「やったか」
ボンテージ姿の女の目の前に土煙が舞う。
先ほど光槍をこれでもかと言わんばかりに投げつけた。生身の人間であればオーバーキルであろう。
「ただの人間が、この堕天使様に歯向かうからよ。雑魚は雑魚らしく、死を受け入れれば「誰が、雑魚だって?」
「何!?」
土煙が晴れるとそこには先ほどまで少年を庇っていた金髪の少女がその場で障壁を展開し、傷ひとつ付けずに立っていた。先ほどまでおどおどと逃げていた少女とは変わり、凄まじいオーラと圧倒的な魔力を纏い、まるで別の人格が乗り移ったかのような少女がそこにはいた。
「な、何故生きている!?」
「...あの程度の攻撃でこのオレを殺せると思っていたのか?」
「なら数を増やすまでよ!」
女は再度光槍を生成し、目の前の少女に投げつけるが障壁に遮られ、自身の攻撃は当たることはなかった。
「フン、雑魚が。いいか貴様、攻撃というのはこういうものだ!」
金髪の少女は堕天使の女に掌を向けると、赤い文字の術式が展開され始めた。
「ッ!まずい!」
「消し飛ぶがいい!」
術式が完全に展開した瞬間、そこから炎が吹き出し、堕天使の女を襲った。
「想い出の消費量はそこまで多くない...」
術式を解くとそこには堕天使の姿はなく、黒い羽だけが宙を舞っていた。辺りを囲っていた結界が解かれ、雲から月が覗いていた。
「逃げたか。まあいい、オレには関係ないことだ」
そう呟き、血だらけで横たわる少年に目を向ける。
「...エルフナインが助けた命だ。傷口だけは治してやる。あとは自分でどうにかしろ」
少女は横たわる少年に術式を展開した。すると少しずつ傷口が塞がり、あっという間に傷なんて元からないような見た目になった。
「これでいいか。.....なんだこれは」
傷を治した後、恐らく少年のものであろう、カバンの中から1枚のチラシが出てきた。そのチラシには魔法陣のようなものが描かれており心な、しか赤く光っているように見えた。
「...ッ!召喚術式か。ここは一旦引くか」
そう呟いた少女は公園の外へと駆け出していった。
☆
(.....ろ.........ろ)
頭の中で、誰かの声が聞こえてくる。もう少し、あと5分だけ寝させてくださ『起きろ!』
「ぴゃい!」
急に頭の中で大きな声が聞こえ、勢いよく飛び起きた。辺りをキョロキョロと見回すと教会の中にあったベンチで横たわってたみたいだ。
「え、誰ですか。ボクを起こしたのは」
『お前の隣を見てみろ!』
「はいはい、一体誰ですかボクを起こしたの...ええええええ!!!!!」
そこにいたのは戦姫絶唱シンフォギアXVで出てきたキャロルの思念体だった。アイエエエエエ!?キャロル!?キャロルナンデ!?
なんでいるの!?黄金錬成した時、想い出を燃やし尽きて最後エルフナインとお別れした筈じゃ...。
『知らん!気がついたらお前の中にいた。...お前はオレの知るエルフナインではないようだがな』
「それは、申し訳ないです」
『別にどうでもいい。身体が使えることは確認済みだ』
「あれ、じゃあここに来たのも」
『オレがここまで移動した。あと堕天使とか言ったか。アイツも撃退した』
「そうです!あの少年は?あの後どうなったんですか!?」
堕天使から逃げる時一緒に運んだ?少年。あの人はどうなったんだろう。もしかして、死んじゃったとか?
『傷は治した。あとは知らん』
「そっか...よかった〜」
キャロルの言葉を聞き、ほっとした。良かったー無事みたいだ。
「これからどうしましょう...」
『オレはダウルダブラの修理に当たりたい。ここに着いた時見てみたら半壊の状態だった』
「それは大変です!早く修理しましょう!」
『そうだな。さっさと直して安定した力の確保をしなければ』
「それじゃあさっそく(ぐぅ〜)...まず、食事からで...」
『はぁ...好きにしろ』
とりあえず、飯食いに行こう。ボクは伸びをして、教会の扉を開けて街に向かった。
☆
「やっぱり牛丼はとても美味しいです!」
『そうか、それは良かったな』
「キャロルにも食べさせてあげたかったです」
『...オレは別に』
教会を出た時間がまだ9時ごろだったので牛丼チェーン店しか空いていなかった。なのでそこの牛丼を食べた。マジ美味かった。今は公園で一休みしているところ。
「にしてもこの世界はボクたちが知っているような世界ではないようですね」
『堕天使が出てくる段階で違うだろう』
それもそうだな。教会に戻ってダウルダブラの修理をしなきゃ行けないんだけど、まだ戻りたくないなぁ。
「...想い出ってあとどれくらい残っているのですか?」
『難しいことを聞くな。
「そうですか...」
ということは弱い相手には十分な強さで戦えるけどそれ以上の敵が出てきたら危ないってことだよね。
想い出をどう増やせばいいのだろうか。
『簡単なことだ。想い出を吸い取ればいい』
「それってオートスコアラーがやった、キ、キ...」
『そんなことやらなくてもできるわ!』
「できるんですか!?」
『...ただ相手に触れるだけでいい。接吻の方が効率よく想い出を集めれるだけだ』
はえーそうなんだ。でも吸い取る相手いなくない?一般人にそれやるの大分まずいでしょうに。
『堕天使がいるだろう。これは憶測でしかないが、アイツらは人間よりも長寿だ。堕天使1人で結構な量の思い出になるだろう』
「探すのめんどくさくないですか?」
『いや、すぐ近くにいる』
「え?」
すぐ近くにいるってどういうことだ?もしかしてこの公園に?どこにいやがる!?
『教会だ』
「教会にいるんですか?」
『教会の礼堂に黒い羽根が幾つか落ちていた。恐らく、堕天使はあの教会を拠点としてこの町で活動しているのだろう』
「現れるとしたら何時ごろですか?」
『悪党が活動するのは夜が相場だ。オレがそうだったからな』
「悪党の自覚あったんですね...」
『消し飛ばされたいか...!』
それは勘弁。しかし夜まで結構な時間あるしな。どうやって時間潰すか迷うな。
「うーん。...あぶっ!?」
考え込んでいると顔に何か被さった。なんだこれ、ローブ?
「すみません!大丈夫ですか?」
息を切らしながら声を掛けてきたのはブロンドの長い髪を持つ、大変可愛らしい少女だった。何故か修道女の格好をしている。ということはこのローブは彼女のものか。
「いえいえ大丈夫ですよ」
「良かったです。私、アーシア・アルジェントと申します。あなたの名前は?」
「エルフナインです。エルフナイン・マールス・ディーンハイムです」
「エルフナインさんっていうのですね!この出会いに感謝を、アーメン」
そうアーシアさんが言うと急にお祈りを始めた。キリストな感じの方なんですね。
『おい。オレのを使っていいなんて一言も言ってないぞ』
(別にいいじゃないですか。姉妹みたいなものなんですし)
『はぁ、勝手にしろ』
そうさせてもらう。
「ところでアーシアさんは何故こんなところに?」
「この町の教会に配属されまして、そこに向かおうとしたのですが...迷っちゃいまして」
そう言って下を少し出しながら笑うアーシアさん。はっきり言ってクソ可愛いです。
でも教会か。教会ってあそこの教会だよね。
『なんか気になるな』
(キャロルもそう思いますか?)
『あの教会は廃墟も同然。堕天使を除けば人が出入りした形跡がまるでなかった。ステンドグラスも所々割れていたりしていたからな』
(じゃあやめさせましょう)
『そうしろ』
脳内でキャロルと会話し、簡単な答えを出す。
こんな可愛い子を廃墟にいさせちゃまずいですもんね。
「あそこの教会のことですよね」
「そうです!行き方って分かりますか?」
「分かりますけど...あまりおすすめできませんよ。長いこと廃墟みたいですし」
「でも、そこに配属と命令されたので...」
うーん、どうしようか。
『簡単なことだ。時間を稼げばいい』
(なんでですか?時間稼いでも仕方なくないですよね?)
『本当に配属されたのならば神父とかそこ辺りが迎えにくるだろう』
(あーなるほど)
『だから適当に遊んでこい。オレは寝る』
(思念体でも寝れるんですね...)
『やかましい!何かあったら起こせ』
そう言ってキャロルはボクの中へと入っていった。
寝る場所ボクなんですね...。
「アーシアさん」
「はい、なんでしょう」
「アーシアさんはこの町に来たばかりですよね?ボクも同じなんですけど」
「はい...」
「ボクと町の散策でもしませんか?少しばかり遊んでいてもあなたの信じる神様はきっと許してくれますよ」
「でも...」
「お金はボクが出します。パーっと楽しみましょう!」
「ええっ!?」
アーシアさんの手を引っ張り駆け出す。意外と満更でもない表情だ。とりあえず最初にきたのはクレープ屋さん。開店したばかりみたいだ。
「おぉー!美味しそうです!アーシアさんどれにしますか?」
「そうですね...このチョコクリームクレープ食べてみたいです」
「ボクは...うーんどれにしよう」
クレープ屋さん来るの初めてなのでどれ食べようか迷うな。さっき牛丼食べたばっかだしあまり量の多いものは食べたくない...がしかしだ。甘いものは別腹とよく言うだろう。ボクが決めたのは...
「ストロベリークレープでお願いします!」
「はいよ!」
そう大きく返事をしたおじさんは慣れた手つきでクレープを焼き始めた。
前世ではあまり甘いものとか食べなかったから新鮮だ。世の中の女の子はこういうの食べてるのか。
「はいよ嬢ちゃんたち!ストロベリーとチョコクリームだ」
「「はわ〜!ありがとうございます!」」
「おまけに安くしとくぜ!」
大変ありがたい。にしてもとても美味しそうだ。
一口食べてみよう。
「う、美味い...だとッ!?」
「美味しいですね!」
生クリームの風味の中に閉じ込められたイチゴのおいしさ、さらにそれを包むクレープのモチモチ感...最高に美味しいです!
「あ、食べ終わっちゃいました...」
気がついたらクレープの包み紙だけが残されていました。これがクレープの魔力...!恐るべし。
アーシアさんを見るとこれまた美味しそうに頬張っている。可愛いなあ。
「それでは次あそこの呉服屋に行きましょう!」
「ま、まだ食べ終わってないですよ〜!」
善は急げってやつよ。アーシアさんと手を繋ぎ、呉服屋へと足を運んだ。ボクはそこで小学生と間違えられた。キレそう(小並感)
☆
時を跨ぎ気がついたら夕暮れ。ボクたちは最初に出会った公園にいた。
「いやー楽しかったですね!」
「そうですね。でも本当に良かったのですか?あんなにお金を使ってしまって...やっぱ私払います!」
「いいんですよ。私は元ではありますが、研究者です。お金は沢山持ってます」
「でも...」
そう言ってしょぼんとするアーシアさんのおでこをデコピンする。すると彼女は「いてっ」っと小さい声で呟いた。
「ボクはありがとうって言ってくれると嬉しいです」
「あ、ありがとうございます...?」
「なぜそこで疑問系ッ!?まあいいんですけど。こちらこそありがとうございます。久しぶりに楽しめました」
そう言ってボクはアーシアさんに手を差し出します。
すると彼女はボクの手を握ってくれました。これぞ友情。
「それでは教会に「その必要はない」ッ!?」
アーシアさんの言葉を遮った音に目を向けるとそこには黒いコートを着て、背中に黒い翼を生やした男が立っていた。
「ようやく見つけたぞアーシア・アルジェント。さあ教会に来い。レイナーレ様がお待ちだ」
「誰がアーシアさんを渡すものですか!どうせ騙そうとしているのですよね!?」
「チッ。邪魔者がいるとは厄介だな」
そう男が呟くと掌から光の槍を生成し、ボクに向かって投げてきた。やばいどうしよう!キャロル!起きてくれ!
『オレの予測は当たったようだ。変われ!』
キャロルはそう呟くとボクの身体に勢いよく飛び込んできた。するとボクの身体?は宙に浮き、気がついたらボクが目の前に立っており、障壁を展開して光の槍を受け止めていた。
『どうなってるんですか〜!?』
「うるさいぞ、エルフナイン」
「あ、あの...エルフナイン、さん?」
「オレはエルフナインなどではない。オレの名前はキャロル。錬金術師だ!」
そう叫ぶとキャロルは何重もの術式を展開し始めた。
シンフォギアライブ2022の日、仕事入ってました適合者やめます()
そんなことよりキャロルとエルフナインの関係っててえてえですよね。
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