「アグネスデジタルとアグネスタキオンが不健全性的行為を?」
練習中、下級生からあがってきた報告にエアグルーヴが眉をひそめて言った。
近頃、その二人について妙な噂があるのだという。『夜な夜な、アグネスデジタルの寮室から喘ぎ声が聞こえてくる』と。
彼女達の人となりを一定知っている者からすれば、怪しい実験をしている事はあってもそういった方面の間違いを犯す二人ではないと知っている。エアグルーヴとて、その噂を真に受けてしまう程にデジタル達を知らないわけでもない。
しかし何も知らない者達にはそんな事が分かるはずもなく、ましてやG1を勝った事のある二人なら嫉妬心から下世話な話題の対象になりやすい。
エアグルーヴは、あまりそういう話は好きではなかった。だが誤解が膨らむ前に、何かしらの対処をする方が良いだろう。怪しい実験をしているならそれはそれで諫めないといけないし。
「まぁ……単なる誤解だとは思うが。デジタルがタキオンに性的な行為を強要しているかどうかはこちらでも慎重に調査しておこう」
下級生に対しては、なだめる目的でそういった返答をしたエアグルーヴだった。
だが、彼女の耳に届いているのはそれだけではなかった。
「詳しく……」
エアグルーヴと下級生の耳に、小さな呟きが届いた。
「説明して下さい」
それはまるで怒りや驚きを噛み殺すかのように、ゆっくりと言葉を選んでいるような声色だ。
二人はその声が発された方を見た。
「今、私は冷静さを欠こうとしています」
彼女は、怒りを押し殺したような、父親そっくりの仏頂面で「悪意のある嘘だったら容赦しない」とばかりに下級生に詰め寄ってきた。
【頂点への道vs勇者】
「はー…………」
アグネスデジタルはアナログの原稿を目の前にため息を吐いていた。
インターネットのコミッションでハンドルネーム『青空雲』……もといセイウンスカイから依頼された漫画を描いているが、正直に言えばデジタルとしては非常に微妙な気持ちである。
漫画の展開は『セイウンスカイのトレーナーが彼女に対して強引に恋愛関係を迫り、弱味を握られて逆らえないセイウンスカイが好き放題にされる……』という代物だが。
「……これは、いわゆる『解釈違い』というヤツなのでしょうか……」
正直、セイウンスカイのトレーナーがそんな事をやらかすとは微塵も思えない。好意があったとしても恋愛感情ではなく師弟感情とかその辺じゃないだろうか。これも「師に抱く恋心」の解消方法の一つだと理解しつつも、よく知ってる人物たちの爛れた恋愛模様を"捏造"するのはデジたんとしてかなり気が引ける。
解釈は人それぞれ。その辺りについて他人の考えを否定する事は決してしない主義のデジタルも、さすがに目の前の代物については微妙な気持ちだった。
とはいえ、キングヘイローやアグネスタキオンを挿し込んで唐突なNTR展開でお茶を濁すわけにもいかない。なにせ依頼者がわざわざその辺りを禁則事項で盛り込んできている。
「ドーベ……じゃなくてどぼめじろう先生ならどう切り返すのでしょうかこの依頼……」*1
しかし、もしもセイウンスカイが気に入るような『他の流れ』を打診出来れば、あるいは……。
キングやタキオンが間に割って入ってくるギャグ展開をラフでさっと試し書きしてみてから、デジタルは背もたれに体を預け、一旦作業を中断する。
コンコン、と寮室の扉がノックされる。
「あ、はーい。入ってきてだいじょうぶですよー」
デジタルは「クロフネが訪ねてきたのだろう」と思い、明るい声色でそう返事した。
だが、扉を開けたのは意外な相手だった。
「失礼します」
部屋に入ってきたのは……ナリタトップロードだった。その表情はどこか硬く、緊張しているようでもある。
「ト、トップロードさん!!?」
デジタルは予想してなかった来訪者に驚きのあまり、バランスを崩して椅子ごと仰向けにひっくり返り、床に転がった。
勢いよく打ち付けた後頭部を押さえて、しばらく悶絶する。その様子を見て、心配そうに近寄るトップロード。
「い、いえ。いつもの事なのでご心配なく……!!!」
デジタルは涙目で見上げながら、大慌てで机の上の原稿を裏返しながら大丈夫だと示す。
「それならば、いいのですが」
微妙に納得していない様子ではあるが、それ以上追及する事もなく頷いていた。
デジタルはなんとか立ち上がると、改めて姿勢を正す。
ナリタトップロード。テイエムオペラオーのライバルの一人にして菊花賞を制した、G1勝利経験のあるウマ娘。
菊花賞に限らず重賞では一着を取った経験が何度もある猛者であり、デジタルが強い憧れを抱くウマ娘ちゃんの一人だ。
「な、なんだってトップロードしゃんがあたしなんかに会いに?」
思わず噛んでしまう。まさか自分の部屋を訪ねてくるなんて思ってもみなかったので、動揺してしまう。
そんなデジたんを見て、トップロードは微妙な笑みを浮かべた。
「えぇとですね……その、デジタルさんと"お話"がしたくて」
その言葉に、デジタルは耳をぴょこりと動かす。
――お話? レースとか練習の事についてでしょうか。それとも学校行事か何かの相談かも。トップロードさん、学級委員長ですし……。
デジタルは「なんにせよ相談事があるだろうなぁ」と解釈して、気を引き締める。
「わかりました! では、お茶をお淹れするので少々のお待ちを!!」
デジタルは元気良く答えてから、備え付けの小さな台所の方へと小走りで駆けていく。
「…………」
デジタルが台所へ移ったのを確認すると、トップロードは光の失せた輪眼*2で、部屋の中をぐるぅりと見回す。
……ナリタトップロードは激怒した。必ず、かの婬虐暴戻*3の噂を除かなければならぬと決意した。
ナリタトップロードには性的な事がわからぬ。ナリタトップロードは、トレセン学園のウマ娘である。芝を走り、学級委員長として暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
……あのテイエムオペラオーやメイショウドトウに勝ったアグネスデジタルが、嫉妬から名誉棄損されているなど心外甚だしい。
トップロードは、何か証拠になるモノがないか探していた。デジタルの部屋にある物の中には、もしかしたらタキオンとの仲を証明する代物があるかもしれないからだ。
ともなれば、デジタルが大慌てで隠していた代物に注意が行くのは必然であった。
デジタルがお茶の準備をしている間に、トップロードは机の上に置かれていた裏返しの原稿にそっと手を伸ばし、それを表に向けた。
そこには、男性トレーナーがアグネスタキオンを優しく抱き締める逢瀬の場面が描かれていた。
その原稿を見た瞬間、ナリタトップロードの輪眼が動揺したように揺れる。
「トップロードさーん。お茶は温かい方がいいですかー?」
台所から聞こえてきたデジタルの声に、トップロードはびくりと肩を震わせる。
「あ、はい!! 熱い抱擁……じゃなくて、えっと……お茶をお願いします!!」
慌てて返事をするトップロード。デジタルは、まだお茶の用意をしているようで戻ってくる様子はない。
トップロードは、ゆっくりと深呼吸をして心を落ち着けると、再び原稿に視線を落とす。原稿に描かれているのはハイティーン向けの、男女の恋愛場面。
(まさか……デジタルさんは『自分を男性に置き換えて』、己の欲望の捌け口の手段にこういった漫画を……)
そこまで考えたところで、他の原稿用紙も裏返していく。
『キングヘイロー、オレはお前の事が好きだ……』
先の原稿と同じ容姿の男性トレーナーが、他のウマ娘――キングヘイローに言い寄っている場面。
(……???????)
ナリタトップロードには一瞬理解が出来なかった。倫理観においては人一倍真面目なだけに、一人の男性が複数の女性・ウマ娘と同時に関係を持つという発想がまず浮かんでこなかったのだ。
(…………浮気……? いえ……これはいわゆる二股……?)
困惑しながらも、ようやくその事を理解した。デジタルがこういった欲望を抱いているというのならば、たとえ不純交友が事実でなくとも諫めなければならないのではないか。
そうして、さらに他の原稿にも目を通そうと手を取った。そこには、やはり同じ容姿の男性が描かれている。
……そして、デジタルの原稿を読み進めていくうちに、ナリタトップロードの表情はどんどん険しくなっていった。
なにせ、『弱味を握られたセイウンスカイが男性に好き勝手される』ようなシーンもあったのだから。
現実でそれが起きていたら決して許せないものである。だが、それがそっと内に秘めた感情なら許されるのだろうか?
……いや、それでも許されないだろう。
ナリタトップロードは、手元の原稿を握り潰したい衝動に駆られた。
しかして、デジタルは本当にこういった欲望を抱いているのだろうか。この原稿が"デジタルの欲望"から這い出た代物だとしたら、デジタルは放っておけない存在ではないか。
そんな疑念が沸き上がった。これは学級委員長の一人として、正さねばならぬ。
「ト、とぷろしゃん……?」
デジタルは、テーブルを挟む形で向かい合うようにして座っていた。
目の前にいるトップロードに、デジタルは動揺していた。
なんというか、目が怖い。光のない四白眼で真っすぐ見つめてくるのだから、そりゃあもう恐ろしかった。
「……デジタルさん」
「ひゃ、ひゃいっ!!?!」
普段よりもいくだんも低い声で名前を呼ばれる。それだけで、デジタルの耳はぺたんと垂れ下がってしまう。
たぶん、自分はトップロードに対して何かしらいたらぬ事をしでかしたのだろうと、デジタルは理解した。だから相手のお叱りを素直に受け止めようと思ったのだが。
「えっちなのは、いけないと思います!!」
――……何の話だ。
デジタルはまったく身に覚えがない言葉に、思わず思考停止してしまう。
「え、ええっ、えっちって……あの、その、ええぇと……」
何かとんでもない誤解をされているのかもしれない。デジタルは必死に該当する所業を思い出そうとする。
――もしかして、アリスデジタル名義で頒布してる同人誌、ネット上で見られた……?!!
デジタルは血の気が引いていった。ウマ娘ちゃんを描く以上そういった代物は断じて、天地天命に誓って頒布した事はない。しかし、『同人誌≒えっちな本』と認識している人種がいると聞く。デジタルが描いているものが、そういう類のものなのではないかと疑われても仕方ない。
トップロードの語彙も相まって、その事を叱られているのではないかとデジたんは思った。
「トップロードさん、私は、決して、そのような事はしておりません……! 絶対! 何かの誤解です!!!」
デジタルは、必死に弁明するがその戸惑いのサマが逆に怪しさを増してしまっている。トップロードは、特徴的な輪眼をピッタリと動かさずにデジタルを見据える。
「デジタルさん。私たちはウマ娘です。ですから、ウマ娘らしくあらねばいけないのです」
トートロジー構文で言われて、ますます混乱するデジタル。
「た、確かにあたしは、ウマ娘らしくないと言われれば、そうかもしれませんけど……!! でも、ええと、その……」
アグネスデジタルは、確かに"ウマ娘らしくない"かもしれない。そもそも『二刀流を志した理由』についてもそうだ。芝ダート両方のウマ娘ちゃんが尊すぎるあまり、自分の走る道が選べずに、結局は両方を選んでしまった。
その事を思い返せば、デジタルはトップロードの諫言に強く言い返せないでいた。
「デジタルさんのお気持ちもわかりますが、そういった感情は押し殺しておくべきかもしれません」
デジタルの気持ちを見透かしたようにトップロードは諭す。……しかし、デジタルだって譲れない部分がある。
「あ、あたしは!! ウマ娘ちゃんが好きだって想いだけは、誰にも負けていないつもりです!」
ナリタトップロードの威圧的な輪眼にひるみもせず、デジタルは必死に訴えかけた。
ウマ娘ちゃんが好きだからこそ、アグネスデジタルという存在は彼女達の背を追いかける事にひたむきに努力出来た。
「天皇賞を一緒に走ったオペラオーさんやドトウさん……後輩ちゃ、じゃなくて、クロフネさんやタキオンさんにも、導いてくれたキングさんや、ヒントをくれたシャカールさん……他のウマ娘ちゃんも……みんな、みんな本当に素晴らしい方ばかりです……彼女たちのような尊い存在と一緒に走れる事が嬉しくて……本当に楽しくて……」
二刀流を続ける事がどれだけ大変か。努力だけではどうにも出来ず、かといって才能だけでどうにかなるような問題でもない。
それでも、どちらかを蔑ろにするような真似はしたくなかった。どんなに辛くても苦しくとも……。
「……だから、みなさんが大好きだからこそ……
それは、彼女の偽りなき本心だった。
「もちろん、ナリタトップロードさんだって『あたしがそういった感情を向けたウマ娘ちゃんの一人』です!!」
そうハッキリ言いきってから、申し訳なさそうに顔を俯けてナリタトップロードの返答を待つ。……これで理解してもらえぬのなら、おとなしく自分の身の振り方を考えようとも、デジたんはそこまで思い詰めて。
ナリタトップロードは腕を組んで、デジタルの回答をゆっくり考え込むように顔を俯ける。
(ええええええええええええっ!!?)
ナリタトップロードは羞恥した。
ナリタトップロードには恋愛がわからぬ。ナリタトップロードは、トレセン学園のウマ娘である。学生として自分を律し、色恋とは縁遠く暮して来た。そのせいで好意に対しては、人一倍に鈍感であった。
しかし、デジタルの真剣さは伝わってきた。彼女が嘘を言っているのではないと、はっきり分かった。
(いや、ですが、それだと……!)
ナリタトップロードに対しても、そういった感情を抱いているとデジタルは言った。……つまり、ナリタトップロードもデジタルにそういう目で見られているのだろうか。
それを自覚した途端に、全身の毛穴が開く感覚に襲われる。顔が熱くなるのを感じた。
(……そんな、まさか……!)
先に読んだ原稿のように、優しく抱擁されたりするタキオンや、「好きだ」と言い寄られているキングヘイローを思い返し、目の前の、自分よりもずっと小さくて幼い印象のアグネスデジタルがそのように迫ってくる場面を想像してみる。
『ナリタトップロードしゃん……あたしはお前の事が好きだ……』
(……あれ……すごく、すごい……かも……?)
可愛い盛りの子犬が懐いてきたような、あるいは幼稚園児か小学生の妹が甘えてきているかのような、なんとも言えない愛くるしさを感じてしまう。
だが、『他のウマ娘にもその感情を向けている』というような事をデジタルは言っていた。その事に、微妙な負の感情を胸の内に感じてしまったことに、トップロードは戸惑う。
(これが……ウマッターのリプで送られてくる『唐突な
ナリタトップロードはデジタルの想いについて、こう考えた。
(……『独り占め』したいです……)
以前に習得していた【独占力】が発動する音が鳴った気がする。それが報せてくれたのは、"今まで知らなかった新しい感情"だった。
アグネスデジタルの劣情が他人に向けられているのならばあずかり知らぬところであるが、自分に向けられるのならばはっきりいって御しやすい。
なにせ相手は中等部の年下だ。高等部の自分が惑わされる、わけがない。
「デジタルさん!」
「は、はい!!」
ナリタトップロードは、静かに口を開いた。デジタルは緊張しながら、次の言葉を待とうと姿勢を正す。
ナリタトップロードは、デジタルの目を見つめながら、ゆっくりと言葉を選んでいった。
「私も、その気持ちに応えたい。だけれど、それならばその想いは私だけに向けてほしい!!」
デジタルはその言葉に呆けた。
――あれ、これ新手のライバル宣言????? いや、オペラオーさんに勝ったからそういう挑戦状叩きつけられるのはありえるっちゃ、ありえる……?
ナリタトップロードとアグネスデジタルは、盛大なすれ違いを引き起こしまくっていた。
しかし、当人たちはそれに気づくことなく、互いに互いを見つめ合う。
ナリタトップロードは、デジタルの想いを受け止めた上で、自分にだけ想いを向けるように求めていた。
「えぇっと……」
デジタルは、困惑気味に首を傾げて、しばらく考える素振りを見せる。
本能的に、安易に答えてはならない気がした。
「デジタルさん、よくよく考えてみてください。貴方の想い人がそういった好意を複数人に向けてたら、貴方も悲しいでしょう?」
――いやむしろスポーツとして健全かと。ローレルさんみたいなブライアンさんに対する激重感情も全力で推せますが。
デジタルは、そう思いながらも……何か、原稿のヒントになりえそうな話をしてくれそうなのでひとまずは黙っておく。
一方でナリタトップロードは真剣だった。幼い容姿のアグネスデジタルが老獪にも、自分を焦らしているような素振りで黙り込んでいたのでヒートアップしてしまっていた。
彼女の頭の中では、既に道を踏み外していると認識したデジタルに対して、いかにこの後輩を正しい道に導いてやらねばならないかといった思考が渦巻いている。
故に、ナリタトップロードは自分の恋愛観をそのまま口にした。
「学生らしい純愛こそ、私は至高だと思います!! "それぞれの立場からお互いを大切に想っている状態"こそが、正しいのです! それをデジタルさんは理解していない!!」
ナリタトップロードは、まるで自分の恋愛事のように、熱弁を振るう。
その時、ふと閃いた!
このアイディアは、セイウンスカイとの
コミッションに活かせるかもしれない!
デジタルはヒシッとトプロの手を握り、互いの瞳を見つめ合う。そこには確かに、同じ理想を共有する同士の姿があった。
「……その通りです。あたしは、他の事に気を取られてっ……本当に大切なものが見えていなかった……ッッッ!!」
――スカイさんとそのトレーナーさんについては、素の状態で尊い関係性じゃないか。だったら、そこをきっちり、
改めて、相談ページでそのラフを提示しその事を伝えよう。お金を受け取る前であるから、自分の『正義』を貫く為に依頼を断る事も選択肢に入れるべきだ。
「わかってくれましたか。デジタルさん!!」
デジタルが自分の説得に応じてくれたのを見て、ナリタトップロードは歓喜の声をもって手を握り返した。
「はい、ありがとうございます! あたしは……もう迷わない! あたしは、ただ純粋にウマ娘ちゃん達の幸せを願」
「ですがいきなり全てを矯正というのも難しいでしょう。ですから私の事を、デジタルさんの思うがままいかようにも描いてくださっても構いません! ただ、他のウマ娘さんにそういった劣情を向ける事は、絶対にだめですよ?」
――……待って。何の話?
「あのようにスカイさんを辱めるような表現をする事も、いけませんよ?」
――…………セイウンスカイさんの依頼通り描いたラフ見られて、た?
「――ゴヒュッ……!!」
セイウンスカイの恋心を他人に見せてしまった慙愧の念と、自分の事を誤解されてしまったであろう羞恥心から舌を噛みちぎらんばかりの勢いで悶絶するアグネスデジタル。
だが、ナリタトップロードはそんな様子に気付かずに、慈愛の笑みを浮かべて、デジタルの頭を抱きしめる。
「だいじょうぶですよ! 私はデジタルさんの事を軽蔑なんてしませんから!! むしろ、そういった側面があるという事が知れて嬉しいくらいです!! これから一緒に治していきましょう!」
――違うんです。違うんです……あたしが、あたしがウマ娘ちゃんと恋仲になるとか、男になってウマ娘ちゃんを汚したいとか、そういうおこがましい考えは微塵もなくて……。
デジタルは、己の魂の叫びを必死に伝えようとするが、言葉にならない。
「あー、そういういちゃつきならよそでやってくれないかな……」
「…………」
いつの間にか、タキオンとクロフネが扉の向こうから顔だけ出して二人の様子を伺っていた。
「ぁ゛ぁ゛ぁ゛……ぁ゛ぁ゛ぁ゛……………違う……あたしは、あたし、は……!!!」
その日、トレーナーとセイウンスカイのありのままを描いた原稿を描き上げて……案外トレーナーから愛されてる事に気づいたセイウンスカイにえらく喜ばれてから、デジたんはベッドの上でむせび泣いた。
「いや寮長今回ホント私何もしてなくてだね。気づいたらデジタルくんがトプロくんに抱きしめられてて……え? むしろ見張っとけ? ……いや、そうしたいのはやまやまなんだけどね……」
次の対戦相手
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ダブルジェット師匠
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イクノディクタス