「一から説明して、どう何があったらこうなるのよ」
「さっき説明したよ?その人が気にくわなかったから揺さぶって譲ってもらった形にしたんだよ」
「本当に揺さぶったのね……でもあいつってここでトレーナーとして仕事してる時間はかなり長いわよね?納得させたとしてあっさり譲るとはおもえないんだけど」
「賭け事とか禁止されたことに手を出してるからそこをちょんちょんっとね……しっかりこっちのチームに入れる……っていう書類を提出させてから理事長に報告したよ」
今頃こってり絞られてるか……もしかしたらもうすでにここにはいないかもなぁ。
告発したのは一件だけど、手慣れてるっぽかったから真っ黒だろうし。
「いい気味ね」
「さて、まぁここまで言ってなんだけど~君には選択肢がないわけじゃないよ」
「……聞いておくわ」
「一つ目は、このまま僕とブラックアウトのチームに入ること……もちろん君が行きたいように走りたいレースも決めていいよ、それに合わせてしっかりとトレーニングプランも作ろう」
こっちに来てほしいけど~……この子プライド高いっぽいしなぁ。
「もう一つはまた別のトレーナーを探すこと、ルインローズっていう名前だけで引く手あまたではあるだろうね」
「考える必要もないわね、あなたたちの方に行くわ」
えっ?
意外だったな……こっちには来ないかなと思ってたんだけど。
「そんな間抜けな面して……予想外って顔に書いてあるわよ」
「いや……ブラックアウトと同じチームは嫌がるかな~って内心思ってたり思ってなかったり」
「どういう意味だてめぇ」
「私は気にしたりしないわよ、なんなら戦える機会が増えるんだから引きずりおろすチャンスも増えるってことでしょ?まぁそいつが逃げなかったらって話なんだけど」
「あ?逃げるわけねぇだろ、お前こそ今言った言葉忘れんなよ、後悔させてやるからな」
うん……まぁ思ったより相性はいいのかもなぁ。
よかった……のか?
……
「トレーニングは何やればいいの?」
「残念だけど今日はトレーニングじゃない、ブラックアウトはトレーニングだけど」
どういうこと?
トレーニングだと思ってたんだけど。
「今回はトレーニングじゃなくてフォームの矯正だよ、僕からしたらよくあのフォームであそこまで走れたなぁって思ってるから、とりあえず今の状態が見たいから一度ぐるっと走ってもらってもいいかな」
「了解」
「できるだけレースする時と同じようにお願い、一つずつ悪いところを削っていかないとね」
最終的にどれぐらい変わるのかしら……フォームなんて独学だったし。
もしかしたら根っこから変えさせられるのかもしれないわね。
……
前回も少し直しただけでかなり改善したわけだし、フォームが大切なのは重々承知してたけど……。
「ここまで変わるとはねぇ、タイムが初めの時から縮み続けてる……ブラックアウトより早いんじゃないか?これ」
「なんですって?」
「ああいや、ブラックアウトのタイムは大分前のだからあれだけど、その時のタイムよりも速いんだよね」
というかこれ……思ったよりかなり強いというか、才能の塊というか。
マインショックさんとかと張り合えるレベルじゃないのか……?
これがフォーム一つ改善しただけって、しっかりとしたトレーニングしてたらもっとすごいことになるんじゃないのか……?
「そんなに考え込んでどうしたのよ、ていうか今のブラックアウトのタイムを教えてちょうだい」
「教えてもいいけど~どうせなら次のレースに勝ってからとかの方が面白いだろう?」
「次の……ああ」
「有馬記念だよ」
……
「よし!ここまでだ」
「まだできます」
「できるできないじゃねぇ、お前に無理させたら大変なんだよ、これで終わりだ」
「……わかりました」
菊花賞落としたのをめちゃくちゃ気にしてるっぽいんだよな、どうしたもんか。
トレーニングに熱が入るのはいいけど。
「私……私油断してたんです」
「……ほう?」
「ブラックアウトさんばっかり見てました、それで中距離であそこまで行けたなら長距離ならきっとなんていうのも思ってました」
「慢心だな」
「そのとおりです」
いい目だな……熱もあるけど冷静だ。
「だから、次は負けたくないんです」
「もちろんそれはわかってる、だが無理は別だ、自主トレも禁止だ、しっかりと休ませろ」
不機嫌そうだがやりすぎを止めるのは俺たちの仕事なんでな。
「……有馬記念は勝つぞ、わかってるな」
「はいっ!」
ブラックアウトだけじゃなくてルインローズもしっかり見ておくべきだったな。
走り方を見てる限り大丈夫だと思ってたが菊花賞の時多少の改善が見えた……。
だれかいい指導者を得たのかもしれないな、強敵になりそうだ。