その女〝動物好き〟 - the another order - 作:浅学寺のえる
……して……。どう……して……。
「この下々民、動かなくなったえ〜」
「もう、それに用はないアマス」
───どうして、こんな事に。
ヴィオラ達は、この世界に天竜人なんて居ないって言ってたのに……。
ダメ、意識が朦朧としてきた……アタシは、もう…………。
──時は少し遡り、首都への滞在2日目 夜。
ー ヴィオラの私室 ー
「あの、昨日あらかた話しちゃったので……もう何もないですよ?」
「昨日の話は、貴女が言う〝原作〟104巻までの内容だったわね」
「まさか、それ以降の話は思い出せないのか!?」
また勝手にヴィオラが心を覗いてるみたいだけど、なぜか104巻以降は全然思い出せないんだよね。
いくら コラさんに詰め寄られても、こればっかりはムリ!
「心を覗いたけれど、記憶の穴が大きすぎるわ。今の状態では、思い出すのは無理そうね……」
「なら、今日はこれで……」
「代わりに〝アニメ〟という物の話を
このお姫様、無茶振りが過ぎる!?
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そうやって、ネルソン提督の包囲網を突破して……
──「ちょっと! まだ〝
新聞に載ったコビー達の姿を見つけたルフィが……
──「おい! コビーとヘルメッポは、リバースマウンテンを通っていないだろ!?」
巨人ブロギーに渡した酒樽は、料理用のもので……
──「ねえ、どうして海賊なのに未成年の飲酒を気にしているの?」
ああー! もうっ!!
その辺りは、後で無理やり帳尻を合わせてるんだから大丈夫! あと最後のは大人の事情!!
こんな面倒なこと、今回限りだからね! もう2徹なんだからっ!
〜 滞在3日目 〜
ー ヴィオラの私室 ー
「待ってたわ! エイダ! さっそく、劇場版の話を……!!」
「……ふぁ〜。勝手に覗いて〜」
「貴女の口から聞きたいの! ロシーもそう思うでしょ?」
「当然だ。そもそも、おれは心を覗けないからな」
もう! そうやって コラさんを引き合いに出せば、アタシが何でも言う事を聞くと思ってっ……!
首都に来てから、これで3日連続だよ!? 昼間は職場見学だし、ほぼ3日間徹夜状態。
最初の頃は〝世界の行く末の為に原作知識を共有する〟って話だから協力もしたけどね!
昨日なんて、ただアニメの話をしただけだよ!?
おかげでアニメオリジナルのエピソードも思い出せたんだけど……今度は劇場版を聞かせろって。
この人達、もう単に ONE PIECE にハマっただけなんじゃないの?
ああ〜、今日は絶対来ないって断ってたのに……まさか、コラさんが直接迎えに来るなんてね!
ホイホイ着いてきちゃったアタシの馬鹿!
こうなったら、劇場版について話すだけ話して早く帰って寝よう!
「じゃあ、まずは一作目からね。黄金の海賊ウーナン、彼は世界中の黄金を集めて……」
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──「トランプ海賊団!? ドンキホーテ ファミリーと何か関係があるのかしら!?」
ないよ。
──「カラクリ城に、メカ島か。ベガパンクという科学者と何か関係が?」
ないよ。
──「どうしてドラム島に、ロビンとフランキーが同行してるの!?」
──「今までの話では、ワポルに兄など居なかっただろ!」
アタシだって知らないよ!
劇場版だけのパラレル設定なんだから、野暮な事言わないで!?
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──「金獅子のシキ!? やっぱり、シキが登場する話もあるのね!」
──「昨日も少しだけ話題に上がったが……こちらの世界でもシキは伝説の海賊として有名だ」
たしか、地中海にあった島をいくつか空へ浮かべたんだっけ?
もう大分前の話みたいだけどね。
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──「黄金帝ギルド・テゾーロ!? ウーナンと何か関係が!?」
ないよ。
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「それで、ルフィは〝ラフテル〟の
「ラフテルへは、自分たちのチカラで辿り着くためね?」
「確かに、あいつはそういう奴だな」
「うんうん、そんな感じでーす。さ! これでお終い!」
ふふふ、なんとまだ丑三つ時!
連日の語り聞かせで、アタシの語り部スキルが上がってるのかも。
それにしても、毎晩 王族に物語を語り聞かせるって……まるでアラビアンナイトみたいだなぁ。
あれは殺されない為に、物語を話すって内容だけどね。アタシの場合、逆に話すのを止めないと睡眠不足で死んでしまいます……。
ちょうど ヴィオラ と コラさん がルフィに関して解釈が一致したのか、色々と語り始めちゃってるし。
今の内に早く帰らなきゃ! これでようやく寝られる〜♪
「待ちなさい、エイダ。もう一つあるでしょ? たしか〝エレジア〟の話だったかしら?」
「ほう、あの国を題材にした話もあるのか」
「あ……忘れてた」
何でだろう?
エレジアって単語を聞くまで完全に忘れてたよ。FILM REDも、ちゃんと見てるハズなのに。
そうそう、運よく試写会のチケットを手に入れて……見たん、だっけ?
相変わらず、前世で歩んだ人生の記憶はボンヤリしたままかぁ。
まあ映画の内容自体は思い出せてるから大丈夫だけどね!
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「それじゃ、今度こそアタシは帰るからね!」
「まだまだ聞きたい事もあるけれど……今日は満足したわ。ロシー、送ってあげて?」
「了解だ。まだ夜中だからな、念のため送って行こう」
え!? なにそのご褒美!?
昨日までは、眩しい朝日を浴びながら独りで帰ってたのに!
ー 帰り道 ー
昼の喧騒が嘘だったかのように、夜の街は寝静まっている。
まるでコラさんが能力を使ってるみたいに、静かな時間。
「さて、少し今後の事について話しておくか」
「こんな所で話して大丈夫?」
「安心しろ。城からずっと、能力を使ったままだ」
「……そうですか」
恥ずかし〜! 夜の街とか関係無かったよ!!
「お前の食べた〝ヒソヒソの実〟についてだ」
「……同じ能力は、この世に2つ同時に存在しないって話? もしかしたら、アタシは……」
「ああ、アピスという少女が悪魔の実を食べる前に、死ぬのかも知れないな」
「ハッキリ言わないで!? アタシも薄々感じてたけど!」
はぁ〜、やっぱりそうなのかな? アピスが何歳の時に悪魔の実を食べるのかは分からないけど……
リュウ爺とのエピソードから、少なくとも原作開始の1年前には能力者だった筈。
という事は、ナミが17歳だから……アタシは29歳かぁ。アタシの余命、最大であと14年?
「14年もあればマシな方だ。おれは、あと5年らしいからな」
「いやいや、コラさ、ロシナンテさんの場合は大丈夫でしょ? 今のミンゴに殺される要素が無いもの」
「ならば、お前も同じだろう。この世界と、物語の世界は別モノと考えるべきだ」
「うん……。でも、後悔はしたくないの! だからアタシは、いつ死んでも大丈夫なように〝今〟を生きてみる!」
「そうか。なら今日はしっかり寝ておけ、どうせまたお姫様に呼び出されるだろうからな」
不吉なことを予言してコラさんは帰っていった。
王宮とM・G支部の宿舎は割と近いんだけど、独りで帰るよりも時間が早く感じたなぁ。
さてと、ノジコを起こさないように そーっと部屋へ戻らなきゃね。
「ぐす……うぅ」
「ノジコ!? どうして泣いてるの!?」
「おねえちゃん……?」
「誰かに何かされたの!? っゆるせない!」
「……ちがうの」
「え?」
ノジコの頭をなでていたら、泣きながらも少しづつ話してくれた。
──3日間ずっと、夜中に目を覚ますと独りだったこと。
──昼間 アタシに話しかけても上の空で、ロクに会話できなかったこと。
──ナミと違って、アタシとノジコには血の繋がりがないから大事にされてないと思ったこと。
なんてこと……誰かに何かされたなんて、思い違いも甚だしい。
全部、アタシのせいだった。
「ごめんねノジコ。アタシ、馬鹿だったみたい」
「うん。しってるよ? でも……だいすき」
「アタシも、大好き! 血の繋がりとか関係ないの。アタシにとってノジコは、大事な妹なんだから!」
「……うんっ!」
ベルメールさんだったら、もっと上手く言えるんだろうなぁ。
アタシは、これ以上は言葉で説明できなそう……あとは、抱きしめるくらいしかできないと思う。
あ……布団の中でノジコを抱きしめてたら、温かい体温が伝わってきて……だんだん……眠く……。
〜 滞在4日目 〜
ー 昼・とある場所 ー
「おねえちゃん! 起きて!」
「……はっ!? 寝てた!」
昨日は3時間くらい寝れたんだけど、その前までの睡眠不足のせいで職場見学中に寝ちゃってたよ。
なんか夢に天竜人が出てきたし……サイアクの気分。
元気なノジコを見て癒してもらお♪ 昨日の一件から、ノジコはアタシによく甘えてくるの。
だから今日こそは、絶対 王宮に行かない! キチンとした睡眠もとらないと、そろそろ本当にヤバイし!!
《動き
《速く
「……っ!?」
「おねえちゃん、はいエサ袋!」
「ありがとうノジコ♪……ほら、お食べ」
夢だけど……夢じゃなかった。
アタシの目の前で勢いよくエサに食らいついている豚達は、何故か天竜人と同じ口調でテレパシーを送ってくるの。
そう、ここは養豚場。
職場見学4日目は、アタシにとって地獄のような場所だった。
《エイダ? なんでコイツら偉そうなんだ? 目、つついていい?》
「ダメっ! ピンキー。商品価値が下がっちゃうでしょ!?」
ピンキーはずっとポシェットに入れて連れ歩いてるんだけど、今日は お留守番の方が良かったかなぁ。
天竜豚に会ってから、ピンキーがちょっとスレちゃった気がするの……。
《エサをもらい続けた者の末路か……おれは、こうはならねェ……!!》
なんか決意固めちゃってるし。
〜 滞在5日目 〜
んんっ〜!! あぁ〜、よく寝た〜♪
久々の快眠で昨日の鬱憤もスッキリ! でも、ヴィオラの件は許さないけどね!
昨日の夜は、アタシもピンキーに倣って固い意志でコラさんのお誘いを断ろうとしてたのに。
いざやって来たコラさんから「お姫様は明日用事があるから、今日は早く寝るそうだ」なんて言われたの!
勝手すぎない!?
「おねえちゃん、ごはん食べよう?」
「はーい、今行くよー♪」
ノジコと一緒に朝食を済ませて、ピンキーにもエサをあげてたら、もう見学に行かなくちゃいけない時間。
ピンキーがなかなかエサを食べてくれなくて困っちゃった。将来働いてもらうって説得でようやく食べてくれたの。
アタシも急いで身だしなみを整えてっと。まだお化粧しなくても大丈夫だから楽でいいなぁ〜。
そういえば、大人になったナミも美容には色々と気をつかってるって設定だったね。
ヴィオラがしつこく心を覗いてくるから、S B S まで思い出しちゃったよ……これに関してはありがたいんだけどね!
よし! 準備もできたし、職場見学に行きますか!
ー 広場 ー
ミンゴ先生が、小粋なラップで今日の予定を説明してくれてるみたい。
みんな反応が悪いから、たまにアタシの方を見てくるんだけど……人が大勢いる街中でそのノリに応えるのは無理!
元はと言えば、学校でミンゴ先生を褒めちゃったのが全ての原因だったなぁ。
あれですっかり気に入られちゃったから、ヴィオラが勘違いしてアタシの部屋まで訪ねて来たんだ……。
「おねえちゃん! 今日は洋服を作るとこが見れるんだって!」
「偉いよノジコ。ちゃんと要点だけを聞き取れたのね! でも、また生産業? 貿易会社なのに」
「フフフフ、交易するだけがM・Gじゃない。ココヤシ村には、生産業に適正のある奴が多いからな」
「……アタシ、養豚だけはしないけどね」
「?」
今日は寝不足でフラフラって訳でもないのに、さっきからノジコが手を引いてくれてる。
すっかり甘えん坊になっちゃって〜♪ 帰ったらナミが嫉妬しちゃうかもね。
まだお土産も買ってないし、洋裁店に何か良いものがあればいいんだけど……うーん、やっぱり洋服か……小物かな?
アタシもノジコにヘアバンドを作ってあげた事があるけど、売り物とは比べられない出来だったからなぁ。
でもベルメールさんの裁縫スキルは、物凄く高いんだよねぇ。最近アタシは、全然 裁縫してない。
あ、料理はアタシの方が得意だから! 家事全般で負けてる訳じゃないのっ!
「フラミンゴさん!」
「ベラミーか。今回の見学者たちを案内してくれ」
「まかせてくれ! こっちだ、おまえら!」
生意気そうな子供がお店から出てきたかと思えば、ベラミー? 10歳くらいだけど、もうフラミンゴを尊敬してるみたい。
この世界なら〝憧れる男を間違えた〟なんて事にはならないと思うけど……成長してラッパーになったらどうしよう!?
あはは、似合いそうだから別にいっか。
職人のおじいさんが話してる感じだと、ベラミーはこの工房で下働きしてる弟子みたい。
そういえば原作だと、染め物職人になってたっけ。
一通り服が出来上がるまでの説明を受けたあと、機織りの様子を見学させてもらった。
今は、服のデザインを考えてみようっていう体験授業中。
子供からでる発想もバカにできないから、出来が良かったら採用するかもしれないんだって。
「うーん。むずかしいなぁ。おねえちゃんは?」
「あはは、難しいよね。どうしようかなぁ〜」
最初に思い付いた〝みかんと風車〟は、ナミの大事なマークだからね。万が一採用されちゃったらマズいもの。
なら、適当でいっか。はい! 完成〜♪
〝今〟
アタシの座右の銘〝今を生きる!〟って意味を込めてみました。うん、ココヤシ村っていったらコレだよね!
「な、な、なんという!? なんという斬新なデザインだ!!!」
「おねえちゃんスゴイ!!」
「え? コレそんなに良いの!?」
「お嬢ちゃん。これは、服飾業界に革命が起こるぞい!」
「……スゲェ」
さっきまで生意気な態度だったベラミーまで褒めてるよ。
あぁ〜! 日本で外国人観光客が漢字Tシャツをやたら気に入るみたいな感覚なのかも!?
「頼む! もう一つだけでいい! なにかデザインしてくれんか!?」
「そんな興奮しないで、おじいちゃん! 描く! 描きますから!」
圧がすごいよ! おじいちゃんは頭にバンダナを巻いてるんだけど、その額から汗がにじんでて……あ、そうだ!
〝汗〟
はい、完成〜♪ バンダナに一文字〝汗〟 名付けて汗バンダナ!
下らないダジャレみたいになっちゃたけど、ヒノモト語分かる人って少ないし大丈夫でしょ!
「わ、わしのバンダナに直接……!? なんて発想力だ!」
「ス、スゲェ!!」
この2人なんでこんな褒めてくるの!?
こんな事で、チート転生者気分を味わいたくないんだけど!? そもそもチートでも何でもないしね!
どうせなら〝ヒソヒソの実〟のチカラで、こういう反応が欲しかったんだけど!?