我が名はベリアル!至高の41人が一人!   作:伊勢村誠三

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どうも皆さま、一週間ぶりです。
ニチアサがお休みな今週は日曜日に書いております、伊勢村です。
こうゆう時に運営がどのような対応をしてくれるかで、視聴者の作品に対する見方は大きく違うと思うのですよ。
Yggdrasil(ユグドラシル)』はどうだったんでしょうね?


2話 幻痛

 まず色彩が、暗黒の中に沈んだはずの視界いっぱいに広がった。

次いでついさっき感じなくなったはずの痛みが襲ってくる。

情けなく絶叫を上げながらも、頭の奥の妙に冷静な部分は、どうやら意識を取り戻しただけで、決して傷が治ったわけではないらしいことを理解した。

 

(そもそも俺ら貧民を善意で助けてくれる奴なんていないよな……)

 

痛む体をどうにか動かし、宮迫友樹は立ち上がった。

ぺロロンチーノさんやぶくぶく茶釜さんはどうなったんだろう?

たっち・みーさんはログインできただろうか?いろいろ気になったが、まずは自分がまともに情報を処理できる状態になる事が先決だ。

高級感はあるが、何故か見覚えのある壁に、黒く醜い(・・・・)腕を突く。

 

「は?」

 

思わず、ついた手をまじまじと見つめる。

見覚えがある。いや、こんなに爪の鋭さや、人間のとは明らかに異なる皮膚がリアルすぎると思うが、『Yggdrasil(ユグドラシル)』でのアバター、ウルトラマンベリアルの腕だ。

 

(『Yggdrasil(ユグドラシル)』にログイン……いや、そんなわけがない!あの怪我で俺が夢遊病の様に家に帰ってゲームを開始できるなんて奇跡みたいなことができたとしたって、間に合うはずが……)

 

「いやぁああああああ――――ッ!」

 

宮迫友樹……否、ベリアルの思考は絹を裂くような悲鳴にかき消された。

見るとそこには、青い顔をしたメイド服の絶世の美女たちが立ち尽くしている。

お前らは誰だ?そう言おうとするよりも、またメイドたちの方が早い。

 

「ベリアル様!ぺロロンチーノ様!ぶくぶく茶釜様!

ああ!たっち・みー様にウルベルト様まで!そのお怪我は!?」

 

「速く!速く!誰か治癒魔法が出来る者を!」

 

そう言ってバタバタと動き出すメイドたち。

その動き目で追っていると、ようやくここがアインズ・ウール・ゴウンのギルド拠点、ナザリック地下大墳墓の円卓の間だと気付いた。

そのきっかけとなったメイドの一人が、ベリアルの背中の傷を押さえようと、ハンカチを目一杯広げて背中を塞ごうとしている。

 

「おい」

 

「は、はい!」

 

最早最後にやったのがいつかも思い出せないのロープレ時の低い声で尋ねた。

 

「お前は確か……ホワイトブリムさんが造った子の一人、だったか?」

 

「はい、ホワイトブリム様にお造りいただいたフィースです!」

 

やはりか。ここがナザリック地下大墳墓ならNPCがいてもおかしくないだろうという思いと、なんでNPCがこんなに生き生きと、本当に声明を得たかのように動いているのかはかなり疑問だが、こうして治癒魔法をかけてくれている以上、自分たちを悪くは思っていないのだろう。ずっとログインできていなかったのに、健気な奴らだ。

 

「俺はいい。先に他の皆さんを」

 

「し、しかし!ベリアル様の怪我だって十分酷い物です!」

 

「忘れたのか?俺は上位二重の影(ドッペルゲンガー)だ。

業反転(カルマ・チェンジ)>」

 

Yggdrasil(ユグドラシル)』にはカルマ値と呼ばれるステータスがあり、プラスよりかマイナスよりかで、使える魔法や、特殊攻撃への耐性が変わったりする。

業反転(カルマ・チェンジ)>はマイナスとプラスを逆転させる魔法だ。

ベリアルはそこに更に、二重の影(ドッペルゲンガー)としてのスキルを組み合わせて、姿(アバター)が変わるように設定している。

 

「いだだだだだっ!―――――っあああああああああ!」

 

背中全体に痛みを練り込むような激痛が襲うが、たっぷり10秒かけて、黒にブラッドレッドの体色に、ヒト型でありながら、怪人じみた体格、オレンジ色の目を光らせていたベリアルは、銀と真紅の体色に、限りなく人間に似た体格、星の光のような白い光る眼のアーリースタイルへの変身を遂げた。

思った通りだ。変身の過程で、傷を塞げた。

 

「おおっ!」

 

「体力の減少は……止まったみたいだな」

 

痛覚は鋭敏に反応し、亡くなったはずの傷口に塩を練り込んだような幻痛が止まらないが、これくらいで済むのなら安い代償だろう。

 

「すごい……流石は至高の御方!

戦闘用のスキルをそんな風に使うなんて!」

 

「褒められるほどのことじゃあない。さて、休ませてもらおう」

 

そう言ってベリアルは、近くにあった円卓の自分の席に腰かけ……ようとしてすぐさまフィースに椅子を引かれる。

急に自分が偉くなったかのような感覚になんだかむず痒さを覚えながらも、礼を言って腰を下ろす。

今まで椅子という物で感じたことの無い柔らかさが伝わって来た。

 

(こ、これが座り心地がいいという感覚っ!

素晴らしい!なんて素晴らしんだ!本当に100年前は一般庶民も頑張れば手が届いたのか!?とてもそうは思えない!……って、ちょっと待て。

座り心地が分かる?ゲームで?いや、俺のスキルや魔法が有効な時点で、もっと言えば現実(リアル)で受けた傷や痛みがなんで帰ってこれてなお続いて……ん?帰ってこれて?)

 

自分の言葉に自分で驚いた。

帰ってくる?いや、おかしいだろ。ゲームにログインが正確だろう。

だが、なんだ?この、まるで現実(リアル)の生活の方がおかしいかのように感じる。

 

(ハ、身も心も『アインズ・ウール・ゴウンのウルトラマンベリアル』になりかけている訳か。笑えるな)

 

そう言えば、他のギルドメンバーたちの血の匂いで満ちてるこの部屋で平然としているのもおかしいではないか。

さらに言えば、いつの間にか、他のギルメンたちを治療すべく、回復魔法を持っているNPCたちが集まってきている。

人間、宮迫友樹ならパ二くって何もできなくなってもおかしくないのに、心は酷く凪いでいる。

 

(この状況でウルトラマンベリアルに出来る事がないから?

確かに俺は典型的なウォーウィザード……純戦闘型ビルドだが、何か……)

 

「皆!」

 

派手に扉が開かれ、懐かしい顔ぶれが入って来た。

 

「モモンガさん!ヘロヘロさんにやまいこさんに、アスナさんも久しぶりですね!」

 

「ベリアルさん!もう立っても大丈夫なんですか!?」

 

「変身して強引に傷を塞いだお陰で。

ただ他の皆さんはそうもいかないみたいで」

 

見ればさっき名前を呼ばれたたっち・みー、ウルベルト・アレイン・オードル、ぺロロンチーノ、ぶくぶく茶釜の4人は生きてはいるようだが、ピクリとも動かない。

ギリギリと、後衛職でも100レベルとあって、それなりの筋力(スケルトンに筋肉なんざないが、ゲーム上ステータスとして存在する)のモモンガの拳が固く握られている。

が、急に落ち着いたのか、モモンガさんは一息吐くと

 

「ベリアルさん」

 

「ん?」

 

「おかえりなさい」

 

そう言ってもモモンガは、アスナから受け取ったギガファイナライザーにベリアルに差し出した。

それを受け取ったベリアルは、少し笑うと

 

「ええ、ただいま帰ったぞ、我らが盟主、我らが盟友たち、そして我らの自慢のしもべたちよ!これは俺からの再開を祝す心ばかりのものだ!

銀河の光線(レイ・オブ・スペシウムエナジー)>!」

 

久方ぶりに手にした、かつて最も頼りにした短杖から、青い輝きが放射され、治癒魔法を他のギルメンにかけ続けていたNPCたちの魔力(MP)が回復する。

と、同時に魔力(MP)が枯渇したベリアルは椅子に落ちるように座り込んだ。

 

「「「「「ベリアル様!」」」」」

 

「ちょ!ベリアルさん!」

 

「病み上がりで何無茶してるんですか!?」

 

「治癒に参加できないなら、これくらいはさせてくださいよ」

 

まったく……と、でも言いたげな4人に申し訳なさを感じながらもベリアルは、最高の座り心地の椅子に身をうずめた。




オリジナル要素解説 その1

業反転(カルマ・チェンジ)
…一定時間カルマ値の+、-を逆転させる魔法。
ベリアルはそれに自身のスキルを紐づけして、アーリースタイルに変身するようにしている。
カルマ値以外のステータスへの影響はない。

銀河の光線(レイ・オブ・スペシウムエナジー)
負の光線(レイ・オブ・ネガティブエナジー)の魔力版である魔の光線(レイ・オブ・マジックエナジー)を改造した魔法。
対象に自身のMPを分けることができるという効果こそ、魔の光線(レイ・オブ・マジックエナジー)と同じだが、ウルトラマンベリアルの設定が現実となった今、分けられるのは厳密には、『Yggdrasil(ユグドラシル)』における魔力と限りなく同一のエネルギー、スペシウムエネルギーである。
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