ブラックアウト【完結】   作:一口さん

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努力と強者

 うん……ルインローズも大分慣れてきたな。

 ブラックアウトとの併走もよくやってくれている。

 忙しさは二人分だけど、できることが増えたのはかなりいい。

 

「ルインローズはもう一周してきて!ブラックアウトは坂路やるよ」

 

 ……意外、とは言う気がないけどルインローズの伸びは正直凄まじいな。

 自主トレだけで満足に走れるようなフォームでもない状況であそこまで伸びて二着になってたんだ、当然言えば当然なんだけど〜……。

 正直有馬記念がどうなるかわからない。

 マインショックさんは間違いなくかなり仕上げてくる、もしかしたらゾーンに狙って入れるようにすらなってる可能性もある。

 ルインローズはこの伸び幅だ、他二人と比べて立ち回りというか知識の面で不利がある気もするが、このまま加速と体力を伸ばせればサイレンススズカのような、二回目の加速ができるかもしれないな。

 ……問題はブラックアウトだ、おそらく伸び幅というか成長の中で壁にぶつかっている、それが精神か肉体の限界か、どちらにせよ一皮剥けないとここで頭打ちにすらなり得てしまうな。

 

「……走者をよく見るトレーナーだからこそ気がついてしまう悩みだな、これは」

 

 ……

 

 計測用に使っているストップウォッチがほとんど変わらないタイムを見せている。

 これで何度目だ?

 ……限界?

 できれば考えたくないな。

 ため息が口から漏れ出てくる。

 

「ため息なんて珍しい、弱気にでもなってるの?」

 

「ダメか、弱気になったら」

 

「……チームに入ってからあなたの意外な面ばっかり見てる気がするわ」

 

 横でメキメキと成長見せつけられてるのに全然タイムのびてなかったらそりゃなぁ。

 

「俺だって勝ちたくて走ってるんだ、自分が頭打ちかもしれないってなったらそりゃ萎えるだろ」

 

「あら、そんな程度で逃げ腰になるのね」

 

「言ってろ……試合で負けなきゃいいだけだ」

 

「有馬記念は楽しみですね」

 

 しかしどうしたものだろうな。

 俺はゾーンを使えない、それどころか兆候すらないし。

 

「使えない物にすがるのはやめるべきだな、使えるやつにどこまで対抗できるかだ」

 

 マインショックもルインローズもゾーンを持っている、マインショックは菊花賞で使えなかったのか使わなかったのか……ルインローズはマインショックを抜いた時体力が尽きていたようにみえたがもう一度走ることができた。

 ……素質、か。

 ありえないどころか一番可能性があるのがそれだろうな、もちろん本人の努力は全否定する気はないが。

 努力で埋まらないものはいくらでもある。

 ひたすらトレーニングを積んだおかげで三冠という栄光はつかめたが、それは俺の努力だけじゃない。

 周りに強者がいなかったというのが大きな要因だ。

 ……弱気になるのはらしくない、これからは強者が出てくる、それは喜ばしいことだろう。

 強いやつに勝ってこそのレースだ。

 

「もう一本、だな」

 

 ただ積み重ねるだけだ、俺には努力することしかできないのだから。

 

 ……

 

 前に四人、仕掛けるのは最終コーナーに入る直前……今!

 

「……ダメか」

 

 やっぱりイメージだけじゃゾーンは使えないのかもしれない、それが走ってないからなのかただイメージを掴めていないのか……。

 ゾーンを使えるか否か、これは今後大きな課題になる気がする。

 多分……あの時ルインローズさんが私を抜いたのもゾーンだと思うし。

 あの時……使えた時負けたくないって思ってできたんだ。

 最終コーナー、先頭がブラックアウトさんでその後ろにルインローズさん……。

 ブラックアウトさんに負けたくない、負けたくない負けたくないっ!

 

「はぁっはぁっ……」

 

 今の感覚……。

 間違いなくあの時と同じ感覚……。

 

「何かつかめたかもしれない」

 

 トレーナーには黙っておくべきだろうか。




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