前回からかなり時間が経ってしまっていますが、実は今月1日から9日にかけて呉やら大阪やら滋賀やらと、大学生でもないと出来ない長期旅行に出かけておりました。
さて、そんなわけでかなり長いことこの小説から離れていたので、続きを書く手がイマイチ進まなかったので、今回は前々から温めていた番外編を出そうと思います。
一応、F・Kがパンドラとの会話で触れたベリアル様の態度の理由の説明にもなっておりますので、本筋と全く無関係って訳でもないです。
さて、前書きはこのぐらいにして、本分の方、どうぞ!
壱話 ナザリック大墳墓卒業式
木々をかき分けた先に会ったある程度開けた空間に寝そべって空を見上げる。
本物の満点の星空とはこんなにも美しいのか、と、宮迫友樹、いや、ついさっきまで宮迫友樹だった異形はいつ終わるとも知れぬ歓喜に身を支配されていた。
恐らく生身だったら涙も嗚咽も止めようがなかったに違いない。
(生命体と超越存在の間を反復横跳びしているウルトラマンの身体になって出てくる感想がこれとは……贅沢だな)
「ベリアル様、いかがなさいましたか?」
自身を膝枕する長い黒髪の猫人の少女の声にベリアルは
「いや、この空の美しさをどう言い表したらいいかと思ってな」
「ベリアル様に賞賛されておきながら御手を煩わせるなど、生意気な空ですね。
この身に天を焦がす力が与えられていないのが口惜しです」
そう言って本当に悔しそうな羨ましそうな、それでも綺麗とは思っている複雑な表情で空を睨む少女、キャルに思わず苦笑し、彼、ウルトラマンベリアルとなった宮迫友樹はその黒く、太く、醜い手を少し上げ
「こらこら。古の人々は星に道を尋ねて旅をしたそうだぞ。
それをすべて焼き焦がしてしまっては文字通り天下の人々すべてが困ってしまう」
何故本来0と1の集合体に過ぎないはずのNPCであるキャル、そしてその仲間として造ったF・K、ヤプール、ヒヨリ、ユージオが動いているのかは皆目見当つかないが、なんで今自分と共にいるかは分かっている。
(ギルメンでサ終直前にやった花火大会。
あの時最後に『待機』のコマンドを発動させたNPCたちだ。
てことはモモンガさんならパンドラが、アスナさんならダークネスヒールズたちが一緒にいるはずだ。
もし俺と同じ状態になってるとしたらだけど)
そこだけは安心だった。
もし一人ぼっちだったら、花粉を出す植物が軒並み絶滅危機に瀕して一周回って花粉症が根絶されたような汚染の極みのような現実に戻るより心細いことだろう。
(まあ、忠誠心の高さにはびっくりしたけど)
全ての花火が打ちあがり、ゲームが終わった瞬間、一瞬視界が暗転した後、ベリアルたちは全く見覚えのない森の中にいたのだ。
「え?」
思わず出てしまった間抜けな声。
「ベリアル様、いかがなさいましたか?」
そして帰って来るとも思わなかった返事。
(おかしいな。今の声、モモンガさんでもヘロヘロさんでもないぞ?)
そう思って振り返った先に居た自分の直属の配下として設定されたNPCたち。
話している内に気付いたのは、誰かが中に入っている訳ではないこと、自分たちギルメンや時々遊びに来た他所のギルドのプレイヤーたちの事を覚えていたこと。
そしてどうやら自分含めてギルメンに絶対の忠誠を誓っていること。
(よくはないよな)
休めと『命令』して漸く、それも交代での寝ずの番にベリアルを入れないことと、至高の41人の一人であるベリアルが地べたで寝るなどありえないのでNPCの誰かの膝を借りる事を条件に休んだことからも、5人、いや、NPC全員が異常だ。
(これは一度、フンキリを着けさせないといけないな)
そう考えたベリアルは夜空を眺めながら、明日の朝からの動きを考え始めた。
✿✿✿✿✿
「よし、こんなもんで良いか」
翌朝、アイテムボックスに腐る程余っていた季節イベントのご馳走を模した回復アイテム、、今やNPC達と共に現実のご馳走(感涙級)となったアイテムを朝食でとったベリアルたちは移動していなかった。
昨晩丁度ベリアルが寝ていた辺りに一段高い段と、会ってるのかは知らないが金屏風で簡単なステージを作った。
「ベリアル様、これは一体?」
「説明は全部後でする。お前たちはとりあえず着替えてくれるか?
女子は屏風の向こうで、男子は前側でだ」
全員頭の上に?マークが浮かんでいたが、ほかならぬベリアル様の命令で有れば、と言う事で移動して着替え始める。
その間にベリアルは椅子を五脚と、アイテムの中から使えそうな物を選んで少しだけ手を加えた。
「よし、お前たち、着替え終わったか?」
「「「「はっ!」」」」」
リーダーのF・Kはいつものレザー調の格好から、ネクタイやシャツ含めてダークなスーツ姿に、衣服のいつ用の無いヤプールはベリアルのお古のマントを羽織り、ヒヨリは今から初詣にでも行くような和装の晴着、キャルはオーバーロードスタイルと名付けられたゴスロリな感じのドレス、ユージオはF・Kとは対照的な靴から小物まで白いスーツ姿になっている。
「ではこれより、ナザリック地下大墳墓、卒業式を始める!」
「そ、卒業!?」
「それは、我々の任を解くということですか!?」
「その通りだ!ではまず!開会の言葉!ギルメン代表!ウルトラマンベリアル!」
なにか抗議の声をあげたかったNPCたちだったが、その忠誠心が主の言葉を遮るという行為を容認できず、まるで絶体絶命の窮地に立たされたような面もちでベリアルを見つめている。
「……まず最初に言っておくが、別に俺はお前たちを嫌っている訳ではない。
イジメたくてこんなことを始めたわけでも、ましてや一人になりたい訳でもない」
ではなぜ!?と、音のない絶叫がベリアルには聞こえた。
チラつかされた希望に何としても縋りたいという思いが5人全員から伝わって来る。
「これを見ろ」
ベリアルは左手に着けたアイテム、『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を見せた。
アイテム単体の価値としては大したことない物だが、これはアインズ・ウール・ゴウンのギルド拠点、ナザリック地下大墳墓内の自由な移動を可能にするギルメンの証だ。
「機能していない!?」
「その通り。少なくともこの世界にナザリック地下大墳墓は存在しない。
仮にここでない場所に存在したとしても、指輪が機能しないという事は行けない」
NPCたちの顔にさっきとは種類の違う絶望が走った。
栄光あるアインズ・ウール・ゴウンの城は、もうどこにもない。
自分たちが至高の御方々によって生み出されたあの場所は、守れと命ぜられたあの場所はもうどこにもない、と。
「任を解くのは、我々がその任を全うできなかった故なのですね?
ならば、ならばこの場で命を持って償いを!」
「なんでそうなる!?やめんかユージオ!」
愛刀の蒼薔薇で自分の首を掻き切ろうとしたユージオをほぼ条件反射で発動してしまったウルトラ念力で止め、ベリアルは盛大に溜息をついた。
「お前らをそんなことでイチイチ死刑にしてたらアスナさんたちにあわせる顔がないわ!
F・K、ヤプール!お前らもだぞ!親より先に死ぬこと程親不孝なことがあるか!」
「べ、ベリアル様……」
「全く!自害禁止!ギルメンとして下す最後の命令だ!いいな!?」
「「「「はっ!」」」」」
イチイチ反応がオーバーかつ、極端なので非常に疲れるベリアルだが強引な不意打ちで始めたのは自分だと言い聞かせて続けた。
「そういう訳でギルメンや他の守護者たちがこっちに来てるかも不明だ。
なので俺は俺とお前たち以外誰もこの地にやってこれていない前提で動くことにした。
勿論情報が有れば探すが、限りなく優先度は低い。
そこで!お前たちには、一切の未練を捨ててほしい!
過去なんざ切り捨てたくても勝手に向こうからついてくるんだ。
ならばその時までその過去のせいで余計なことなど考えん様に一度区切りを付けようと、この式を開かせてもらった次第だ。
そんな訳で、ナザリック地下大墳墓卒業式開会を宣言する!」
五人しかいないとは思えない盛大な拍手に、ベリアルはぺロロンチーノに奨められて仕方なくプレイした学園物のエロゲの内容をどうにか思い出しながら式を進める。
「卒業生着席!」
入場させるほど場がきちんとしている訳ではなかったので、とりあえず5人を椅子に座らせた。
(えーっと、来賓とかは全部省略していいから、校歌斉唱……いや、アインズ・ウール・ゴウンの歌とかねえよ!
卒業式定番の歌みたいなのは、、俺が歌えねえよ!小学校卒業したの何年前だと思ってんだ!
音楽の授業の内容なんざ記憶の彼方だわ!)
「そ、卒業生起立!」
態々座らせたくせにもう一度立たされたことに文句ひとつ言わず一斉に立ち上がった。
「卒業証書授与!ダークネスファイブ筆頭、F・K!」
「はっ!」
壇上に上がったF・Kにベリアルはアイテムボックスからさっきの着替え中に何故かゲームショップ内の季節限定アイテムとして売られていた卒業証書(名前だけ空欄)を取り出し、
「ダークネスファイブ筆頭、地獄のストルムF・K殿!
あなたはナザリック地下大墳墓第三階層の階層守護者として、我らの城を良く守り、仲間たちを率いて最後まで素晴らしい働きをしたことを証する!
アインズ・ウール・ゴウン代表、ウルトラマンベリアル!おめでとう!」
「ありがとう、、ございます」
ボロボロと涙をこぼしながらF・Kは卒業証書を受け取った。
あとの4人も物理的に涙を流せないヤプールを除き、全員が嗚咽や号泣しながら卒業証書を受け取り、席に戻った。
「閉会の言葉、アインズ・ウール・ゴウン代表、ウルトラマンベリアル!」
全員感情や涙が収まりきっていなかったが、それでもこちらに視線をしっかりとむける。
「その証書を受け取った以上、お前たちは自由となった。
もう守護者でも、防衛隊員でも、ダークネスファイブでもない。
こうなれば無礼討ちもなにもない。だから本音を言わせてもらう」
「……」
「俺は別にアインズ・ウール・ゴウンが好きでも嫌いでもない」
「「「「「!!?」」」」」
「あ、誤解するなよ?
ギルメンの全員とは友達と行かないまでもギルメンとしてちゃんと信頼してたし、遺産愛好会の2人やぺロロンさんたちみたいに特別仲のいい人たちも居たし、ウルベルトさんやたっちさん、あと死獣天先生みたいに尊敬している人たちも居た」
「けどそれ以上に俺はナインズ・オウン・ゴウルが誇らしかったからあおのギルドに居たんだ」
「ベリアル様、ナインズ・オウン・ゴールとはなんですか?
無知な我らにご教授ください」
ヒヨリの問いにベリアルは一度頷いて
「アインズ・ウール・ゴウンが原形となったクラン。
異業種差別なんぞに負けない、あの糞みたいな現実では決してできなかった、正しいと信じたことを、例え何者かにとっては悪であろうと貫こうとした誇り高きクランだ」
おおっ!と、少しだけ5人にざわめきが起こる。
もう少し話したいところだが、流石に言わなくていいだろう。
ギルドに、執着と言ってもいいほどにしがみついていたモモンガさんに引退してしまって申し訳ないと思いつつも、卒業式で駄々をこねる子供みたいだと感じたことも、動き出した5人のNPCたちをみて、その忠誠心と執着に気持ち悪さを感じたのも。
今はいい。さっき自分で言ったが、過去は勝手に追って来る。
ならば今のうちに返り討ちに出来る様にするまでだ。
「故に俺がお前たちに求めるのはナインズ・オウン・ゴールの魂に恥じぬ誇り高きものであれということだけだ!
これをもって、ナザリック地下大墳墓、卒業式を閉会する!卒業生、退場!」
5人が一斉に席を立ち、一歩前に出ると、F・Kだけが更に一歩前に出た。
「元ナザリック地下大墳墓第三階層守護者にして、ダークネスファイブ筆頭、地獄のストルム、F・K、御前に」
『元ダークネスファイブ、極悪の
「同じく炎上の剛拳、ヒヨリ、御前に」
「同じく魔猫のアビス、キャル、御前に」
「同じく氷結の蒼薔薇、ユージオ、御前に」
「我ら5人、至高の41人でも、ナザリック地下大墳墓の主人でもない、ベリアル様個人に忠誠を捧げさせていただきたく存じます」
「……そうか。ではこれからはナザリック地下大墳墓第三階層を守るダークネス大分ではなく、完全なる我が私兵、ダークネスファイブとしてこの俺に仕える事を許す!」
「「「「「はっ!」」」」」
「よし!それでは着替えたら早速往くぞ!
まずはこの地がどのような物か知らねばならん!」
「ではまずどちらに?」
そう言ってベリアルは、最強装備のギガバトルナイザーを取り出す。
「とりあえず海でも探してみるか!
本当に全部塩水かどうか、確かめに行くぞ!」
「「「「「はっ!」」」」」
着替え終え、各々の最強装備を身にまとった5人を引き連れ、ベリアルは森の出口を目指した。
これからだ。このNPCたちをヒトにしなければならない。
種族的な人間と言う意味ではなく、そうあれと与えられた設定を超えて意志と自我を持つ存在にするという意味だ。
あの糞のような現実を支配する企業共の運営する学校の教育のようなことを自分は決してしない。
きっとそれを気付かせてくれた死獣天朱雀先生への恩返しにもなるだろう。
あなたの孫弟子は立派になったと言えるだろう。
アスナたちにも、預かった子たちはたくましくなったと言えるだろう。
モモンガたちにも、ナインズ・オウン・ゴールの誇りは受け継がれたと胸を張って言えるだろうから。
(さあ逝こう、この世界のどこまでも!)
このルートは宮迫友樹がサービス終了前にログイン出来たことと、モモンガがアルベドの設定を書き換えていること、最後にギルメンで花火大会をすることでこのルートに突入となります。
その為本編とは全く異なる冒険と結末を辿ります。
一応結末まで考えてはありますが、それはまた本編が詰まったり、何かこの話とリンクするような出来事が本編であった時にまた書けたら書く感じですかね。
次回もお楽しみに。