その女〝動物好き〟 - the another order - 作:浅学寺のえる
黒い闇に呑み込まれた。
漆黒に塗り潰されたような感覚───ちがう。
実際に潰され続けているんだ。
これは、圧力。
身体を──精神を──磨り潰すような圧力に襲われている。
鉄塊を維持し続けて数分。
漠然とした時間感覚だけは残っているけれど、それ以上のことは何も判らない。
目に映るのは、闇だけだから。
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うがーっ!! 長い!
闇の中に閉じ込められてる時間、長すぎるんだけど!?
身体は、鉄塊でどうにか耐えてるけど……心の方がそろそろ限界っ!
こうやって無理矢理テンションを上げてないと、ドン底まで沈んじゃいそう。
なんて言うか、ネガティブな思考?
そういう流れに持っていこうとする、謎のチカラを感じるの。
それに外とのテレパシーは通じないし、召喚もできない……絶望的な状況!
でも負けない! アタシは耐久力だけが取り柄なんだからね♪
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あ〜あ、こんな事ならヴィオラの言う通り〝お友達〟を増やしとくんだったなぁ。
アド・オリーチェなんて、12人と契約してたって話だしね〜。
それにしても、12の動物かぁ。もしかして、十二支とかかな?
アタシが契約してる3人でも、バンチを〝竜〟にカウントすれば真似できそう?
ほら、聖書にも亀みたいなドラゴンが出て来てたし……ギリいけるっ!
えーと、
他の候補を考えてみよっか♪ 楽しいこと考えてないと沈んじゃうし!
まずは順番通り、
ONE PIECEでネズミのキャラと言ったら……ネズミ大佐?
ナミが苦労して貯めた1億ベリー近くのお金を盗む。あのネズミ大佐。
完全にアタシの敵じゃん!!
やっぱ十二支は無しっ! なんかムカムカしてきた!!
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ゆるせない……ゆるせない……ゆるせない……
絶対に許しちゃダメだ。
〝空島編〟を
ハッ……!?
危ない危ない、意識が暗黒面に持ってかれそうだった。
結局みんな〝ファン〟である事には違いが無いって、無理矢理 納得したじゃない! 前世でね。
アタシは闇堕ちなんてしない!
……でも、ホントに長いなぁ。
もう体感で1時間位経ってるんだけど……?
あ〜、そういえば暗闇にずっといると時間感覚って狂っちゃうんだっけ。
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つらい。
不思議と鉄塊は維持できてるから、身体は平気だけど……。
光も。音も。匂いすらも。なにも無いこの空間が耐えられない。
なんだか感覚も鈍ってきてる?
……最初から 浮いてるのか、沈み続けてるのかも分からなかったし。
どうでもいっか。
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ナミ、ノジコ、ベルメールさん、ピンキー、ゲンさん……
家族に会いたい。
ヴィオラ、コラさん、ミンゴ、バンチ、バイガオ、ハンコック……
友達に会いたい。
───会いたい。
でも……もう、皆には会えないのかな。
このまま闇の中で、アタシは───
あ、れ?
どうして会えないんだっけ?
──そもそも、なんでアタシこんな所に居るの?
そうだ。
全部、あいつのせいだ。
あいつを……ティーチを
思い出さなきゃ! 何か手段があった筈───!!
〜 2年前 〜
ー シモツキ村・崖の上 ー
「嬢ちゃん、さっき教会の男を手篭めにした技は〝悪魔の実〟の能力だろ?」
「あはは。大丈夫、コウ三郎さんには効かない能力だから。あと、この事は内密に!」
「言いづれェ所を見ると、大方〝エロエロの実〟の誘惑人間って所か?」
「ぜんっぜん違う!?」
「おれもナメられたもんだ。刀鍛冶としちゃ枯れちまったが、そっちの方は───」
「セクハラです!」
SBSの小ネタで、そんな名前の実が出てたけど……
まさか、この世界に存在するの!?
違うよね!? おじいちゃんの妄想の産物だよね!?
「まぁ、んな事ァどうでもいいんだ。肝心なのは、嬢ちゃんが能力者って事だ」
「……それが何か?」
「長十郎。その長ェ鞘の
「え!? 鐺って、鞘の一番下……この部分、う、チカラが」
「せいぜい、戦闘中 触んねェ様に気を付けな」
腰に下げてる状態なら、自分で触っちゃう事は無いと思う。
って言うか、Mr.3、ブギー、ハンコック、バイガオと能力者4人の手に渡ってたのに
誰も気付いて無いでしょコレ!
そうだった!
長十郎の鞘で、ヤミヤミの力を封じちゃえばティーチを
でも、刀も鞘も外なんだよね。
だったらまず、外へ出る方法を考えなきゃ……ってそれじゃ堂々巡りだ!?
うん。でも、コウ三郎さんの事を思い出したお陰で心は軽くなったみたい。
現状で出来る事を考えよう!
えーと、長十郎は無いけど……今着てるドレスとジャケットはあるんだ。
ジャケットのポケットに何か入ってるかも!
あ、鉄塊中だから動けないんだった……。
んんっ、気を取り直して!
他の持ち物は、指輪と眼鏡と──四郷のクリスタル!
そうだよ、この謎アイテムがあったんだ。
なんかピンチの時に、ピカーって光りそうな形状の……
うん! どうせ、他に当てはないし! 元々、謎のアイテムなんだし!
もういっそ、アバンのしるし と同じ原理で光るって仮定しちゃおっか♪
家族に会いたいっていう アタシの強い想いに応えて、輝いてっ! クリスタル!!
……光らんのかいっ!!
でも大丈夫。クリスタルが光らないって展開は、あの物語で予習済みだからね!
強い想いにも種類があるんだ。勇気とか、慈愛とか
あとは、えーと〝正義〟だっけ?
一応、海軍にギリギリ所属してる身だし……試してみよっか!
「人々が平和に暮らせる為に、アタシは悪を許さないっ!〝絶対的正義〟の名のもとに!!」
なーんて、ね……?
ピカ━━…ッ!!
うわっ、眩しっ!
嘘っ!? これって、ホントに光るアイテムだったのぉ!?
ー ココヤシ村・広場 ー
「ドレスローザの女が、催眠術ごときで他の男へ移り気する訳ないのよ!!」ドン!!
「なぜ催眠が効かねェ!? こいつはどういう理屈だァ、シルバ!?」
「あの鳥と同様……すでに別の暗示がかかってますね。この女の場合は、強力な〝自己暗示〟かと」
「覚えておきなさい海賊共。ここは情熱の国、浮気症の女なんて1人もっ……1人くらいしかいないわ!!」
これって外の様子?
ティーチとシルバに……ベルメールさん!? なんで!?
あと、浮気症の女って誰!? その人のせいで、折角のキメ台詞が台無しだよ!
《余所見してんじゃねェ! スカし野郎がっ!!》
「く、また鳥か! 船長、私はアレを仕留めます。女の方は任せてよろしいか?」
「仕方ねェな。大人しく催眠にかかってりゃ、死なずに済んだのになァ!」
「桃ちゃん! そっちは宜しくっ!」
《ああ、相棒の敵討ちだ。空中戦で
わぁ! ピンキーとシルバが、空中で激しくぶつかり合ってる。
頑張れピンキー! 結果的に、シルバには何もされてないけど……そのままアタシの仇を取って!!
そもそも死んでないケドね!!
……反応なしかぁ。
アタシの声もテレパシーも届かないんだ。向こうの声は聞こえるのに!
クリスタルが光って外の様子は見えてるけど、アタシは未だに闇の中みたい。
あれ? でもアタシの視界に、ティーチまで映ってるってコトは……?
今の視界から推測すると、アタシがいる場所って闇に呑まれた時から動いてないんだ。
ティーチの身体の中じゃないのは良かったケド……ここって一体?
「ゼハハハハ! 無駄だァ! 銃だろうと
「化け物め……! ベルメール、せめてお前とナミだけでも逃げ──」
「る訳ないでしょ! 大丈夫よゲンさん。護衛時代に、能力者とは戦った事あるから!」
なんかベルメールさんが、斧で飛ぶ斬撃を出してる……。
そんなの、アタシ知らないんだけど!?
飛ぶ斬撃って空島でゾロが初めて使う技──あ、原作1巻で既にモーガンが使ってたね。
うん。案外、斧だったら普通のコトなのかもね!
「だがベルメール。いくらお前が常識外れに強くとも、あの能力には……」
「常識外れって! 飛ぶ斬撃くらい、先生に鍛えられた連中なら誰でもできるわ」
「ゼハハハ! よく喋る夫婦だぜ。離れてりゃ安全だと思ってやがるな?」
「「夫婦じゃない!」」
もう夫婦でいいよ。息ピッタリだし。
「ゲンさん。アイツが何か仕掛けてくる。その前にナミの──」
「悔しいがお前の方が戦闘経験は豊富だ……信じるぞ、ベルメール!」
「おいおい、女房を置いて逃げちまうのか?」
「……私の先生が言ってたわ。
「ゼハハハ! まさか〝覇気〟でも使うってか?」
「さあ……どうかし、らっ!!」
ベルメールさんが、斧を振りかぶって大ジャンプした。
確かにあれなら、
でも……攻撃のチャンスは、着地前の一撃だけ。
まさか本当に〝覇気〟まで使えちゃうの!?
「〝マキ割り・
覇気こそ使ってないけど、凄い斬撃!!
縦に振り下ろした斧によって、ティーチの身体が真っ二つに別れて向こう側が見えてる。
でも、これじゃダメージは……って、もう頭の方から再生しだしてるしっ!
「受け取れ、ベルメール!」
「ゲンさん! タイミングばっちり!」
「な─ん─だァ?」
「終わりよ海賊!!」
パシャ!!
カメラのフラッシュ──!?
ティーチの身体が完全にくっ付く前に、強力な〝光〟が胴体を貫いた。
大量に血が出てるし、傷口も開いたまま。
闇の弱点を上手く突けたんだ!……でも、あのカメラ一体どこから?
そっか……朝からずっと、ナミが持ち歩いてたんだ。アタシの笑顔を撮ろうと頑張ってたもんね。
アタシの視界だと分からなかったケド、さっきゲンさんは逃げたんじゃなくて、カメラを受け取りに行ったんだ。
ナミの姿は見えない。でも、村の人達と一緒にベルメールさんを応援する声は聞こえてくる。
みんな少し離れた場所で見守ってるんだと思う。
人数はこっちの方が多いんだ。おかげで、ティーチとシルバ以外の海賊は攻めにくいみたい。
「ぐ……おぉ! いてェ! 畜生ォ!!」
「凄いぞベルメール! お前の読み通りだった!」
「ええ。最初にゲンさんが銃を持って突撃した時。コイツは少しだけ後に下がったから」
「だが、なぜそれで弱点が分かったのだ?」
「銃が効かないと宣言したのに、避けた……おそらくマズルフラッシュ*1を警戒したのね」
「それだけで〝光〟が弱点だと見抜くとは、恐れ入ったぞ」
「でもねゲンさん。私の先生に言わせれば──コイツの真の弱点は〝慢心〟よ」
強力すぎる
スモやんが、先生によく怒られてたっけ。
この世界だと、ベルメールさんもゼファー先生の教え子だったね……そりゃ強い訳だよ。
「さあ選びなさい。このまま頭を吹き飛ばされるか、今すぐ
「ぐ、やべろ!」
やだーウチのお姉ちゃんがカッコよすぎる!!
ティーチは、傷が深すぎてマトモに動けないみたいだし……アタシ、助かるのかも!
あれ? でも万が一、アタシが外へ出る前にティーチが死んだら、この空間はどうなるんだろ?
なんか嫌な予感がしてきた───誰か助けてぇ!!!
─《相棒!? 生きてやがったのか!》
《ピンキー! 声が届くの?……ちょっと! なんでベルメールさんがここにいるの!?》
─《いきなりソレかよ!? 言っとくが、
アタシがピンキーにお願いしたのは〝ベルメールさんを守る〟こと。
ピンキーに言わせれば、家に押しとどめなくても〝守って〟さえいれば問題ないんだって。
シルバとの戦闘中も、ベルメールさんがピンチになったら助けられるように気を張ってたみたい。
バンチといい、ピンキーといい、お願いを曲解したり抜け道を探したりするのなんなの!?
─《チィ! 相棒がうるせェから、敵に抜けられちまった!》
《人のせいにしないでよ!?》
「まったく、なんてザマですか船長」
「シルバ……! おれを助けろっ!」
「くっ、止まりなさい! 一歩でも動けば、コイツの頭を──」
「ホホホ、動きませんとも。船長がコチラを向いた時点で、既に完了してますので」
「ゼェ、ゼェ、よくやったシルバ」
なっ!? ティーチの傷が塞がってる!
シルバは一切触れてないのに……やった事と言えば、ステッキを向けた位……?
まさか催眠術で!?
ジャンゴの催眠術でも、ゾロに斬られたブチの傷が一瞬で塞がってたけど……。
胴体に空いた穴まで塞げるなんて! そんなのインチキでしょ!?
「なんという事だ……あれだけ深手を与えたと言うのに……っ!」
「……何度だって戦うわ。エイダを取り戻すまで、私は諦めないっ!」
「もう近付かせねェ! だが、そんなにあのオンナを返してほしいなら……返してやるぜェ?」
「え!?」
「ゼハハハハ! 成れの果てだがなっ!〝
急に圧力が増した!? ぐ……鉄塊を使ってても身体が潰れそう!
こんなの、鉄塊を解いたら一瞬で肉片になっちゃう!
なんだかティーチの方へ少しずつ引っ張られてる……?
きっと、あそこまで行ければ───!!
「ぐわぁ!」「ごふっ」「ひっ……!」
「ゼハハハ! そう言や、ゴサで飲み込んだ
「ごあっ……!」
「ゲンさん!?」
ティーチの身体から全方位に発射された〝
後ろにいる手下の海賊も含めて、無差別に攻撃してるんだ。
ゲンさんも倒れてる……ベルメールさんを庇って頭に瓦礫を受けたから……。
もう少し。もう少しで、アタシが吐き出される番のハズ!!
来た──!
これ以上、皆を傷つけさせないっ!!
「〝鉄塊〟っ!!」
「なっ!? 誰だテメェ!?」
「……自分で闇に沈めたクセに覚えてないの?」
「その顔! まさか、あの女か!? だが、その姿は一体!?」
「何を言って……? えぇ!? アタシの髪が
まさか、老化!?
そんなぁ……! 闇の中で何十年か経ったっちゃの!?
どうしよう!? 鏡が無いから顔を確認できない!
あ、良かった。手足には目立ったシワも無いし、肌もツヤがある……何故か白いけどね。
あの闇の中って美白効果でもあったのかな?
「ホホホ、なるほど漸く合点が行きました」
《クソ! 瓦礫をくらっちまった。すまん相棒……!》
「ピンキー!」
「思えば、近海に大型の海獣がいた時点で不自然だったのです」
「確かにな。ここは〝海峡〟のナワバリだ。奴が大型の海王類の流入を防いでるって話だしなァ」
ジブラルタル海峡の話?
元々 地中海には、中型クラスの海王類までしか居なかったんだけど
8年くらい前に、巨大生物が無理矢理 海峡を越えて、入り口が広がっちゃったみたい。
それで大型の海王類が入り込んできて、困ってた時にジンベエがやって来たって話。
以降、新たに海峡を越える巨大生物はいなくなって、迷い込んでた海獣たちも見つけ次第 大西洋へ還してるそう。
多分あの超巨大イルカも8年前に入ってきたんだね……。
「──この鳥、そしてあの亀。おそらく、その女が操っているのでしょう」
「コイツも能力者なのか!?」
「いえ、その姿を見る限りミンク族かと。噂に聞く〝
シルバが得意顔で見当違いな推理してる。
確かに綺麗な満月は出てるけど、アタシがミンク族な訳ないのにね。
「だがよ。ミンク族ってのは、毛むくじゃらだろ?」
「おそらく……猿のミンク。体毛を抜いて、人に混じって生きてきたのではないかt──」
「んな訳あるかぁ!!」
バリ バリィ!!
「ぐ……!?」
「シルバ!?」
なんか電気出たんですけど!? これって〝エレクトロ〟だよね。
アタシ、本当に
えーと…………そっか! 能力が覚醒したんだね♪
─《とっくに覚醒してんだろうが。相棒》
《あ、意外と元気そうで良かったよピンキー》
─《かすり傷だ。瓦礫の雨も止んだんで、あの野郎とケリをつけようと思ったんだが……》
《あはは。倒しちゃった! このままティーチも片付けるから、休んでて♪》
─《なら遠慮なく休ませてもらうぜ? 気になる事もあるしな》
さてと!
早速、新しいチカラを試してみないとね。
さっきはノリで殴っちゃったけど、アタシも戦闘で手は使わない主義!
でも刀が無いから……脚で!
「〝エレクトロ〟!」 バチィン!!!
「ゼハハハハ! 無駄だ!」
「あれ? 電気も効かないのかぁ。光ってるからイケると思ったのに」
「そんな攻撃、痛くもねェし、シビレもしねェ! 海以外の──」
「〝海以外の全てのものが、おれには通じねェ〟とでも?」
「なっ!?」
「〝光〟が弱点って事は分かってるけど、やっぱり体内への攻撃じゃないとダメなのかな?」
「いつ知りやがった? いや……なぜ、闇の中で潰れてねェ!? テメェは一体なんなんだ!?」
「……アド・オリーチェ?」
「あァ!? どうやっても偽名だろそりゃ!」
「そっちこそ、本名はティーチでしょ。姓はマーシャル? それとも……エブリシング?」
「……テメェは危険だ。得体の知れねェ、化けモンのようだ」
ヒドイ言われよう。
本名を言い当てられたくらいで取り乱しちゃって。
それに今どき、3歳児だって偽名を使うんだからね!
─《相棒、いいニュースだ。もう5分もすれば救援が来るぜ!》
《救援!? 一体誰が?》
─《〝海峡〟のジンベエ率いる魚人海賊団だ!》
アタシが闇に呑み込まれる瞬間。その時、無意識に救難信号を出してたらしいの。
特大のテレパシーで《助けて》って訴えてたんだって。
その範囲がかなり広かったから、海峡にいたジンベエにまで届いたんだと思う。
それにテレパシーを受信した魚達も、村が襲われてるって状況を知らせてくれたみたい。
以上の情報を、渡り鳥から聞いたピンキーが、アタシに報告してくれた。
ジンベエかぁ。
なかなか都合が付かなくて会えなかったのに、まさかこんな場面で巡り合うなんてね!
あとはもう、アタシが3分も粘れば みんな助かる!
海水が弱点のティーチじゃ、海岸沿いの村で魚人と戦うなんて自殺行為だからね。
「ゼハハハハ! 最初の勢いはどうしたァ、打つ手無しか?」
「それはお互い様でしょ。アタシの硬さを舐めないで!」
「確かに殴っても意味がねェ硬さだ。跳んで避けやがるから〝
多分このまま勝負を引き伸ばすのが正解。
でも念のため〝長十郎〟も手元に置いときたいな。えーと、ゲンさんに預けたんだっけ……?
って、村の人達が皆倒れちゃってる!
せめてもう少し早く、アタシが外へ来れてれば……っ!
ゲンさんも、ベルメールさんも気絶こそしてないけど辛そう。
不思議そうな顔でこっちを見てるけど……もしかして、アタシの事気付いてない?
ちょっと待って! アタシって今どんな姿してるの!?
《ねぇ、ピンキー!》
─《安心しろよ。髪が白ェのと、目が赤ェ以外はいつも通りだ》
《目赤いの!? そりゃ家族にも気付かれないよ! なんか怖いもん》
「ゼハハハ、そうだ。考えてみりゃ、テメェの弱点は割れてんだったな」
「なにを……?」
「丁度、手頃な瓦礫が落ちてやがる! ただ投げつけるだけでも、死にかけの奴なら殺せるだろうぜ!?」
「っそれは──!」
ピンキーを模した銅像! その鋭いクチバシが、ベルメールさんに迫ってる!
間に合って──っ!!
あれをデザインしたのは、ノジコなんだよ!?
こんな事に使われていい筈が──ないっ!!
「大丈夫……? ベルメールさん」
「え? エイダ!? アンタどうして!?」
良かった。
おかげで銅像に追いつく事ができた……んだけど、そこで体力が尽きちゃったんだね。
変身も解けちゃったし、一番得意な〝鉄塊〟すら使えなかった。
でも、ベルメールさんは守れたよ───
「おねえちゃん!」
「エイダ!」
ナミ、無事みたいで良かったぁ。身体が小さいから、瓦礫に当たらなかったんだね。
もう大丈夫。近くでジンベエ達の闘ってる
きっと〝
あはは。ティーチは、大分慌ててるみたい。
それにしても頑丈だなぁ。アタシの身体。
心臓を貫かれてるのに、意識を保ってられるなんてね……。
─《済まねェ相棒。ベルメールを守るのは、おれの役目だったのによ……》
ピンキー? 銅像は上手く隠せた?
─《……ああ。海に沈めた》
そっか。ありがとう。
アレで家族が死んだなんて知ったら、ノジコのトラウマになっちゃうからね。
それじゃ、さっきのが
─《おれは元から自由だよ相棒。今まで通り、やりたいようにやるさ》
「ごはっ」
「ベルメールさん! ドクターを……!」
「…………ナミ。エイダの手を握ってなさい」
「え?」
うぐっ……まだ、ギリギリ喋れるかな?
伝えなきゃ……! これだけは伝えておかなきゃ、死んでも死にきれない!
「ナミ。よく聞いて……これはアタシ達の両親へ、繋がる……唯一の手がかりな、の」
「これ、おねえちゃんがいつも付けてる……!」
あ、れ? いつの間にか〝光〟が消えちゃってる。
結局、謎のアイテムだったね〝四郷のクリスタル〟
それにアタシ達の家族は、ノジコとベルメールさん。あとゲンさんもかな?
本当の両親なんて、正直どうでもいいんだ。
でも……きっと、ナミの出生に関わる大事な物だから──
「あなたがいつか……旅立つことが、あるのなら、〝ウェザリア〟という、島を……探して」
「うぇざりあ?」
「アタシも、場所は…知らないけれど、きっと……あの海、の何処かに……」
「そのときは、おねえちゃんも……一緒だよね!?」
「…………ずっと一緒に、居て、あげられなくて……ごめん、ね」
「やだ! どこにも行かないって約束でしょ!?」
あはは。やっぱり、あの時は起きてたんだね。
ごめんねナミ。こんな形でお別れなんて、アタシも嫌だけど……。
「ベルメール……さん、ナミをお願い」
「当たり前よ! 私たちは、家族なんだから……!」
「ありが、とう……」
前世で死んだ時は独りだったんだ。
ノジコは居ないけど、家族2人に看取られて逝けるなんて幸せな最期だよね?
ー ?年前・とある場所 ー
「
「バカ! こんな時に、縁起でもないコト言わないで、よ……?」
「心肺停止!? 蘇生処置を───して───!───っが───
え……?
まさか、死んだの?
つまらない事で喧嘩して──FILM RED公開日の今日。ようやく仲直りできると思ったのに。
熱中症で倒れておいて、最期の言葉が〝煮えてなんぼ〟なんてシャレにもならないっ!
救急隊の人によれば、睡眠不足や栄養不足も原因って話。
きっと、アタシが出て行ったせいで まともに食事が摂れて無かったんだ……
こんな形で死別するなら、意地なんて張らなきゃよかった。
ホントにバカ……。
いくらアタシでも、あの場面で〝おでんに候〟なんて返せないよ。
どうせ死ぬなら〝愛してくれて ありがとう〟ぐらい言ってよ。
遺された方の気持ちも、考えてよ────
思い出した。
このまま死んじゃったら、アイツと同じになっちゃう!
ナミにも
ノジコにも
ベルメールさんにも!
アタシと同じ思いはさせられないっ!!!
それに、故郷を──家族をこんな目に遭わされて、デッドエンドじゃ終われない!
《ピンキー!! さっきラストオーダーって言ったけど、取り消せる!?》
─《ハッハー! 当然だぜ。元々テレパシーの
《それじゃ、
これからアタシのする事を、家族には見せないで!!
アタシの命は、どうあっても助からない。
心臓がある左胸にポッカリ穴が空いてるんだから。
肺に血が入ったのか、もう声も出せない。
だから、せめて───!
ピンキーの羽に覆われて、困惑してるナミとベルメールさん。
救援に安心して、次々と気絶していく村のみんな。
船が沈められ、山の方へ逃げようとしてるティーチとシルバ。
そのシルバに催眠をかけられ、狂ったように戦い続ける手下達。
異様な強さを得た手下達に阻まれ、苦戦しているジンベエ達。
沢山の
アタシを呼んでる〝長十郎〟の声すら判る。
これは見聞色? それとも物の呼吸?
きっと〝死の境地〟だからこそ分かる感覚。
ずっと持っててくれたんだね、ゲンさん───ありがとう。
それじゃ、落とし前をつけてくるっ!
〝
「なっ!? テメェ、まだ生きてやが……ぐ!?」
「船長!?」
海楼石で能力は封じた!
心臓は、確実性に欠ける。異形って件もあるし……何よりアタシがこんなに動けてる。
狙うのは───!
ドスッ!!
「ぐわぁぁっ!? 目がっ!? 目がぁぁっ!!!」
「なぜ刃物が通る!? たとえ覇気を纏おうとも、船長には──!」
激しく転がり回るティーチの右目から、長十郎が抜け落ちた。
もう時間の問題。
催眠を認識する
それに……どんなに頑丈な動物だって、
アタシも、もう動けない……シルバは魚人達に任せるしかないみたい。
ああ、ちょうど包囲を抜けて、そこまで来てくれた。
……思ったより体力を使っちゃったなぁ。
落とし前を付けた後は、手紙を残して置こうって決めてたのに……。
あはは。流石に欲張り過ぎだったかもね───────