「菊花賞までにはまだ期間がある……このままじゃマインショックさんに勝てないけど、どうする?」
「なんでいちいち聞くんだよ、言わなくてもわかるだろ」
「いい覚悟だねぇ、一応聞いておかないと良くないかなって……トレーニングの質と量を両方増やす、今まで以上にきついから頑張ってね」
言われなくてもやってやる……俺は負けず嫌いなんだ。
強いやつに勝つ、このためならいくらでも努力してやる。
「よし、まぁとりあえずは2400走ったけどどうだった?」
「速度上げるタイミングをミスしたのは感じたな、もう少し早めにしてればもっと余裕があったと思う」
「長距離だとさらに勝手が違うから、もう少し学ばないとね……言っちゃうとブラックアウトは走りはほぼ完成だから後は座学とスタミナがメインだよ」
走りは完成か……。
「走り方を増やすのはどうだ?」
「逃げなら適性もあるし可能性がないわけじゃないけど、今からは流石に仕上げるのは無理だ」
付け焼き刃じゃ通用しない、か。
「だとしたら先行をより極めていくのが一番いいわけだな」
「うん、そうなるね……大丈夫さ、きっと菊花賞も勝てる」
……
「おや?マインショックさんだね?」
「あ、生徒会長さん」
「もっと気楽に名前で呼んでほしいぐらいなんだが……これは生徒会長の宿命なのかもしれないな」
「な、なにかありました?」
何もしてないはずだから目をつけられてるとかはないはずだよね……?
「ど、どうかしました?」
「いやなに……ゾーンに君が至っているとはね」
「先日のレース時のあれ……ですよね?」
ゆっくりとうなずかれた……やっぱり生徒会長さんは知ってるんだ。
「私にゾーンについて教えてくれませんか!」
「……ゾーンについてか、申し訳ないが望んでいるような情報はでないかもしれないな、今から時間があるかい?」
「はい、大丈夫です」
「なら少しついてきてくれ、生徒会室で保存してるビデオがあるんだ……私物だがね」
取り出されたビデオはシンボリルドルフやマルゼンスキーと書かれたケースに入っていた。
「私の持論だが、ゾーンには条件があると思っているんだ」
「条件、ですか」
「あぁ、自分の位置や相手との距離、脚質も関係してくるかもしれない」
自分の走り方が条件に……?それだけじゃなくて走ってる相手も?
「ゾーンはすべてのウマ娘がそこに至れる、もしくは生まれつき持っている……私はそう考えているんだ」
「でも、それだともっと強いっていうか……」
「あぁ、もっとゾーンを使いこなしているウマ娘が増えるだろう……当然の疑問だ、それを解消するのがさっき言っていた条件だよ」
なんでそれがゾーンを使える使えないに……あっ。
「条件を達成しないとその兆候すらわからない……だからゾーンを使える人が少ない?」
「その通りだ、君の加速がゾーンによるものならどうして今まで発動しなかったか?簡単だ、君が強すぎたんだよ」
強すぎたらゾーンが発動しない?
でも前のレースは発動した……。
「……私が先頭じゃなかったから?」
「そのとおりだ、少なくとも君のゾーンは先頭で発動するようなものではないと思う……もしあの時にそこに至ったのではないなら」
「そういえばそこに至る、ってどういうことですか?」
「文字通り、成長してゾーンを使えるようになる者もいるということだよ、私のようにね」
生徒会長さんも……至った?
「現役の頃の成績はいいとは言えないものでね……いろいろ試行錯誤したのさ、そのうちにいつの間にか覚えていた、だから至った……だが本当の強者は初めからそこにいる、おそらく君もそうだろうね、そして彼女も」
彼女、おそらくブラックアウトさんもそうなのかもしれない。
「長く話し過ぎたね、参考になったかい?」
「はい、ありがとうございました」
「ならよかった、もう暗くなってきている、気を付けて帰るといい」
ゾーンとその発動条件か、もしあれを使いこなせるなら……。