その女〝動物好き〟 - the another order - 作:浅学寺のえる
ー セレモニー・当日 ー
うーん、ちょっと派手だけど……折角のお祝いだし!
前にハンコックからもらった紅いチャイナドレス。こういう機会が無いと着れないしね!
今日はクリスタルも見えるように付けて、と。
よし、準備万端♪
「おねえちゃん、こっち向いて!」
「どうしたの、ナミ?」パシャ!
「あれ? さっきまで笑ってたのに……」
「あはは。我ながら無愛想な写真だなぁ」
「もう一回笑って!」
「そんなヒマないよ。もう皆、広場に集まってきちゃったし!」
アタシ達の家は広場の目の前に建ってるから、外にいる大勢の話し声が聞こえてくる。
ノジコとベルメールさんも先に来てるみたいだし、急がなきゃ!
「えー、では……エイダ、ノジコの2人に乾杯!」
「「カンパーイ!!」」
わあああぁぁああぁ
もっと簡素なお祝いだと思ってたのに、原作でアーロンの支配が終わった時みたいな盛り上がり!
ゴサの町の人達も大勢参加してるみたい。キュロス一家は……来てないかぁ。残念。
それはそれとして、広場のテーブルに並んでる料理美味しい! お酒も美味しくて最高♪
あ、この身体でお酒を飲むのって初めてかもね。
って、ナミとノジコのグラスに注がれてるのもお酒じゃない!?
「2人とも。これはお姉ちゃんが飲むからね♪」
「「あ、ズルい!」」
「ジュースだってあるでしょ? まったく、誰が注いだの?」
「「ベルメールさん!」」
あはは〜。やっぱりね! 原作でも、子供の頃のナミ達にお酒を飲まそうとしてたしっ!
あれ? そのベルメールさんが見あたらないけど、ドコ?
「ベルメールなら、家にある秘蔵の酒とやらを取りに帰ったぞ」
「あ、ゲンさん! でも、そんなお酒あったかなぁ?」
「なんでも、みかん畑に埋めて寝かしているらしいぞ?」
「おねえちゃんが〝かいぐん〟に行ってる間、たくさん買ってたの!」
「こらナミ! それ、お姉ちゃんには秘密でしょ!?」
なにソレ、初耳なんだけど!
もう! 普段ケチなのに、アタシに黙って無駄な買い物を!
あと、お酒の保管方法それであってる!?
確か……ワインは一滴の泥水でアウトみたいな話があったと思う!
「はっはっはっ! あのベルメールが、大量の酒を村人に振る舞ってくれるとは、明日は雪が降るかもしれんな!」
「も〜! そんなに量があるなら、ゲンさんも手伝ってあげて? きっと待ってるよ♪」
「……やけに上機嫌だなエイダ。まさか酔ってるのか?」
「えへへ。これくらいで酔うわけないでしょ? このアタシが!」
「充分酔っとるだろう。普段の仏頂面が嘘のように笑いおって」
「もう! 酔ってないってば。ゲンさんの〜、わ・か・ら・ず・や♪」
「……ごほん! さて、ベルメールを手伝ってくるか」
あー! 赤くなってる♪ ゲンさんカワイイ〜。
ベルメールさん秘蔵のお酒も楽しみだなぁ。ま、この会場にもお酒は浴びるほどあるんだけどね!
原作みたいに、みんなで夜通し飲んでも大丈夫なくらいあるもんね♪
え……まさか、コレ明日の朝まで続くの!? 今まだ、昼下がりだよ?
まったく! みんな一体何時間飲むつもりなの。付き合うけども!
って、あれ? なんかアタシ、注目浴びてる?
「ついに本性を現したわ」「本命はゲンさんだったのかしら?」「ベルメールも気の毒ね」
ヒソヒソ ヒソヒソ
「なあ、酔ってるとアイツ……」「ああ。見た目だけは良いんだしな」「エロい」「それだ!」
わぁ! 女性陣、男性陣、どっちも酷い事言ってるー。
前から〝渋オジ好き〟とか〝妹狂い〟とか色々と誤解されてるんだし……
良い加減、ここは一つ訂正しとかなきゃね!
「みんなー!! アタシは、ノジコも、ナミも、ゲンさんも大好き!」
「おねえちゃん?」「お姉ちゃん、落ち着いて?」
「もちろんベルメールさんも、ドクターも、みんなの事も!!」
「なんだ一体?」「酔っ払いの戯言でしょ?」「浮気宣言か?」
「だって! アタシが大好きなのは〝ココヤシ村〟だから!! この村の人、み〜んなっ大好き!!」
言っちゃった〜。恥ずかしい……!
ワー ワー
おおー。なんか盛り上がってる!
でも、ベルメールさん と ゲンさんは居ないみたい?
ナミとノジコは、こんなに沢山居るのに〜。
あれ? アタシの妹が4人? ううん、8人も居る! しあわせぇ〜♪
「おねえちゃん、フラフラしてるよ?」
「ドクター! お姉ちゃんを診て!」
「こりゃいかんな。もう飲むなよエイダ?……明日、地獄を見る事になるぞ」
「アタシは後悔しないの! 過去を悔やむより
「おねえちゃん、またそれ言ってるー!」
「ちゃんとドクターの言う事聞いて! お姉ちゃん」
「う〜? らいりょぶ。おいし〜♪」
あれ? 世界が回ってる……?
これってホントに、酔っ払ってるのぉ?
前世じゃ、全然酔ったコトないから、油断してた……。
まさか、ジョッキ10杯程度で……こんな、に────
「ゼハハハハ! 闇に飲まれろ! 麦わらァ!……ってコトで、渋オジランキング堂々の第一位は〝黒ひげ〟マーシャル・D・ティーチでした〜!! 」
「似てないよー。そもそも、女にあのボイスは出せないでしょ?」
「モノマネはどうでもいいのっ! それより、一位だよ。一位! 感想は?」
「男の趣味わるっ」
「ちっがーう! そういう対象の話じゃないの。声だから! シブ声!」
「分かってるって。酔ってるせいで、さっきから血迷ったコト言ってるんでしょ?」
酔ってない! アタシがこの程度で酔うはずないでしょ!?
それにティーチなんて声以外いい所ないし! 性格なんて最悪じゃない。
え? 最も海賊らしい? アンタこそ趣味悪いんじゃ……?
はぁ!? 声が同じなら、オマツリ男爵にしろって!?
ぜんっぜん分かってない! その理屈でいいなら、むしろアタシは征服王イスカンd─────
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夢?
思い出したく無かったような……そうでも無いような。
とりあえず最後、ONE PIECEじゃなかったし!
ま、おかげで前世の親友の顔を思い出せたけど。
う。なんか頭がグワングワンしてる。
ここは……アタシの家?
広場の近くだし、誰かが運んでくれたのかな?
うわ、もう夕方近くになってるし。2時間くらい寝てたっぽい。
──《相棒!? ようやく起きたのか! とにかく一大事だ! 慌てるなよ!?》
《ちょ、落ち着いてよピンキー。どうしたって言うの?》
──《ゴサの町が陥落した! 建物が全て、逆さまにされちまってんだ!》
《まさかアーロン!? 原作より2年も早いんだけど!?》
──《ちげェ。姫さんの読みだと〝黒ひげ〟って奴の仕業みてェだ》
どうやらさっきの夢は、サイアクな正夢だったみたい。
アタシが起きる1時間前くらいに、ゴサの町から轟音がしたらしい。
たまたま近くを飛んでたピンキーは、町の惨状を確認したんだけど……
アタシが音信不通だったから、ヴィオラの元へ飛んだんだって。
千里眼で一部始終を見てたヴィオラの〝心〟をピンキーは覗かせてもらったみたい。
その情報を、今度はテレパシーでアタシに教えてくれてる。
ゴサの軍隊は〝闇〟に飲み込まれて全滅。
あのキュロスですら剣が全く通じず、成す術も無く敗北。
幸い住民の多くはココヤシへ来ていたため無事。レベッカ達も避難が間に合ったみたい。
でも、金品は
そして、今はココヤシ村へと丸太船で向かって来ている最中。
そのココヤシ村の人達は、まだ異変に気付いてない様子。
轟音がしたって話なのに、大騒ぎでお酒飲んでるんだけど!?
状況は最悪。
ティーチの能力は、おそらく初期設定版の〝ヤミヤミの実〟
どんな攻撃も効かないっていうチート能力。
極め付けに、あれだけやってたアーロン対策なんだけど……
ミンゴは現在、別の大陸にあるM・G本部。
センゴクは、コチラから緊急で連絡する手段がまだ準備できてない。
ブギー、ハンコックも連絡を取る術がない。
嗚呼もう! どうしてこの世界、電伝虫の普及が遅いの!?
──《おい、ご主人サマ。おれを忘れちゃいねェか?》
《バイガオ!? 来てくれるの? 裸になっちゃうけど?》
──《おいおい、おれが
《あ……海軍本部!! なら、アタシの元マリンコード『06526』を元帥に伝えて! 村の危機って言えば通じるから!》
──《了解だ。ああ、バンチが召喚を望んでる。船を強襲して沈めてェらしい》
《助かる! でも、なんで自分で言わないの!?》
──《話が長ェのを気にしてんだと。いいから広い場所へ出ろ、ご主人サマ》
前に話がくどいって言って、ごめんねバンチ!!
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ー 海岸 ー
それじゃ、もしもの時の為にバンチとピンキーを同時召喚して──
《待て相棒、おれは既にそっちへ向かってる。唯でさえ、召喚は体力を消耗するだろ?》
《ありがとう。助かるよ、ピンキー!》
───Eloim, Essaim, Eloim, Essaim……
「我は求め訴えたり! 来て〝バンチ〟!」
《バンチ、ここに。敵の船は、東方面ですね?》
「かなり危険な相手なの! 船が壊せないって感じたら、無理しないでね」
《御意に》
バンチは少ない口数で、まだ見えて来ない丸太船の方へと向かってくれた。
やっぱり話がくどいって言っちゃたの気にしてるよね!?
あの時は、限定Tシャツの件で忙しかったから……!
うう、バンチのお陰で〝同時召喚〟が出来る事も分かったんだし。
これが済んだら、きちんと謝らなきゃね!
「お、ゲンさんが帰ってきた」「ゴサのあれは何だったの?」「やっぱり花火か?」
「はぁ、はぁ。大変だ皆! ゴサは……壊滅してしまった!!」
「壊滅!?」「嘘でしょ……?」
「軍は全滅、家屋までも……っ。あの惨状を見る限り、襲撃して来た海賊の中に〝悪魔の実〟シリーズの能力者が居たのだろう」
ゲンさんは、念のためゴサまで走って様子を見てきてたんだ。
そして海岸沿いに帰ってくる途中、こちらへ向かって来てる海賊船も目撃したみたい。
今ココヤシ村には、ゴサの町から来てる人も大勢いる。
自分達の町が壊滅したなんて情報を聞いて、みんな憔悴しちゃってる───
けれど……焦りながらも、どう動くのが最善か話し合いが始まった。
過去、海賊の被害が大きかった時代を知ってる人たちが率先してくれてるみたい。
出た結論は……ゴサの軍が敵わない戦力に、対抗する術は無い。
よって、現状での抵抗は不可能。
急いで森へと避難する流れになった。
ゲンさんと数人の男性は、必要以上に村を荒らさせない為に 交渉役として残るみたい。
もちろんアタシも残るつもりだけど、まずは家族を避難させなきゃね!
「居たっ、ノジコ! ナミ! あれ!? ベルメールさんは?」
「さっきまたウチに帰って、お酒を持ってくるって!」「いっぱいあるから!」
「えぇ!? こんな時に!……でも好都合か。2人も、早く家へ避難して!」
ベルメールさんの家なら、村のはずれにあるから簡単には発見されない筈!
原作と違って、料理の煙も見えてないし……きっと大丈夫。
「おねえちゃんは!?」
「アタシは、まだやる事があるの」
「いっしょ じゃなきゃヤダ!」
「大丈夫。すぐに追いつくから、先に行ってて? ノジコ、ナミをお願いね」
「……行くよ、ナミ!」
《相棒! もうゴサが見えて来た。おれもカメに加勢するか!?》
《待って。ピンキーには、ベルメールさんを守ってもらいたいの》
《……ああ、例の件だな。了解だ!》
──《王! 海賊船を捉えました。体当たりで壊してみせます!》
《お願い、バンチ!》
「なんだ一体!? このデケェ揺れは!」
「ホホ。落ち着いて下さい船長。おそらく、船の真下に何かがいるのでしょう」
「水中の敵……ジンベエか!? 話が違うぜ、
「いえ、事前の調査通り奴は海峡近辺かと。下にいる何かは、魚人よりも遥かに大きい」
ざわっ……!!
「寄せ集め共が混乱してやがんなァ」
「ホホホ、元よりこの場限りの手駒」
「ゼハハハハ! 連中はどうでもいいが、下の奴は何とかならねェか?」
「……現状では何も。せめて相手が顔を出せば、手の打ちようはあるのですが」
「それまで耐えろってか!? 頑丈な丸太船とはいえ限界はあるぜ?」
「限界があるのは、向こうも同じかと……まあ、あちらがエラ呼吸の場合、既に詰んでますが」
「テメェ! 自分は飛べるからって、余裕こきやがって!!」
バンチ経由で、向こうの会話を知る事ができた。
ヴィオラの情報通り、丸太船に乗っている主要な海賊はティーチとシルバ。
シルバっていうのは、ラフィットの初期設定名だったね。
原作でもラフィットは未知な部分が多いけど……とりあえず空は飛べるみたい。
残りの船員はバンチの襲撃で慌ててるだけだから、ホントにただの寄せ集めっぽいね。
考えてみれば、バージェス、オーガー、ドクQは ティーチより10歳以上年下なんだった。
この世界でも同じ年齢差なら、今は10代中盤くらい。まだ海賊じゃないのかもね。
《申し訳ありません、王。これほど頑丈な船とは思わず……!》
《無茶しないでバンチ! 呼吸はまだ大丈夫!?》
《ええ、30分程度は保つかと。敵も、こちらを攻撃する術はないようです!》
《なら足止めだけお願い。顔は出しちゃダメだよ!》
シルバには何か策があるみたいだし──気を付けてね、バンチ。
さてと、アタシも戦いの準備を済まさなきゃ!
服は脱いでるヒマ無いから、ジャケットだけ羽織って……と。
武器はもちろん、長十郎。
あとは、この頭痛と気分の悪さをどうにかできれば……完璧なんだけど。
この世界、ウコンドリンクとか無いんだよね!
「エイダ!! まだ避難しとらんのか!?」
「ゲンさん、声大きい。頭に響くよー」
「なにを悠長に! 若い女は、海賊の餌食にされるのだぞ!」
「落ち着いて? アタシ、これでも元・海軍だよ。ほら、武器もあるし!」
「それは見せかけの玩具だろう!?」
「大丈夫、アタシだって鍛えてきたの! 」
「……言い出したら聞かんのも、ベルメール譲りか。逃げんのならば、せめて隠れていろ!」
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バンチが足止めを始めて20分。
おかげで、村の避難も大分進んでる。みんな、ほとんど荷物を置いて行ってるからね……。
命を第一に考えて、着の身着のままなんだ。
家には大事なモノだって沢山ある筈だけど我慢してるんだ。
絶対、この村を荒らされたくない!
海軍さえ間に合ってくれれば、きっと!!
《ご主人サマ。悪い知らせだ───》
バイガオからの情報は絶望的なものだった。
有事の際に期待してた、長距離移動を可能にする能力者──が、現在行方不明との事。
その為、本部から直接の応援は不可能。
一応、センゴク元帥は副案を用意してくれていたけれど……
海軍上層部が密かに準備していた〝大型カタツムリ〟の習性を利用した伝達手段。
生態の研究が進んで無いから、特定の個体へ念波を送る事はできないんだけど
近くの個体へ無差別に念波を送る〝緊急信号〟をリレーして、海軍支部へ救援を要請してくれたみたい。
事前の取り決めで、ココヤシ村の近辺にある第16支部が来てくれるって話。
有難いけれど、支部の戦力で勝てる見込みは──無い。
《ぐ、体が引き寄せられる!? マズい!》
《バンチ!? まさか、海上へ出ちゃったの!?》
《王、申し訳ありません! 敵の能力を受け、身動きが取れず……っ!》
バンチは、丸太船の破壊が無理なら せめてティーチだけでも海に落とそうと考えたみたい。
アタシが顔を出しちゃダメって言ったから、バンチは海面に尻尾を出して攻撃しようと──トンチかな?
それで尻尾を出したら、見えないチカラに引き寄せられたんだって。
さっきから自由に動けない状況で、淡々と報告してくれてる。
え!? 敵が砲撃して来てるの!?
それ早く言ってよ!! いくら防御力が高いからって、何発も耐えられないでしょ!?
ああもう! でもおかげで、ギリギリ30分経ったみたい!!
「遠隔解除!
─《王……申し訳ございません。船を沈めると言っておきながら、何もできず……っ!》
《何言ってるの! バンチのおかげで、村の人が避難できたんだよ?》
─《ご主人サマ、次はおれを喚んでくれ! 獣型になっちまえば、裸でも構わねェ》
《バイガオは戻ったバンチの手当てをお願い。どの道、召喚はあと30分経たないと無理だしね》
もうすぐ、奴らが来ちゃう……!
いま村に残ってるのは、ゲンさんと若い男の人達が20人程。
ナミとノジコも、ベルメールさんの家へ着いた頃かな?
この状況で最も危険なのは、きっとベルメールさん。
だからピンキー! お願い!
《任せとけ相棒。だがよ? ノジコは帰ってきたが、ナミはまだ戻って来ねェんだ》
え!?
《探しに行こうとする2人を押しとどめちゃいるが……ベルメールの迫力がスゲェ!?》
二人ともナミが心配なの!
とにかく、アタシの方でも探してみるから……
「おねえちゃん!」
「ナミ!? ベルメールさんのお家へ避難する約束でしょ!?」
「おねえちゃんも一緒じゃなきゃ、やだ!」
「……もう時間が無いみたい。せめて、アタシの後ろに隠れてて?」
沈んで行く夕日。
見えづらくなった海の向こうから、無骨な丸太船がやって来た。
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桟橋を壊し、無理矢理 接岸した海賊船。
最初に降りて来たのは、恰幅のいい男──おそらくコイツが、ティーチ。
「ゼハハハハハ!! おれはキャプテン・ジョーク!」
「キャプテン・ジョーク!? 最近名を聞く、あの海賊か!」
ああ、いたねそんな海賊。確か、アニメスペシャル〝海のヘソの大冒険〟
でも目の前に居るのは、十中八九で黒ひげ。きっと偽名を使ってるんだと思う。
顔立ちは多少違うけど、ゼハハハハって笑ってるし。
なにより声がイイ……ホント声だけ良いのが腹たつ!!
「この村も隣町みてェにされたくなけりゃ、あり金を全部持ってくるんだな!」
「ぐ……金を渡せば、破壊はせんのだな?」
「ホホ、コチラの村には話の分かる方がいらっしゃるようで何より」
この男がシルバか。心の声がまったく聞こえないから
奥の手は無理。ああもう! ティーチ1人でも厄介なのにっ!
……ここは大人しく、お金を渡してやりすごすしか無いの?
アーロンみたいに居座らないんだから、渡すモノ渡して早く帰らせるのが、きっと最善。
建物さえ無事だったら、M・Gの支援で当面は生活できると思うし───
「これは村のみんなのお金よ! アンタにあげるために、かせいだんじゃないんだから!」
「ナミ!?」
「なんだぁ? ガキかよ。ゼハハハハ、そんな道理でやめるようなら海賊なんてしちゃいねェだろ?」
ああ、もう! さっき迄の自分が恥ずかしい!
ナミの主張は当然のモノ。理不尽なのは向こうなんだから。
歯切れのいい年寄りじみた答えなんて、アタシらしく無かったね。
ホントにナミが良い子に育ってて、姉冥利に尽きる!
でも……この場だけは、ツラいけど言い含めないと……っ!
もしこの子が標的にされたら、きっとアタシは───
「ナミ! 逆らっちゃダメ! お願い……!」
「でも、おねえちゃん……」
「お! いいオンナもいるじゃねェか。どうだ? おれと一緒に来るなら、ガキは死なずに済むかもな?」
「ヤダ! はなしてっ!」
なっ!? コイツ、ナミを殺す気……?
っダメ、落ち着かなきゃ。向こうはまだ交渉してるんだ。
まずは、ナミの安全を確保。
アタシなら、仮にコイツの船に乗せられても脱出する手段はいくらでもある。
それに──!!
「わかったわ。だから、妹を離して!」
「ほらよっ! 良かったなガキ。物分かりの良いねーちゃんが居てくれてよ!」
「おねえちゃん!!」
「大丈夫。必ず戻ってくるから!」
「エイダ!」「ダメだ! ゲンさん!」
「ゼハハハハ! そいつは父親か? いい娘に育てたもんだぜ! ありがとよ?」
「ホホホ、船長の悪い癖が出てしまった。娘、コチラへ来る前に武器を捨てなさい」
「く……」
シルバめ。抜け目ない奴。
どんな攻撃も効かない〝初期版・ヤミヤミの実〟
そんなチートが相手でも、長十郎なら望みはあったのに!
ティーチが油断してる、絶好のチャンスを活かせなかった……。
「ゲンさん……預かってて」
「ぐっ、何故こんな事にっ!!」
武器が無くなった今、アタシに取れる手段は少ない。
〝鉄塊〟で防御はできても、まともな攻撃手段が無い。
バイガオを召喚するのにも、あと20分程度必要。
もう……このまま船に乗り込んで、お金を取り戻して、脱出する位しかできない。
《その状況で、そんだけ出来りゃ上等だ相棒》
逃げる時は宜しくね、ピンキー。
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村のお金は、ゲンさん達によって袋へとまとめられた。
小さな村だけど、最近は観光客のお陰で繁盛してた為かなりの額。
「ゼハハハ! 思った通り、溜め込んでやがったな」
ティーチ達は、この村が潤ってる事を知った上で攻めてきたみたい。
まさかアタシ達のブランドが……海賊を呼ぶきっかけになってしまったの?
なんて皮肉。お祝いを開いてもらう資格なんて無かったんだ。
昼間の楽しかった時間が嘘だったかのように、アタシの心は沈んでいく。
頭も痛いし……気分も悪いし……これが全部、アタシ達のブランドが原因?
アタシ
だからアタシは、奪われたお金を取り戻した上で、アイツらを海軍に引き渡すくらいしないとね!
「ホホホ、では娘。コチラを向きなさい」
「え?」
「おねえちゃん、いかないでっ!!」
「おやおや、邪魔が入りましたか」
ととっ、ナミが抱きついてきちゃった。
シルバが何かしようとしてたみたいだけど……あ!
たぶん催眠術だ……アタシ、かなりピンチだった!?
どういう類の催眠か分からないけど、きっと逃げられなくなってた可能性が高いもの。
もう油断しない!
ジャンゴの催眠術は、目を閉じれば回避可能だったけど……念のため、何かしてきそうな時は耳も塞いじゃえば完璧! なハズ。
「ありがとうナミ。アタシは大丈夫だから」
「ヤダ!」
「聞き分けのねェ、ガキだなオイ!」
「待って……! ちゃんと言い聞かせるからっ!」
ここさえやり過ごせれば、誰も傷付かないで済むんだ。
あとは海に出たあと、隙を見てアタシがお金を取り戻せば……
「ゼハハハ! やっぱりよ、邪魔者は消しちまうのが一番早ェ!」
〝
「なっ!?」
ヤミヤミの能力を使われてた!?
外が暗くなってるせいで、気付くのに遅れたっ!
くっ、闇がナミの足元まで迫ってる……!
間に合ってっ!!
「ゼハハハハ! ほれ、逃げねェと闇に沈んじまうぞ!!」
「ナミ!!」
「おねえちゃ──」
────!!
沈みかけてたナミの手を掴んで、どうにか後ろへ投げ飛ばせた。
良かった、ナミは無事みたい。
アタシの視界が闇に沈み切る前に、ナミを受け止めたゲンさんの姿が見えたからね────