「菊花賞、どうなるのかな」
「あぁ、マインショックさんでしょ?ブラックアウトに中距離で迫ってたのすごかったよね……それに長距離が一番得意らしいからもしかしたら勝っちゃうかも!」
「でも実力は間違いないからなぁ……意外と時の運に任せた結果になるかも」
……くそっ!話題は編入生とあいつばっかりで他に出走するやつなんて気にも留めない。
私だって……私だって届くのに。
「ローズさん、どうしたのかな……」
「そりゃ自分がライバルだと思ってた人が他の人と競いだしたら凹むでしょ……そういうものなのよ」
……トレーニングに行こう、ここは居心地が悪い。
教室に残っている意味もないんだし。
……
足りないな……まだ、まだ足りない。
「あと一本……」
「ルインローズさんだよね、いつまでやるつもりだい?」
「あんたは……!」
ブラックアウトのトレーナー
なんでこんなところに……。
「……話題にすらでなくなった私を笑いにでも来たの?」
「話題になってないなら笑う対象にもなってないよ」
こいつ……。
「フォームが歪んでる、これ以上はやめた方がいい、というかトレーナーはどうしたんだい」
「……私のトレーナーは名義だけよ、教えてもらったのは最初だけ」
「ふーん……」
タイマーを押してもう一度走り出す。
一周のタイムはかなり伸びてしまっていた。
「……集中できないんだけど、いつまでいるつもり」
「いやぁ、意外と頑張るねって」
努力したって無駄ってこと?
「勝ったからってバカにして!」
「してないよ、どうして君みたいに力のあるウマ娘が名義貸しについてるのかな~って」
「……模擬レースの時に結果がでなかったから」
だから、名義貸しに頼むしかなかった。
「君レベルなら引き抜きとかもありそうなもんだけど」
「あいつが拒否してる、私を功績用に逃がしたくないんでしょうね」
「なるほどね……トレーナーに教われないってことは自主練だけやってるの?」
なんかいちいち聞いてくるわね……。
こんなズバズバ聞いてくるタイプだったの?この人。
「そうよ、自分でなんとかするしかないんだから仕方ないじゃない」
「……自主練頑張ってね、踏み込みをしっかりして重心をぶらさないようにすると良くなるかもね」
結局何だったのよ。
やる気無くしたけどもう一回だけ走ろうかな……。
……重心、だっけ。
「本当にタイム縮んだ……」
……
「すんごい人だねぇ、前のレースが効いたかなこりゃ」
「このレベルは初めてかもな」
「大丈夫?落ち着けてる?」
「俺を誰だと思ってるんだよ」
いいね、リラックスもできてそうだ。
「……焦っちゃダメだよ、落ち着いていけばきっと勝てる、自分の走りを大切にね」
「過保護か、わかってるから落ち着け、らしくもない……お前はブラックアウトのトレーナーなんだろ?どんと構えてろよ」
「勝てれば三冠だよ?僕結構色んなウマ娘担当してきたけど、三冠なんて栄光は見たことないからね」
「なら初の快挙は俺の役目だな、期待してろ」
……本当、頼もしいな。
ん?あれってルインローズさん?
「ねぇ」
「あぁ?またお前かよ」
「あんたにようはないわ、あんたのトレーナーにようがあるのよ」
めちゃくちゃ口ごもってるなぁ、どうしたんだろ。
「その……この前の時はありがと」
「意外と律儀なんだね、わざわざ言いに来るとは」
「な、なによ」
「いや?トレーナーとしての仕事を全うしただけだよ」
「それだけだから!」
……あれだけでどれだけ変わるかわからないけど、いい勝負してくれるといいなぁ。
「お前、担当勝たせる気ある?」
「そりゃもうめちゃくちゃあるね」
「まぁいいや……それじゃ行ってくるから、しっかり目に焼き付けろよ」
……
「うちのトレーナーに世話になったんだって?」
「……ほんとあんたって口を開けば嫌味ばかりなのね、ずいぶん助かったわよ?もしかしたらあんたに負けてほしいのかもね」
「それをしても勝てるっていうのを見たいだけだよ、うちのトレーナーはそれが好きなんだ、いい性格してるだろ」
こいつ本当にぶれないわね……。
「ブ、ブラックアウトさん!今度は負けませんから!」
「長距離で負けたらつれ~だろうな!」
「あいつを動揺させようとするのは無駄よ、諦めた方がいいわ」
「えっと……どちら様でしたっけ」
はぁ?
こ、こいつ……これだから勝ってるやつって!
「ルインローズよ!ルインローズ!そこのブラックアウトとよく競っては負けてた女!」
「す、すみません!今日はよろしくお願いします!」
……そうやって二人とも油断してなさい、今度は私が勝ってみせるんだから。