【急募】見知らぬ世界で生きていく方法   作:道化所属

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 カキフライ定食食いながら感想見たら吹き出した。
 ※11:32 矛盾を修正しました。


六スレ目

 

 

「【凍てつく残響よ渦を巻け––––燻りし焔をその手に慄け】」

 

 

 一段階目では話にならない。

 最強の女帝に僅かでも勝てる可能性があるとするならば当然二段階目。そしてそれは何より一歩間違えば自滅する諸刃の剣でもある。

 

 

「【氷界の果てに疾く失せよ】」

 

 

 顕現された藍色の焔。

 幻想的でありながら最も冷酷な炎がノーグを覆い尽くす。

 

 

「【アプソール・コフィン】」

 

 

 強く燃え上がる藍色の焔が剥き出しとなる。

 負ける事は分かっていても僅かでも通じるモノがあるとすれば確かにこの魔法しかないとノーグは悟っていた。

 

 

「マキシムさん。悪いけど団員達を退かせてくれ」

「必要あるのか?」

「冒険者としての人生を終わらせたくないなら」   

 

 

 ピシリ、と空気が凍り付く。

 そして嘲笑、たかがLv.2に何が出来ると嘲る声が聞こえた。だがノーグは態度も眼差しも変えない。マキシムはため息を吐きながら動かす事が不可能だと判断した。

 

 

「悪いな小僧、動かすのは無理そうだ」

「どうなっても知らないですよ……」

 

 

 ノーグは諦め、女帝を前に剣を構える。

 

 

「俺の魔法の二段階は冷気の強化じゃない」

 

 

 藍色の炎色反応は基本的にはインジウムを燃やす事で出現する。だが、ノーグは魔法に対して科学的な理論は働かない事を理解していた。炎を纏っているのにその人間が燃えなかったり、自分から発する音で何故自分の耳が破裂しないのか、どういう原理が働けばそうなるのか。ファンタジー脳ならそういうものだと理解出来たかもしれないが、ノーグはその世界に適応し切れなかった。

 

 そして調べた。

 魔法とは何なのか、自分が使える魔法とは何なのか。少なからず焔の外見をしているが、燃えているのは酸素ではなかった。

 

 そして調べて一週間、そこで漸く答えを得た。

 

 

「第二段階の効果は()()()()()()()()()()()

 

 

 正確には指定された温度になるまで熱を()やし続ける。存在から熱のみが奪われた場合、その存在の温度が下がっていく。そしてこの魔法は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それが例えマイナスであったとしてもだ。

 

 出力量によって温度を調整する。

 それが一番難しい上に、一歩間違えば死にかねない綱渡りをノーグは慎重に行っていく。

 

 

「女帝、貴女は強いよ。技術も能力も隔絶し過ぎてる。けど、人としてどれほどの寒さで生きていける?」

 

 

 藍色の焔が猛っている。

 熱を燃焼し、熱を奪う藍色の焔が大気の熱を()やしていく。出力が徐々に上がっていくと同時に熱が消え、氷点以下となっていく空間。そしてノーグを中心にそれが広がっていく。

 

 

「−42度、水を多く含む物にフリーズドライ現象」

 

 

 一人の団員が持っていた水筒の中身が一瞬にして凍り付く。それを見た団員達は嘲笑していた笑みを凍り付かせ、即座に二人の間合いから離れていく。そしてノーグが強く足を踏み下ろす。

 

 

「−61度、一定範囲の地面の水分が氷結し、俺を中心に氷震を起こす」

 

 

 バキバキッ!!と音を立てて地面が割れ、訓練所が揺れた。ノーグの焔に触れ続ける限り熱は燃焼し、温度は下がり続ける。最も熱を奪い難いであろう地中の土でさえ、急速に凍り付いてしまう。

 

 

「−80度、眼球は凍結し、呼吸をすれば肺が凍る」

 

 

 冷やされた空気は人類が生きられる限界地点を超える。眼球は凍り付き、呼吸すれば肺胞を砕き壊死させる程に大気は冷やされていく。気が付けば既に他の団員は二人からかなり離れていた。

 

 

「−108度、今の俺の出力限界」

 

 

 そして焔の勢いは弱まっていく。

 穏やかでまるで蝋燭の火のように一定となる。そしてそれは、大気中の空気が一時的にでも−108度の寒さになったという事。熱を奪われた大気が広がり、訓練所全域が更に凍り付き始める。 

 

 

「いくぞ––––女帝」

「ええ、殺す気で来なさい」

 

 

 指定した八秒の時間。

 ノーグは剣を振るった。剣圧に乗せられた極寒の風が女帝の左を通り過ぎた。その剣線が通った行先は凍り付く。まるで九魔姫の劣化版【ウィン・フィンブルヴェトル】。それがノーグの一振りで引き起こされる。

 

 

「嘘だろおい…!?」

「普通の魔法の出力ではないな。希少魔法(レアマジック)か」

 

 

 藍色の焔は触れた物の熱を奪う。

 大気だろうと地面だろうと人間だろうと凍て付かせる。副次的結果で冷やされた空気を飛ばすだけで人を殺せるだけの大寒波を生み出せる。

 

 

「ふっ–––!」

 

 

 二閃。

 女帝が避ける方向を潰すように冷やされた空気を乗せた剣線が左右に通り過ぎる。凍り付き生まれた氷壁で右にも左にも逃げられない。後ろに回避しても冷まされた空気に乗せた大寒波を直接食らう事になる。

 

 

「……!逃げ場を––––」

「もらった!」

 

 

 これが最後の勝機。

 残り三秒、ノーグは駆け出す。真正面から馬鹿正直に突っ込んだところで躱されるのが目に見えている。だが女帝が持つ武器は木刀、熱を燃やす焔が当たれば木刀は脆くなり防御出来ない。

 

 迎撃してきても焔に身を包んでいるノーグに木刀が当たっても、焔に触れれば木刀は脆く砕けやすくなり大したダメージを負わない。故にシンプルな特攻。逃げ場を封じた相手に突貫するだけ。

 

 

「おおおおおおおっ!!!!」

 

 

 ノーグは女帝に剣を振るった。

 逃げ場はない。焔からは逃れられないその状況の中、女帝は僅かに笑った。そして次の瞬間だった。

 

 

「(えっ–––––?)」

 

 

 ()()()()()

 剣まで包み込んでいた藍色の焔は一瞬にして視界から消えていた。

 

 

「(嘘、だろ––––)」

「期待以上よ、ノーグ」

 

 

 女帝は右手を薙ぐように振っていた。

 規格外なのは知っていた。勝てないのは知っていた。だけど、それでもこれはあり得ないと否定したかった。

 

 藍色の焔を()()()()()()()()()()()()()()()()()()。差が離れていても通じる筈の切り札は女帝の前に呆気なく散っていた。

 

 

「がっ……!?」

 

 

 額が弾かれた。

 女帝が指を組み、放たれたのはただのデコピン。しかし蟻と竜の差ほどある女帝の攻撃はノーグを弾き飛ばすには十分過ぎた。十数メトラ地面をバウンドしながらノーグは弾き飛ばされ、地面に意識を沈めていた。

 

 

 ★★★★★

 

 

181:名無しの冒険者

知ってた

 

 

182:名無しの冒険者

見事なまでのフラグ回収乙

 

 

183:名無しの冒険者

女帝には勝てなかったよ……

 

 

184:名無しの冒険者

お前の事は忘れないぜ……

 

 

185:道化所属

殺 す…な

 

 

186:名無しの冒険者

えっ、マジ?

 

 

187:名無しの冒険者

生きとったんかワレェ!?

 

 

188:名無しの冒険者

いや文脈から大分キツいだろ

 

 

189:名無しの冒険者

袖白雪の真似事して楽しかったかいイッチ?

 

 

190:名無しの冒険者

やってる事は似ているようで違うがな

 

 

191:名無しの冒険者

氷点以下に下げるのは似てるけど

 

 

192:名無しの冒険者

つーかイッチ、何故生きてるし?

 

 

193:名無しの冒険者

確かに。氷点以下なら死ぬんじゃね普通

 

 

194:名無しの冒険者

ルキアも一時的に死んでるし

 

 

195:道化所属

魔法には安全装置みたいな概念が含まれてる

炎の付与してるのにどうして自分は燃えないのかとか考えた事ない?魔法展開中は自分は魔法効果の影響は受けないのが基本らしい

 

 

196:名無しの冒険者

あー、確かに。ベル君も手から炎出してるのに手のひら焼けないしな

 

 

197:名無しの冒険者

安全装置がないのが呪詛だしな

 

 

198:名無しの冒険者

じゃあなんで八秒?

 

 

199:道化所属

展開中は安全装置があるけど、展開解除すれば自分にもダメージが行く。−108度まで下げてから解除するとワイも食らって死ぬわ、解除に時間かけるのと単純に最大出力は魔力が大量に消費されるし八秒から解除まで時間かけなきゃならんし。フリュネの時は−20度ぐらいまでしか下げなかったから解除しても死なんかったし

 

 

200:名無しの冒険者

イッチ割と考えてんだね、割と

 

 

201:名無しの冒険者

でもそれ酸素で燃えないなら女帝の薙ぎ払う風で吹き飛ぶの?熱を燃やすんだから厳密に言えば炎の動きをしないから吹き飛ばせないと思うけど、どうして吹き飛ばせたの?

 

 

202:道化所属

んなもん決まっとるやろ

彼女が女帝やからや

 

 

203:名無しの冒険者

説得力があり過ぎる

 

 

204:名無しの冒険者

説明になってないのに一番納得できる

 

 

205:名無しの冒険者

流石女帝。てかイッチいつの間か文脈戻ったけど回復したん?

 

 

206:道化所属

ザルドからポーション貰ったわ

アルフィアに渡されたポーションは凍っとった

 

 

207:名無しの冒険者

おいww

 

 

208:名無しの冒険者

自業自得過ぎる

 

 

209:名無しの冒険者

イッチのせいじゃねえかぁ!

 

 

210:道化所属

あっ、あとワイ氏。女帝とマキシムさんから【ヘラ・ファミリア】か【ゼウス・ファミリア】に入らないかって勧誘受けたんやけど

 

 

211:名無しの冒険者

変態とヤンデレは辞めとけ

 

 

212:名無しの冒険者

安価達成には近づくけど……

 

 

213:名無しの冒険者

分かるよな諸君

 

 

214:名無しの冒険者

皆まで言うな

 

 

215:名無しの冒険者

安価達成の最高のシチュは決まってる

 

 

216:名無しの冒険者

よって却下だイッチ

 

 

217:道化所属

断ったけど、シチュって何?

 

 

218:名無しの冒険者

聞くなイッチ

 

 

219:名無しの冒険者

ワイらはその物語が始まる時の為にイッチ育成してる

 

 

220:名無しの冒険者

その為ならある程度は助けたるわ

 

 

221:道化所属

ええ、めっちゃ知りたいんやけど……ちょっと女帝とアルフィアと話してくるから抜けるわ

 

 

222:名無しの冒険者

おういってら

 

 

223:名無しの冒険者 

概ねスレタイは達成か

 

 

224:名無しの冒険者 

イッチ育成計画は分かっとるな?

 

 

225:名無しの冒険者

モチのロン

 

 

226:名無しの冒険者

それまでにどうするべきか分かっとるな?

 

 

227:名無しの冒険者

イエッサー!

 

 

228:名無しの冒険者

イッチが割と不憫だけどな

 

 

229:名無しの冒険者

あのシチュに突っ込むのは割と外道だろ

 

 

230:名無しの冒険者

お前ら、此処がどこだか分かってる?

 

 

231:名無しの冒険者

否定出来ないのがつらたん

 

 

232:名無しの冒険者

悔しい!でも、認めざるえない…!

 

 

233:名無しの冒険者

吹いたww

 

 

234:名無しの冒険者

スレ民って自分達が楽しめればそれでいいからな

 

 

235:名無しの冒険者

神かと思った?残念!邪神でした!

 

 

236:名無しの冒険者

此処にいる人みんな邪神説

 

 

237:名無しの冒険者

スレ民ってそういうもんだろ

 

 

238:名無しの冒険者

それな

 

 

239:名無しの冒険者

今日の締めくくりを誰か一言

 

 

240:名無しの冒険者

今日も、生き延びた!!

 

 

 

 ★★★★★

 

 

「……うぁー、痛っ」

「意識があるのか。呆れたタフさだな」

「額が割れた。アルフィア、ポーション持ってない?」

「私が渡す義理は……いやなんでもない。それで早く傷を治せ」

 

 

 血が結構出て止まらない。

 意識を失わなかっただけ驚愕だが、一発で瀕死状態だ。ノーグはアルフィアに渡された回復薬(ポーション)の瓶を開ける。だが、逆さにしたのに流れてこない。何これイジメ?と思いつつノーグは中身を覗く。

 

 

「ポーション凍って出ねえ」

「それはお前のせいだろ」

「ほらよ。遠くに離れてて良かったわ」

 

 

 ザルドに渡されたポーションで割れた額を癒していく。流した血でふらつくノーグにアルフィアは手を差し出す。一瞬ザルドは瞠目する。アルフィアから手を差し出すと思わなかった。ノーグは迷う事なく手を掴み立ち上がる。

 

 

「ありがとう。二回目だなこれ」

「……ただの気紛れだ」

 

 

 アルフィアは顔を逸らした。

 無意識だったのか視線をノーグに合わせない。似合わない自覚があったからか何故か気恥ずかくなっていたのか。

 

 

「俺の負けか……いや生き延びただけ上出来か」

「いいえ、私の負けよ」

 

 

 女帝の言葉に呆気に取られ、首を傾げた。

 

 

「指で弾く瞬間、僅かに焔が指に当たったらホラ」

 

 

 女帝の右指に()()()()()()()()()()()()()()

 それは僅かであったといえど女帝を傷付けるだけの力があの魔法にはあったという事。此処にいる全ての団員が絶句する。

 

 

「お前の【魔防】で防げないとはな」

「氷点以下になる焔は【魔防】があってもノーダメージとはいかなかったわね。焔を纏った斬撃を食らったら凍り付いて斬り殺される。それが例え私であってもね」

 

 

 アルフィアのような魔法無効化なら可能だろうが、魔防というのは恐らく魔法に対する耐性を得るだけ。効きにくくなるだけで、効かない訳ではない。熱を奪う焔は僅かに女帝から熱を奪い指の皮膚を割る程度にはなったようだ。

 

 

「防御無視か……最近の餓鬼はどうなってやがる」

 

 

 仮に防御した所で焔に当たれば細胞が凍り付き、下手をすれば割れる。それが結果的に防御無視を再現している。熱の燃焼なんて法則から大分外れている。()()()()()()()()()()()()()()()()()理解できない。

 

 

「素晴らしいわノーグ。【ヘラ・ファミリア】に欲しいくらい」

「おいおいそれは狡くないか?俺達も欲しいぜ」

 

 

 二大派閥による勧誘。

 生きる伝説達に認められ、二人の最強が直々に欲しいと告げた。贅沢過ぎる程の勧誘、だがそれ相応の実力を持っていた事から誰も反対意見は出さない。

 

 けれど、ノーグは首を横に振る。

 

 

「やめとく、俺を見つけたのはロキだ。あんなでも今の俺の母親だし」

「まっ、ゼウスよか確かにマシか」

「私は諦めないわよ」

「おい」

 

 

 これから下手したら引き抜きのために色々あると思うと頭が痛くなりそうだが、それに関してはノーグは考える事をやめた。

 

 

「(……にしても)」

 

 

 あの時、ノーグに見えた光景

 額に指が届くその瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()。それがあったから僅かに女帝が狙う位置に焔を出現させる事が出来たが、あの時見えた世界は『天啓』とはまた違う。

 

 

「(【天眼】の効果か?……動体視力の強化か、洞察力の強化なのかもしれないけど…トリガーが分からん)」

 

 

 危機的状況、生存本能の危機、過剰集中のどれかがトリガーだと推測出来るが、最後を除いて日頃から危機的状況になる訳ないから試す事は出来ないし、したくないというのが本音だ。

 

 ノーグの違和感はそれだけではない。

 転生したから変だとは思うのは認めるが、明らかに自分の異質さに目を疑う程に。

 

 

「(出力もそうだが……普通の魔法の基準値を超えてる)」

 

 

 比べる存在が少ないから分からなかったが、出力の桁が普通ではない。あり得ない法則が働く魔法、そして能力値の限界突破、そして()()()()()()()()()()()()()()()()。自分が転生したという記憶はあれど、それ以前が分からない。

 

 

「(俺は––––この世界から見てどんな存在なんだ?)」

 

 

 明らかに何かが違う。

 違う世界を知っているからという理由だけでは片付けられない違和感が今のノーグにあった。

 

 






スレ民が優しい存在だと思った?
イッチに「どうして……お前が」と言わせた後に安価達成させたいだけである。

★★★★★
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