「随分いい天気になったな……」
「あれ?生徒会長さん?」
「成長した後輩の勝利するところを見たいと思ってね、少し無理をさせてもらったよ」
「急に連絡よこす奴らしかいねぇ……ただの客席ならまだしも最前列は用意すんのが大変なんだぞ」
とはいってもちゃんと用意するんだもんなぁ……律儀というかなんというか。
「……見ててくださいね、勝ってみせますから」
「期待しているよ」
中央のレースは大分慣れたはずだ……G1も二回目、きっと大丈夫。
客席の声は集中すれば聞こえない。
「いい没入具合ですね」
「ルインローズさん……」
「いい勝負、しましょう」
菊花賞の時とは違う……それはもちろん私だけじゃないってわかってたけど。
「ブラックアウトさんは?」
「そこで突っ立ってるわよ、少し腑抜けたように見えて……話しかける気にもならないのよね」
何があったんだろう。
「ブラックアウトさん」
「あぁ……マインショックか」
「菊花賞のリベンジさせてもらいます」
「……負けねぇよ」
言葉はいつも通りだけど、元気がないっていうか……力を感じない?
っといけない、レースが始まっちゃう。
集中、集中……。
開いた!
「有馬記念という大舞台のレースが始まりました、先頭はベルマリア、続いてルインローズ……最後尾にマインショックとなっています」
最後尾でも位置は完璧……中盤超えてからが本番っ!
後ろから見てる感じ真ん中が多少固まってる?なら外から一気に抜けるかな。
……よし、行こう。
「後続が速度を上げてきている!ここで先頭が入れ替わった!ルインローズが引き離し始めている!ペースは持つのか!?先頭ルインローズ!少し離れてブラックアウト」
ここで使うんだ。
周りがゆっくりに見える。
思いっきり踏み込んで……!
「このまま先頭まで行かせてもらいます!」
「ここで少しずつ位置を上げていたマインショックが一気に抜きにかかった!中央の集団をごぼう抜き!一気に詰め寄る!並ばない!並ばずにブラックアウトを抜いた!」
「クソっ!」
「ルインローズをとらえに行っている!ルインローズも負けじと速度を落とさない!並んだ!横並びのまま競い合っている!」
……
なんで俺はそこにいないんだ?
負けたくねぇ……それ以上に置いて行かれたくなんかねぇ。
俺だって……俺だって!
「このまま負けてなんかたまるかよ!」
なんだ……?この感覚。
体が軽い?
「ブラックアウトが速度を上げている!がしかし間に合うか?ゴールまであとわずか!マインショックが前に出た!マインショック先頭!」
間に合うはずだ!間に合うはずなんだ!
はっ?
左足……動いてる?
「ブラックアウト!止まれ!」
鈍いような固い感触。
あぁ、なんで俺空見てんだ?ゴールしなきゃ……。
「ウトさん!ブラックアウトさん!」
「担架!救護の人呼んで!」
なんだか眠みぃ……。
……
病室で三人、僕とブラックアウトとマインショックさん。
静かに機械だけが規則的な音を鳴らしている。
「……どうなったんですか、ブラックアウトさん」
「命は問題ない」
「命はって……足は?」
……ここで言うべきなんだろうか。
「ブラックアウトの足は……」
「……言いたくないなら、いいです、私はどんな結果だって待ちます」
「すまない……ありがとう」
どうか、どうか治ってくれ。