その女〝動物好き〟 - the another order -   作:浅学寺のえる

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最終話「受け継がれる意志」

 

  ー 2年前 ー

 

 

 「ここは貴方の居場所じゃないの。大人しく、森へ帰って!」

 

 「エイダ、相手は〝オオカミ〟よ! 私が仕留めるから、ナミとノジコをお願い」

 

 「待って! ベルメールさん。話せばきっと……」

 

 《ふざけるなっ! 我が一族は人間(おまえら)に住む場所を滅ぼされた!》

 

 「それは……!」

 

 《ならば、お前らの住処を滅ぼさねば 我らの憎悪は収まらん!》

 

 みかん畑で作業をしていたら、裏の林から ナミ と ノジコ の悲鳴が聞こえてきた。

 駆けつけてみれば、妹達を襲おうとしている一匹のオオカミ。

 本来、この周辺には生息していないハズだけど……

 ベルメールさん曰く、北西で起こった戦争のせいで住処を追われたオオカミらしい。

 事実、テレパシーで聞こえる心の声も、人間に対する 怒り や 憎しみ の感情が大きかった。

 人の業が生み出した悲劇。

 妹達を襲おうとしたとはいえ……オオカミの言い分は正当なもの。

 アタシは、どうすれば───

 

 ─《簡単さ相棒。倒しちまえばいい。やらなきゃ、やられるんだ。迷うこたァねェだろ?》

 

 《ピンキー。そう簡単な話じゃないよ。相手は被害者……しかも人間の不始末が原因なの》

 

 ─《はっ、上から目線で語りやがる。随分と偉ェんだなニンゲンってのは。どこまで行っても、所詮は同じ動物だろうが!》

 

 《ちょっと黙ってて! 今はオオカミの事で頭がいっぱいなの……っ!》

 

 ─《下らねェ。もともと小難しいコト考える性格でもねェクセによ!》

 

 《人を単純バカみたいに言わないでっ!》

 

 

 「マズい……刃物を見て逃げ出したわ。エイダ! 急いでゲンさんの元へ知らせに行って!」

 

 「え?」

 

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 アタシ と ピンキー がテレパシーで口論している間に、オオカミは林の中へ逃げていった。

 また襲ってくる可能性が高いので、解決するまでココヤシ村は警戒体制に入る。

 大人は武器を持って巡回。子供は外出禁止に。

 

 そして、アタシは1人で森を捜索し、再びオオカミと対峙している───

 

 《お前か。我らの言葉を理解できるようだが、ニンゲンは全て敵だ!》

 

 「……1日考えて、改めて思ったの。あれは驕った考え方だったって。アタシは別に、人間代表じゃないんだからね」

 

 《何が言いたい?》

 

 「貴方の住処を奪った人間は、飽く迄その人間達。ココヤシ村の人たちとは別人なの」

 

 《そんな理屈は通らんっ! 同族の犯した罪は、種全体の罪だ!》

 

 ───当事者からすれば、やっぱりそうだよね。

 ピンキーに言われて色々と考えたけど、アタシだって〝種族〟って一括りに考えてたんだから。

 昔ピンキーに頼んだコガネムシの駆除なんて、まさにそれ。

 成長したピンキーは、周辺に住んでる鳥たちと協力してコガネムシを完全に狩り尽くしてくれた。

 それがアタシとピンキーが交わした、最初の約束。

 アタシの軽はずみな気持ちで、この周辺から種を絶滅させてしまったんだ。

 

 《もうよい! 武装せねば戦えぬ脆弱な生き物め! 下らぬ事を抜かす、その喉を噛みちぎってくれるっ!》

 

 「……鉄塊」

 

 《ぬっ!?》

 

 ─《ハッハー! 黙ってやられてやんのかと焦ったが。結局、それが正解なんだ相棒》

 

 「ピンキー、見てたの?」

 

 ─《おれもソイツも、お前さんも──みんな動物さ。なら〝弱肉強食〟ってェのが当然の結果だろ?》

 

 今のピンキーなら、オオカミは一撃で倒せると思う。

 鋭いクチバシに、巨大な身体。素早く飛べる上に、鳥たちのネットワークで情報収集まで出来る。

 正直、硬いだけのアタシより強くなってるかもね。

 弱肉強食なんて〝強い〟からこそ出る言葉なんだし。

 自然界なら当然の摂理。それは十分理解できるの。

 でも……そんな百獣海賊団みたいな考え方、頭じゃ理解できても、心が納得しな───

 

 あれ、何か音がしてる……?

 地震っ!? 立ってられないくらい大きな揺れ!

 それに、地面が盛り上がってる……!?

 

 《ぶっはー! あんれ? 仲間の声かと思ったのに、外に出ちまっただ!?》

 

 「でっか!?……なんだろ? えっと、モグラなの?」

 

 ─《おいおい。デカすぎだろ! あのオオカミなんて、ビビって逃げちまったぜ!?》

 

 「追いかけなきゃ! まだ何も解決してない」

 

 ─《安心しろ。もうニンゲンを襲えねェだろ。なんせ〝牙〟が全部折れちまってたからなァ》

 

 え、鉄塊してただけなのに!?

 あれだけ息巻いてて、巨大モグラを見ただけで逃げ出したの!?

 ちょっと脆すぎない!? 物理的にも、精神的にも!

 やっぱり、この世は弱肉強食ってコト!?

 

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 この巨大モグラは、穴掘り名人を目指して旅してるみたい。

 おっとりな性格で普通に会話もできるんだけど、この調子で村の地下を走り回られたら困るんだよねぇ。

 う、ついモグラを()()って決めつけちゃってる。畑の作物に大打撃を与えるからね……。

 ああもう! 人間本位とか弱肉強食とか訳分かんなくなっちゃった!!

 

 ─《まだ下らねェ事で悩んでんのかよ。付き合いきれねェな》

 

 「ピンキーがドライすぎなのっ! 少しは一緒に考えてよ」

 

 ─《ならテメェとは組んでられねェな。おれは勝手にさせてもらうぜ》

 

 「ちょっと強くなったからって、このっ……恩知らず!」

 

 ─《それはコガネムシを駆逐した件でチャラだろうがっ!》

 

 《小せェ連中はこれだから困るだよ〜。すぐ喧嘩しくさってからに……脳みそまで小せェだか?》

 

 

 ─《うるせェ部外者! テメェが出て来たせいで、ややこしくなってんだろうがっ!》

 

 「小さくて悪かったわね! そっちこそ身体ばっかり大きくて邪魔なの! 誰かさんみたいでねっ!」

 

 ─《アァ!? おれはこんな〝ズングリムックリ〟じゃねェだろ!》

 

 「う、確かにピンキーはスマートだった。ごめんっ!!」

 

 ─《あ? ああ……まあ、なんだ。色々と おれも大人げ無かった》

 

 「えっと……その、アタシもゴメンね?……うん。とりあえず帰ろっか♪」

 

 ─《おう!》

 

 何回かこんな喧嘩してるけど、いつの間にか解決しちゃうんだよね。

 結局、ウマが合うって事なのかな?

 さ、もうオオカミは居なくなったって報告しなきゃ。

 色々考えるのは後回しでー。

 

 《……おめェら待つだっ!! おら、ここまでコケにされたのは初めてだど……っ!!》

 

 「え?」

 

 ─《乗れ、相棒! 逃げるぞ!》

 

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 村と逆方向へ逃げたアタシ達は、ドレスローザの国境付近でようやくモグラを()くことが出来た。

 後ろを見れば、モノすっごい自然破壊。

 アタシ達を追ってきてたモグラのせいで、木々は薙ぎ倒され、地面は捲り上がり、山は見事に耕されてしまっている。

 環境とか生態とか……うん。一つ答えが出たよ───成る様にしか成らない。

 

 人間だって、災害の前には無力なんだし。

 この世界だと、化学物質での汚染が無いだけマシなんだ。

 とりあえず今は───諸々含めて〝自然〟って事で納得しとこう。

 

 ─《なあ、前に攻撃手段が無いって気にしてたよな?》

 

 「うん。でも何で急に?」

 

 ─《さっきみたいによ。デッケェ動物を怒らせて暴れさせりゃいいじゃねェか!》

 

 「そりゃ強力だけどさ! さすがに大迷惑でしょ」

 

 ─《ハッハー! いわゆる奥の手ってヤツだ。何しろ普通の動物は頼んだって聞いちゃくれねェんだろ?》

 

 「あはは。みんなシビアだからね」

 

 ─《だから、おれが協力してやるよ。これからも宜しくな〝相棒〟》

 

 「いいの? コガネムシの件で約束は終わってたのに」

 

 ─《ああ、今からは おれの意志だ。考えてみりゃ、お前さん以上に気の合う奴はいねェしなァ!》

 

 もう! そこまでハッキリ言われちゃうと、逆に恥ずかしいよ。

 あ、ちょっとニヤニヤしてる! 絶対、アタシが恥ずかしがると思ってやってるでしょ!?

 そうだ! ちょっと仕返ししちゃお♪

 

 「ねぇピンキー、耳貸して?」

 

 ─《あァ?》

 

 「よ・ろ・し・く・ね! 相棒っ♪」

 

 ─《うおっ!? なんだコリゃ、相棒が気持ち悪ィことするから背中がソワソワしやがるっ!?》

 

 「ピンキー、その背中!?……あっつ!? アタシも指がっ!? 何コレ、指輪?」

 

 右手の人差し指に、金属製でシンプルなデザインのリングがある!?

 それに、ピンキーの背中に現れたあの模様って───!

 

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 少し落ち着いてから、アタシの能力が〝覚醒〟したのだと理解できた。

 予めヴィオラに教えてもらってたしね。でも……契約方法が〝耳打ち〟だなんて聞いてないよ!?

 

 ちょっとした悪ふざけで、意図せずピンキーと契約しちゃたんだ。

 うーん? 性格に変化はないみたい。相変わらずの減らず口だもん。

 変わった事は、アタシが命令形で話すと身体が勝手に動いちゃうって難点がまず一つ。

 利点は、テレパシーの有効範囲が無制限になった事と……

 どこにいても、アタシのそばへ召喚出来るかもしれないってコト!

 

 ─《にしても、ホントに召喚なんて芸当が出来んのかねェ》

 

 「アタシはヴィオラの話を信じるよ! 取り合えず試してみるから、ちょっと離れたとこで待っててね!」

 

 ─《うぉ!? だから〝命令〟すんなってーの!!》

 

 「ごめん!」

 

 慣れないなぁ。アタシって意外と命令形で話してるのかも……反省しなきゃ。

 さてと、気を取り直して召喚、召喚!

 それっぽい詠唱は何となく知ってるんだ!

 

 「黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの──(中略)──我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを! 」

 

 ─《なんともねェぞ? あと、絶対ェそれ違う呪文だろ! 滅びとか聴こえたぞ!?》

 

 「ダメかぁ。ええと、他にあったかな?」

 

 ─《おいおい、急いでくれよ!? さっきの命令のせいで、おれの止まってる木が折れそうなのに動けねェんだ!》

 

 「あ! 思い出した。任せて! 今度こそ召喚呪文だから!」

 

 ─《頼むぜ、相棒! 一瞬モーロクしたのかと、ヒヤヒヤしたぜェ》

 

 「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公──(中略)── 汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

 ─《長ェ! しかも失敗してるしよォ!》

 

 「ちょっと追加すればイケそうな予感っ……えと、手向ける色は〝薄紅〟! とにかく来て、ピンキー!!」

 

 《おぉ……!? 面白ェ! まさに瞬間移動ってヤツだぜコレは!》

 

 割と適当でも召喚できるみたい。

 取りあえず長いから、短めのやつも考えとかなきゃね!

 

 このあと、召喚中はアタシの体力が徐々に減ってく事が判明したり

 召喚を解除すると完全に元いた座標へ戻ることが判明したりと大変だったよね───

 

 


 

 

 《……棒っ!…………がれ!》

 

 ピンキー? あ、召喚解除したら空中だったから怒ってるんだっけ……?

 飛べるんだから、そんな怒んないでよ。

 アレ? それって大分 昔の事だったような? っ!? 痛った!

 

 そうだ!!

 アタシ、黒ひげ を倒して……その後、どうなったんだっけ?

 

 《ようやく起きやがったな》

 

 《ピンキー! ここは!? アタシ、一体?》

 

 《暴れんな。咥えてるんだからジッとしてろ!》

 

 《え、空中!?》

 

 《あと1時間くれェ保つんだろ? 例の場所までギリだ。しっかり気を張ってやがれ!》

 

 意味不明。

 気付けば、空の上。

 心臓が貫かれてるのに、生きてるし……ピンキー曰く、1時間位は保つらしい。

 取りあえず、例の場所ってドコ!?

 そもそも、現状でアタシが助かる術はないでしょ! ドラム王国でさえ、手遅れって診断すると思うよ!?

 望みがありそうな〝チユチユ〟も〝オペオペ〟も能力者が何処に居るか判らないし!

 

 《記憶が飛んでやがるな。まあいい、また気絶されたら敵わねェし。一から説明してやる───》

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 黒ひげ へ最後の攻撃を仕掛けたあと、アタシはピンキーへ最後のお願いをしたんだって。

 我ながら何度目だよって呆れるケド……全く身に覚えがないんだよね?

 お願いは〝アタシの命が尽きる前に、MADS(マッズ)へ連れて行って欲しい〟という内容。

 気力があれば2時間くらい死なずに粘れるってテレパシーで伝えて、気絶したみたい。

 

 それから1時間経って起きたアタシ。

 ホント、なんで生きてんだろう?

 いくら〝ヒトヒトの実〟が動物(ゾオン)系の一種って言っても、耐久力には限界があるでしょ!?

 もう喋れないし、手足の感覚も無いから……確実に死に近づいてる実感はあるけども……。

 

 それにしてもMADS(マッズ)か〜。

 最期は、コラさんに会いたい なんて乙女な動機じゃないのは確か。

 例の科学力で、サイボーグ化してでも生き残ろうって魂胆でしょ?

 うん。この発想は間違いなくアタシの考えだね。

 全く覚えてないけど、気絶する前のアタシに言いたい……サイボーグはちょっとヤじゃない!?

 

 フランキーみたいな体型になっちゃったらどうするのっ!?

 

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 《ようやく、いつもの調子に戻ったな相棒》

 

 《あはは。もうバイガオ達との長距離テレパシーも無理なくらい、死にかけだけどね♪》

 

 《ハッハー! 奴らも気を揉んでやがるぜ? 珍しく虎が慌ててやがる》

 

 《もー。仲良くしてよね?》

 

 《まあ、MADS(マッズ)の位置を知ってたのは虎ヤロウだからな。そこは感謝してんだ》

 

 《さすが諜報員》

 

 バイガオは教会の諜報員として、海軍へ潜入して情報を収集する任務中。

 せっかく海軍にいるんだし、今度ネズミ大佐──あ、まだ軍曹くらいかな。アイツの監視もしてもらおっかな。

 将来ナミを悲しませる前に……って過保護すぎるか。

 それに、何もする前の人を悪く言うもんじゃなかったね。

 

 元々、原作とは別の世界なのに……つい動いちゃうのがアタシの悪い癖。

 Mr.3がバロックワークスに入る前に、ブギーに預けて来たりね。

 あれでナミが蝋人形になりかける展開は防げたハズ。

 でも改めて考えると……別の問題が発生してそう。エースの手錠の鍵とか!?

 もう迂闊な事はやめとこう! ナミだって早々、ピンチにならないよね。

 

 思い当たるのは、ケスチア以外だと───

 ミス・ダブルフィンガーに、トゲで脚を貫通されたり

 エネルに脅され、月に連れてかれそうになったり

 アブサロムに身体を舐められ、無理やり結婚させられかけ

 いや!? 多いよ!!

 特にアブサロム、許さんっ!

 

 それに、ベアキング とか シキ とか劇場版の敵も危ないんだった!?

 ベアキングなんて、ナミを花嫁にしようと……っ!

 なんでどいつもコイツも、本人の意思無視してウェディングドレスを着せるの!?

 ナミは凄く似合ってて綺麗なんだけど、相手が違う!!

 

 これは、まだまだ死んでられないね。

 

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 《もうすぐだ。気をしっかり持てよ相棒!》

 

 う…ん。

 

 《にしても、改造手術なんて良く思い付くぜ》

 

 あ、かいぞう……してくれる、かな?

 

 《例の実の能力者なら、無条件で生かそうとするって言ってただろ……?》

 

 ……そう、だっけ……?

 

 《またモーロクか? いまは白髪じゃねェんだから、しっかりしやがれ》

 

 …………

 

 《おい、返事しなくてもいいから。下らねェ事でも考えてろよ》

 

 ……

 

 《相棒……?》

 

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 あれ?

 アタシ寝てたのかな、ピンキー?

 居ないの?

 何も見えない。聞こえない。匂いすらない。

 まるで、()()闇の中みたい。

 

 ああでも、身体の痛みは全くないし。

 気持ちも沈まないや。

 むしろ気分がいいかも。

 

 なるほど〜、温かいって感覚だけあるんだ。

 またちょっと眠くなってきちゃった───

 

 


 

 

 まだ着かないのかな?

 でも気分は大分良くなったみたい。

 どうせヒマだし、この8年で起こった事でも思い出してみよっか。

 

 最初は、記憶喪失のアタシと赤ちゃんのナミ。

 ラブーンが助けてくれなかったら死んじゃってたかもね。

 そういえばあの時、双子岬みたいな狭い場所を無理矢理 通ったっけ……?

 あ、ジブラルタル海峡に侵入した巨大生物って!?

 

 んんっ、その件は忘れよう。

 次はゲンさんに詰め寄られて、とっさに苗字を作ったんだよね。

 たまたま思い出せた前世の苗字〝秋月(あきづき)〟を少しいじって

 秋を英語で〝fall(フォール)〟 月を〝light(ライト)〟 合わせて〝Fallight(フォーライト)

 秋をオータムの方にしなかったり、月の読ませ方があの作品由来だったり……我ながら捻くれてたなぁ。

 

 ベルメールさん と ノジコとは直ぐに打ち解けたよね。

 まだ英語が不完全だったアタシだったけど、2人の言葉は不思議と分かったんだ。

 心で通じ合うって感覚だったのかも。

 あの頃は色々忙しくって、大変だったハズだけど……苦労したって気はしないんだ。

 きっと、ナミの笑顔のおかげだね。

 

 それからも沢山の人と出会った。

 ドクター、村のみんな、ミンゴ、ブギーの一味、ピンキー、コラさん、ヴィオラ。

 スモやん、ヒナ、ゼファー先生。

 ルフィ、マキノさん……は、一瞬の出会いだったね。

 コウ三郎さん、Mr.3(ギャルディーノ)、ハンコック、ペドロ、バイガオ、バンチ。

 

 考えて見ればアタシ、麦わらの一味にはルフィとナミしか会ってないんだ。

 あとは遠目にゾロを見たのと、ジンベエの気配を感じただけ。

 ブルックの話はラブーンに、ウソップの噂はゲンさんに聞いたけど……他はさっぱりだなぁ。

 

 サンジが遭難するのは来年くらいかな?

 チョッパーは、えーと……まだ5歳!? ヒルルクと出会う前だね。

 フランキーは改造済みかな? うーん。この世界だとMADS(マッズ)はまだ活動してるし、謎だね。

 

 それに、ロビンは───

 

 


 

 

 どれくらい時間が経ったんだろう?

 もしかして、とっくに改造手術が終わってたりする?

 今は培養カプセル的な物の中だったりしてね♪

 良かった〜、それなら機械的な改造じゃなさそう。

 

 相変わらず、視覚 も 聴覚 も 嗅覚 も無いけれど……

 なんとなく 触覚 と 味覚 は戻って来たみたい?

 がんばれ、MADS(マッズ)

 

 「って、まっず!? 何これ、口の中が気持ち悪いっ!!!」

 

 「アピスが喋りおった!?」

 

 「ふぇ?」

 

 アタシ喋れる!? それに、五感も全部復活してるっ!

 ありがとう見知らぬお爺ちゃん! ハカセって感じには見えないケドね。

 でもこのお爺ちゃん、どこかで見たことある……?

 どう見ても科学者に見えないその民族衣装も、特徴的なトンガリ帽子もどこかで……

 

 「アピス! 一体どうしたんじゃ!?」

 

 そうだ、軍艦島の長老 ボクデン爺さん。話が長くて、豚まん作りが得意な人!

 って、そんな豆知識どうでもいいのっ!

 今は、この人がアタシのことを〝アピス〟って呼んだ事が大問題!!!

 まだ口に残ってる、まっず〜い味に、どう見ても赤ちゃんな、アタシの手足

 

 そして、さっきから聞こえてくる小鳥たちの話し声(テレパシー)!!

 

 これって、アタシ が アピス になっちゃったってコトだよね!?

 何らかの弾みで、赤ちゃんのアピスが悪魔の実を食べて……アタシがその身体を動かしてるってコトだと思う。

 つまり、アタシの正体って〝ヒソヒソの実〟もとい〝ヒトヒトの実 幻獣種 モデル:ソロモン〟の中にあった意志なのかも!?

 どうしよう、アタシ……アピスを乗っ取っちゃったの!?

 

 「アピス!? お主、悪魔に憑かれてしまったのでは!?」

 

 「…………ぁぅ〜?」

 

 「ふむ? やはり、気のせいかの? さっき丸呑みした木の実が、よもや〝悪魔の実〟だったのかと肝を冷やしたぞい」

 

 「だぁ♪」

 

 ふぅ〜、とっさの赤ちゃん演技で誤魔化せた。

 悪魔認定だけは絶対勘弁! 教会が来ちゃうでしょ!?

 それにしても、悪魔の実への転生って……ツラすぎるよぉ。ああ、誰でもいいから〝そうじゃないよ〟って言って〜! 嘘でもいいから! 優しい嘘なら大歓迎……う、誰のツッコミも来ないのは久々だなぁ。

 寂しい。

 

 あーもう! どうせ人以外に転生するなら、せめて可愛い動物にしてよっ!

 

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 これからどうしよう?

 思えば、前のアタシ……〝エイダ〟もアタシが乗っ取ってたのかもしれない。

 そもそも、本当の名前も知らないまま死んじゃったんだ。

 それで今度はアピスへ。

 そうやって、ずっと身体を乗っ取って生きる存在だったの?

 あれ? でも、それだとアド・オリーチェとかまでアタシだったって事に……?

 

 ないない。

 黒ひげ には混乱させる目的でそう名乗ったけど……1500年前の人物なんだし。

 そんな年月があれば、人格とかも変わっちゃうでしょ。流石にね。

 前世の記憶も粗方思い出した今、アタシの人格は全く変わってないって実感できるもの。

 

 でも、エイダは……ナミの本当のお姉ちゃんは別に居たのかも知れないんだ。

 

 そうだ……! 最初に意識が覚醒したあの時。

 記憶は無かったけど、強い思いを感じたんだ。

 赤ちゃんを大事に思ってた、あの感情がもしかして……?

 うん。なんとしても、ナミを守らなきゃって感じたんだ。

 だとすれば、それはアタシの中に確かに残って──

 

 《ぁぅ〜?》

 

 そうそう、あの頃のナミはこんなカンジだったよね♪

 さっきも真似して、ボクデン爺さんをやりすごし……!?

 

 《キャッキャッ!》

 

 頭の中で赤ちゃんの声が聞こえるっ! アピスなの?

 

 《ハーイ!》

 

 返事した!? あ、某赤ちゃん的なアレかな? チャア とか バァブゥ とか……

 とりあえず、身体を返さなきゃ! 方法は分からないけども!

 えっと、アピス〜? 交代しよう、こうたい。

 

 「あぅ〜?」《あ、成功した》

 

 「おお。さっきまで赤ん坊のフリした悪魔かとも思っとったが、間違いなくアピスじゃわい!」

 

 《アタシの演技見破られてた!? 恥ずかしいっ!》

 

 「まあ、アピスも2歳じゃ。少しくらい話せてもおかしくないしのぅ」

 

 「チャア♪」

 

 もう2歳なんだアピス。

 その歳だとナミはペラペラ話してたよね?

 そうそう、1歳の時に初めて喋ったのが〝おかね〟だったんだ……

 最初は〝おねえちゃん〟って言って欲しかったなぁ〜。

 

「おねぇたん?」

 

 !!!

 あはははは。

 前世から数えて2回も死んじゃったけど……アタシのお姉ちゃんライフは、まだ続きそう!

 んんっ……年齢的に〝お母さん〟だろってツッコミは無しの方向でっ!

 

 これからよろしくね、アピス♪

 

 


 

 《──って具合で、アタシはアピスのお姉ちゃんになったの》

 

 「ショック! お姉ちゃん、年増だったの!?」

 

 《いいアピス? アタシの精神年齢は25歳で止まってるの。例え何度生まれ変わろうともねっ!》

 

 「でもお姉ちゃんの前世の前世、ほぼさんじゅ──」

 

 《はーい、お終い! エイダの話はこれでお終いでーす》

 

 「えぇぇ!? 記憶喪失の原因が分かった話とか気になるぅ〜!!」

 

 《それはアピスも知ってるでしょ!》

 

 「知らないよ!? あたし、赤ちゃんだったもん!」

 

 

 記憶喪失の原因かぁ〜。

 

 ヴィオラもアタシも、てっきり〝メモメモの実〟の能力者の仕業だと思ってたのに……

 

 まさか犯人がノコだったなんてね。

 

 マイナー過ぎるキャラクターだから、完全に頭から抜けてたよ。

 

 

  ─《マイナーで悪かったなアド》

 

 

 おっと、盗み聞きされちゃってた。

 

 もうっ! なんで千年以上昔の指輪が機能しちゃうんだろ。

 

 ピンキー達3人はアタシが契約したから仕方ないけど……

 

 最近指輪が多すぎて、アピスの手が心配。

 

 シンプルなデザインだったのが、せめてもの救いだね。

 

 クロコダイルみたいなゴテゴテのヤツだったら目も当てられないから!

 

 

  ─《おい相棒、そのクロコダイルが暗躍してる国から呼び出しだぜ?》

 

 了解、ピンキー。

 

 それじゃ、ちょっとお出かけしよっかアピス♪

 



 

 

     〜 10年後 〜

  ー ココヤシ村・海の見える丘 ー

 

 「それじゃ、行ってきます お姉ちゃん!」

 

 墓前に別れを告げるナミ。これからは航海士として、しばらく海上での生活。

 

 「そんな簡単なお別れでいいの?」

 

 「いいの、ベルメールさん……お墓って言っても、どうせ遺体は埋まってないんだし!」

 

 「ナミ、前にも言ったけど 桃ちゃんがエイダを連れ去ったのは……」

 

 「わかってるわ。アイツとお姉ちゃんは特別な仲だったもの」

 

 「……そう言えば、たまに会話してたわね あの子」

 

 呆れるベルメールさん。一応、故人って事になってるんだから、少しくらい偲んでくれても……

 まあ、ナミが言う通り お墓に()()()は居ないんだけどね!

 あれから10年……

 アタシの身体はどうなったんだろう? 無事にMADS(マッズ)へ着いたのかな?

 一度だけピンキーが帰ってきて、家族へ手紙を届けてくれたけど……

 もうピンキーの言葉は分からなかったからね。

 

 あの時、勝手に動き出したアタシの身体。

 ティーチを追撃して力尽きた身体を、ピンキーに頼んで運んでもらった時が最後。

 あれ移行、アタシは動物の声を聞けなくなった───

 

 きっと、アタシの魂とか精神とかが分離しちゃったんだ。

 10年も家族に会いに来ないんだもん……きっと()()()は邪悪な心の分身。

 ま、所詮アタシだし。邪悪って言っても、たかが知れてると思うけどねっ!

 ……言ってて悲しくなってきた。

 

 向こうにはピンキーもいるみたいだし、性格はアタシと同じなんでしょ。多分。

 こっちへ来ないのは、何か事情があるってコトだろうなぁ。

 

 「ナミ! これ、私の代わりに連れてってあげて!」

 

 「え!? このブレスレット、ノジコの宝物でしょ!?」

 

 「いいの。2つあるんだから」

 

 「エイダのクリスタル と ノジコのブレスレットねぇ。私も何か用意しとくんだったわ」

 

 「もう十分貰ってるわ。ベルメールさんには、斧の使い方まで教わったんだし!」

 

 ナミの戦闘スタイルは斧。すっかり逞しくなっちゃって!

 ノジコもデザイナーとして頑張ってる。たまに、漢字Tシャツも作ってくれてるし!

 ピンキーが持ってきた手紙には、家族へのメッセージと幾つかの服飾デザインがあったからね。

 アタシが死ぬ以前に書いたって(てい)で綴られてたけど、あんな手紙アタシは残してない。

 だからこそ、身体は生きてるって確信してるの。

 アタシの意識は10年間クリスタルに閉じ込められたままだけど……

 いつかきっと、()()()がもう一度 家族と話せる時が来るって信じてる!

 

 「それにしても、まさかナミがM・Gの一等航海士になるなんてね」

 

 「もー、何度目よベルメールさん! 私は絶対っ、あの海賊 キャプテン・ジョークを捜し出すわ!!」

 

 「その為の航海士……本当に後悔はないの?」

 

 「後悔しないって決めてるからね。大丈夫、目的を果たしたら必ず帰ってくるから!」

 

 あ〜、心配っ!!

 アタシの身体が死力を尽くしたのに、ティーチは生きてる可能性が高いなんて……!

 山へ逃げ込んだアイツを、魚人たちが数人追いかけたまま帰って来てないんだ。

 ヴィオラが能力で行方を追ってくれてたとは思うんだけど……アタシがそれを知る手立てはない。

 とりあえず、復讐とか考えなくていいの! ナミ!

 アタシはここに居るんだからっ!

 

 「さってと、羽ペンも持ったし忘れ物はなさそうね」

 

 「あんた物持ちが良すぎじゃない? 羽ペンなんて首都へ行った時のお土産でしょ?」

 

 「ノジコこそ、その時お城へ行ったなんて夢の話 未だにするじゃない!」

 

 「本当だって言ってるでしょ! 姫様にも会ったんだからっ!」

 

 「まったく、しばらく会えないんだからケンカするんじゃないの!」

 

 「「いたっ!?」」

 

 あはは、幾つになっても可愛い妹達だなぁ〜♪

 

 「それとナミ! やっぱり、これ持ってきなさい。エイダの形見よ」

 

 「え!? そのナイフ、お姉ちゃんのだったの!?」

 

 「あんたもドレスローザの女なんだから、男に裏切られた時のために持ってなさい」

 

 「そんな相手居ないけど……御守り代わりに、護身用として持ってよっかな」

 

 長十郎……。鞘が行方不明だから、すっかりナイフ扱いだなんて不憫。

 あれで、アタシの身体がティーチを刺して、ベルメールさんが勘違いで、ゲンさんを刺して……あ、普通に生きてるよ?

 今度はナミが、誰かを刺すの?

 

 よーし! 決めた!!

 何もできないアタシだけど、ナミの相手位はしっかり見定めなきゃね!

 まず基本として、麦わら帽子をかぶってて……ゴム人間で……

 あはは。

 ナミはM・Gの航海士として旅に出るんだけど、この先きっとルフィと出会う。

 不思議な確信があるんだ。アタシですら、ルフィと会えたんだしね!

 

 だからねナミ───

 アタシは この特等席(クリスタル)で、これからの航海をずっと見守ってるよ!!!

 

 

 

 

 
 G    TO 
ROMANCE DAWN
 

 




近い内に〝設定集〟と〝あとがき〟を投稿予定ですが、本編はこれにて終了です。

最終話までご覧いただき、ありがとうございました!
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