我が名はベリアル!至高の41人が一人!   作:伊勢村誠三

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Yggdrasil(ユグドラシル)サービス終了日に、あの人は悪としてある人と出会っていたそうです。
一体誰と誰なんでしょうね?


本編
0話 2138年○○月××日23時59分59秒


 

 

 

Yggdrasil(ユグドラシル)

 

 

 

 環境破壊が行くところまで行きつき、遂には養殖の食材さえ、一部富裕層にしか手に出来なくなったような世界にて、西暦2126年にリリースされたDMMO-RPGである。

 本日まで約12年続くロングセラーで、日本国内においてはDMMO-RPGと言えばこのYggdrasilとまで言われるゲームである。なぜそこまで人気になったかと言われれば、別売りのクリエイトツールがあった方が楽しめるが、基本無料でも700種類を超える豊富な種族に、総合計2000を超える職業、更につける6000を超える魔法を駆使して仮想世界を楽しめる圧倒的自由度が理由だろう。

 同じアバターキャラクターは意図的にクリエイトしない限り絶対に生まれないと言っていい。ただ戦うだけでなく、世界(ゲーム)中に隠された未知を踏破することこそが本分と言っても過言ではない。

 正に伝説。そう、伝説なのだ。なぜならそのゲームは、今日でサービスを終了する。

 

「はぁ……」

 

 思わずため息が零れる。時計を見れば、今は23時53分。

どんなに急いで帰っても、サービス終了までにログインする事すら不可能だろう。

 

(最後に会いたかったなぁ、アインズ・ウール・ゴウンの皆に)

 

彼の名前は宮迫(みやさこ)友樹(ゆうき)

Yggdrasil(ユグドラシル)プレイヤーの一人で、非公式魔王と恐れられた超DQNギルド、アインズ・ウール・ゴウンのメンバー、『ウルトラマンベリアル』である。

 

(だいぶ前に引退した『たっち・みー』さんや『ウルベルト』さんたちは無理でも、ギルド(マスター)の『モモンガ』さんに、あと『ヘロヘロ』さん、あと……誰が残ってんだろう?)

 

 多分いてもあと2人か3人だろう。自分が転職で忙しくなって抜けた時、もう10人もいなかったし。でも、きっと『モモンガ』さんは、ロールプレイ中は我らが盟主と呼んでいた彼は残っているだろう。課金額こそ、友樹(ベリアル)にとって大恩人である『ウルベルト・アレイン・オードル』、そして『ぺロロンチーノ』と共に無課金同盟なる物を結成していた時期が有るので、ギルド内一位とかそういう訳ではないが、Yggdrasil(ユグドラシル)ぐらいしか趣味が無いと公言するレベルのギルドきってのヘビー・プレイヤーだ。行けば間違いなく会えるだろう。

 

「間に合う人は、行けてますよーに」

 

 無駄な祈りかもしれない。でもそう思わずにはいられない。Yggdrasil(ユグドラシル)での冒険の日々は、楽しかった。崩壊が眼前に迫った糞見たいな現実(リアル)の中にあるオアシスだった。

 

 

「痛っ!」

 

「あ、ごめんなさい」

 

 なんて考えていると、反対側から歩いて来た誰かとぶつかった。その声が、そして去って行こうとする後姿が、なんだか見覚えが有るように感じる。

 

「……ぺロロンチーノさん?」

 

「え!?」

 

 ビンゴ。最後のオフ会の時に見送った背中に間違いなかった。栄光のアインズ・ウール・ゴウンの一人にして、無課金同盟の一角、鳥人(バードマン)のぺロロンチーノ……の中の人で間違いない。

 

「お久しぶりです、ベリアルです。

まさか、会えるなんて思ってませんでした」

 

「え、ええ!こっちこそこっちこそ!

いやー、うれしいな。俺が引退した時以来ですか?」

 

「ええ。懐かしいです」

 

 このまま、世間話に花を咲かせたい気持ちはある。ぺロロンチーノさんもまた、一緒に冒険した仲間だし、一時Yggdrasil(ユグドラシル)で異業種アバターをターゲットにした人間種による狩りが流行った時があったのだが、一緒にお礼参り(・・・・)をした戦友だ。

けど、いや、だからこそ

 

「お家、近いんですか?」

 

「ええ、まあ。すぐそこですね」

 

「じゃあさっさと帰ってください!」

 

「え、ええ!?べ、ベリアルさん!?」

 

「今日Yggdrasil(ユグドラシル)の最終日ですよね?」

 

「!」

 

「きっとモモンガさんはいますよ」

 

「……」

 

 この汚染され切った大気のせいで、外出る時は皆ガスマスクを着けている。が、それでもなお彼の表情が暗い事は察せられた。マジか。予想していたことでは有るが、それでも行ってもらわねばならない。

 

「ぺロロンさんが引退の時その場にいなかったんで、モモンガさんと何があったとか知りませんけど、それでも会いに行ってあげてください。

あの人ならまず間違いなく、あそこにいますから」

 

 そこまで言っては見たが、ぺロロンチーノは動かない。本当に何があったんだろうか?

 

(あと5分もないけど、もし間に合うなら行ってほしい。どうすれば……)

 

「おい愚弟。なに人様に絡んでんだ」

 

 そこに全く予期しなかった、ついこの前深夜アニメで聞いた声がした。振り返った先に居たのは当然ながらガスマスク姿の……体系と服から察するに女性だろう。ぺロロンさんをそんな風に呼ぶ女性は1人しかいない。

 

「『ぶくぶく茶釜』さん!お久しぶりです!ベリアルです!」

 

「……え!?ベリアルって、あの遺産愛好会のベリアルさん!?」

 

 また懐かしい名前が出て来た。Yggdrasil(ユグドラシル)はアバターの容姿含めた様々な要素がかなり自由に設定でき、ネットの海からサルページした版権切れの作品のなりきりをしていたり、自作のNPCをそのキャラクターそっくりに創っていたプレイヤーもおり、アインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーにも自分含めて三人いた。いつだったか無課金同盟みたいな三人くくった名前が付けられていたが、あれは確かアインズ・ウール・ゴウンの名付け親でもある武人(ぶじん)建御雷(たてみかづち)さんがつけたんだったか?

 

「ええ!ええ!そのベリアルです!

お二人ともお家近いんですってね!だったら早く帰ってモモンガさんに会いに行ってあげてください!

まだギリギリ間に合うかもしれません!」

 

 自分は無理だ。どんなに急いでもあと15分はかかる。でも2人なら、一瞬姿を見せるだけにとどまってしまうかもしれないが、それでも会いに行ってほしかった。

 

「そんでもってベリアルがよろしく言ってたって伝えてください!」

 

 ぶくぶくさんもあっけにとられている。駄目だ。これじゃあもう間に合わない。どうにか手段がないものか。そう思って思わず頭を抱えたのと、Yggdrasil(ユグドラシル)でしか聞いたことの無い様な爆音が聞こえたのはほぼ同時だった。

 体が宙に浮き、思い切り地面にたたきつけられた。汚い空気に思わずむせ、目はひりつく様に痛み、そんな中でも確かに匂う焦げ臭いにおいに思わず顔をしかめる。どうやらガスマスクが外れてどっか行ったらしい。

 

「大丈夫ですか!?しっかりしてください!」

 

 にしても、今日は不思議な日だ。懐かしい人ばかりに出会う。制服姿は初めて見たな。

 

「たっち……さん?」

 

「!?」

 

 体に力が入らない。まるで連勤明けに寝沈むのに似た感じ……体の機能が順々に停止していくのが分かるのに、それでも散々世話になった彼の声だと分かった。

 

「おうち……ちかいん、ですか?だったら、こん、なとこ…ごほっ!いないで、はやく……」

 

「まさか……ベリアル、さん?」

 

「きっと、ももんが…さんが、まって……」

 

「ベリアルさん!ベリアルさん!ベリアルさんしっかり!ベリアルさん!ベリアルさー--んっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 背中全体にとんでもない鈍痛を感じて俺は目覚めた。Yggdrasil(ユグドラシル)、もっと言えば我らアインズ・ウール・ゴウンの本拠地(ギルドハウス)、ナザリック地下大墳墓にて。




・キャラクター図鑑001

名前:宮迫友樹
種別:ユグドラシルプレイヤー
能力:長い接客業で培った忍耐力と様々な種類の人間への耐性
趣味:ネットの海から古の作品を掘り返すこと
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