたいなモノはあるみたい。
これで指輪が2つ。
そして、今から3つ目が増えるのかぁ。
《ねぇ? 別にあなたとは契約しなくても大丈夫じゃない?》
《何を仰る、我が王。我ら一族がどれ程待ち侘びた事か……!》
《でもねぇ。どうせこれからも、バイガオと一緒に行動するんでしょ?》
《それは仕事ですから。しかし、王命とあらば何を置いても優先させるのが臣下の──》
《ああもう! 分かった契約するよ、
バイガオが移動用に使ってた水陸両用カメ〝バンチ〟
原作だと、ロビンがミス・オールサンデー時代に乗ってたね。
バンチの祖先は、遥か昔にアド・オリーチェの使徒だったらしいの。
以来、一族は教会に協力しながら〝ソロモン〟の能力を覚醒させる人間を待ち続けてたんだって。
えーと、亀の耳は……目の後ろあたりだっけ?
「〝
《おお!! なんたる誉! この命尽きるまで、懸命にお仕えさせて頂く所存!》
それ、友達の態度じゃない。
耳打ちすれば能力が発動するみたいだけど、相棒枠のピンキー以外はこんな感じになっちゃうの?
バンチは最初からこうだったし……良く分からないなぁ。
「姫……いや、エイダ様。モコモの王には、なって頂けないのか?」
「呼び捨てでいいよペドロ? モコモへは、いつか行きたいけど……王様は勘弁して?」
「残念だ。おれの旅もここまでか」
「どうして? 別に旅は続けてもいいんじゃないの?」
「伝承が真実かを探求する旅だ。もう求める答えは得た」
そっか……原作でもペドロは探検隊として海に出たんだったね。
それで〝
この世界だと1人で旅してるみたいだけど、真実の探求っていう根幹は一緒なんだね。
《ペドロ。重要な事だから、貴方だけにテレパシーを送るね》
《一体なにを?》
《この世界には、矛盾している歴史があるの》
《それは……
《そこまで昔の事じゃなくて、800年前──レッドラインが現れた時代の話》
アタシだって、ヴィオラとの考察で偶然 気付けた矛盾。
これを話せばペドロの旅は終わらないと思う。
今ここで探求の旅を止めてしまったら、近い将来に後悔すると思うから……。
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一通り説明したけど、ペドロはまだ少し腑に落ちないみたい。
こうなったらダメ押し! 絶対、旅立ってもらうんだから!
「話は変わるけどね? もし珍獣島って場所が存在するなら〝動物王〟がいると思うの」
「動物王!? それに珍獣島なんて名も初めて聞いたぞ?」
「アタシも実在するって断定できないけど……世界は広いんだし、きっと何処かにあるよ!」
劇場版「珍獣島のチョッパー王国」。そこで登場する〝動物王キリンライアン〟
この世界でも、シキ と バレットの話題は耳にした事があるし、ガスパーデに至っては、海軍の練兵場で実際に会ってるからね。珍獣島が存在したっておかしくない。
そうそう、地球で言うマダガスカル島なんて有力候補だね。
「おい、ご主人サマ。話を割って悪ィが、そのペドロって奴は教会にマークされてるぜ?」
「何故おれが!?」
「各地で過去の伝承を調べているだろう? 教会のお偉方は、それが気にいらねェんだとよ」
「やっぱり、暴かれたらマズい歴史があるのかも!」
「へへ、嬉しそうだな ご主人サマ? 気が合うぜ、おれもそれを知りてェんだ!」
あ、軽い気持ちで歴史に踏み込んだら原作フーズ・フーみたいに痛い目を見るかも。
歴史探求は慎重にやらないとね。
それから少し話し合って、みんなの動向が決まった。
ペドロは、教会の影響が少ない地中海の外で〝珍獣島〟を探す旅へ。
バイガオ と バンチ は教会へ戻って、今まで通りに任務を熟す生活へ。
教会に何か動きがあれば、テレパシーで教えてくれるみたい。
そしてアタシは──
「ようやく話し合いが終わったか。日が暮れちまったぜ」
「待たせてゴメンなさい、コウ三郎さん」
「構わねェ。こうして無事に〝長十郎〟を手に入れたようだしな」
「あはは。ひねくれ者にピッタリな刀なんでしょ?」
「最初の持ち主が
ふーん。この刀は、コウ三郎さんが若い頃に作った物だったんだ。
知り合いの天邪鬼さんは、怪力過ぎて刀を振るとすぐに折っちゃう人。
だから、刺突がメインになる短刀を使わせることで折れにくくしたんだって。
でもこの話って、アタシにどう繋がるの?
「お前さんの怪力でも、ソイツなら折れねェだろう」
「か、怪力? アタシが!?」
「……まあいい。鞘の方も
「え? お、おもーい」
「さっきまで軽々と振り回してただろうが! その馬鹿力で壊すんじゃねェぞ?」
「大事にします!」
壊さない様、大切に使おう……怪力でも馬鹿力でもないけどね!
ー 現在・ヴィオラの私室 ー
「こうしてエイダこと──アタシは、新たな仲間と〝長十郎〟を手に入れたのでした。べべんっ♫」
「ねぇ、エイダ。あなたの旅程は2週間だったわよね?」
「そうだけど?」
「ピンキーに乗ってフーシャ村までは4日。往復で8日ね。今の話は残りの6日間ってことよね?」
「そ、そうだけど?」
「シモツキ村、キューカ島、オレンジの町、アマゾン・リリーはそれぞれ近い位置にあるわ」
「……うん」
「アマゾン・リリーに4〜5日間滞在したわね?」
「…………」
「仲良くしたのね、アタシ以外の女と」ギロ!!
ヴィオラがハンコックを嫌ってたのは知ってたけど、この反応はおかしくない!?
なんでアタシが浮気したみたいになってるのーっ!?
それに迫力のせいか〝ギロ!!〟って幻聴まで……いやいや、あれホントに鳴ってたよね!?