さっきまで油断しきって話してたのにゲートに入るとこの集中、ほんと化け物ね。
「食らいついてやる」
スタミナはぴったりで使い切る、そのために何度も何度も練習したんだ。
今度こそあいつに泥を塗ってやる。
狙うは喉元、一着。
……開いたっ!
「ルインローズが先頭に躍り出た!続いてサンダイン、レールダッシュと続いていきます!」
よし、先頭につけた。
スタートで失敗さえなければ先頭には行けるんだ。
あとはこれを維持するだけ、それだけで勝てる、簡単でしょ……!
「踏み込みはしっかり……重心がぶれないように……!」
「先頭は変わらずルインローズ!おっと密集していたところからブラックアウトが出てきている!最後方からはマインショックも速度を上げ始めた!」
早いっ!?
まさかこんなに早く仕掛けてくるなんて……。
ここでスピードを上げて逃げ切れる?できない?
できないじゃない、やらなきゃ負けるんだ。
「ルインローズも速度を上げました、なんとか逃げ切りたいところ!」
ブラックアウトは間違いなくもう上がってきてるし、マインショックさんも追いついてくる。
スタミナがもうきつい、プレッシャーに弱すぎるでしょ……。
「中盤に差し掛かりましたが位置はほとんど変わっていません、ここからどう動くのか!」
えっ。
スピードを上げてない……?
じゃあ追いついてない……違う、ペースを乱されたんだ。
もうゴールまで速度を維持できるほどのスタミナがない。
「ルインローズがペースを落としてきている、最終直線まであと少し!ブラックアウトが動いた!ルインローズをとらえている!マインショックも外から上がってきている!」
まだ、まだ負けたくない。
まだ走れるんだ。
「最終コーナーでブラックアウトが先頭に躍り出た、後続も入ってきている!マインショックがぐんぐんと順位を上げている!」
また負けるのか。
仕方ない、才能が無かったんだ。
……それで?それで終わる気なんてない。
「そこは私のものなのよ!」
「先頭のブラックアウトとの差は三馬身以上、マインショックが詰めてきている!おっと後ろからルインローズが再加速している!すごい速度だ!」
あと少し、あと少しで届くはずなんだ。
「ゴール!一着ブラックアウト、二着ルインローズ、三着マインショック……」
……
「……使えなかった」
「あほう、使うなって言ってるだろ」
「トレーナー……ごめんなさい、勝てませんでした」
思いつめてやがるなぁ。
「上の二人は中央最強とその二番手だぞ?実際、並べるだけお前にもチャンスがあるってことだ……ここは控室だ、人目は気にすんな」
「……はい」
本当にレースが関わるといつも以上に感情を出すなこいつは……ブラックアウトしか見てなかったツケが今来たってところか……俺のせいだな。
「いったん他のレースで仕切り直しだ、次あいつらに当たった時に勝てばいい、だろう?」
「はいっ!」
いい表情だ、前もだが今回も成長してくれそうで何よりだ。
……
「次は勝つから」
「言ってろ、勝つのは俺だ」
「随分仲良くなったんじゃない?ってあれ?ルインローズさんどこ行くの?」
「どこって私の控室だけど」
「君の控室はここだよ」
ブラックアウトの控室……だよね?
この人何言ってるんだろう。
「君の担当トレーナー、僕になったから」
「は?」
「え……どういうことですか!?」
「いや~君の元トレーナーくんとちょっとお話しただけだよ、賭け事ってよくないよねぇ」
揺さぶりかけて無理やり私のトレーナーになったってこと!?
「おいおいおい……マジで言ってんのかよ」
「まじまじ、おおマジだよ……ブラックアウトの併走相手も欲しかったしちょうどいいと思うんだよね」
「こいつじゃ相手にならねぇって」
「は?あんたなんかすぐ抜いてやるわよ」
「はいはい喧嘩しないの……決定事項だから理事長にでも直談判してね」
できるわけないじゃない……なんなのよこの人!
「次は有馬記念だし、君たち二人とも出るから頑張ろうね!おー!」
「なんなのよ……」