その女〝動物好き〟 - the another order -   作:浅学寺のえる

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vol.3 「それ、はやく言ってよ!」

 村に来てから1年経った。

 

 ONE PIECEの記憶も大分整理できて、頂上戦争編までは大体思い出せたとおもう。記憶に空いた多少の穴は、ご愛嬌って事で。

 みかん栽培も順調で、今年は花の時期から手をかけられたから去年よりも沢山収穫できそう♪

 ナミもすくすくと成長して、1才になった頃から少しだけ言葉も話せるようになってきたの。アタシの妹、天才かもしれない……! 

 

 「おかね! おかね!」

 

 「あはは……何で最初に覚えた言葉がそれなの?」

 

 ベルメールさんと()()を買う、買わないで、お金の話をしすぎてたかもしれない。反省しないと。とりあえず、他の言葉で上書きしちゃおっか!

 

 「ナミ? おねえちゃん って言ってみて? お ね え ちゃ ん」

 

 「お か ね ちゃ ん?」

 

 「ひどい! アタシの事、お金だと思ってるの!?」

 

 「ちょっとエイダ、ナミに変なこと教えちゃダメでしょ!」

 

 「違うのベルメールさん! アタシはATMじゃないってナミに教えないと……!」

 

 「またあんたは意味の分からない事を……」

 

 あはは、ベルメールさんに呆れられちゃった。

 アタシも英語を話すのには多少は慣れてきてたんだけど、たまにおかしな事を言う子ってイメージが定着しちゃったみたい。

 その流れで、一度きちんと言葉を覚えなさいってベルメールさんから学校へ通うことを勧められてしまった……ナミとの時間が減っちゃう! なんとか阻止しなくては!

 

 「ほら、前に見つけた地図。私は地理を教えられるほど詳しくないから、学校で教えてもらいなさいよ」

 

 「う、確かに興味はあるけど……でも、ナミのお世話もあるし! 家事や仕事だって!」

 

 「大丈夫よ。私も大分慣れて来たから! それに、家の仕事を手伝いながら学校へ通ってる子も多いって話よ?」

 

 「うーん。あとは、えっと……?」

 

 「(ウチ)はゴサへも近い場所に建ってるから、子供だけでも通えるでしょ? はい、決定ね!」

 

 う、結局押し切られちゃった。アタシって押しに弱い性格なのかも……

 

 

 学校があるのは、隣町のゴサ。まだ創立したてなんだけどね。

 この国の人が海外で大出世して、試験的に母国で学校制度を作ったって話。驚いた事に、将来エム・ジーって会社で働く約束をすれば学費もタダなんだって……うん、怪しすぎる。

 でも学費なんて払う余裕が無いから、アタシはタダで通う事になってしまった。ベルメールさんは「将来の働き口が決まるんだから一石二鳥じゃない♪」なんて気楽に言ってるけど……怖いなぁ。

 

 こんな事なら、無理して冷蔵庫なんて買うんじゃなかったよ……。

 

 この世界、テレビはもちろん洗濯機も掃除機も無いんだけど、なぜか冷蔵庫だけは存在してるんだよね。製造元はメリップ工房っていうメルヘンな名前の会社。

 アタシは機械の分解とかはできないから、(ダイアル)を使ってるのかどうかは分からないけどね。

 そうそう(ダイアル)で思い出したけど、電伝虫が無いのも謎なんだ。あ、でも完全に無い訳じゃなくて……野生でそれっぽい大型のカタツムリはいるんだけど、電話として使ってるのは見た事ないって話。

 原作でフランキーが機械を取り付けてた記憶は思い出せたんだけど……構造に関しては思い出せる気配が全くない。アタシはきっと前世でもそっち方面はサッパリだったんだろうなぁ。

 

 だから今アタシにできる事は……世界のどこかに居るだろう、あの人を心の中で応援するだけ!

 がんばって、 ベガパンク!

 

 なるはやで洗濯機を開発して、世界に普及させて下さい!!

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 学校は想像よりも簡素なものだった。あ、建物自体は大きいけどね……なぜか天井が無駄に高いの。

 簡素なのは、授業の方針。〝読み書き〟〝計算〟〝歴史〟この3項目をメインに村や町の お年寄りが交代で教えてくれるってもの。

 一応、総合講師って肩書きの若い先生もいるんだけど、別の学校も受け持ってるからたまにしか顔を見せない……らしい。アタシはまだ一度も会った事がない。

 出席するかどうかが自由で、仕事が忙しい時は無理に行く必要もないってくらいアバウトな校風だからね。アタシは週に2回顔を出す程度。

 ついでに卒業って決まりも特になくて、16歳くらいになって本人が充分学んだと思えばそこで終了みたい。

 通ってる子供の年齢もバラバラだし、13歳って事になってるアタシは基本的には自習なんだけど、たまに幼い子へ勉強を教えたりもしてる。本だけは豊富だから将来ナミは喜ぶかもね。そのためにも、ナミの学費はどうにかしないと……!

 

 「おねえちゃん、みて!」

 

 「はいはい、ちょっと待ってねノジコ」

 

 そう、ノジコはまだ4歳なんだけど早くも学校に通ってるの。まあ、ノジコは絵を描いたり、積み木で遊んだりしてるんだけどね。周りにも同じくらいの子が何人かいるし、託児所 & 老人の寄り合い所って感じになってる。前世でもこんな施設があった気がするなぁ。

 ノジコまで謎の組織 M・Gへ将来を担保にされてしまったけど、大人達からM・Gに関しての悪い評判は出てこない。基本は貿易会社らしいんだけど、手広く色々な事を行っていて とにかく多業種だから、村で商売をしてる人達は殆ど M・Gに所属してるみたい。

 所属することで色々と取引を仲介してくれるらしいんだけど、会費や手数料は一切かからないんだって。怪しすぎるでしょ?

 

 けれど今は、怪しい悪の組織よりも目の前のノジコの方が大事だよね。

 

 「上手に描けてるよノジコ。これは、アタシ達と みかんの木でしょ?」

 

 「うん!」

 

 あ〜、妹がかわいい! ノジコがいるから学校に来てるようなもんだよ。

 だって歴史の自習用に渡された本、どうやっても聖書もどきなんだもん。原作でも くまが持ってたけど、これで歴史を学べって言われてもね……ノジコが描いた絵を見てる方がよっぽど楽しい♪

 絵には家族と、みかんの木……それとカラスや鳩。多分棒を持ってるのアタシだよね? あはは、強く印象に残っちゃったか〜。

 

 そうそう。収穫の風景で思い出したけど、ウチのみかんを買い付けてる貿易商も所属は M・Gだったみたい。ていうか、世界の物流の8割近くが M・Gによって管理されてるんだって。独占禁止法とかこの世界にはないんだなぁ。

 でも、M・G自体は儲け主義じゃないって話。今の所、物価は安定してる……っていうか、そうなるように働きかけてるんだと思う。

 あとは……戦争被害を受けた街へ寄付したり、食料の配給をしたりもしてるみたい。

 おかげで市民からの人気は物凄く高いんだけど、そこはかとない胡散臭さも感じちゃうのはアタシが擦れてるからなの? もう精神的には、エイダさん じゅっさい……。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ー ココヤシ村のはずれ ー

 

 

 はぁ〜、ちょっとアンニュイな気分の時は ついつい此処にきちゃうなぁ。

 この丘の上から海を見てると、嫌なことを忘れられるんだよね。すでに色々と記憶を失ってる事すら忘れられそう……。

 

 「なんだエイダ。また此処に来ていたのか」

 

 「ゲンさんこそ、どうして?」

 

 「海上の見張りだ。最近は海賊も増えているようだから念の為な」

 

 そう言ってアタシの隣にゲンさんは腰を下ろした。

 海賊……か。数年前までは平和だったらしいんだけど、最近になって街や商船が襲われる事件が増えてるみたい。でも、M・Gは強力な護衛を雇ってるから被害はほとんど出てないって話。

 まあ、ココヤシ村をわざわざ襲う海賊はそうそう居ないと思うけどね。アーロンだって、まだ魚人島でチンピラみたいな事やってる時期だろうし。

 っ、いけない! つい原作の流れで考えちゃってた。この世界は原作と似てるけど、別モノなんだ!

 

 その証明にもなった地図は、折りたたんで持ち歩いてるんだけど……学校じゃ中々教えてもらう機会がないんだよね。アタシ、お年寄りにウケが悪いからなぁ。やっぱり表情が動かないのはツラい。

 そうだ! 折角だからゲンさんに聞いてみようかな?

 

 「ねえ、ゲンさん。この地図、家で見つけたんだけど……」

 

 「ほう、これはまた随分と古い地図だな。まだレッドラインが繋がってる時代の物か」

 

 「えぇ!? じゃあ〝赤い土の大陸(レッドライン)〟って今どうなってるの!?」

 

 「まだ学校では教えておらんのか。うーむ、ならばM・Gについて軽く説明するか───」

 


 

 まずは、この国──ドレスローザが生んだ稀代の傑物〝フラミンゴ〟について話を……おいエイダ? どうした、驚いた顔をして?

 お前の表情がそれ程動いたのは初めて見たぞ。はっはっはっ! おっと悪かったな。話を戻すぞ?

 フラミンゴは〝イトイトの実〟という悪魔の実シリーズの一つを食べた能力者でな。数年前まで、そのチカラで世界中を飛び回っておったのだ。

 ああ、信じられんだろうが 雲に糸を引っ掛けて空を飛ぶそうだ!!……なんだ、今度は驚かんのか。

 そうしてフラミンゴは数年かけて、世界中の有力者と繋がりを作ったのだ。

 ついには〝東モコモ会社〟のドラゴン氏を代表へと推挙して 海のギルド〝マール・デ・グレミオ〟通称 M・Gを設立したのだ。

 ああ……ちなみに、お前が通ってる学校を作ったのもフラミンゴだ。

 


 

 情報過多!!

 

 推定ドフラミンゴにドラゴン。あとモコモ? そこは行きたいけどね〜、ああミンク族にガルチューしたい♪

 って、落ち着けアタシ! 現実逃避しちゃダメ!

 そもそもマール・デ・グレミオって何? スペイン語だよね? あ、ここスペイン……っていうかドレスローザだったんだ!?

 

 やっぱもう嫌! これ以上なにか情報が来たら頭がパンクしちゃう!

 

 「どうした? まだレッドライン貫通の話をしておらんが?」

 

 「それはまた今度で! ほらゲンさん、見て見て夕焼けが綺麗♪」

 

 「お前は時々、意味がわからんな」

 

 「あはは」

 

 夕日に照らされた海は、赤ともオレンジとも言い難い独特な色合いをしてる。なんだかロマンチック。

 折角だから、この状況に浸っちゃおうかな。

 

 「ねえゲンさん、海の色は何色?」

 

 「……! 誰が分からず屋おじさんだ!!

 

 「え? 何を言って……?」

 

 「しまった。また同じ聞き間違えをしてしまったようだ。すまんなエイダ」

 

 えーと? 〝What color is the ocean〟って言ったのを〝分からず屋おじさん〟に聞き間違えたって事?

 さっきアタシ、割とアンニュイな雰囲気を纏わせてたと思うのに「ねえゲンさん、分からず屋おじさん?」って言ったと思われたの? ゲンさんの中でアタシって、そんなイメージなの……?

 

 ───それよりも!!

 

 「さて、完全に陽が落ちるまえに戻らんとな」

 

 「待って! なんでゲンさん日本語話してたの!?

 

 「なんと!? お前もヒノモト語を話せるのか!?

 

 

 色々と疑問はあるけれど。取り合えず、一言だけいっておきたい。

 

 

 「それ、はやく言ってよ!!

 

 

 大分低くなった夕日を背に受けて、アタシ達は帰路についた。

 

 その途中で聞いた話、ヒノモトという国と、その文化が伝来した集落。ゲンさんは子供の頃、ヒノモト文化がある村で暮らしてた事があったみたい。

 でも、ココヤシ村では誰もヒノモト語を話せる人が居ないから普段は封印してるんだって。知らない人が聞くと言語だと認識されないらしくて、異常者扱いされたこともあるんだとか。

 

 「そして、王族や貴族もヒノモト語の教育を受けていると聞く。エイダという名。確か、崇高や高貴と言った意味だったか?……フォーライトと言う苗字も考えると、やはりお前は……!?

 

 「え? ないない! アタシが王族とか貴族な訳ないでしょ?

 

 「……まあ、そうだな。だが念のため、人前ではヒノモト語が話せる事は隠しておきなさい

 

 「わかった。二人だけのヒ・ミ・ツ・ね」

 

 「まったく、お前までベルメールに感化されおって……そういう事を言うのなら、せめて表情を動かせ」

 

 余計なお世話! アタシだって最近は、全力で笑えば愛想笑いくらいには表情が動くんだからね。

 でもまさか、適当に付けた名前にそんな意味があったなんてねー。

 

 前に出自の事でゲンさんに詰め寄られた時……あまりの迫力でポロっと思い出した前世の苗字を、ただ英語風にしただけなのに。ついでにナミの苗字までフォーライトになっちゃたのは誤算だったけど。

 それはそれとして、さっきゲンさんが「また同じ聞き間違え」って言ってたよね? ということは、海の色を誰かに聞かれたってことだよね?

 海なんて大体青いんだから、普通 海の色なんて聞かない筈……それこそ、今みたいな状況じゃないとね!

 

 これは、甘い予感がする……!

 

 「ねえ、ゲンさん? 誰に海の色を聞かれたの?」

 

 「…………ベルメールだ」

 

 「で、で、さっきみたいに聞き間違えたの?」

 

 「ほら、もうお前達の家に着いたぞ! ではなっ!」

 

 あらら、慌てて帰っちゃった。ちょっと恥ずかしがってたし、やっぱりそういう話?

 ベルメールさんはまだ21歳だし、ゲンさんもギリギリ20代らしい───これは、ナミとノジコにお父さんができるチャンスかも!

 

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 「はぁ? わ、私とゲンさんが!?……ば、馬鹿な事言ってないで、学校へ行きなさいっ!」

 

 「ちょ、ちゃんと話を聞いてよ〜! あと、いま夜なんだけど!?」

 

 

 夕食の時に、ゲンさんの事を話してみたら家から追い出された……。照れ隠しにしてもヒドくない?

 

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