我が名はベリアル!至高の41人が一人!   作:伊勢村誠三

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皆様お久しぶりです、伊勢村です。
ゼミ説明会と、それに伴ったバイトのシフト変更のせいで一日遅刻です。
愉しみにしてくださっていた皆さま、お待たせしました!
それでは、お楽しみ有れ


12話 贈物

バックステップで繰り出される爪や牙をよけ、風の魔法と下級俊敏力増大(レッサー・デクスタリティ)で加速した刺突をお見舞いする。

左眼を潰されたデカい鰐のような姿の魔獣がたまらず頭を滅茶苦茶に振り回して暴れるが、コッコロ……整合霊廟の没データをその身に宿し、レベル47のエルフとなったベリアルは素早くティアナ、騎士とスイッチし、退避する。

 

「騎士くん!」

 

「うん!」

 

騎士ことダークネスウォリアーズが一人、ナオトがティアナことダークネスウォーリアーズ隊長のユースティアナの指令に、全体性能向上(マス・ステータス・ブースト)を発動する。

範囲内の仲間のステータスを一時的に向上させる

 

流水一閃(パンチ・レーザー)!」

 

「聖撃!」

 

残った左眼を流水一突(アクア・ステイレット)よりより細く、貫くことに特化した水龍に寄り潰され、文字通りの死角からティアナの聖騎士の職業(クラス)スキルにより強化された斬撃がトドメとなる。

 

(よし!アウラやヒールズの皆との練習のかいがあった!)

 

最悪ベリアルに変身さえできれば撤退だけならどうとでもなるベリアルだが、スレイン法国のような他のプレイヤーと繋がりのある存在がどこで見てるかもわからない。

それ故にベリアルは一見無害な少女の姿を取ることにしたのだ。

 

(最初は普通にしゃべるつもりだったけど、ティアナ以外全員ものの見事に敬語が抜けなかったからなぁ……)

 

そして最終的にたどり着いた苦肉の策が自分で喉を破壊して会話を放棄することである。

モモンガに相談してあーでもないこうでもないと言い合ってるうちに、半ば冗談の様に「いっそ喋れない設定なんてどうですか?」とか言われて即決で行動に移してしまったことをベリアルは後悔している。

アイデア自体は全然ありなのだが、エルフの少女がなんの躊躇いもなく自分の喉を掻っ捌く姿は度の過ぎたスプラッターホラーだ。

その姿をまじかで見てしまったモモンガは精神の無茶苦茶な高まりで連続鎮静化され、フィースは泡を吹いて倒れてしまった。

 

(フィースには無理やり強めの幻覚で納得してもらったけど、今度なにか埋め合わせしない、、とっ!)

 

突っ込んで来た低級ゴブリンの手斧を回し蹴りで逸らしてがら空きの背中に刺突を叩きこむ。

レベル100の動きに慣れてしまっていると、かなり遅く感じるが、それでも人間の最高レベルが30台前半のこの世界の基準ではかなりの者で、レベル30以下しか参加していない前提のこの闘技場で何も危うさを感じたりはしない。

 

(ミトやユウキの速さに比べれば、欠伸がでる!)

 

パワーもキリトやカルミラに遠く及ばず、全体的性能はレイと比べるのも可哀そうなぐらいだ。

次に突っ込んで来た猟犬のような魔獣も、槍を逆さに構えて、真っ向勝負……と、見せかけて高跳びの様に飛んで飛び越え、

 

風刃円斬(ウルトラスラッシュ)!)

 

手元に精製した所謂八つ裂き光輪を放ってその首を狩り飛ばす。

 

「あのエルフすごいぞ!まるで曲芸師だ!」

 

「いーぞチビ助!もっと踊れ!」

 

(チビ助って……こんなカワイイ女の子だぞ?擬態だけど)

 

なんて思いながらも、会場に向かって手を振ると歓声が返ってくる。

まるでまだギルメンが殆ど欠けていなかったころ、攻め入って来た連中が第六階層にトラップで転移して来たのを迎え撃ってきたときのことを思い出した。

 

(あの時はいつもいがみ合ってるたっち派の連中も、ウルベルト派の連中も、どっちでもない連中も、一つだったな、、)

 

思い出の残滓に触れたせいか、コッコロもギアが上がった。

レベル47でも現地にしては高いレベルには違いなかったので、セーブしていたのだが、少しだけそれを外し、戦場内を駆け巡る。

 

「え!?」

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

メッセージで『ごめん、ちょっとカッコつけたくなった』と、ティアナたちに謝り、コッコロはなるべくピンチになってそうな場所を選んで援護を加えていった。

風の聖霊を介した回復や、通常斬撃、刺突による足止め、ちょこちょこと目の前を横切ってヘイト稼ぎ。

敵も味方も驚いた顔をするのが、特にさっきの控室でエルフ風情となめてかかって来た連中も、皆心底驚いた顔をするのが面白い。

いたずらっ子のギルメン、るし★ふぁーや、プレイアデスのルプスレギナ・ベータの気持ちが少しわかった気がするベリアルだった。

 

(よし!次はあの侍さんを……ッ!?)

 

ヒュン!と、文字通り風を切って刃が降り抜かれた。

スキルも何も使用していないにしては速く、かなり加速していたコッコロは急には止まれず、槍を盾にしながら、体を逸らして強引に避ける。

喉の傷を隠すスカーフは斬られてしまったが、肉体に傷はつかなかった。

 

「おや失礼、てっきりモンスターかと思ってしまいましたよ」

 

そう言って侍、長い金髪の男は、遮二無二避けて砂埃にまみれたコッコロを見下すように言った。

言葉遣いこそ丁寧だが、所謂慇懃無礼というやつで、こちらが下だと確信した態度、仕草だ。

異業種狩りのプレイヤー共で散々見て来た傲慢な人間の姿だ。

 

(ちっ!嫌なこと思い出す)

 

見れば男は3人の奴隷エルフを引き連れている。

耳は両耳とも中ほどで斬られ、服は粗末な貫頭衣。

瞳にも、表情にも正規は感じられない。

 

(……俺もつくづく『ウルトラマン』みたいだな)

 

社会正義や道徳は、持っていても一般人並みだったはずだ。

少なくとも現代人宮迫友樹は。

だがこの湧き上がる怒りは同族を物扱いされた物以上に、理不尽の様な物に対する怒りだ。

悪を成した存在を立て、撃て、斬れと叫ぶ声が心の内側にある。

肉体が完全にウルトラマンベリアルに、そして何よりアインズ・ウール・ゴウンの、九人の自殺点(ナインズ・オウン・ゴール)の一員となった証拠だろう。

 

「なんですかその目は。謝ってやったというのに随分な態度ですね」

 

(……なるほど、これは危険だ。

ウルトラマンも視点を変えれば『一方的に強大な多力を持ち正義を振りかざす怪物』に過ぎない。

自制しないと大変なことになる)

 

思わず使いかけたウルトラゼロブレスレットを装着した左手を砂埃を払うついでに思いきり振るうとその場を後にした。

 

 

 

魔法の光の外灯が輝く帝都の夜。

出番を終え、出演料を受け取ったフォーサイトと美食殿は本日の宿を目指していた。

 

「着いたぜ。ここが歌う林檎亭だ!」

 

「へえ、思ったよりいい所じゃない」

 

闘技場にて派手に転んだコッコロの汚れを落とすために清掃(クリーン)のスクロールを購入する為に寄り道はしたが、ほぼ真っ直ぐやって来たその宿は、思ったよりも小ぎれいで静かなところだった。

二階には宿泊できる部屋もあるとの事で、先に荷物を部屋に置き、下の階に降りた8人は広いテーブルに陣取り、チーム同士で向かい合う様に座る。

 

「それじゃあ、この素晴らしき出会いを祝して!」

 

「と、行きたいところなんだが……」

 

ティアナの乾杯の音頭をヘッケランが遮った。

 

「うちの副リーダーがどうしてもおたくらの自慢のおチビさんに渡したいものがあるそうで……」

 

「なんですって?」

 

怪訝そうなキャルを手で制し、コッコロはイミーナの方を見る。

 

「あのエルヤーのクズ野郎のせいで、

スカーフなくなっちゃったでしょ?だから……」

 

そう言ってイミーナが差し出した紙袋の中には若草色のスカーフが入っている。

本当にいいのか?と、視線を戻すと

 

「フォーサイト全員からフォローのお礼ってことで!」

 

と、イミーナがいい笑顔で返した。

ヘッケランもロバ―テイクもアルシェも同じように頷く。

 

「ふ、ふふふっ」

 

コッコロは両手の甲を上向きにして、右手をその上に載せてから上に上げる仕草をする。

前にギルメンの一人、メンバー最高齢にして、大学教授故の博識さと、肩書に似合わぬノリの良さで先生と呼ばれていた死獣天朱雀に教えてもらった『ありがとう』の手話だ。

こっちの世界にそういうものがある訳ではないようだが、その感謝はしっかりと伝わったようだった。




オリジナル要素解説 その5

・死獣天朱雀とベリアルの関係性。
まあまあ仲良かったです。
妖怪博士の異名の通り、ウルトラ怪獣の元ネタに関する知識も豊富で、それこそ昔話を話す祖父と聞き入る孫みたいな関係に始まり、一緒にノリノリで人間至上主義プレイヤーを狩りにいったり、人間に化けてアイテム買いに行ったりしていました。
モモンガ、ウルベルト、たっち・みー、アスナに並んでロールプレイ中に特別な呼び方をする相手で『先生』と呼んでいました。
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