その女〝動物好き〟 - the another order -   作:浅学寺のえる

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vol.9 「ビブルカードがあるでしょ?」

 ー 滞在6日目・朝 ー

 

 昨日の夜は、今度こそ迎えに来た コラさん にビシッとお断りをしようと待ってたのに……。

 いつもの時間になっても誰も来なかった! アタシの心が弄ばれてる!?

 でも2日連続で9時間睡眠できたんだし、許しちゃう♪

 身体もリフレッシュして気分爽快。もうベッドからジャンプで飛び起きちゃお!

 

 「とぅ!」

 

 「おねえちゃん!?」

 

 「あはは……。えっとね、その、ちょっと嬉しくてはしゃいじゃったみたい」

 

 「も〜、おでかけが楽しみでも、朝からさわいじゃダメだよ?」

 

 「はぁい」

 

 ん……? ノジコが、やれやれって感じで しょうがない子を見る目なんだけど!?

 姉の威厳がっ!?

 もしかして、最近ノジコが甘えてくると思ってたのも勘違いだったの?

 外ではアタシの手を引いたり、次に何処へ行くのかを教えてくれたり。

 

 あ、そういえば。この前のあれ……。

 

 ──『ごめんねノジコ。アタシ、馬鹿だったみたい』

 

 ──『うん。しってるよ? 』

 

 そのあと、大好きって言われたから流しちゃったけど……アタシのこと馬鹿だと思ってるのノジコ!?

 どうしよう? 考えてみれば、妹の前で馬鹿なことばっかやりすぎたかも。

 学校で子供たちにギャップ萌えを教えてたら、お婆さんに怒られたり……。

 メガネをかけだした時も、キャプテン・クロの真似をしてベルメールさんに叱られたし……。

 

 そもそも、寝てるノジコを置いて夜な夜な出かけてたんだし。

 

 「あのね、ノジコ。お姉ちゃんも悪かったんだけど、別に頭の出来はそこまで酷くも……」

 

 「さ、顔をあらってきて! その次は、朝ごはん。それから先生のとこへ行くの!」

 

 「……うん。ありがとう!」

 

 もう弁明は無理だね!

 こうなったら、今日の行動で名誉挽回しなきゃ。

 なんと、職場見学は昨日が最後だったみたい。だから今日1日は自由時間。

 M・Gのスケジュールは良心的すぎるのに、どうしてアタシ3日間徹夜とかしてたの?

 せっかくの職場見学も、初日以外だと養豚場と洋裁店しか記憶にないんだけど……。

 

 ヴィオラめ〜。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ー 港街 アカシアの広場 ー

 

 「ミンゴ先生にも挨拶したし。それじゃ、出かけよっかノジコ」

 

 「うんっ! どこに行くの?」

 

 「お姉ちゃんに任せて! ちゃんと下調べしてるから!」

 

 「おねえちゃん、スゴい!」

 

 ノジコから、さっそく尊敬の眼差しが!

 実はヴィオラ と コラさんからドレスローザの見所を聞いてるんだよね。

 まあ、原作知識との擦り合わせで出てきた情報なんだけど。

 原作と同じく存在する名所は、王宮と花畑。

 逆に存在しないのは、コロシアムとグリーンビット。

 数年前までコロシアムだった場所を、今は闘牛場として使ってるみたい。

 グリーンビットに関しては……そもそも妖精の伝説すら無いって話だし、トンタッタ族は別の国にいるのかもね。

 

 それじゃあ。ノジコが喜びそうな場所は〜、やっぱりお花畑かな?

 

 「まずは、お花畑に行こっか♪ 今だと、ひまわりが満開みたいよ?」

 

 「……おねえちゃん。そこ、2日目に けんがくしたよ」

 

 「え!? じゃ、じゃあ闘牛場なんてどう? 迫力満点なんだって!」

 

 「そこは、3日目……」

 

 「うっ……。なら、王宮! アタシ、顔パスだから!」

 

 「あはは、すごいね。それじゃ、今日は おみやげを買おっか!」

 

 流された!? 信じてよ……ホントに顔パスなの。

 それにしても、まさかの全滅!?

 アタシが寝不足だった時に、両方行ってたなんて……M・Gのスケジュール良心的すぎ!

 ずっとノジコに引っ張ってもらってたからなぁ〜、まさに今みたいに。

 そうそう、昨日の洋裁店でひと騒動あったから、お土産も買えてなかったんだ。

 

 それにしても、ナミ と ベルメールさん へのお土産を忘れてたなんて、もしかしてアタシの頭……ホントに?

 

 「ねぇねぇ、サーカスの ふね があるよ?」

 

 「え、ビッグトップ号!? バギーの船が、どうして首都に?」

 

 《姐さん! ご無沙汰してやす》

 

 「待てよリッチー! 急にどうし……ってエイダ! やっと見つけたぜ!」

 

 「あはは。久しぶりだね、2人とも。一年振りかな?」

 

 モージは成長して少し背が伸びてるなぁ

 リッチーは……うん、デカい。6歳のノジコを上に乗せられるくらい、っていうか乗ってるし。

 

 「すごい! すごい!」

 

 「ありがとね、リッチー」

 

 《姐さんには借りがあるから、仕方ねェなぁ〜》

 

 「ははっ、こっちの妹は動物好きなんだな」

 

 「こっちの? ナミも動物は好きだと思うけど……?」

 

 「「ナミ?」」

 

 あ、カバジも居たんだ。

 あー、顔の傷は残っちゃたみたい。原作だと、あんな傷は無かった……よね?

 でもなんか見覚えがあるような、ないような?

 

 「おい、お前のもう1人の妹は〝ジョセフィーヌ〟じゃないのか!?」

 

 「プッ、なにそれ? 一体どこから出たの、ジョセフィーヌって!」

 

 「妹が自分で言ってたんだが!? ああ、それと 土産を忘れるなとも言ってたな」

 

 「え……ちょっと待って! もしかして、ナミに会ったのって最近の話?」

 

 「3日前だ」

 

 カバジから話を聞いてみれば、バギーの一味は3日前にココヤシ村へ寄ったんだって。

 そこで、アタシ達が首都に居るって話を聞いて、丁度ここへくる用事があったからアタシを捜してたらしい。

 ナミの病気がスッカリ良くなってたって情報は嬉しいんだけど……あの子3歳にして偽名を名乗ったの?

 ジョセフィーヌって偽名は、映画の1作目でも出てきてたなぁ。このネタは最近ヴィオラ達に、話したばっかりだったね。

 

 「はっはっは、カバジ! お前、子供に偽名使われたのかよ!」

 

 「モージ! お前だって、あの場に居ただろうが。ったく、ああ……その猫のせいだったのかもな」

 

 「リッチーは猫じゃねェ! それに臭くもねェぞ!」

 

 《やめろモージ! そいつぁ、忘れてェんだ!!》

 

 「どういう事?」

 

 「ジョセ、ナミがリッチーを見てたからよ、前も大丈夫だったし触ってみるかって聞いたんだ……」

 

 ふむふむ。ナミはちょっとだけ抱きついて、一言「ヘンな臭いするから、もういい」と。

 うーん? リッチーが思い出したのかヘコんでるなぁ〜。

 確かに動物って独特な匂いがする事もあるけど……ハッキリ言っちゃったのねナミ。

 

 「別にヘンな匂いじゃないよ? リッチー。ノジコもそう思うでしょ?」

 

 「……えーと? うん、だいじょうぶ」

 

 《なんだ、小せェ方の妹さんの冗談だったのかよ! へっへっ、ヒヤヒヤさせるぜ〜》

 

 ノジコなら空気を読んで、上手く言ってくれると思ってたよ!

 ナミのフォローは、お姉ちゃん2人でやっておくからね。

 

 「話を戻すが、妹へ偽名を使うように教育を……」

 

 「あ! そう言えばカバジ君! 船大きくなったんだね!」

 

 「……ああ、ウチも大所帯になったから船は新造したんだ」

 

 「うんうん。前より、サーカスって感じが出てるよね! さすがバギー海賊団!」

 

 「お前……。いい加減、船長の名前をキチンと呼べ。海賊〝道化〟のブギーだ」

 

 「ブギー?」

 

 そう言えば、周りの人はみんなブギーって発音してるよね。

 てっきりネイティブ発音なだけだと思ってたんだけど……ブギーって何処かで?

 そうだ! 原作初期の単行本に、載ってたヤツだ!!

 バギー達の初期案、ボツになったキャライメージのヤツ!! 確か、4人描かれてたよね?

 

 そもそも名前が〝ブギー〟で赤っ鼻じゃない──バギー。

 顔へ縦に一本傷が付いてる変な剣士──カバジ。

 背が高くやたらスマートな猛獣使い──モージ。

 あと背は小さめで、サングラスをかけた怪力男……そうだこの人、前に見てるんだ!?

 くやしいっ、カイリキの人を見た時に記憶が蘇ってれば、もっと早く気づけたかもしれないのに!!

 

 この世界の正体が───原作初期案の世界かもしれないって!

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

  ー M・G支部の宿舎 夕方 ー

 

 「たのしかったね、おねえちゃん!」

 

 「うん♪ お土産も買えたし、後は明日の朝に帰るだけね」

 

 「ナミのおかげで、得しちゃった♪」

 

 「あはは。今度ブギーさんにお礼を言わなきゃね」

 

 あれからも、カバジ達と少しの間一緒に居たんだけど……別れ際に、ブギーからって事で1万ベリーを貰ったんだ。

 ブギーは忙しかったみたいで直接会った訳じゃないけど、カバジに伝言を残してたの。

 

 『熱を出して、首都に来れなかった妹へコレで土産でも買ってやれ』だって。

 

 多分ブギーは、この世界でもラフテルへ行けなかったんだろうなぁ。

 原作の初期案世界……そこまでは推測できたけど、これからどんな事が起こるのか全く分からない。

 考えても分からないから、途中からノジコとショッピングを楽しんだんだぁ。

 臨時収入のおかげで、お土産の他にお揃いのブレスレットも買っちゃった♪

 

 「さ、ノジコ。明日は早いから、もう寝ましょ?」

 

 「うん。でも、まだねむくない!」

 

 「も〜う。ワガママ言わないの」

 

 「えへへ」

 

 良かった〜。どうにか、お姉ちゃんとして復権できたみたい。

 ノジコもワガママを言ってくれるようになったし、これで安心して帰れるよぉ。

 

  コンコン

 

 おや? 誰か来たようだ……ってこの展開は!?

 

 「……ねぇ。また、あのおとこ?

 

 「ちょ、ノジコ!? お顔が怖くなってるよ〜?」

 

 「わたし、はっきり言ってくる! ベルメールさんに、いわれてるの!!」

 

 「ええ!? 初耳なんだけど! 一体、何を言われたの!?」

 

 「おねえちゃんは、ばかな所があるから。わるい おとこに引っかかるって!」

 

 ベルメールさん!? アタシの事、信用しなさすぎじゃない!?

 そもそも、なんでノジコに言うの!

 アタシが〝渋オジ好き〟とか言われ出したせいで、ゲンさんが家に来なくなっちゃた事への仕返しかな!?

 

 「おねえちゃんは、しぶおじ が好きなの! 声だけ しぶくてもダメ!!」

 

 「──ねぇエイダ? 何言ってるの、この子?」

 

 「ヴィオラ!?」

 

 「おねえちゃんの おともだち?」

 

──────────────────────────────

────────────────────

──────────

 

 ヴィオラが食べた〝ギロギロの実〟の能力。

 離れた場所、遮蔽物の向こうまで見る事のできる千里眼。

 目から巨大な涙を出して攻撃する、なんてこともできる。

 

 そしてもう一つ、アタシがここ数日で何度も受けている〝心を視る〟チカラ。

 その方法は、両手の人差し指と親指で輪を作り、その穴を覗き込んで対象を見ること。

 逆に、対象に穴を覗かせれば自分の心を視せる事もできる。

 

 ──そっか、ヴィオラはこんな事考えてたんだね。

 

 「改めて、ごめんなさいエイダ」

 

 「ううん。ヴィオラの事情も分かっちゃったし……アタシの方こそ、ごめんね」

 

 ヴィオラが敢えて原作の話をアタシに語らせたのは、別に コラさん へ聞かせるためじゃなかったみたい。

 すべては、記憶が穴だらけで全然整理できてなかったアタシのため。

 人へ話すって行為は、それだけで頭の中を整理できるから。

 原作の話、アニメの話、劇場版の話……おかげで、今は綺麗に思い出すことができてる。

 

 「それじゃ、お互い謝った事だし王宮へ行きましょうか!」

 

 「それとコレとは話が別! アタシ達、もう明日の朝に帰るんだよ!?」

 

 「だから今しか無いでしょ?」

 

 「あのねぇ、そもそも妹を1人にはできないの」

 

 「なら、妹ちゃんも一緒に来れば解決ね!」

 

 「「え」」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

  ー 王宮・ヴィオラの私室 ー

 

 結局、来ちゃった……。

 

 「すごい! すごい! おねえちゃん、お姫さまと おともだちだったの!?」

 

 「ふふ、エイダと私は親友なの」

 

 「……はぁ〜、()()ねぇ」

 

 「あら、お互い心を覗き合った仲でしょ?」

 

 強制的にだけどね!

 でも、事情を知っちゃうと否定できないんだよね……。

 ヴィオラが子供なのに色々と達観してるのは、人の心を視すぎてきたから。

 もっと幼い頃から、周囲の人間の 良い部分 も 悪い部分も全て視てきたみたい。

 そんな中でヴィオラが自分の心を覗かせた人間が、姉であるスカーレットとアタシだけ。

 父親であるリク王は勿論、ミンゴ や コラさんにも視せなかった心。

 精神だけが成熟したヴィオラの心は、どこかアタシと似てる気がしたんだ。

 

 「そういえば、コラさんは?」

 

 「相変わらず貴女は……」

 

 「そう言うのじゃなくて! 普通に気になるでしょ? ずっと同席してたんだし」

 

 「ロシーはあれでも、M・Gで重要な役割を担ってるの。割と忙しくて、昨日から出張中よ」

 

 「そうだったんだ。仕事してたんだね」

 

 「ロシーが聞いたら怒るわよ?」

 

 ちょっと意外。

 連日、お姫様の寝室に出入りしてるんだもん。てっきり、昼間は寝てるんだと思ってた。

 さっき心を覗いた時、ヴィオラはアタシが徹夜してた3日間──昼間ずっと寝てたのにね!

 まあ昨日と今日は、とんでもない用事があったみたいだけど。

 

 「ねえヴィオラ、昼間にあった七武海もどきの会合。詳しく聞かせて?」

 

 「一応機密なんだけど、まあ貴女が相手なら無意味よね」

 

 「ふぁ〜、わたしねむい……」

 

 「あ、いつもだとノジコはもう寝てる時間だった」

 

 「それじゃあ、ノジコちゃんは私のベッドを使って?」

 

 「うん。ありがとう、お姫さま」

 

 「おやすみ、ノジコ。ちゃんと側にいるから安心してね」

 

 「おやすみなさい……」

 

 いいなぁ〜ノジコ。天蓋付きの〝お姫様ベッド〟で寝ちゃってる。

 


 

 それでは、主催国の王族として私も参加した会合───私掠撰(しりゃくせん)の船長会合について説明するわ。

 まず私掠撰って言うのは、公認海賊のことね。原作でいう〝王下七武海〟みたいなもの。

 現在では、海賊を公認してる大国が6カ国あったんだけど……昨日の会合でドレスローザもそこへ仲間入りしたの。

 ドレスローザが公認した海賊は〝海峡〟のジンベエ。

 原作でお馴染みの彼よ。見た目は多少違うけれどね?

 

 ジンベエは元々、M・G支部長のフィッシャー・タイガーに頼まれて海峡の防衛をしていたの。

 ええ、ジブラルタル海峡──地中海の入り口よ。

 ドレスローザにとっても有益な活動だったから、晴れて公認海賊へと推挙する流れになったの。

 だから昨日の会合は、ジンベエの顔見せと海のナワバリについての話し合い。

 

 出席した海賊は、ナワバリが近い3人だけ。

 〝妖妃〟ボア 〝道化〟のブギー 〝巡礼者〟(ディエス)・バレルズ。

 貴女には、ハンコック、バギー、ドレークの父親って言った方が伝わるわね。

 ウチと敵対関係にある国が公認している〝鷹の目〟が来ないのは当然だけど、残りの2人はサボりだと思うわ。

 まったく、ウチの国が招集をかけるのにどれだけの時間を割いたと……!

 

 コホン! それで2日間、話し合いが行われたのだけど……大きな問題に直面したの。

 


 

 「せっかく、世界の公認海賊が7人になったのに、私が提案した〝王下七武海〟って名前が却下されたのよ!?」

 

 「ええー、思ったよりどうでもいい話だった……」

 

 色々と情報が多かったから、もっと大問題を想像してたよ。

 ほら、白ひげとの全面戦争とかさ。

 でもまさか、ブギーの用事が私掠撰会合だったなんてね。バレルズに関してもビックリだけど。

 

 「ちょっとエイダ!? 〝王下七武海〟は最高に格好良い名前じゃない! それをあの妖妃が!!」

 

 「……妖妃ってことは、ハンコック?」

 

 「そうよ! 自分が生まれた国の王と結婚して、国を乗っ取った女!」

 

 「ああ〜、それで〝妖妃〟なんだ。そっか、結婚したんだ……ルフィ以外の男と」

 

 「もう離婚してるわ。前王は国外に追放されて、国名も〝アマゾン・リリー〟に改められたの」

 

 「やりたい放題だね」

 

 「わがままなのよ。自分が王だから〝王下〟って呼称が気に入らないんですって!!」

 

 よっぽど嫌な思いをしたんだねヴィオラ。

 心を覗いた時に分かってた事だけど、こうやって改めて吐き出させてあげた方が気分がスッキリすると思ったの。

 でも、そろそろ落ち着いてもらわないと。ノジコが起きちゃう!

 

 「まあまあ、それで結局どんな名前になったの?」

 

 「……七掠撰(ジーヴェン・クロッセア)

 

 「わぁ」

 

 ドイツ語だぁ。数だけね。

 クロッセアって言うのは、フランス語かな? せめてそこは統一しようよ……。

 まあ、七掠撰って括りで公認海賊をまとめることで、最近増えて来てる海賊達への抑止効果を狙ったみたいだけどね。

 

 ヴィオラの真の目的───正しく機能する〝海軍〟の設立までは、まだまだ時間がかかりそう。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ヴィオラの鬱憤も少しは晴れて、他愛もない話を少しだけしたんだけど……。

 

 「ねえエイダ? 今日はノジコちゃんが居るから、あの話は聞かないつもりだったんだけど……」

 

 「結局その話になっちゃうよね〜。けど、コラさんが居ないのに話して大丈夫?」

 

 「私の千里眼で、盗み聞きしてる人が居ないかは確認できるわ」

 

 でも万が一、音貝(トーンダイアル)とかが有ったらまずいし……そうだ!

 

 「村に帰ってから、手紙に書いて送ってあげる♪」

 

 「は──? あの内容を書き残そうなんて、貴女やっぱり頭が……」

 

 「ちょっと!? 確かに考え無しだったけど、そこまで言う!?」

 

 「なるほどね、音貝(トーンダイアル)を警戒してたのね」

 

 「また人の心を勝手に!」

 

 「なら、こうしましょう───」

 

 ヴィオラの提案は、簡単に言えば〝心の覗き合い〟

 アタシの心を視たヴィオラが、今度は自分の心を視せて擬似的な会話をするって方法。

 確かにコレなら盗み聞きは絶対に無理だと思うけど……

 

 「そもそも全部話しちゃったでしょ? 今思い出せる物語は、もう無いよ?」

 

 「公式ガイドブック と 公式マガジン!!」

 

 「はぁ〜……ヴィオラは一体、何を知りたいの?」

 

 「全てを識りたいの」

 

 まさかナレッジキングでも目指すつもり?

 確か原作者コメントで〝人生の役に立たないよ?〟って書いてあったのに……。

 

 まあ、この世界では役に立つ事も多々あるんだけどね。

 

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 《コレ! この世界のジンベエとソックリよ!?》

 

 麦わらの一味の初期設定かぁ。

 なんか、ロビンの代わりに変なのが居るなぁ〜。

 

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 《ちょっとエイダ! フラミーの情報が普通に載ってるじゃない!》

 

 まさか、ガイドブックにフラミンゴが載ってたなんて……しかもラッパーって設定。

 妖妃ボアって設定もあったし、いよいよ初期案の世界って線が濃厚かも。

 

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 ふう、これで全部かな? っていうか口で話すより、よっぽど早かったんだけど!?

 

 《まだビブルカードがあるでしょ?》

 

 ビブルカード? ああ、()()()の……キャラクターのプロフィールが載ってるアレね?

 ホント、アタシ自身がうっすらとしか思い出せないモノまで良く見つけるよねぇ……。

 

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 《レベッカは16歳なのね……なら、来年生まれてくるのかしら!?》

 

 えーと、その年齢は新世界編だからマイナス2で……うん、逆算するとそうなるね。

 そう言えば、スカーレットさんは亡くなった事になってるんだっけ?

 

 《ええ、それは誰にも秘密よ? ああ〜、でも楽しみ♪ 早くレベッカに会いたいわ》

 

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 ふぅ〜、ビブルカードも完了。おつかれ〜。

 

 《まだまだよ! この方法なら、貴女の記憶をもっと掘り出せるかもしれないもの》

 

 掘り出すって表現ヤメテ。でも確かに、104巻以降の話も少しだけ思い出せそう!

 ふむふむ、ローが〝女になる病〟にかかるシーンがあるみたい。

 

 《ウソっ!? あ、ホントなのね……》

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 大分思い出せたけど、今はもう流石に限界かな?

 ヴィオラも満足してくれたみたいだし……アタシもお姫様ベッドで寝かせてもらおっかな?

 

 「ねぇ、これだけ調べても……貴女が船で漂流するまでの記憶が一切見つからないわ」

 

 「うーん……前世の方は細切れで多少は思い出せるんだけどね」

 

 「もしかしたら、貴女の記憶喪失は〝メモメモの実〟による影響なのではないかしら?」

 

 だとすれば、犯人はプリン?

 あ、でも原作と同じ年齢だとすれば、レベッカと同い年……って、まだ産まれてないじゃん!

 なら〝メモメモの実〟の前任者? うーん、他にも記憶に関する能力があったような……あ!

 

 「甘いよヴィオラ! アタシの関係者が全員〝ホビホビ〟の能力でおもちゃにされたって可能性も……!」

 

 「その場合、自分の名前まで忘れないでしょ? 妹の名前だって覚えてる筈だし」

 

 う、簡単に論破されちゃった。

 もうアタシより、この子の方が ONE PIECE に詳しいよ……

 

 「この件は、今度また考えましょうか」

 

 「今度? アタシ達、明日帰っちゃうけど……」

 

 「貴女も来年には就職してもいい歳でしょ? なら、首都へ来る事もあるんじゃない?」

 

 「ああ〜、なるほどね。そういえば、職場見学で来てたんだった」

 

 「王宮のメイドなんてどうかしら?」

 

 「お断りします!」

 

 その後も、ヴィオラとの語らいは朝まで続き───

 寝不足のまま帰りの船に乗る事で、首都での七日間は幕を閉じた。

 職場見学は ほぼ出来なかったけれど、得られたモノは沢山あった。

 

 中でも一番の報酬(プレゼント)は───親友ができたこと、かな?

 

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