その女〝動物好き〟 - the another order -   作:浅学寺のえる

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vol.6 「ライオンよりも怖いモノ」

 ー 村の広場 ー

 

 

 「あはは♪ 柔らか〜い、毛もフワフワしてる! 肉球もプニプニだしぃ〜♪」

 

 《くすぐったいよぉ》

 

 「あ、ゴメンねリッチー。でもカワイイ〜♪」

 

 「エイダ、あんた動物嫌いじゃなかったの? 物凄い笑顔だし!?」「ベルメールさん! カメラ取ってこよう!」

 

 「え? アタシ動物好きなんだけど……ってホントに家までカメラ取りに行くの!?」

 

 ベルメールさんとノジコは走って家まで行っちゃった。

 アタシの表情筋がここまで動くのは確かにレアなんだけど……写真を撮る程じゃないでしょ。

 

 「リッチーが懐くなんて……!」

 

 「どう言うこと?」

 

 《もーじ、らんぼうだからキライ》

 

 モージは猛獣使いを目指してるんだけど、躾け方が厳しくて動物みんなが嫌ってるみたい。まあ、リッチーから聞いた話なんだけどね。

 リッチーはまだ赤ちゃんなんだけど、アタシには言葉が理解できちゃうの! この能力が初めて凄く思えちゃった。思考を翻訳するチカラの本領発揮ってカンジ?

 

 「おねえちゃん! らいおん、抱っこ!」

 

 「あ、ナミも抱っこしたいの? いい? リッチー?」「おい、危ないぞ!」

 

 《いいよ》

 

 「はい、爪に気を付けてね」

 

 「かわいい!」

 

 「どうなってんだ……!? リッチーは凶暴なんだぞ!?」

 

 「あのね、リッチーはまだ赤ちゃんだから厳しく躾けたら可哀想よ? 芸を覚えてもらうんだったら、もう少し成長してから、ね?」

 

 「う、うるせェ! おれがリッチーの主人だ!! お前には関係ないだろっ! 来い、リッチー!」

 

 《はなして! やだ!》

 

 「あ! どこ行くの!?」

 

 「特訓だ! 着いてくんな!」

 

 うーん、言い方を間違えちゃったかな? アタシ自身、ズルしてリッチーと会話できてるみたいな物なのに偉そうな事言っちゃったなぁ。でもリッチーは嫌がってたし、どうにかしてあげたい! あんなピュアな動物久しぶりだもん!

 

 「悪いな、モージは芸ができない事を気にしてんだ」

 

 「カバジくん! アタシ、もう一度話してみる!」

 

 「おねえちゃん 行っちゃやだ」

 

 「う、…………ごめんねナミ? お姉ちゃん、すぐ帰ってくるからこのお兄ちゃんと一緒に居て?」

 

 「おい! 何を勝手に!?」「やだ! やだ!」

 

 「ほら、さっき一輪車に乗ってたお兄ちゃんだよ? カッコよかったでしょ?」

 

 「じみだった!」「わっ!? ちょっとナミ、正直に言っちゃダメ!」

 

 確かに一輪車で綱を渡るって芸は一見地味だったけど。カバジって原作だと火吹き芸とかジャグリングとかもできたよね? 原作初期の登場人物なのに、技の数はかなり多かったハズ!

 

 「ナメるな! 他にも芸はあるんだ! なんでも言ってみろ、見せてやる!」

 

 「あはは、じゃあ妹をよろしくねカバジくん!」

 

 「おい待て、人の話を少しは聞け……!」

 

 「あ、頭に風車付けたオジサンがいたら、預かってもらっても大丈夫だから!」

 

 「そんな珍妙なオッサン信用していいのか!?」

 

 「珍妙って。まあ傍目にはそうなっちゃうのかな? でもアタシだって海賊を信用してるんだから、ある意味お相子でしょ?」

 

 「どういう理屈だ!?……ちっ、妹は見ててやるから、モージを頼むぞ」

 

 うん。その表情(かお)、なんだか信用できるなぁ。ホント、なんで海賊なんだろう?

 

──────────────────────────────

────────────────────

──────────

 

 村から出てモージが走って行った方向へ来てみたら、少し離れた林の中から話し声が聞こえてきた。

 特訓なんて言ってたのに、ただ話してるだけみたい。

 この光景って、普通の人が見ればモージが一方的に語りかけてるだけなんだろうなぁ。

 

 「──だからな、ブギー船長は町を襲うことはあんまりしねェんだ。おれ達が芸で身を立てられる様にってな」

 

 《ふーん、いろいろあるんだ》

 

 「おれは猛獣使いになりてェんだ! リッチー、力を貸してくれ! な?」

 

 《しょうがないなぁ》

 

 「はは、こんな事言っても伝わらねェよな……」

 

 「そんな事ないよ? リッチーは協力してくれるって言ってるよ?」

 

 「おまえ!? 着いてくんなって言っただろ! それに動物の言葉がわかるワケ……!」

 

 「さっきはゴメンね? アタシ、ちょっとズルしてるの。みんなには内緒なんだけど実はね───」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 アタシはモージに能力の事を話してみた。

 

 微妙すぎるチカラだけど、動物好きの人だったら驚いてくれるかもって期待があったしね。

 でも、アタシの方が驚かされちゃった……。

 

 モージが言うには、能力者は教会って所にバレちゃったら死ぬより酷い目にあうらしいの。だから一般人は能力者になっちゃたら、一生隠し通すか、遠い国へ逃げるしかないみたい。国によっては魔女裁判みたいな事もしてるらしいし、教会ヤバいなぁ。

 

 「でもスゴいな! 動物と会話できる能力なんてあったんだな!?」

 

 「あんまり使う機会がないけどね」

 

 「なあ、海賊にならないか? 船長だって能力者だけど、教会が大っ嫌いだから襲ってきたらやっつけてくれるぞ?」

 

 《ブギーはつよい!》

 

 「うーん、家族を置いてはいけないよ。だから、アタシのチカラは内緒ね?」

 

 「……そっか。わかった! 絶対内緒にする!」《オイラも!》

 

 いい子達だなぁ。でもまさか、能力者がそんな差別されてるなんて思いもしなかったよ。

 ミンゴ先生も普通に能力者だって公表してるし。

 あれなのかな? ある程度の権力があれば手を出されないとか? 世知辛いなぁ〜。

 

 それから、アタシが通訳する事でモージとリッチーはすっかり仲良くなった。今は村へ帰る途中。

 でも動物の成長って早いんだね……あんなにピュアだったリッチーが、もう。

 

 《へっへっへっ、アネさんのお陰で報酬として、肉とブラッシングを取り付けられたぜ!》

 

 「なあエイダ、今度はなんて言ってんだ?」

 

 「えーとね、お肉と毛づくろいの約束してくれてありがとう だって」

 

 「そっか! 任せろリッチー!」

 

 《チョロいな。島に帰ったら他の連中にも教えてやるか》

 

 テレパシーで聞こえてくるリッチーの声まで替わってるし。なんで急に中の人が交代したの!?

 見た目は可愛いのに、声だけプロレスラーみたい。むかつくくらい妙にしっくり来るけどね!

 

 はぁ〜、やっぱりアタシの能力って微妙だなぁ。でもまあ、ピュアな動物もいる事が分かったし前向きに考えよっか!

 

 「ねえモージくん。リッチー以外にも動物を飼ってるの?」

 

 「ああ、今はリッチーがいた島を拠点にしてんだ。他の動物は大きいから連れて来られないんだけどな」

 

 「へぇ〜、ライオンが住んでる島があるんだね。いつか行ってみたいなぁ」

 

 《モージは知らねェけど、ウサギなのに小さいヤツもいるぜ!》

 

 「あはは、普通ウサギは小さいよ? 島にいるって事は、リッチーのお友達?」

 

 「い!? まさかラパーンか!? あの島にいるのか!?」

 

 2人の話を聞いてみたら、拠点の島にはラパーンも住んでるって事が分かったの。

 リッチーが言ったラパーンは、大人なんだけど小さい個体みたい。多分、突然変異なんだと思う。

 う、モージが教えて欲しそうに見てくるから、つい説明したくなっちゃう。

 学校に通い出してから、アタシも他所の子へのおねえちゃんモードが板についてきたなぁ。本当はナミとノジコ限定なんだけどねっ!

 

 「モージくんは、金魚って知ってる?」

 

 「ばかにすんな! 小さい魚だろ?」

 

 「ふっふっふー、金魚が小さいのはね、ヒトが手を加えたからなの。元々はフナが突然変異したモノが始まりなのよ」

 

 「え!?」

 

  そのあと〝突然変異〟〝掛け合わせ〟〝矮性種*1〟と簡単に説明してあげた。動物知識だけは割と最初から思い出せてるの。

 モージはすっかり聞き入っちゃってる、教え甲斐があるなぁ♪

 

 「だから、野生に還して数世代重ねたら元の姿に戻っちゃうかもね」

 

 「スゲェ! もっと教えてくれよエイダ!!」《ふぁ〜、ねみぃ》

 

 「もうすぐ村だから、また今度……え!? なにあの音!?」

 

 村の方から、何か重たい音がした! なんなの!? 煙も見えてるし!?

 

 「まさか、大砲でも撃ったのか!? けど、ウチの大砲はもっとハデな音だしな……とにかく急いで戻るぞ!」

 

 お願い! 無事で居て、ナミ!!

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 大急ぎで村へ戻ってみれば、広場の近くにあった家が壊れちゃってる……。

 

 その近くでバギー達が、海賊っぽい連中を縛り付けていた。姿を見ても何も思い出さないから、たぶん知らない海賊。あ、ゲンさんも息を切らしてる。バギー達と一緒に戦ったんだ。

 

 「はぁ、はぁ、すまんなブギー。お前達が居てくれて助かった」

 

 「くそ、このキバガエル海賊団がまさかサーカス団に負けちまうとは……」

 

 「村の中で大砲ぶっ放しやがって、ハデアホ共が! 海賊にも仁義ってモンがあんだろうがっ!」

 

 あ、知ってる海賊だった。

 確かデービーバックファイトに負けて、フォクシーの仲間にされた連中だ。お馴染みのマスクを着けてないから分からなかったよ!

 なんかバギーも将来ブーメランになりそうな事言ってるし……ってそれどころじゃ無かった!

 

 「もう戦闘は終わったみたいだけど、ナミは!?」

 

 《こっちだ、アネさん!》

 

 「リッチー!? 分かるの?」

 

 「なんだリッチー! エイダを助けるなんていい奴じゃねェか!」

 

 《妹さんの匂いは覚えてるからな! これも仁義ってやつですぜ》

 

 頼もしい! 原作だとペットフードの匂いくらいしか分からなかったのにね! その仁義、シュシュの時まで覚えててよ!

 急いでモージと一緒に、リッチーの後を着いて行ったんだけど、ここって病院!?

 

 「ナミ!!」

 

 「「あ、おねーちゃん!」」

 

 「エイダ! どこ行ってたの!!」

 

 「ベルメールさんに、ノジコも! みんな無事みたいで良かったぁ」

 

 「それがね……」

 

 話を聞いたら、ベルメールさん達も村に戻ってきたばかりだった。

 村の人からナミが病院にいるって聞いて、急いで来てみたんだけどナミはピンピンしてたみたい。

 でも、そのナミを庇って海賊の攻撃を食らった人がいるみたい。とにかく、その人に会わなくちゃ!

 

 「ってカバジくん!?」

 

 「カバジ! おまえ怪我したのかよ!?」

 

 「大した事ねェ。お前らこそ随分と遅かったじゃねェか?」

 

 大した事あるし! 右目の上から下へ長く斬られちゃってる……! もし、ナミがあんな攻撃を食らってたら!?

 

 「ドクター!? 怪我人よ! はやく治して!」

 

 「もう止血と消毒は済んどる、よく見んか!……幸い眼球は傷ついちゃいない、顔に傷跡くらいは残るかもしれんがな」

 

 ああぁ! どうしよう、きっとバギーの所の花形なのに!

 

 「あの! ごめんなさい! あと、ありがとう妹を守ってくれて!!」

 

 「落ち着け。それに、妹は見ててやるって言っただろう」

 

 「でも顔に傷が残ったら……!?」

 

 「傷でもあれば、多少はハデに見えるだろ?」

 

 「う、妹が地味なんて言ってゴメン! え〜と、そうだ! 一輪車で壁を登ったりすればハデかも……?」

 

 「なんだその発想!?」

 

 「え!? お礼にアイデアの一つでもと思って」

 

 「それが礼になると本気で……!? 礼なんていらねェ、もうすぐ出航だろうしな」

 

 ダメだ、アイデアじゃお礼にならない。確かに、一輪車で壁を登るとか普通は冗談だと思われるかぁ……あなたが将来使う技なんだけどね。

 何かあげるって言っても〝四郷のクリスタル〟くらいしか持ち歩いてない。まさかコレをあげる訳にはいかないし……!!

 

 「な!? なんで胸元を開けてんだ!? そ、そういう礼の仕方は……ど、どうかと思うぞ!!」

 

 「え?」

 

 「それに! 妹にも悪影響だろ!?」

 

 あ、クセでクリスタルを見ようとして襟元を開けてたんだ。今まで何度もこうやって確認してたんだけど……最近 胸が急成長してたんだった!

 こういう気遣いができないのって、アタシの精神も身体に合わせて幼くなってるのかな!?

 うわ〜、カバジが真っ赤になってる。そういう反応は、こっちまで照れるんだけど……!

 

 どうしよう……ナミもジッと見てるし!?

 

 「おいカバジ! 怪我がもういいんなら戻るぞ」

 

 「お、おう! 行くぞ! ドクター、助かった!」

 

 「構わん。村のモンを守ってくれた礼じゃ」

 

 「じゃあなエイダ! 今度会ったら、また動物のこと教えてくれよ!」

 

 《失礼しやす、アネさん》

 

 「うん。またね、みんな! 次に来た時は、ご馳走でもさせて!」

 

 ふぅ〜。モージのおかげで上手く乗り切れたぁ。

 でも、結局リッチーはあの性格のままかぁ。見た目は赤ちゃんのままなのに……。

 確かにギャップは好き! でも、アタシの求めるものとは違うの。もっとこう、普段メガネをかけてる人が不意にメガネを外した! みたいな。

 そうそう、カームベルトを泳いで来た時のレイリーとか……ってまた!? どうしてどうでもいい記憶はポンッって思い出すの!?

 

 はぁ、前世が残念な女子だったのは思い出したくなかったなぁ。

 今はせめて、リッチーの見た目がカワイイ内に再会できるように祈ろう。

 

 「おねえちゃん、おれいしないの?」

 

 「うん。お礼は、今度会えたならね」

 

 「カ ラ ダ で?」

 

 「……ナミ、()()誰から聞いたの?」

 

 「ベルメールさん!」

 

 

 緊急 家族会議!!

 

 

 「ちょっと! ベルメールさん! ナミになんて事を……」

 

 「エイダ。あんた男2人にコナかけたって本当?」

 

 「え?」

 

 

 このあと滅茶苦茶 怒られた。

 

 ベルメールさん曰く、ドレスローザの女が男を刺していいのは、1人の男を情熱的に愛しているからなんだって。

 

 「だから女の方が移り気してたら、刺せないじゃない!!」

 

 パチ……パチ……パチパチパチ!!

 

 ベルメールさんが決めセリフみたいな事を言ったら、周りの女性陣が拍手しだしたんだ。

 

 もうこの村コワイ。なんで、刺す前提で恋愛してるのこの人達。

 

*1
動植物が通常よりも、小さく成熟する性質のこと。植物ならば盆栽など。動物の場合は、ドワーフタイプという言い回しが一般的。

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