その女〝動物好き〟 - the another order - 作:浅学寺のえる
光陰矢のごとし、アタシも今は14歳。
ミンゴ先生に教わった謎の年号、聖アド歴でいうと今年は1552年になるみたい。もし西暦と同じだとすれば、大航海時代の真っ最中。日本だと、織田信長が家督を継いだ頃かな?
けど、この世界はアド
あの聖書もどき───タイトルはそのまま
そこにアド・オリーチェって人物が出てくるんだけど……この分厚い本、内容が頭に入って来ないんだよねぇ。まあ本物の聖書にも詳しくはないんだけど、中身はほぼ同じなんじゃないかなと思う。ダビデだのゴリアテだのが出てくるんだし。
ダビデの投げた石が必中の概念を持ってるって展開は燃えたなぁ〜! あ、バトルシーンだけは読んだの。アタシ、基本的に少年漫画みたいな展開しか頭に入らないんだよね!
だってアタシのバイブルはONE PIECEだから! ウチは改宗しません!
という訳で聖書を読むのは無理そうだから、ミンゴ先生に神話抜きの歴史だけを掻い摘んで教えてもらってるの。
あの時ファミリーにこそ入れられなかったけど、ミンゴ先生とは大分仲良しになっちゃったんだよね。ちょっと将来が不安。
原作ドフラミンゴ程の悪人じゃないと思うんだけど、どこか胡散臭いんだよなぁ。たまに挟んでくるラップもうざいし……。
あとレッドラインを貫通したって自慢も聞き飽きたし。
ミンゴ先生は自分の手柄みたいに言ってるけど、実際にはドラゴンとモーリーのお陰だと思う。だって、モーリーが〝オシオシの実〟の能力でレッドラインの内部に空洞を作って、ドラゴンが竜爪拳の一つ〝竜の息吹〟で岩壁を破壊したって話だし。
それでレッドラインに阻まれていた地中海と紅海がつながって、地球でいうアジア方面との貿易が盛んになったみたい。その2つの海をつなぐ運河を〝ロゼ運河〟って命名したのがミンゴ先生なんだって……うん、名付けしかしてないよあの人。
わざわざ変な名前を付けなくても、地理的にスエズ運河でいいでしょ?
はぁ〜、ミンゴ先生の件はもういっか。
この一年でONE PIECEの記憶は、
でも学校のおかげで英語はペラペラになったの。表情筋も少しだけ仕事してくれるようになって来たし! 総合的には、順調順調。
ー ココヤシ村の港 近辺 ー
「おねえちゃん、わんちゃん!」
「あはは、うん。ワンちゃんがいるねー……」
「ハッハッハッ、バウ! くーん、くーん?」
《あァ? なに見てやがんだガキ共! 噛まれたくなきゃ、食いモンよこしな?》
ナミもご機嫌に笑いかけてくれる。このワンコ、見た目だけはキュートだからね……。
外には危険な(思想の)動物がいっぱい! ナミも1人で歩けるようになって来たから、今まで以上に目を離さないように気を付けないとね!
でも、ちょっと成長が早すぎない? まだ2歳のハズなのに、去年のノジコと同じくらいに見えるし……まあ、可愛いからいっか♪
「おねえちゃん! ふね!」
「え? うーん? アタシには遠すぎて良く分からないなぁ」
ナミが海を指差して船があるって言うんだけど、アタシの視力じゃ見えないなぁ。なんだか最近視力が落ちてきた気がするし、そろそろ眼鏡を作らないとまずいかも……。
この世界、流石にコンタクトレンズは無いけど眼鏡はあるんだよね。しかも、割とオシャレなデザインも多いの♪
「ふね! ぞうさん!」
「あ、アタシにも見えてきたよ。船首が象みたいね」
船は港を目指して、大分近づいてきてる。あれって、ビッグトップ号? うーん、それにしては小さい?
見た目はそのまま、バギーの船を小さくしたデザインなんだけどね。って! 海賊旗 掲げてるし!! マークはピエロっぽいけど……? なんだっけアレ? 見た事あるんだけど、えーと。
「エイダ! ナミを連れて早く建物に入りなさい!」
「あ、ゲンさん! でも海賊が……!」
「だから避難しろと言っておるんだ! 安心しろエイダ。英雄キハーノとまではいかんが、私にも〝長鼻〟の心得がある」
「ながはな?」
「この銃だ。奴らが横暴を働くようなら、これで容赦なく撃ち抜いてくれる!」
ゲンさん頼もしい!
最近は夕食にゲンさんを誘う機会も増えてきてるし、もう実質 ナミとノジコ にとってはお父さんなんだよね!
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結局、海賊は何も悪さするつもりが無かったみたい。
食料を買いに立ち寄っただけらしいけど、それホントに海賊?
遠目で見た感じだと陽気な人が多いみたい……って言うかバギーの一味だよね多分。まだ10人くらいしか居ないから、駆け出しの頃なんだろうなぁ。あと、村の人をビックリさせちゃったお詫びとしてなにか芸を見せてくるらしいの。
そんな平和的な考え、バギーらしくないと思うんだけど。若い頃だから、まだロジャーの影響が強く残ってるとか?
さっきからサーカス団みたいな海賊を見て、ナミとノジコは楽しそうにしてる。村の人も和気藹々としてるし、大丈夫そうかな。まだ準備中みたいだし、ゲンさんが言ってた〝長鼻〟のことを聞いてみよう!
「ああ、ゲッコー諸島の二大英雄の話か。〝長鼻〟ウソップ・キハーノ と〝弾丸〟バレット・ダグラスの2人なんだが──」
『ウソップーッ!? 何やってんだお前ーッ!?』
ハッ……! 脳内でルフィが代わりに叫んでくれた。ありがとう!
でもよりにもよって、バレット!? ゲンさんの話ぶりだと、ウソップはもう大人になってるっぽいし……。
原作崩壊は知ってたけど、これはヒドくない!? どうして年食ってるの? まさか、ナミの成長が早いのも!?
イヤッ! アタシの可愛い妹が年上になっちゃうなんて絶対ダメ!
「おねえちゃん? どーしたのー?」
「ナミ! これ以上大きくならないでね?」
「こら!! またアンタは訳の分からない事を! ナミに変な事吹き込まないの!」
「な!? ベルメールさんだって、浮気男は刺していいとかおかしな事を教えてたじゃない!」
「「「何も おかしくないけど?」」」
怖っ! 集まってた村の女の人が全員こっち向いたんだけど!?
どういう価値観なのこの村! 男は男で、背中を刺された経験のある人が多いらしいし!
ドクターが一番得意な手術って自慢してたもん……
バギー達の大道芸はとても面白くて、みんな大喜びしてる。
アタシは、最後の人体切断マジックのせいで少しシラけちゃったけど……まあ、バギーの演技は面白かったかな? おひねりも沢山飛んでるし、もうそれが本業でやってけるんじゃない? 海賊やめなよ。
でも1つだけ、大きな疑問があるの。
なんであのバギー〝赤っ鼻〟じゃないの!? まさか、どこかで切り離しちゃったの!?
これは確認しない訳にはいかないよ。
「あの! バギーさん! その鼻どうしたの?」
「あン? 鼻ァ? なに言ってやがんだ、嬢ちゃん」
見た目からバギーは20代前半だと思うんだけど、声は渋いなぁ。ステキ♪……え!? アタシってそういう趣味だったの!? うぅ、急に記憶が押し寄せてくるっ!?
───『アタシの考えた〝ONE PIECE 渋オジ声〟ランキング! 気になる3位にランクインしたのは〜!?〝千両道化〟のバギーです! いやぁ、普段が普段なので、急にマジメな声を出されるとギャップでやられてしまいますねぇ〜!』
なにこの残念な前世。たしかに今までも、きっかけがあれば色々思い出してたんだけど……コレいらない。
でも1位と2位は気になるんだけど!? 続きは!?
───『ちなみに、当ランキングには中の人が交代しているキャラクターは含まれていません! その場合、初代ロジャーが1位なのは確定だから面白味に欠けるでしょ? ちなみに、そちらの2位は初代白ひげでーす!』
それは完全に同意だけど……じゃあ、中の人が交代してないランキングで1位と2位は誰なの!?
「おい聞いてるのかお前! キャプテンの名前はブギーだ!」
「よせカバジ、方言みたいなモンだろ。だが、鼻ってェのは一体?」
カバジ!? なんか、普通にイケメンなんだけど! アタシより少し年上くらい?
さっき一輪車の芸で、女性人気を集めてた男の子がカバジだったなんてビックリ。じゃあもしかして、あっちでお姉さん達に囲まれてるケモミミ ショタはモージなの!?
あの子は芸をしてなかったのに、一部から大人気で近づけないんだよ!? 騙されたぁ、ミンク族かと思ったアタシのワクワクを返して!
「おい女! キャプテンが聞いてんだろ!」
「あ、ごめんね。えっと、その〜……鼻は丸くて真っ赤な方が格好いい、ですよ?」
「なんだと!?」
やっちゃった! 逆上しちゃったかも!? 言葉を選んでみたけど、コンプレックスだった鼻の事はやっぱり禁句だったんだ!
あれ? でも……バギーは黙って何か考えてる?
「付けっ鼻か! いいんじゃねェかブギー! サーカスのピエロみたいでよぉ!」
「やっぱそうか? まあ芸の時だけでも付けてみるか! それで おひねりが増えりゃ儲けモンだな!」
なんか動物の被り物したチビッコも会話に入ってきたけど……あ、顔は大人だ。怪力自慢の芸をしてた人かぁ。
この人、顔に虹色の線を引くっていう謎のメイクしてたんだよね。うーん? なんか見覚えがあるような、無いような……。
「ありがとよ嬢ちゃん。海賊に意見を言うやつなんて稀だからな! 他にも何かあったら、遠慮なく言ってくれ」
「うーん……あ! せっかく凄い芸なんだし、見物料をもらっても良いんじゃないですか?」
「ああ、前に一回やってみたんだがな。無理なんだろ? カイリキ?」
「難しいな」
この人、カイリキって名前なんだ。そのまんま すぎない?
そのカイリキさんが言うには、今は広場を借りて芸をしてるから、お客さん と タダ見の人 の区別が付けにくいんだって。
広場の近くに家があれば、2階の窓からも見えるし。線引きがハッキリしないと、見物料を払った人が不満に思っちゃうからダメみたい。この人マジメだなぁ。ホントに海賊?
うーん、だったら此処は一つ!
「幕で囲っちゃえばいいんじゃない? ほら、サーカステントみたいに!」
「なるほどな。組み立て式にして持ち運べば、いけそうだな! カイリキ!」
「今の船にそんなスペースはねェだろ! クルーも増えてきたし、こりゃそろそろ船も替え時かもな」
「ぎゃははは、ならドンと買い替えちまうか! 」
「お前はまた簡単に言いやがって……ああ、ありがとな嬢ちゃん」
本格的に導入するのは先になりそうだけど、アイデアだけはもらっておくってお礼を言われちゃった!
ふふふ、計画通り! アタシがわざわざ海賊に知恵を貸してあげたのには、理由があるの!
そう、恩を売って───あの可愛いライオンの赤ちゃんを抱っこさせてもらうんだ♪